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2015年4月22日 (水曜日)

463.【収益認識'14-04】“顧客との契約”~収益認識モデル

2015/4/22

金融庁は4/15に“IFRS適用レポート”を公表した1。これは同日開催された企業会計審議会第2回会計部会において金融庁から報告されたもの。2014/6/24に閣議決定された“『日本再興戦略』改訂2014”において、

 

「IFRSの任意適用企業がIFRS移行時の課題をどのように乗り越えたのか、また、移行によるメリットにどのようなものがあったのか、等について、実態調査・ヒアリングを行い、IFRSへの移行を検討している企業の参考とするため、『IFRS適用レポート(仮称)』として公表するなどの対応を進める」

 

とされたものを受けている。

 

僕は“監査対応”の部分などを読んだが、原則主義の解釈の仕方、監査人との意見相違など問題、その乗越え方などについて個別基準レベルの記載があり、大変面白かった。もし、まだお読みでない方は、欄外の脚注にリンクを貼ったので、ご覧いただけると良いと思う。

 

 

さて、このシリーズの前回(4604/14)は“キャッシュ・フロー”に着目した。本来、収益金額とキャッシュ・フロー金額は別もので、この基準でもそれはその通りだが、しかし、僕はこの基準で使われている“キャッシュ・フロー”という言葉に“測定基準”のような意味があるのではないかと感じた。従来の収益金額より、より回収されるキャッシュ・フローを強くイメージし、回収までのすべてのリスクを測定に織り込むというようなIASBの意思を感じたことを記載した。

 

今回は、IFRS15のタイトルにも付いている“顧客との契約”にこだわってみたい。「そんな“言葉”にこだわってどうするの? 文学作品でもないのに」という声も聞こえてきそうだが、僕には、IASBがこだわっているように思えるのだ。

 

そもそも、P/Lの一行目の“売上高”は、単なる収入ではない。企業が事業目的を遂行することで稼ぐ収入を計上する。不要になった固定資産の売却収入、損害をカバーするための保険収入などは計上されない。それらは顧客からの収入ではないためだ。IFRS15のタイトルは、“顧客”が経営の最上位にあること、そして、それを反映するかのように、P/Lも顧客からの収入を最上位に記載することを改めて思い起こさせる。

 

というのは僕の感想で、IASBがそういってるわけではない。では、どういってるかについて、今回と次回の2回に分けて、IFRS15の結論の根拠を見ていきたい。今回は“収益認識モデル”、即ち、IFRS15の根底にある認識(=いつ記帳するか=伝票日付)や測定(=いくらで記帳するか=伝票金額)の考え方に、“顧客との契約”がどのように関わっているかがテーマだ。

 

IFRS15の基準本体には“収益認識モデル”という言葉は出てこないが、結論の根拠には、“代替的な収益認識モデル”という言葉を使って、IFRS15で基準化されたものとは別のタイミングや金額で収益認識する方法を検討したことが記載されている。その“代替的な収益認識モデル”がなぜ採用されなかったかを考えることが、この基準の理解に役立つように思う。

 

 

まず、このIFRS15に採用された収益認識モデルと、代替的な収益認識モデルのそれぞれを代表する、そして、特徴づけるテクニカル・タームを紹介したい。

           
 

 

 
 

   IFRS15       ⇔ 代替的な収益認識モデル

 
 

認識

 
 

支配の移転、履行義務の充足   ⇔ 活動モデル

 
 

測定

 
 

配分後の顧客対価(=取引価格) ⇔ 現在出口価格

 

 

 

次に“認識”のテクニカル・タームから、代替的な収益認識モデルが採用されなかった理由について、“顧客との契約”がいかに深く関わっているかについて記載したい。

 

“認識”の“支配の移転”と“履行義務の充足”は、概ね同じことを表現していると思う(詳しくは、いずれ検討する)。一方、これらと“活動モデル”は異なっており、その最も重要な相違”は、「顧客との契約を前提としているか否か」だと考えられる。具体的に見てみよう。

 

A.“支配の移転”や“履行義務の充足”は、特定の顧客との契約(或いは約束)が前提にある。

 

“支配の移転”や“履行義務の充足”は、顧客に対する契約(や約束)の内容として存在するもの。財・サービスの提供企業側だけの状況や都合ではない。

 

例えば、検収基準は、“検収”が顧客との契約(や約束)を顧客が確認する手続なので、こちら側に属する考え方になると思われる。(但し、IFRS15は“検収”だけに焦点を当てておらず、顧客との契約(や約束)が成立するところから履行義務を把握・管理する点(=5つのステップ2)が、単純な検収基準とは異なる。)

 

B.“活動モデル”は、企業活動の進行状況によって収益を認識する。顧客との契約を意識する必要がない。

 

例えば、税法の出荷基準は“出荷”という企業活動にのみ焦点を当てるので、こちらに入ると思われる。また、費用の発生状況で収益実現の進捗を測る従来の進行基準もこちらに属する考え方と思われる。

 

IFRS15が A を採用した理由をIASBは次のように記載している(BC17)。

 

両審議会は、顧客との契約から生じる資産又は負債の認識及び測定と、契約の存続期間にわたる当該資産又は負債の変動に焦点を当てることで、利益稼得過程アプローチに規律がもたらされると判断した。したがって、従前の収益認識の要求事項の場合よりも、企業が収益をより整合的に認識する結果となる。

 

規律がもたらされる」とは、概ね、“不正防止に有効”という意味だろう。Aのような顧客との契約や約束を前提としたアプローチの方が、企業の活動だけに着目するより不正が行われにくいと両審議会(IASBとFASB)は考えたようだ。この結果、IFRS15は、受注活動の段階から補足することが求められる5つのステップ2が設けられた。恐らく、内部統制報告書制度へ対応している既存の上場企業にとっては、特別なことではないと思われる。逆に、IFRS15がCOSOフレームワークに歩調を合わせたともいえる。

 

また、純粋理論的には、顧客に対する“契約資産”(=対価を受取る権利)及び“契約負債”(=財・サービスを移転する義務)を認識するとしている。収益は、これらの資産・負債のネット・ポジションの変動によって認識される(あくまで理論的なものであり、実際にこのような会計処理は行われないが)。この考え方は、概念フレームワークの収益や費用の定義が、資産や負債の増減に伴うものとされているので、それと整合させる意味があると思う。

 

ただ、それだけでなく、収益の側については、実務的に次の点には注意する必要がありそうだ。

 

・顧客との契約がなければ(=受注前は)契約資産は生じない。即ち、収益は認識されない(BC19BC22)。

 

・受注時点では「契約資産=契約負債」からスタートする。即ち、受注時点で収益は認識されない(BC19)。

 

・収益は、企業が約束した財又はサービスを顧客に移転し、それにより契約における履行義務を充足した時にのみ認識する(BC20)。

 

そのタイミングで、契約資産が増加(又は、契約負債が減少)し、資産・負債のネット・ポジションが変動すると考えるため。これは、契約の有無に関係なく、企業活動の進捗によって収益を認識する活動モデルを否定することへ繋がる(BC23(a)など)。

 

一方、費用については、特定の顧客があろうがなかろうが使えば発生するため、別途規定があり3、それに従うことになる。顧客から回収可能なものなど一定のものは資産計上できる。日本の感覚とあまり変わらないようだ。いや、むしろ、緩いかも。という表現は宜しくない。これを“合理的”というのだろう。事実認定をしっかりやれることが鍵になりそうだ。(恐らく、これについても、後日、立ち寄ることになると思う。)

 

以上は、IASBが“顧客との契約”へこだわりを見せた部分だが、これらの他、“活動モデル”でなく A を採用した理由として、次の点も挙げている。

 

・多くの財務諸表利用者にとって直観に反する(BC23(b)

 

約束した財又はサービスを顧客が交換に受け取っていない時点で、企業が対価を収益として認識することになる。しかし、財務諸表の利用者はそのように考えない。

 

・従前の収益認識の要求事項及び実務の重大な変更となる(BC23(d)

 

IFRSでは、従来から、財の販売による収益の認識を、企業がその財の所有権を顧客に移転した時に要求していた。また、進行基準についても、“支配の移転”や“履行義務の充足”を基礎とする考え方で適用可能(…適用できる範囲は狭まると思うが)。

 

 

最後に、測定のテクニカル・タームについて。

 

契約資産及び契約負債を“現在出口価格”で測定すると、受注時点で見込み利益(又はその一部)が計上されることになり、受注時点で収益認識をしないとする(認識の)方針に反することになる(BC19BC25(a)など)。したがって、“現在出口価格”アプローチは採用しなかったとしている。

 

この場合の契約資産や契約負債の“現在出口価格”とは、例えば、受注金額や見積りコストをイメージしてみると良いと思う。また、IASBは、契約負債の“現在出口価格”は、観察不能で見積りやその検証も困難なことが多いとしている(BC25(c))。

 

なお、今回は“配分後の顧客対価”について触れないが、いずれ、検討することにしたい。しかし、“顧客対価”という表現からも分かる通り、これも“顧客のと契約”が前提になっていると思われる。

 

 

以上から、改めてIFRS15の収益認識モデルを考えてみると、その特徴は次のようになるのではないかと思う。

 

・“顧客との契約”を前提に考える。

・5つのステップを想定する。

 

この2つから導き出されたものが、IFRS15になっている。そう思われるほど、“顧客との契約”という言葉は重要な役割を果たしているように思う。

 

―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・

1 IFRS適用レポートの公表について(金融庁HP)

 

(関連記事)

[データは語る]システム対応期間は1年4カ月、金融庁がIFRS適用企業の実態を調査ITpro 4/17

「IFRS適用レポート」の公表と日本の会計基準の今後(新日本監査法人 5/15

 

2 459.【収益認識'14-02】5つのステップ4/10)を参照。

 

 

3 IFRS15.9198

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