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2014年12月 4日 (木曜日)

421.【QC02-12】会計面の比較~IFRSの資本・利益区別

2014/12/4

この数日、非常に寒い。僕の風邪は鼻からだが、どうも来たらしい。くしゃみのあとすぐに鼻水が出てくるので、「俺はエボラだ」と冗談を言っている暇もない。みなさんも、お気を付けください。

 

さて、前回(42012/2 の記事)は企業会計原則の“資本・利益区別の原則”を見たが、その結果、資本取引と損益取引を区分することは期間損益計算の基本計算原理(の前提)であり今なお重要だが、資本剰余金と利益剰余金の区別は、あまり意味がないことが分かった。これについて、IFRSはどのようになっているかを、今回見ていきたい。

 

まず、概念フレームワーク(2010年改定)について、概略を記載すると以下のとおり。ちょっと、驚愕というか、拍子抜けというか・・・

 

・第3章の“有用な財務情報の質的特性”には、これに関連する記述はない。

 

・第3章以外については、以下のとおり。

 

・第1章“一般財務報告の目的”には、ちょっとかする程度に関連する記述がある。例えば・・・

 

ある期間中の報告企業の財務業績に関する情報は、投資者及び融資者から追加的な資源を直接入手すること(OB21項参照)以外による経済的資源及び請求権の変動により反映されるものである・・・(OB18

 

報告企業の経済的資源及び請求権は、追加的な所有持分の発行などの財務業績以外の理由によっても変動することがある。・・・(OB21

 

(注)“経済的資源及び請求権”及び“(これらの)変動”が分かりにくいと思う。僕は次のように理解している。

経済的資源”は、B/Sの資産のこと。

請求権”は、B/Sの負債と持分のこと。

IFRSでは、収益や費用といったP/L項目は、資産や負債が変動する際の相手勘定として定義されるので、“(これらの)変動”とは“収益”や“費用”を指すものと思われる。

 

・第4章“1989年「フレームワーク」:残っている本文”(=2010年に改訂されず、以前の本文をそのまま引き継いだもので、資産・負債・資本(=持分)、収益・費用などの定義や認識規準、測定規準などについて記述されている)にも、ちょっと関連した記述がある。例えば・・・

 

持分は、4.4項で残余として定義されているが、貸借対照表において細分類されることがある。・・・こうした分類は、企業が持分を分配あるいは他の方法で利用する企業の能力についての法律上の又はその他の制限を示す場合、意思決定のための財務諸表利用者のニーズに目的適合性を持ち得る。こうした分類はまた、企業に対する所有持分を有する者が、配当の受領又は拠出資本の償還に関して、異なる権利を有しているという事実を反映することもある。4.20

 

現行の概念フレームワークには、第2章はなく、第4章で終わっている。したがって、以上で概念フレームワークをすべて概観したことになる。つまり、IFRSの概念フレームワークには、企業会計原則の“資本・利益区分の原則”に直接対応する記載がない。

 

 

僕が感じた疑問は次の点。

 

なぜ、損益計算の基本原理(の前提)である、資本取引と損益取引の区別の必要性に言及しないのか。

 

納得したのは次の点。

 

やはり、資本剰余金と利益剰余金の区別には言及してない。

 

 

これらについて、詳しく検討してみよう。

 

(なぜ、損益計算の基本原理(の前提)である、資本取引と損益取引の区別の必要性に言及しないのか。)

 

これを検討するには、問題を2つに分けて考えた方が良いと思う。1つは“損益計算の基本原理”について、IFRSと企業会計原則は同じか否か。もう一つは、もし“基本原理”が異なるとしても、“資本取引と損益取引の区別”のようなその基本原理の前提は、なお重要ではないのか。即ち、個別会計規準の基盤となるような重要性があるのではないか(=概念フレームワークに記載すべきではないか、それは書いてあるのか)。

 

まず前者についてだが、結論は「異なる」だ。企業会計原則は、P/L重視であるのに対し、IFRSはB/S重視(資産・負債アプローチ)と言われる。企業会計原則はP/Lで損益計算を行うとしているが、IFRSはB/Sの持分(=資本)の期首と期末の増減差額で損益計算を行うとしている。両者とも損益計算を行うことに関しては同じだが、そのプロセスが異なる。よって、“損益計算の基本原理”が異なっても不思議はない。

 

企業会計原則は、P/Lで損益計算を行うのでP/L項目を把握すること、即ち、損益取引項目を資本取引項目と混同しないことは極めて重要だ。一方、IFRSはB/Sで損益計算を行うので、B/S項目を把握することが重要となる。しかし、それならIFRSも“負債・持分区分の原則”みたいな両者を混同しないよう注意を喚起する記述があってもよいのではないか。もし、混同すれば、持分の期首と期末の差額にぶれが生じ、適切な損益計算ができなくなるのだから。しかし、それはない。これが、後者の疑問となっている。

 

では、この観点で、改めて概念フレームワークを見てみよう。

 

その第4章では、まず、資産・負債を定義し、次に資産と負債の残余(=資産-負債)として持分を定義している。したがって、負債さえ識別できれば、自然に持分と分けられるという発想のようだ。そして、資産・負債の増減のうち、持分参加者の出資や分配に関連しないものを収益・費用と定義している。

 

ここで、ふっと思ったのは、財務諸表構成項目である資産・負債・持分・収益・費用のうち、負債と持分の区別だけを特別扱いする必要があるか、ということだ。もし、負債と持分の区別に注意喚起するのであれば、他の項目についても同様の記載が必要になるかもしれない。

 

想像だが、IASBは負債と持分だけを特別扱いする必要がないと判断したのだと思う。もし、問題があっても個別規準で対応すればよい、と。実際に、負債性金融商品と資本性金融商品の区分については、IAS32号(金融商品:表示)などで対応している。例えば、複雑な条件の付いた新株引受権のような金融商品だ。これらは、仮に混同しても、相手勘定が損益ではないので発行側の損益計算に影響を与えるケースはあまりないという事情もあるかもしれない。

 

一方で、負債のような性質を持ちつつ資本性金融商品として発行側が会計処理できるような、紛らわしい金融商品がたくさん開発された。損益計算に影響はなくても、BIS規制の対象になるような金融機関など、資本の部がたくさんあるように見せかけたい動機を持つ発行企業は多いようだ。投資側も、なるべくリスクが低くて(即ち、負債に近く)、かつ、いざとなれば儲けが大きくなる商品(持分証券に近い)を歓迎する。おかげでIAS32号の規程は複雑怪奇なものになっている。もし、概念フレームワークで、持分と負債の区分について明確な方針を示すことができていたら、32号の規程がもっとシンプルでもその運用(=解釈)は、もっと楽になっていたかもしれない。

 

ん~、だが“明確な方針”などあるだろうか。ん~、そう注文付けるのは簡単だが、実際にその一線を引く規定を考えるのは困難かもしれない。

 

 

(やはり、資本剰余金と利益剰余金の区別には言及してない。)

 

こちらについては明快だ。上に引用した 4.20 を見ても分かるように、概念フレームワークでは資本金の区分表示でさえ必須ではない。会社法などの規制で利益の分配に影響があるとか、その他各国法制度などの事情で、持分の内訳開示に意味がある状況を記載しているだけだ。もちろん、損益計算に関連するような書き方は全く見られない。関連するはずもない。企業会計原則とは明らかに違う。

 

 

ということで、企業会計原則が一般原則に掲げて注意喚起している“資本・利益の区別”は、IFRSの概念フレームワークでは定義の記載に留まっており、ほとんどスルーされている。だが、それでも実害は限られているようだ。

 

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