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2015年3月17日 (火曜日)

451.【リース'15/2】'13EDからの変化~使用の支配(control the use)

2015/3/17

日本代表監督はヴァヒド・ハリルホジッチ氏に決まった。僕は「本田と香川のスタメン落ちもありえる」という記事1を読んで、「ハリルホジッチ氏が入替権を持っている。したがって、ここにリースの要素はない」と思った。恐らく、このニュースにこんな感想を持ったのは日本で僕一人だろう。

 

このシリーズの前回(4493/10)は、実質的な入替権が契約の提供者側にあれば、その契約はリースではないとされていた。サッカー日本代表とそれを応援するサポーターの間の(暗黙の)契約は、サッカー日本代表(日本サッカー協会、ハリルホジッチ氏)が契約の提供者であり、サポーターがこの契約の顧客だ。入替権を提供者サイドであるハリルホジッチ氏が完全に行使する~多くのサポーターが期待しているであろうスター選手の活躍を考慮せずに~ということは、同氏の自信の表れだ。同氏は、「サポーターは待っていればよい。そうすれば私が勝利で満足させる」と考えているに違いない。この事業の目的、即ち、外国の代表チームに勝つことの主体は完全に提供者側にあり、顧客に提供されるのはサービスであってリースではない。

 

どうすればこの(暗黙の)契約にリースの要素が入り込めるだろうか。それは、提供者側が入替権を持たないということなので、少なくとも、日本代表のメンバー選出にサポーターが関与できる仕組みが必要だ。例えば、プロ野球のオールスター・ゲームのように、サポーターの投票で代表選手が決まるような仕組みだ。

 

では、プロ野球のオールスター・ゲームはリースだろうか。いや違う、まだ足りない。今回は、その足りないところ、“使用の支配”について、2013年公開草案(='13ED)からの変更を記載して行く。但し、IASB(のスタッフ)は、これについても「分かりやすいように表現は変わったが、内容に実質的な変更はない」としている。

 

 

では、まず、'13ED の記述を振返ってみよう。恐らく、12項がそうだと思う(残念ながら、この小冊子「Definition of a Lease (February 2015)」には、変更元がどこか示されていない)。

 

契約は、当該契約の期間全体を通じて、顧客が次の両方を行う能力を有する場合には、特定された資産の使用を支配する権利を移転する。

 

(a) 特定された資産の使用を指図する能力(第13 項から第17 項に記述)

 

(b) 特定された資産の使用により便益を得る能力(第18 項から第19 項に記述)

 

これがどのように変わるかというと、次のようになる(日本語訳は拙者の拙訳。原文は2を参照)。

 

リースは、顧客が特定の資産の使用を一定期間支配するとき存在する。特定資産の使用を支配するとは、①その資産を独占的に使用し、かつ、②使用を指図することをいう。

 

 契約期間にわたりその資産の使用から得られる経済的利益のほとんどすべてを獲得できる権利を持つなら、顧客は独占的使用権を持つことになる。

 

 契約期間にわたりその資産の使用方法や使用目的を変更できるなら、顧客は資産の使用を指図することになる(例えば、賃借された小売用のスペースの使用目的を決めたり、賃借した船舶の運航経路や運航時期を決めることができる)。

顧客はまた、その資産の利用方法や配置を決められるなら、資産の使用を指図することになる。

 

なるほど、“便益を得る能力”に“独占的使用”を加え、“使用の指図”に具体的な指図の例を加えたようだ。

 

これはいってみれば、サポーターがベンチ入りメンバーや先発メンバーを決め、メンバー交代とその時期も決め、さらにはフォーメーションや個々の選手のポジションまでをも決めるようなものだ。恐らく、試合中にリアル・タイムでサポーターの投票を集計し、一定レベルに達したら、ベンチに交代が指示されるようなシステムが必要だ。

 

そして、実質的に監督は不要になる(練習のためのコーチは必要だろうが)。或いは、監督がサポーターの手足になる。使用を支配するとはこういうことなのだ。プロ野球のオール・スター・ゲームでも、ここまではやらない。確かに、ここまで支配されているなら、顧客のB/Sに資産計上することも納得できる。

 

 

但し、“勝利”という目的を考えると、サポーターがここまで支配して良いか疑問だ。一方、サッカー協会としては、サポーター一人ひとりに「日本代表は俺のチームだ!(=俺の資産だ)」というぐらい思い入れを持ってもらいたいだろう。そうするためには、日本代表を支配する監督をサポーターに選ばせることが一つの方法かもしれない。しかし、それも現実的ではない。きっと、チェルシー監督のモウリーニョ氏やバイエルン監督のグアルディオラ氏などに人気が集まってしまう。きっと、年棒が高過ぎる。

 

やはり、サッカー協会としては、ハリルホジッチ氏を「俺たちの監督だ!」と親しみを持ってもらえるよう、サポーターへ売込む必要がある。だがそこに一つ問題がある。まだ、ハリルホジッチ氏が率いる日本代表の呼称が決まっていない。“アギーレ・ジャパン”のような呼びやすい名称が必要だ。“ハリルホジッチ・ジャパン”では長過ぎる。

 

既にネットでは、略して“ハリル・ジャパン”とか、英語風に“ハリー・ジャパン”とか、ファースト・ネームから“ヴァヒド・ジャパン”なども候補に上がっている。その他、“ハリルホジッチ”からの連想で“鼻ほじるジャパン”とか、「どうせすぐに“能無しジャパン”と呼ばれる」などといったシニカルな意見まで、実に賑やかだ。早く決めないとあらぬ方向へ行きかねない。

 

僕のお奨めは“バン・ジャパン”。“バン”は、ハリルホジッチ氏の出身地であるボスニアの中世の総督3のこと。規律重視で攻撃的サッカーの監督としては似合いだと思う。

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1 本田と香川「スタメン落ち」あり得る 「鬼監督」ハリルホジッチは容赦ないJCASTニュース 3/15

 

2 P9

A lease exists when the customer controls the use of an identified asset for a period of time. To control the use of an asset, a customer both has exclusive use of the asset; and  directs the use of the asset.

 

A customer has exclusive use of an asset if it has the right to obtain substantially all of the economic benefits that result from using the asset during the contractual term.

 

A customer directs the use of an asset if it has the ability to change how and for what purpose the asset is used during the contractual term (for example, the ability to decide what the space in a leased retail unit is used for, or to decide where and when a leased ship sails).

A customer also directs the use of an asset if it determines how the asset is operated or designed.

 

3 Wikipedia のボスニア参照。

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