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2015年4月24日 (金曜日)

464.【収益認識'14-05】“顧客との契約”~顧客

2015/4/24

サントリーの新商品、“レモンジーナ”と“ヨーグリーナ”が発売直後に品切れが続出し、それがメーカの出荷停止にまで及んで話題を集めていたそうだ。僕は全然知らなかったが、下記の記事で知った。

 

レモンジーナ品切れ騒動にみるヒット商品のワナ(日経電子版 4/22 有料記事1

 

何とも景気が良いニュースだ。メーカーはお詫びの会見を開いたようだが、発売直後に1年分の注文が殺到するなんて、笑いが止まらなかったに違いない。「需給予測や生産などの意思決定の仕組み、仕事のあり方に至るまで見直す」1と釈明したようだが、ドイツの提唱する“Industrie 4.02”が実現しても無理かもしれない。もちろん、やるべきことはすべてやる覚悟は素晴らしいし、消費者としては少しでもその成果を上げてもらえるとありがたい。しかし、一方で、大量受注の喜びを顔に出さずにお詫びする訓練も、忘れない方が良いと思う。店に無駄足を運んで残念がる顧客の顔を思い浮かべて。

 

だが、このようなメーカーのお詫びを消費者は(或いは、メディア記者は)、どのような顔をして聞けばよいのだろうか。少なくとも「お前はなんて悪いことをしたんだ」という顔ではないだろう。むしろ、本心としては、「そんな良い商品を開発してくれたのか」という感謝の気持ちや、「飲みたいから、早く出荷再開してくれ」という期待の気持ちがあるに違いない。しかし、相手が謝るというのだから、一応、怖い顔で受けるのが良さそうだ。

 

ということで、お互いに本心を隠しながらの妙な会見になる。妙だが、これがお互いの分をわきまえた節度ある態度だと思う。しかし、悪くない。というより、食品偽装の謝罪会見などと違って、ずっと良い。むしろ、こういう会見を一杯開けるよう、消費者を驚かせる商品をたくさん開発してほしい。

 

 

さて、前回(4634/22)は“顧客との契約”という言葉が、IFRS15の収益認識モデルにどのように関わっているかについて記載したが、ほとんど“顧客との契約”という言葉がIFRS15を支配しているかのようだと思われたかもしれない。今回は、“顧客との契約”という言葉が、IFRS15の適用対象範囲に影響を与えているところへ注目してみたい。

 

と書いたが、実は、結論の根拠に記載されている次の一言に尽きる(BC30)。

 

契約及び顧客の・・・定義が、IFRS15号の範囲を設定している。3

 

基準本体にも次のような記載がある(6)。

 

企業は、契約の相手方が顧客である場合にのみ、本基準を契約(第5項に列挙した契約を除く)に適用しなければならない。

 

ということは、「顧客との契約にはIFRS15を適用する」ということだが、第5項には少し例外が記載されているようだ。第5項を具体的に見てみよう。(正確な記載については4を参照。)

 

(a) リース契約

 

(b) 保険契約

 

(c) 金融商品及び企業結合や共同事業に関連する他の契約上の権利又は義務

 

(d) 顧客又は潜在的顧客への販売を容易にするための、同業他社との非貨幣性の交換

 

(a)(b)は、顧客との契約だが、IFRS15の対象にならないものだ。これらは確かに例外だ。しかし、(c)(d)は、そもそも、契約の相手が顧客とはいえないと思う。

 

(c)は、その企業の事業の継続的な協力者、或いは、その企業に対する資本提供者が契約先だ。即ち、契約相手は顧客ではない。(d)は“同業者”なので基本的には競争相手だ。4をご覧いただくと、(d)には“石油会社”という具体的な例が記載されているが、(c)のような継続的な共同事業者の関係ではないし、“顧客”というわけでもない。顧客はそれぞれ別におり、お互いに一時的な便宜を図っているに過ぎない。

 

(c)(d)、特に(d)を見ていると、「では、“顧客”とは何か?」という疑問が湧く。それについては、第6項に定義がある。

 

顧客とは、企業の通常の活動のアウトプットである財又はサービスを対価と交換に獲得するために当該企業と契約した当事者である。

 

ちょっと小難しい、眉間に皺を寄せずには理解が難しい文章だ。しかし、企業にとって、“顧客とは?”という問いは、分かり切っているはずだ。会計基準に教わるものではない。これが分からないで事業はできない。もし、分からない企業があるとすれば、社会的な存在意義を失うだろう。顧客の評価こそが企業に存在意義を与えてくれるのだから。企業は顧客に感動と満足を与えるために活動している。その顧客を頭に浮かべれば、IFRS15でも間違いないと思う。

 

なお、前回、“顧客との契約”について2回に分けて記載すると書いたが、次回もこのテーマを続けたい。残るは“契約”だ。

 

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1 無料で読める関連記事には次のものがある。

 

レモンの次はヨーグルト、サントリーがまたも“秒速”品切れ(日経ビジネス 4/20

 

2 興味を持たれた方は、次の記事が参考になるかもしれない。

 

インダストリー4.0とは何か?(日経ビジネス 2014/7/22

 

受注から出荷に至るまで、すべての関連設備をネットで統合し、ほとんど人手を介さず生産計画から全自動生産・出荷するイメージ。受注生産が主にイメージされているようなので、飲料製品のような在庫商品、しかも、初回生産量を適正に決める、というのはかなり難しいと思われる。

 

3 結論の記載のBC30項を正確に引用すると、“・・・”のところには、次の赤字部分が入る。

 

契約及び顧客のコンバージェンスされた定義が、IFRS15号の範囲を設定している。

 

この「コンバージェンスされた」というのは、IASBとFASB(=米国財務会計審議会)のそれぞれの定義を調整して同じものにしたというほどの意味だと思う。したがって、IFRS15を考える上では、省略しても支障ないと思う。

 

4 5項に挙げられている例外規定は、正確には、次のように記載されている。

 

(a) IAS17号「リース」の範囲に含まれるリース契約

 

(b) IFRS4号「保険契約」の範囲に含まれる保険契約

 

(c) IFRS9号「金融商品」、IFRS10号「連結財務諸表」、IFRS11号「共同支配の取決め」、IAS27号「個別財務諸表」及びIAS28号「関連会社及び共同支配企業に対する投資」の範囲に含まれる金融商品及び他の契約上の権利又は義務

 

(d) 顧客又は潜在的顧客への販売を容易にするための、同業他社との非貨幣性の交換。例えば、2つの石油会社の間で、異なる特定の場所における顧客からの需要を適時に満たすために石油の交換に合意する契約には、本基準は適用されない。

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