461.【番外編】AIIBのガバナンスとサブ・プライム危機(REUTERSの記事から)
2015/4/16
前回(460-4/14)は、日本がAIIB(=アジア・インフラ投資銀行)の創設メンバーへ参加申請しなかったことについて僕の勝手な意見を記載した。今回紹介するREUTERSのコラムは、米国の共和党が、そもそも国際金融機関自体不要と主張していると、書いている(IMFも世界銀行も)。「なるほど、こういう意見もあるのか(賛成かどうかは別として)」という気になってきて、面白い。それに、AIIB問題の背景も分かってくる。
コラム:乱立する国際金融機関、「サブプライム危機」再来も REUTERS 4/9
以下にざっと要約するが、できれば、上記のリンクを辿って REUTESの記事を直接読んでいただきたい。ニュアンスが変わってくるだけでなく、僕が適当に省略した所に大事なことが書いてあるかもしれない。
サブプライム危機は次のような構図で発生したとしている。
金融機関の過当競争 + 収入以上の暮らしを求める消費者 ⇒ 破綻
国際金融機関の乱立で、同じような構図が起こる。
国際金融機関の過当競争 + 独裁者が率いる貧しい国家 ⇒ 破綻
国際機関として、IMF(=国際通貨基金)、世界銀行に加え、中国主導のAIIB、シルクロード基金、新興5か国の新開発銀行が挙げられている(が、ADB(=アジア開発銀行)も当然含まれるだろう。確かに乱立状態になりそうだ)。過当競争は腐敗を生むとされている(サブプライムでは金融機関や格付け機関の融資基準や評価基準の杜撰な運用が批判されたし、独裁国家では政府が腐敗する)。
また、“収入以上の暮らしを求める消費者”と“独裁者が率いる貧しい国家”の共通点は“ガバナンスの悪さ”だ。即ち、次のような共通の構図がある。
金融機関の過当競争 + 債務者の悪いガバナンス ⇒ 腐敗 ⇒ 破綻
かねてから米国共和党はこのような主張で、米国はIMFや世界銀行から手を引くべきであるとして、IMF改革を遅らせてきた。IMF改革に必要な米議会の承認が棚上げされ続けている。しかし、その結果、国際的役割の拡大を求める中国が不満を溜め、皮肉にも、中国による国際金融機関構想のきっかけとなった。ということで、「(世界経済が新たな火種を抱えることになったが、)その責任は米国議会にある」と、このコラムの著者は主張している。
こういう議論を、中国も欧米諸国も当然知っているだろう。上記では、“ガバナンスの悪さ”を主に債務者の問題として記載したが、そういう債務者に金を貸す、或いは、過当競争を繰り広げる金融機関のガバナンスにも問題がある。
AIIBのガバナンスに米国(や日本)が冷ややかなのは、そして、AIIBとADBの関係が補完的か競争的かが注目されるのは、こういう背景があるのだろうと思う。中国が、未参加の米国や日本の参加を、いまだに歓迎する理由も、多少、ここにありそうな気がする。金融機関のガバナンスが難しいことは、中国自身も体験している*1。中国も心配なのではないだろうか。
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*1 例えば、下記には中国大手行、中国銀行に係る不正なマネーロンダリングの疑惑が記載されている。
「中国人民銀行、中国銀行の資金洗浄めぐる報道を確認中=新華社」REUTERS 2014/7/11
この他、シャドー・バンキング絡みで、投資家にリスクの説明なしに信託商品を販売していた件など、みなさんも多くのニュースに接していると思う。国有商業銀行の監督でも難しい。国際機関はもっと腐敗しやすい。
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