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2015年4月 7日 (火曜日)

458.【収益認識'14-01】IFRS15 をななめ読み!

2015/4/7

いよいよ、待ちに待った、IFRS15「顧客との契約から生じる収益」のシリーズに入ることができる。先月、日本語訳が公表されたのだ。まるで4年に一度のW杯やオリンピックの開幕を迎えるような昂揚感だ(大袈裟だが、半分ぐらいは本当の気持ち)。

 

この基準はP/Lの一番最初の行に関する会計基準であり、P/Lの他の部分の会計基準も、これと整合するよう定められる。また複式簿記なので、B/Sの会計基準にも影響する。まさに、“会計基準の中の会計基準”といえるかもしれない。(但し、IFRSは資産の定義が最も基礎にあるので、日本基準に慣れている我々が思うほどではないかもしれない。ちょうど、男子サッカーではW杯が最高峰の大会だが、女子サッカーではオリンピックの方が格上のような感じだ。まあ、そうはいっても、大事は大事、重要な会計基準だ。)

 

ということで、これについてもシリーズものになるが、まずは、全体像をつかむため、“ななめ読み”をしてみたい。このブログではすでに、“ソフトウェア開発企業の進行基準”に焦点を当てて、'11ED(=2011/6公表の公開草案)について検討した1。それは、僕が、進行基準の経営管理的な側面を高く評価していたからだ(=業務の進行状況を組織的に把握・管理することが、企業のサービス品質の向上にとても重要と考えていた)。しかし、その検討時、「重要なのは進行基準だけではないようだ」と感じた。そこで、どこにポイントを置くべきか、最初に意識したい。

 

“ななめ読み”といっても、設例や結論の根拠を含めて数百ページのこの基準を“速読”する能力は僕にはない。その代り、目次をじっくり眺めることから始めるのが僕のやり方だ(これは高校時代から)。目次に顕われる体系をイメージしたり、特定のテクニカル・タームの重要性、一番大事になりそうな考え方の記載場所などを感じ取る。(この技は、ブルース・リーの有名なセリフ「考えるな、感じろ(Don't think. Feel!)」2 に近い、と僕は勝手に解釈している。)

 

今回は、その結果のみをここに簡潔に記載したい。理由やプロセスも書きたいと思ったが、何しろ、これは“感じ取る”という論理的思考を超越した技なので、残念ながら説明は困難で、とても書けそうもない。

 

などと書ければかっこいいなあ、と思ったが、実際には理由やプロセスがあるので合わせて記載する。(やはり、“Feel!”というブルース・リーの域には達していないようだ。) そのため、項目を羅列した、ちょっとまとまりのない記載になるが、お許し願いたい。

 

 

(個別に読んだ規定)

 

本来なら目次から読みたいが、そもそも内容に対する理解が全然不足している場合は、目次をいくら睨んでも何も思い浮かばないことが多い。なにも Feel できない。そういう場合、目次の前に(或いは、目次の中から)全体の概要を記載してありそうなところを探して、そこに目を通してみると良いことが多い。IFRSの場合、冒頭に段落番号に“IN”が付いた文章があるが、まさにこれが概要を記したものだ。よって、そこから始めることにする。

 

IN”から始まる段落の理解(IN1IN9

 

どの基準でも同じだが、最初の“IN”から始まる段落は読んだ方が良い。基準の概要や特徴が記載されている。

 

A. IFRS15では、次の点について注目した。

 

 次のステップを適用することが求められている。(IN7

 

1.顧客との契約の識別  2.履行義務の識別  3.取引価格の算定  4.取引価格の履行義務への配分  5.履行義務の充足

 

 “収益に関する規定”と思ったら、次のように書いてあった。(IN8

 

収益だけでなく、キャッシュフローについての性質、金額、時期及び不確実性に関する包括的な情報を提供する。3

 

 この基準はFASB(=米国財務会計基準審議会)との共同プロジェクトで、両基準はほぼ同一のものとなった。(IN9

 

“目的”(14)の理解

 

B. “目的”は、どんなときにも絶対に大事なので、僕は必ず読む。すると、上記の A.②のキャッシュフローが、ここにも記載されていた4。これは重要な発見だ。今の段階では、IFRS15においてキャッシュフローがどの程度重要な役割を果たすかは不明だが、それは今後の課題とする(単に、貸倒引当金もこの基準で扱うというだけかもしれないし、もっと大きな意味があるかもしれない)。

 

C. 2段落からは、測定(=金額の決定)に分かりにくい表現5が使用されていることが確認できた。このことから、測定は手間がかかりそうなことが予想できる(理解するのも、そして実務でも)。

 

D. 4段落では、“類似する契約のポートフォリオ”を一つの契約であるかのように扱える“実務上の便法”が容認されることが記載されている。“実務上の便法”が、“目的”ところに記載されるなんて、余程重要なことに違いない。但し、この便法を利用できる条件が見慣れない表現6になっているので、もしかしたら、その条件の内容こそが重要なのかもしれない。今の段階ではどちらかは分からない。

 

“範囲”(58)への違和感

 

“範囲”には、普通は他の基準との境界線が記載されている。ここに「なぜこの基準が出てくる?」などといった違和感を感じたら、そこには何かある。IFRS15で僕が感じたのは、以下の箇所。

 

E. 「“顧客又は潜在的顧客への販売を容易にするための、同業他社との非貨幣性の交換”が適用外(石油会社のケースが代表例)」とされている(5(d))。売上を膨らます目的で同業者間で売上・仕入を立てあうケースを指すのだろうか。しかし、それなら“非貨幣性の交換”に限定して良いのか、といった疑問が浮かぶ。結論の根拠にも関連記載がある。これも検討課題として認識する。

 

 

(目次から感じたこと)

 

以上を踏まえて、いよいよ目次に向かう。

 

目次は、A①のステップとよく似ていることが分かる(1.顧客との契約の識別  2.履行義務の識別  3.取引価格の算定  4.取引価格の履行義務への配分  5.履行義務の充足)。これは大きな発見だ。これで、A①のステップがこの基準の骨組みになっていることが確認できた。

 

このステップを実務に当てはめてみると、受注活動においてステップ1が識別され、ステップ24が提案書になり、受注した段階で概ね確定し、受注マスタ登録される。ステップ5が売上計上のタイミング(=受注マスタから売上マスタを登録)となる。概ね、小売業以外の一般的な販売取引に沿ったステップだ。

 

ただ、目次ではステップ5の“履行義務の充足”が、ステップ2の次に来ている。これは、会計理論上、ステップ125が収益の“認識”に関するものであるのに対し、ステップ34が“測定”に関するものであるからだ。この順番の入れ替わりには、特に違和感は感じない。

 

F. ステップ1の“顧客との契約の識別”には、契約の“識別”、“結合”、“変更”という3つの項目がある。このうち、“識別”にこの項目の原則が書かれており、他の“結合”、“変更”が恐らく例外的な取扱いだろうと推察できる。“変更”はイメージできるが、“結合”とは何だろうか。そして“解消・解約”はないのだろうか。これらを注目してみたい。

 

G. ステップ2の“履行義務の識別”の“履行義務”とは、この基準の開発過程で初めて出てきた用語なので注目だ。

 

H. ステップ34の“測定”は、ページ数が多く割かれている。恐らく、内容が複雑なのだろう。これも注意しておこう。理解に苦労するかもしれない。もちろん、実務にも。

 

I. ステップとは関係のない“契約コスト”という項目がある。これは“契約獲得の増分コスト”と“契約履行コスト”の2つに分かれているが、どちらも意味するところは想像がつく。この基準は収益認識だけでなく、収益に直接対応する原価に関する基準でもあるということだ。費用を売上原価と販管費に区別する基準を示しているのだろう。これも注目だ。

 

J. あとは、表示と開示の項目が続く。これらについては、どのように上記Bの目的4が果たされるような表示・開示になっているか、について注目しながら見ていくことにしよう。キャッシュフローがどのように扱われているかが特に注目だ。

 

改めて、目次のページ数に注目する。どんな項目に多くのページを割いているかは重要な情報だ。多くを割いている項目は、重要であるか、複雑であるか、或いは、多くの場合その両方だ。上記で“測定”に関しては認識したが、他にもあるだろうか。

 

基準本体では特に見当たらないが、結論の根拠では次の項目のページ数が多そうだった。

 

・進行基準(BC124BC180

・収益の測定(BC181BC265

・履行義務への取引価格の配分(BC266BC293

 

K. 進行基準が異常に多い。やはり今回もこれは外せない。

 

さらに、設例ではどうだろうか。設例は異常に多い。63個もある。原則主義といえども、企業は色々なビジネスを行っているので、原則一本ではなかなか網羅しきれないのだろうか。なかでも目に付いたのは、次の項目だった。

 

L. “本人か代理人かの検討”

 

これは、設例が4つあるが、その数でいえば特に多いというわけではない。しかし、基準の目次に対応する項目が見当たらないし、日本の従来の会計基準では、おろそかにされていた“売上金額の全額表示か、純額表示か”に相当する部分なので、気になる分野だ。これにも注目だ。

 

M. “製品保証”、“追加的な財またはサービスに対する顧客のオプション”

 

これらは、日本では製品保証引当金とか、ポイント引当金などといった引当金で主に対応されていたものと思う。日本にはあまり明確な基準がなかったものだ。これも気になるので注目だ。

 

N. “返金不能の前払い報酬”、“ライセンス供与”

 

これらは、個人的に興味がある。実は、監査人だったころに少なからず苦しめられた経験があると思われる項目だ。果たしてどうなったのだろう。興味津々だ。

 

O. さて最後に、原則主義のIFRSなので、このIFRS15を代表しそうな原則を取上げよう。それはステップ5 の“履行義務の充足”を決定する原則だろう。日本でいえば“検収基準”といったものに当たる。これは深掘りする必要があると思う。

 

 

以上で、“ななめ読み”は終了だ。さて、みなさんは“Feel!”されただろうか。

 

今後、これらの注目点や検討課題を中心にIFRS15を読み進めていくことになる。AO の15個のポイントをリストアップしたが、ダブっているものもあるので実際にはもう少し少ないと思うが、追加されるものもあるかもしれない。最後までお付き合いいただけるとありがたい。

 

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1 (C04)収益認識」のページに、そのシリーズの一覧がある。2012/4/215/31まで続いた。

 

2 参考までに、このブルース・リーのセリフは、次のHPで詳細が分かるので紹介する。

 

考えるな、感じろ(考えるな、感じるんだ)」(タネタン)

 

3 正確には次のような表現になっている。

 

IFRS第15号は、顧客との契約から生じる収益及びキャッシュ・フローの性質、金額、時期及び不確実性に関する包括的な情報を企業が財務諸表利用者に提供することとなる一体性のある開示要求のセットも含んでいる。

 

4 この基準の目的(1)は、次のように記載されており、ここにもキャッシュフローが出てくる。

 

本基準の目的は、顧客との契約から生じる収益及びキャッシュ・フローの性質、金額、時期及び不確実性に関する有用な情報を財務諸表利用者に報告するために、企業が適用しなければならない原則を定めることである。

 

5 具体的には次の通り。背景色を付けた部分が、金額の決定に関する箇所で、分かりにくい表現になっている。

 

第1項の目的達成のため、本基準の中心となる原則は、企業が収益の認識を、約束した財又はサービスの顧客への移転を当該財又はサービスと交換に企業が権利を得ると見込んでいる対価を反映する金額で描写するように行わなければならないというものである。

 

日本語で分かりにくい文章は、恐らく、英語でも分かりにくい。英語でも分かりにくいということは、何か難しいことを表現しようとしているに違いない。だから、分かりにくい表現に注意する。

 

6 正確な表現は次の通り。

 

本基準を当該ポートフォリオの中の個々の契約(又は履行義務)に適用する場合と比較して重要性のある相違を生じないであろうと企業が合理的に見込んでいること

 

これは、条件の付け方として新しいパターンではないかと思われる。しかも、非常に応用範囲が広そうだ。これからよく見かけるようになるかもしれない。これの意味するところは、「企業に不正の意図がない」

ということだと思うが、“合理的に見込む”ということがどういうことを意味するのかは考える必要がありそうだ。企業に具体的な挙証責任があるのだろうか(=予め、相違に重要性がないことを企業が検証・立証する必要があるのか)、という点が気になる。

 

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