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2015年1月27日 (火曜日)

435.【番外編】監査法人のガバナンス規制強化と監査基準の規制緩和

2015/1/27

期待通りアギーレ・ジャパンは準々決勝のアラブ首長国連邦戦を勝ちきった。今日の準決勝の相手は開催国のオーストラリア。さらに厳しい試合になりそうだが、期待もますます高まる。・・・うっ、こう書き出したかった。こう書き出せるものと思っていた。しかし、日本は敗れた。もう忘れよう。そうするしかない。

 

 

こんな、どよ~んとした気分のところに、日経電子版の以下の記事が飛び込んできた。

 

監査法人にもガバナンス改革の波 不正発見機能の強化道半ば、金融庁が動く1/25 有料記事)

「監査のみ規制は不十分」監査審査会の佐々木氏1/25 有料記事)

 

ん~、吉と出るか凶と出るか。興味津々だ。

 

記事は有料記事であり、あまり中身の紹介はできないが、いずれの記事も、監査をより良くするためには監査基準の改善と現状の公認会計士・監査審査会などによる検査機能だけでは足りず、監査法人のガバナンスにもメスを入れる必要がある、それが世界的な潮流となっている、ということらしい。

 

なるほど、監査法人のガバナンスは重要だ。特に、その統制環境に欠陥があるとしたら最悪だ。例えば・・・

 

・監査チームが関与先に問題を発見し経営者と対立しそうなときに、監査法人本部が現場を後押しせず経営者サイドに立ってしまう。

 

・そこまで露骨ではないが、監査法人本部が現場にあれやれこれやれと介入し、結果的に現場の力を殺いでしまう。(本部が「現場の能力に問題がある」というなら、社員登用制度を始め、人材育成や人事評価の仕組みを見直す必要がありそうだ。しかし、その場合でも、その現場の力を殺いでしまった本部の人を、人事評価見直しの対象に含めなければならないだろう。)

 

まあ、こんな例は、あまりありそうな気がしない。しかし、僕がすべてを知っているわけでもないし、あったら困る。従来の検査がこのような点をカバーできていないなら、カバーした方が良いと思う(僕の印象では、カバーしてなくもないが、詳細に踏込んでなかったかもしれない)。

 

しかし、1つ目の記事は、このような単なる制度論ではなく、“監査人と非監査会社のなれ合い”という重罪が、いまだに償われていないという監査人にとって非常に厳しく重い疑いに基づいて書かれている。

 

根拠として、2つの例が挙げられている。一つ目は、カネボウ事件をきっかけに導入された不正通報制度(金商法193条の3)による通報がほとんどない点だ。しかし、記者に誤解があるようだ。不正を見つけたら通報するという単純な制度が想定されているようだが、そうではない。もし、そのような単純な制度なら、確かに、通報がもっとたくさんあってよい。もし、そうなら、なれ合いの根拠になるだろう。でも、それは違う。この書き方では、記事の読者にも誤解を与える。

 

本当は、監査の過程で企業の重要な不正(又はその兆候)を発見して、是正措置を申し入れても効果がない場合、監査法人から金融庁へ通報を義務付けた制度だ。重要でない場合や是正された場合は通報されない。即ち、監査法人と非監査会社で深刻な意見の対立がない限り、この通報は行われない。

 

もし、重要なものが是正されずに財務諸表へ含まれてしまえば、不適正意見や限定意見の監査報告書が出る。「通報の実績がほとんどないから、なれ合ってる」というのは、「不適正意見や限定意見が出ないから、なれ合ってる」というのに等しい。そうだろうか?

 

かつて(カネボウ事件のあと)、継続企業の前提に重大な疑義があるとして“意見不表明”の監査意見が数多く(といっても年に2桁程度)出た時、厳しすぎると監査基準が変更された。“意見不表明”は、即、上場廃止につながるので、不適正意見や限定意見より、企業はより厳しい状況に追い込まれる(不適正意見や限定意見の場合、東証はケースバイケースで判断するが、上場廃止にならないことも多い)。それでも監査人は意見不表明を頻発していた。さて、不適正意見や限定意見と同レベルの不正通知がほとんどないということが、なれ合いの根拠になるだろうか?

 

もう一つは、監査法人と提携している税理士法人や傘下のコンサルティング会社を使って、規制逃れをしているのではないか、即ち、なれ合いがまだ続いているのではないか、という。実は、僕もそういう環境で監査をしていたし、関与先からその手の契約を受注するのは苦手ではなかった。

 

モノには限度というものがあり、本末転倒してしまう状況に至れば問題だ。しかし、薬を適量飲むのと同じで、監査契約以外の契約には、適量であれば、監査業務へのプラスの貢献がある。コストを掛けずに良質の情報を早いタイミングで入手することができる。例えば、そういう契約があるだけで、(その契約とは関係なく)監査人として、財務系以外の取締役やキー・パーソンと会いやすくなるし、会った時に入手できる情報も幅広くなる。早い段階の会社の動きが分かるから、財務上の問題の発生を想定しやすくなり、いわゆる、リスク・アプローチを有効に働かせられるし、早い段階で会社へ問題点を伝えられる。それに、監査業務で何かトラブルがあっても、スムーズに解決しやすくなる。

 

監査法人が絡んで提供するサービスというのは規制を受けており、税務も含め、ある意味関与先を突き放したところがある。重要な判断はしないし、作業もしない。至れり、尽くせりではない。基本的にサポートだ。しかし、関与先には判断力の研鑽(或いは、自分で判断したという満足感)やスキルの移転というメリットがある。だから、意外に喜んでもらえることも多い。規制が意外な形でサービスの特長を生んでいる。これがまた監査をやりやすくする。

 

監査以外の契約があることがプラスか、マイナスか、というのは、状況次第であり、一律に決めつけられることではない。この記事を読むにあたっては、その点の注意が必要だ。“ゼロか百か”ではない。情報の質と入手スピードを向上させる努力をすべて“関与先への接近”として否定してしまえば、コスト・パフォーマンスが良くて、質も高い監査の実現は、恐らく遠退いてしまう。とにかく、監査には情報が必要だ。その必要な情報は財務情報だけではない。

 

 

ちょっと細かい話に立ち入ってしまったが、こういう個々の監査人の状況判断に依存するような部分でなるべく問題を起こさないようにするには、冒頭の監査法人のガバナンスが重要だ。現状の監査法人のガバナンスが良いか、悪いかは僕には分からない。しかし、これらの記事によれば、日本の監査法人ガバナンスの規制は国際的には遅れているそうなので、追いつくことでより良くできるというのであれば、良いことだと思う。

 

但し、監査基準(国際監査基準も含めて)については、“規制緩和”が必要だと思う。内部統制監査が始まってから顕著だが、調書作成に追われる監査法人の若手は頭を使わないチェック・マシーンと化しているなどと言われていた。トヨタでは“なぜ”を5回繰り返すそうだが、監査も同じだから、“マシーン”になってはいけない。“マシーン”で過ごした年月は、監査人としての成長を遅らせるだけでなく、阻害するだろう。しかし、いずれはそういう環境で育った人々が監査責任者へ登用されていく。このままでは、監査は、増々、規制当局の目標から離れていく。監査人も望んでいないはずだ。

 

 

“絶対に不正を見逃さない監査”はありえない。だが、不正を見逃せば、その責任が情報開示という形で監査人や監査法人について回り、それが監査人と非監査会社の緊張感となって不正防止に働く。そんな制度を以前このブログで提案した(2012/10/20 【期待ギャ】「不正に対応した監査の基準の考え方(案)」(企業会計審議会監査部会)の「不正の端緒」)。ガバナンス改革もよいが、このアイディアは、今も良いと思う。

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