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2015年2月 7日 (土曜日)

437.ソフトバンクのスプリント減損の不計上~疑問

2015/2/13 IAS36号の適用箇所を間違えたので訂正した。訂正箇所は赤の太字で示した。

 

2015/2/7

関心のある方は少ないかもしれない。でも、僕は中国発の株式相場大暴落の兆候を何を見て判断すればよいか、ずっと考えていた。しかし、なかなか頭の整理がつかない。そんな時に、次のニュースが目に入った。

 

ソフトバンク、米子会社の減損損失「反映せず」 4~12月決算 (日経電子版 2/6有料記事)

 

むむ、面白そうだ。しかも、スプリント(ニューヨーク証券取引所の上場会社)が計上した減損損失は、25百億円にも上る。非常に多額だ。中国問題が行き詰っているので、ちょっとこちらへ寄り道をしてみよう。

 

 

上の記事によると、米国子会社スプリントが計上した減損損失25百億円を、親会社のソフトバンクが連結決算に計上しないという。その理由は、スプリント全体を時価評価すると、ソフトバンクが保有するスプリント(株式)の簿価を上回るためだという。

 

あれれっ? スプリントは同業上位のAT&Tやベライゾン・コミュニケーションズ、下位のTモバイルに劣勢で、もともと冴えない業績がさらに悪化してたのではなかったか? それに、スプリントとTモバイルを統合し、上位2社と対等に競争するという孫正義氏の戦略も、米国独禁法規制当局の壁を越えられず頓挫した形になっている。当然株価も下落している。

 

要するにソフトバンクがスプリント買収時に描いていたであろう計画は、今のところ上手くいっていない。ソフトバンクがスプリントを買収したのは 2013年7月なので、もう1年半が過ぎた。この状況でもまだ、時価が取得価額を上回り続けているのだろうか。

 

そして、これ。さらに疑問は深まる。

 

ソフトバンクはスプリントの減損処理せず、会計基準の違いで (ロイター 2/6

 

こちらは、ソフトバンクが減損損失を計上しない理由を、子会社スプリントは米国会計基準だが、ソフトバンクはIFRSだから、としている。具体的には、米国会計基準では個別資産ごとに減損するが、IFRSでは資産全体で実施するためとし、ソフトバンクはスプリントの価値が簿価を上回ったと判断したという。しかも、ソフトバンクはスプリントの時価を見積る際に、支配権を考慮し3割ほど上乗せしたという。

 

僕は米国会計基準に疎い。しかし、このように書かれても「ふ~ん」と思うが、「うん、なるほど!」とは思えない。減損テストの対象となる資金生成単位、或いは、個別資産は、両会計基準でそれほどの差はないように思う。本当に会計基準の差なのだろうか。そして、IFRSの減損テストでは“支配権”の価値を考慮するのだろうか。

 

もっと詳しい説明が必要だ。そこで、ソフトバンクのHPでニュースリリースを探してみると、あった。

 

スプリント(米国会計基準)の減損損失の計上、並びに当社連結決算(国際会計基準)でのスプリントに係る減損損失の不認識とその理由に関するお知らせ

 

ここには次のようなことが記載されている。

 

スプリントは、米国会計基準に従って減損した(商標権等の一定の資産を個別に、有形固定資産を資金生成単位ごとに減損テストした)。一方、ソフトバンクはIFRSに従って減損テスト(資金生成単位に属する資産全体=スプリント全体で実施)した結果、減損は不要だった(スプリントの見積り公正価値が簿価を上回ったため)。なお、このページにリンクが掲示されている参考資料では、株価(=公正価値)に“コントロールプレミアム”(=支配権)を考慮したことが示されている。

 

なるほど。以上について、ちょっと僕なりに整理してみよう。

 

・ソフトバンクは連結の見地から減損を見直した。しかし・・・

 

日本基準では、連結する際に資金生成単位を連結ベースに直して再度減損テストを行うことがある(減損会計意見書 四 2.(6)①なお書き参照)。これと同じことをソフトバンクが行ったのではないか。

 

IFRSは「連結財務諸表を作成する際に資金生成単位を連結の見地から見直せ」とは規定していないが、資金生成単位が複数の会社にまたがる場合は、当然、このような見直しが行われる(例えば、IAS36の設例7C)。ちなみに、米国基準でも同様だと思う(例えば、Topic 350-30-35-26-c )。ということで、会計基準の違いというより、ソフトバンクは連結手続の一環として当然の処理をしたということではないだろうか。

 

ただ、スプリントがこのケースに該当するかどうか、即ち、資金生成単位は、スプリント以外の会社にもまたがっているのだろうか、という疑問が残る。スプリント自身も連結決算をして減損損失を計上したはずであり、それがそのままソフトバンクの資金生成単位であれば、ソフトバンクにおける連結上の見直しは不要だ。即ち、スプリントが計上した減損損失はそのままソフトバンクの減損損失になるはずだ。

 

ちなみに、ソフトバンクの 2014/3 期の有価証券報告書(P136)には、次のように記載されている。

 

当該資金生成単位グループは、Sprint Corporationおよびその傘下の会社から構成されています。

 

これだと、スプリントの連結財務諸表がそのままソフトバンクの資金生成単位になると読めないこともない。もしそうなると、ソフトバンクの連結手続で資金生成単位が見直されるということはなくなるはずだ。即ち、ソフトバンクでも減損損失が計上されるはずだ。

 

・ソフトバンクが行った減損テストは正しい?

 

IFRSの減損テストは、簿価と、以下のどちらか高い金額を比較する(IAS36.6)。即ち、どちらか高い金額が、回収可能価額となるわけだ。そして、簿価より回収可能価額が上回っていれば、減損損失の計上は不要ということになる。

 

a. 処分コスト控除後の公正価値(測定可能な場合)

b. 使用価値(算定可能な場合)

c. ゼロ(←間違い)

 

恐らく、a が最も高かったのだろう。そして、ソフトバンクは a を計算するにあたって、スプリントの株価から時価総額を計算し、さらに、それに支配権を加算したようだ。

 

しかし、活発な市場における相場価格がある場合は、相場価格を調整することなしに公正価値を測定しなければならない(IFRS13.69)。即ち、スプリント株式の公正価値測定には、相場価格をそのまま使用する必要がある。支配権の調整は行えない。

 

ふ~む、これはどう考えたらよいのだろう。

 

以上を踏まえたうえで、実際に公表されている数字を拾って検証してみよう。そうすれば、もっと具体的にいろいろイメージが湧いてくるかもしれない。しかし、これには手間がかかりそうだ。

 

というわけで、申し訳ないが、続きは次回に繰越させていただきたい。多分、お待たせはしないと思う。

 

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