456.【リース'15/2】'13EDからの変化~設例)外注取引と通信契約(ファブレス企業はファブレス)
2015/3/31
新生サッカー日本代表は、チュニジア相手に2-0の勝利。幸先の良いスタートとなった。攻撃には競争心を煽り、守備には球際の厳しさを求め、試合後の選手には暖かい気配りを見せる新監督。今日のウズベキスタン戦も楽しみだ。
IASBスタッフが先月公表したリース新基準の小冊子のシリーズは、いよいよ今日が最後。6つの設例のうち、5と6が今回の範囲だ。今までの設例1~4は、すべてリースが契約の中に含まれていた。そうなると、残り2つぐらいは、サービス契約と判定すべき設例となることが予想される。
このブログで '13ED(=2013/5公表の公開草案)を特集したとき、グレーな疑問として残っていたのが「外注取引にリースの要素があるかどうか」だった⋆1。例えば、アップル社のようなファブレス企業が、フォックスコン社のような EMS 企業へ iPhone などを製造委託する際、フォックスコン社のその工場はアップル社のための工場となるが、これをアップル社はこれをリースと考えるべきか、という問題だ。
どうやら、今回の設例5によれば、大方の外注取引(=典型的な、通常の外注取引)はサービス契約ということに落ち着きそうだ。IASBは「ファブレス企業はその実態もファブレス」と判断しているようだ。そして残りの設例6は通信会社とのネットワーク契約であり、'13ED の光ファイバー使用契約の設例と同様、これもサービス契約とされている。
では、詳しく見ていこう。
(設例5:Outsourcing agreement)
まず、契約の内容を見てみよう。
おもちゃ会社は、ある製造会社と、特定の種類と数量の人形を3年間に渡って購入することを契約した。その結果、製造会社は、唯一の工場の通常の生産能力をすべてこのおもちゃ会社のために使用することになる。
これに対してIASB(スタッフ?)は次のような見方をしている。
製造会社が工場の使用方法をコントロールしている。即ち、顧客(=おもちゃ会社)は使用を支配していない。
例えば、この製造会社は、生産能力を超える受注を取って、超過稼働時間分をその生産へ当てると決めることができる。
仮に、製造会社に10社の顧客と10倍の受注があり、このおもちゃ会社がその1つに過ぎない場合と比べても、このおもちゃ会社が工場の使用方法を決定する権利が大きくなるわけではない。
したがって、この契約はサービスであって、リース基準の対象範囲外。
さて、この設例は役に立つか。ん~。「唯一の工場の通常生産能力のすべてを3年間使用する」という条件設定には興味をそそられたが、「生産能力の10分の1でしかない場合と(顧客の)権利は変わらない」というのはありだろうか? もちろん、設例なのでどんな条件設定もありではあるが、現実にありえるだろうか…
いや、そういう読み方をするべきではない。恐らく、IASB(スタッフ)の趣旨としては、外注業者にとって経営の基盤を揺るがすほどの重大契約であっても、期限付きで、かつ、その他に特別な条件がない一般的な外注取引あれば、それだけで顧客が相手(の工場)を支配することにはならない、と言いたかったに違いない。
逆にいえば、上記を条件を外れるような契約、例えば次のような契約であれば、別の問題が生じる可能性がある、注意した方が良い、ということを示唆しているのかもしれない。
期限なくずっと生産能力を支配するような契約であれば、恐らく、関連当事者とか、連結などの問題に絡むかもしれない。
おもちゃ会社が、通常より大きな権利を持つケース、例えば、おもちゃ会社が製造会社の工場使用方法を制限するような契約(期間中、他の顧客のために工場を使用できないとか)であれば、製造会社に工場使用の支配がないため、リースの要素を識別する可能性があるかもしれない。
この契約を製造会社が履行するための設備投資におもちゃ会社側がリスク負担をするような契約、例えば、期間後に設備を買上げるとか、何らかの補償をするなら、最初からおもちゃ会社の投資と考えるとか、その補償額の引当をすべきではないか、など。
(設例6:Telecommunications contract)
契約内容は次の通り。
貿易会社が、2年間のネットワーク契約を通信会社と締結した。その契約は一定の通信品質レベルを保証するもので、そのためのメンテナンス、機器の調整や入替は、必要に応じて通信会社が行う。
まあ、'13ED の設例のような「物理的な光ファイバー回線を賃借するようなイメージ⋆2」を想起させるものであれば、「う~む、どっちかな?」と興味が湧くが、この設例はサービスに決まっている。議論の余地がないではないか。そう思ってしまうが、もう少し深く考えると、「なるほど」と思えてくる。
それは、ネットワークの入り口が、この契約の顧客である貿易会社の社内に入り込んでいることだ。少なくとも、入り込んだ部分に関しては顧客専用の設備になる。即ち、特定の設備(やソフトウェア)が顧客によって独占使用される。そこがこの契約にリースの要素が含まれる可能性がある部分だ。
これについて、IASB(スタッフ)は、次のような趣旨のことを書いている。
貿易会社は、構内に設備(やソフトウェア)があっても、どのようにネットワーク・サービスを使うかを決められない(=契約の範囲内で使うしかない)。その設備は通信会社によって再設定されたり入替えられたりして、通信会社がいかに使うか、何の目的で使うかを決定する(=通信会社が契約に定められた回線品質を維持するために使用方法を決定する)。
要するに、構内にある設備等についても、使用の支配は通信会社側にあるとしている。したがって、この契約にリースの要素はない。
貿易会社がネットワーク・サービスを受けるには、物理的に自社構内に占有している設備等はサービスに不可欠な一部であり、かつ、通信会社に支配されているため、それだけを取出してリースとして識別する必要はない。契約全体からその部分が果たす役割を俯瞰する目も必要ということのようだ。
もちろん、そういった設備、ルーター等を顧客が購入することが前提のサービスであれば、購入資産は、当然、顧客の資産になる。では、ルーター等をレンタルすることが前提のサービスだったらどうだろうか。
資産を購入する場合、資産の使用価値と処分価値(転用を含む)の両方を購入者が保有する。このような資産の持ち方は、リース会計の範囲外で、通常の資産の取得の会計処理を行えばよい。一方、契約期間後に返却することを前提としているレンタル契約の場合、契約の顧客は使用価値のみを消費し、処分価値は契約の提供者のものとなる。このような資産の持ち方は、リース会計がカバーすべき範囲だ。そして、新リース会計では、使用の支配が契約の提供者側にある場合は、その契約はリースではない。
したがって、この契約全体を俯瞰してみて、このレンタル契約は通信サービス契約の一部であり、機器等の設定や調整も通信会社が行う、即ち、使用の支配を通信社が行うとすれば、このレンタル契約はリースではない、と結論されるだろう。形式より実態重視だとすれば、きっと、こうなると思う。
最後に、期待されてない方が多いと思うが、一応、先週のチュニジア戦を見て、僕が思ったことを記しておきたい。
・球際に厳しく前から激しい守備をすれば、若手メンバーでも危ない場面を作られない。
・相手の足が止まる頃に主力メンバーを投入すると、面白いように攻撃できる。
・でも、この戦法は、3人しか交代が認められないW杯では難しい。
・よって、90分(場合によっては120分)、最後まで相手より勝る体力を養うしかない。
実はこれ、清水エスパルスと全く同じ方向性だ。この冬場、エスパルスの大榎監督は、自ら“エスパルス陸上部”と称するほど基礎体力強化を行った。エスパルスはまだメンタル面の課題を克服できないためか、結果を出せていないが、実は、日本代表は以前からこれで結果を出している。例えば、2013/11 欧州遠征のオランダ戦(2-2/引分け)やベルギー戦(3-2/逆転勝ち)、もっと前の 2012/10 のフランス戦(1-0)も素晴らしかった(その直後のブラジル戦は0-4と全く通じず)。もう実証済みの、非常に有効な戦法なのだ(但し、ブラジル以外)。
しかし、ブラジルW杯では、厳しい守備もなければ90分戦える体力もなかったようだ。問題は、体力作りは代表チームではできないこと。各選手が、所属するクラブ・チームの練習及び自主練習でやるしかない。
そこでハリルホジッチ監督は、各選手ごとに個別の練習メニューを作り、所属チームに戻っても続けるよう指示したらしい⋆3。これは凄い。代表監督が所属クラブの練習に手を突っ込む越権行為かもしれないが、代表チームの指揮者としては、実に理に適っている。これは、従来の代表監督の枠を超えること、一種のイノベーションではないかと思う。
体力作りは、成果を得るまでに時間がかかる。だから、今日のウズベキスタン戦の結果の如何に関わらず、僕はハリルホジッチ監督に期待したい。そしてその期待には、すでに同じ方向を向いているエスパルスの選手たちにも目が向くだろうという希望が含まれている。
そして、長友選手のけがの回復とインテルでの活躍、さらに代表復帰を願っている。
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⋆1 「284.【リースED】リース取引の識別のまとめ~庸車取引、外注加工取引」2013/9/4
⋆2 「274.【リースED】対象資産の物理的な区別」2013/8/1
⋆3 「これもハリル式!個別宿題メニューで国内組を改造」2015/3/28 YAHOO!ニュース
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