423.【投資】中国の予想外の利下げ~その2
2014/12/11
11/26 の“その1”を公表してから、早や半月、続編を書くと予告してそのままにしていたが、9日、ついに株式相場は世界的な調整を始めてしまった。きっかけは上海株式の暴落(上海市場の代表的な株価指数上証総合指数も5.4%安と、2009年以来の下げ幅となった。WSJ 12/10 有料記事)にあるようだ(それにギリシャの政局不安が輪をかけた)。これは、単なる、ありふれた調整だろうか。それとも、大厄災(=経済危機)の前触れだろうか?
ちょっと緊張感のある書き出しだが、実はまだ余裕があると思ってる。理由は、中国政府は日本のバブル崩壊過程を研究しているので、当時の日本政府より適切に対応するだろうという期待だ。それと、現在、世界的な金融緩和の最中であることが大きい。
日本の 1989 年から 1991 年頃のバブル崩壊のプロセス(Wikipediaの“バブル崩壊”など)と、今の中国経済を単純に比べてみると、「もう中国経済はバブル崩壊過程に入っているのではないか」と思えてくる。特に、この夏から顕著になった不動産価格の全国的下落(REUTERS 9/16 無料記事や日本総研HP 10/3付レポートなど)は、バブル崩壊の兆候どころか、実際の崩壊現象だ。それなのに、少なくとも先週まで世界の株式市場は、9月下旬から10月中旬にかけて大きめの調整があったものの、概ね順調に上昇してきた。では、中国バブルが崩壊しても、世界経済に影響はないのだろうか。
いや、そうではない。みなさんもご存じのとおり、中国経済の減速によってブラジルやオーストラリアなどの資源国・新興国経済は、輸出が不振で不況に陥っている。先進国の輸出も伸び悩んでいる。やはり、中国経済の存在感は大きい。では、なぜ株式市場は上昇していられるのか。
どうやら問題は、バブル崩壊それ自体ではなく、“崩壊の仕方”、或いは、“崩壊のスピード”にあるようだ。即ち、崩壊自体は避けられないが(というか、中国政府自身が高度成長から安定成長へ、固定資産投資中心から民間消費中心の経済へ変革させようとしている。これはバブルつぶし政策だ)、そのプロセスによっては、世界経済、或いは、株価にそれほど大きなダメージを与えない可能性もある。(まあ、ないこともない、ぐらいかもしれない。)
ということで、僕が知りたいのは次のことだ。
・中国政府が間違った崩壊の仕方へ舵を切った場合、それを知ることができるか
・崩壊のスピードが速すぎるかどうかをどうやって見分けるか
恐らく、それは中国のGDP成長率に現われるのではないだろうか。政府目標と実績値の乖離として。
ん~、しかし、これでは当たり前過ぎるし、遅すぎる。もっと早く知って、崩れる前に相場から手を引けるようにしなくては。それにはもう一段深く考える必要がある。どうやら、もう一回続編が必要なようだ。
ちなみに、上海市場の10日の相場は反発した。即ち、暴落が止まって上昇へ転じた。9日に暴落したのは、8日に発表された決済機関による短期融資規制の厳格化が、当局の金融引締めと市場参加者に受け取られたためだったようだ(冒頭のWSJ 12/10有料記事、REUTERS 12/10無料記事、Bloomberg 12/9無料記事)。これでは先月の利下げと矛盾するし、シャドーバンキングの信用不安を煽ることにもなる。投資家はびっくりしたことだろう。
しかし、良く考えてみると、中央銀行による利下げは銀行から融資を受ける企業全体に波及するのに対し、このレポ取引の担保規則の厳格化は、レポ取引を利用している金融機関や一部企業が影響を受けるものの、より直接的にはシャドーバンキングのプラットフォーム企業などを狙ったものだ。これらが発行する格付けの低い債券に対する需要を減退させることが目的だ。
即ち、「GDP成長率目標達成のために利下げはしたが、シャドーバンキングは引き締める」ということになる。中国政府の政策は、まだブレていない。したがって、先月の利下げを含め、今は“まだ余裕がある”と判断してよさそうだ。10日の上海市場の反発にはそういう意味があるのではないか。上海市場はこのところ異常な上昇を続けていたが、9日にはそれが冷やされた。その意味でも、この担保の厳格化は良かったと思う(但し、欧米市場は調整が続いている。上海は、まだ冷やし方が足りないかもしれない)。
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