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2015年5月28日 (木曜日)

473.【収益認識'14-08】履行義務の識別〜顧客満足のために

2015/5/28

最近、「寿命を短くするのは喫煙であり、ニコチンではない」という記事*1を読んだ。ニコチンは依存症にはなるが、度を超さなければ健康被害はなく、むしろ、有益な可能性もあるという。煙草に含まれるタールなどその他の成分が、健康を脅かすそうだ。現在は、アルツハイマー病の予防やパーキンソン病の進行を遅らせるニコチンの効果について、研究が行われているという。

 

「煙草は、百害あって一利なし」というのが常識だ。だから、この記事を読んだときはびっくりした。しかし、それでは理解がラフすぎるようだ。表現は汚いが、「味噌も糞も一緒にする」ことになり、味噌の美味しさを味わえない(=ニコチンのメリットを生かせないことになる)。事実・実態をしっかり把握することの重要性を改めて感じさせられた。

 

そういえば、5/26のクローズアップ現代では、下水から、メタンガスや水素などの再生可能エネルギーを取出す取組みを取上げていたが、これも同じだ。「下水は汚いもの、捨てるもの」という感覚は、下水が再利用可能な有機物を大量に含んでいるという科学的事実に基づいていないというわけだ。

 

これらは固定観念にとらわれず、見方を変えたり、内容を詳しく見て理解・把握・整理してみれば、思わぬ拾い物が見つかるという例だと思う。

 

 

ところで、IFRS15では、“顧客との契約の識別”という最初のステップのあと、“履行義務の識別”という2番目のステップがある。この“履行義務の識別”とは、なんだろうか。売上の会計処理としては今まで考えたこともない作業だが、一体何のためのステップなのか。僕は、煙草や下水の話と相通じ合うところがあると思う。そう、このステップ2で、顧客との契約の実態を理解・把握・整理するのだ。

 

このステップ2は、もちろん、収益認識をするために必要なものであるが、それだけではない(というのが僕の考えだ)。「財・サービスの提供によって、顧客から満足を獲得すること」をより確実にするために、必要なことと思える。すなわち、経理部門が会計処理のためにひっそりとやれば良いというものではなく、むしろ、現場が顧客の要望や顧客に約束したことをしっかり理解・把握・整理するステップだと思う。これを熟してこそ、現場は顧客に満足してもらえる事業遂行ができる。そして、顧客が満足すれば、満足したときに、売上を計上できる。*2, *3

 

 

さて、このシリーズの前回(469−5/14「契約の識別」)の記事で、なんとか契約を獲得した我々のソフトウェア開発会社A社は、潜在顧客Bの契約書への調印で、契約を識別できる状況になった。これで、B社は潜在顧客から顧客となった。そして、いよいよ、このステップ2を実施する。ソフトウェア開発契約の内容は、意外に複雑なことがあるので、かなりやり甲斐のあるステップ2になりそうだ。

 

例えば、新しいサーバーや通信インフラ、多くのユーザー用PCなどの機器の購入・据付が、同時に契約されている。加えて、顧客従業員へのシステム教育、先に稼働させる第1期システムの運用サポートといったサービスの提供も含まれる。会計的には、これらをまとめて1つの“契約”として識別することは不適切だ。なぜなら、ものとサービスが混在しているだけでなく、売上の計上時期の異なるものが含まれているからだ。IFRS15はさらに踏み込んで、契約の構成要素を“履行義務”の単位に分けようとしている。果たして、“履行義務”とは何か、そして、そこまで分ける理由は。

 

次回は、我々のソフトウェア開発会社A社が、どのようにこれを行うかを考えてみよう。

 

🍁ー・ー🍁ー・ー🍁ー・ー🍁ー・ー🍁ー・ー🍁ー・ー🍁ー・ー🍁ー・ー🍁ー・ー🍁

 

*1 アングル:ニコチン悪玉論は本当か、喫煙めぐり誤解もREUTERS 5/21

 

*2 ステップ2にかかる手間や実施するタイミングは業種によって相当異なる。例えば、小売業であれば、売り場で顧客に商品を勧めて顧客が納得して購入の意思を示した段階、即ち、顧客との契約を識別できた段階で、このステップ2は終了している。ステップ2だけでなく、取引価格の算定というステップ3や履行義務の充足というステップ5も、ほぼ終了しているかもしれない。この辺りの様相は、事業によってかなり異なる。

 

*3 IFRS15では、ステップ1の顧客との契約を識別するステップについて記載している箇所に、“契約の結合”と“契約の変更”に関しても記述されている。しかし、これらは“履行義務の識別”以降のステップのために必要な作業だ。したがって、これらについては折に触れて立ち戻りたい。

 

 

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