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2015年5月

2015年5月28日 (木曜日)

473.【収益認識'14-08】履行義務の識別〜顧客満足のために

2015/5/28

最近、「寿命を短くするのは喫煙であり、ニコチンではない」という記事*1を読んだ。ニコチンは依存症にはなるが、度を超さなければ健康被害はなく、むしろ、有益な可能性もあるという。煙草に含まれるタールなどその他の成分が、健康を脅かすそうだ。現在は、アルツハイマー病の予防やパーキンソン病の進行を遅らせるニコチンの効果について、研究が行われているという。

 

「煙草は、百害あって一利なし」というのが常識だ。だから、この記事を読んだときはびっくりした。しかし、それでは理解がラフすぎるようだ。表現は汚いが、「味噌も糞も一緒にする」ことになり、味噌の美味しさを味わえない(=ニコチンのメリットを生かせないことになる)。事実・実態をしっかり把握することの重要性を改めて感じさせられた。

 

そういえば、5/26のクローズアップ現代では、下水から、メタンガスや水素などの再生可能エネルギーを取出す取組みを取上げていたが、これも同じだ。「下水は汚いもの、捨てるもの」という感覚は、下水が再利用可能な有機物を大量に含んでいるという科学的事実に基づいていないというわけだ。

 

これらは固定観念にとらわれず、見方を変えたり、内容を詳しく見て理解・把握・整理してみれば、思わぬ拾い物が見つかるという例だと思う。

 

 

ところで、IFRS15では、“顧客との契約の識別”という最初のステップのあと、“履行義務の識別”という2番目のステップがある。この“履行義務の識別”とは、なんだろうか。売上の会計処理としては今まで考えたこともない作業だが、一体何のためのステップなのか。僕は、煙草や下水の話と相通じ合うところがあると思う。そう、このステップ2で、顧客との契約の実態を理解・把握・整理するのだ。

 

このステップ2は、もちろん、収益認識をするために必要なものであるが、それだけではない(というのが僕の考えだ)。「財・サービスの提供によって、顧客から満足を獲得すること」をより確実にするために、必要なことと思える。すなわち、経理部門が会計処理のためにひっそりとやれば良いというものではなく、むしろ、現場が顧客の要望や顧客に約束したことをしっかり理解・把握・整理するステップだと思う。これを熟してこそ、現場は顧客に満足してもらえる事業遂行ができる。そして、顧客が満足すれば、満足したときに、売上を計上できる。*2, *3

 

 

さて、このシリーズの前回(469−5/14「契約の識別」)の記事で、なんとか契約を獲得した我々のソフトウェア開発会社A社は、潜在顧客Bの契約書への調印で、契約を識別できる状況になった。これで、B社は潜在顧客から顧客となった。そして、いよいよ、このステップ2を実施する。ソフトウェア開発契約の内容は、意外に複雑なことがあるので、かなりやり甲斐のあるステップ2になりそうだ。

 

例えば、新しいサーバーや通信インフラ、多くのユーザー用PCなどの機器の購入・据付が、同時に契約されている。加えて、顧客従業員へのシステム教育、先に稼働させる第1期システムの運用サポートといったサービスの提供も含まれる。会計的には、これらをまとめて1つの“契約”として識別することは不適切だ。なぜなら、ものとサービスが混在しているだけでなく、売上の計上時期の異なるものが含まれているからだ。IFRS15はさらに踏み込んで、契約の構成要素を“履行義務”の単位に分けようとしている。果たして、“履行義務”とは何か、そして、そこまで分ける理由は。

 

次回は、我々のソフトウェア開発会社A社が、どのようにこれを行うかを考えてみよう。

 

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*1 アングル:ニコチン悪玉論は本当か、喫煙めぐり誤解もREUTERS 5/21

 

*2 ステップ2にかかる手間や実施するタイミングは業種によって相当異なる。例えば、小売業であれば、売り場で顧客に商品を勧めて顧客が納得して購入の意思を示した段階、即ち、顧客との契約を識別できた段階で、このステップ2は終了している。ステップ2だけでなく、取引価格の算定というステップ3や履行義務の充足というステップ5も、ほぼ終了しているかもしれない。この辺りの様相は、事業によってかなり異なる。

 

*3 IFRS15では、ステップ1の顧客との契約を識別するステップについて記載している箇所に、“契約の結合”と“契約の変更”に関しても記述されている。しかし、これらは“履行義務の識別”以降のステップのために必要な作業だ。したがって、これらについては折に触れて立ち戻りたい。

 

 

2015年5月26日 (火曜日)

472.【投資】利益確定で様子見

2015/5/26

5/16の横浜マリノス戦では、清水エスパルスのサポーター席に“残留”の垂れ幕があったという。これは、監督や選手、そしてクラブ運営会社へ向けて、サポーターからの強烈なメッセージだ。「まだ、今年は始まったばかりなのに」とは思えない。むしろ、全然、早すぎない。もう、1stステージは残り4試合なのに、勝ち点はまだ、たったの10点しかない。残留を争った昨年でも同時期に17点あった。最下位でないことが不思議な成績だ。(なぜか、最下位のアルビレックス新潟に感謝したくなる。4675/4 の記事で感謝したヴァンフォーレ甲府は、今、上にいる。)

 

ぎりぎりで残留を決めた昨年の年間の勝ち点は36だった。もし、このまま1stステージを終えれば、後半だけで26点も勝ち点が必要になる。ちなみに、現在、勝ち点を26点以上獲得しているのは、1位の浦和レッズと2位のサンフレッチェ広島だけだ。あと4試合あるので勝ち点20点まで基準を下げてみても、上位6チームしかこのラインを超えていない。今のエスパルスの成績の延長線上では考えられない。この流れを挽回するには、黒田バズーカー・クラスの一手が必要だ。

 

 

さて、ゴールデンウイーク明けの投資の記事(上記 467−5/4)では、「株価が高すぎる」という米FRB議長のイエレン氏の発言ですっかり悲観的になっていたが、その後、日本の株価は上昇を続けている。日経平均は、7日と14日を除き、ずっと上昇中で、みなさんもご存知の通り、先週金曜の時価総額はバブル期の最高値を超え、現在史上最高値の更新を重ねている。

 

おかげで、僕が勝負をかけた日経平均連動ETFの比較的多額の含み損は含み益へ転じ、先週末と昨日で売却し、利益確定することができた。このタイミングで利益確定したのは次の理由による。

 

 A.来週金曜に、5月の米国雇用統計が公表されるので、そろそろ、相場が不安定になると考えた。

 

 B.燻っていたギリシャ問題は、6月上旬からが正念場ではないかと思えてきた。

 

 C.上述のイエレン氏の発言に見られるようにFRBの株価に対するスタンスが変化したように思われた。

 

C以外は、相場は上下両サイドへ振れる可能性がある。しかし、Cは、上昇を妨げるキャップになっている。したがって、もし、大きめに動くとすれば下落方向ではないかと、僕はビビったのだ。しかも、ABについては、良い結果が、素直に株価の上昇につながるのか、逆に下落を引き起こすのか、よく分からない。どちらにも動きそうで、気が落ち着かない。状況が複雑すぎて、僕の能力の限界を超えている。

 

とはいえ、長期保有しているものは売らない。それらを売るほどには悪くはならないと思うし、逆に相場が上がった時の利益を逃してしまう。ということで、新たな勝負は、しばらくしない。当分、様子見を決め込もうと思う。

 

 

しかし、エスパルスにそのような余裕はない。必要なのは、黒田バズーカー・クラスの一手だ。監督や選手は、それぞれ能力一杯頑張っているだろう。だが、クラブはまだ動いていない。クラブにはまだ手があるはずだ。それをうまくやってのけて、この状況を打開して欲しい。

2015年5月22日 (金曜日)

471.【番外編】LIXILのM&Aと詐欺メール

2015/5/22

東芝に続き、LIXILグループも、大変なことになっているようだ。中国で事業展開している孫会社“ジョウユウ”が、破産手続きに入る可能性があり、破産した場合、分かっているだけで410億円の損失が発生するという。LIXILグループの連結純利益が吹き飛ぶかもしれない規模だ。(「LIXIL、独子会社の破産申請検討 410億円の損失も 」日経電子版 5/21無料記事)

 

これに関連して、以下のようなニュースリリースがLIXILグループから公表されている(新しい順)。

 

5/21 海外子会社における破産手続開始申立の検討に関するお知らせ

5/1  平成27年3月期決算発表の延期に関するお知らせ

4/27 海外連結子会社における検証に関するお知らせ

4/2 LIXILによる、GROHE Groupの12.5%株式取得完了(子会社化)について

4/2 GROHE Group S.a r.l.社等の連結子会社化完了に関するお知らせ

 

要約すると、4/2に子会社化を公表したばかりの会社(=GROHE)の子会社(=ジョウユウ)の、そのまた子会社で粉飾が見つかり、LIXILグループは5/7に決算発表を行う予定だったが、5/1にそれを延期すると公表していた。そして、今回、その子会社(=ジョウユウ)が破産手続の検討を始めたこと、及び、破産した場合の影響額を公表した。

 

 

と、ここまで書いて、今朝方届いた訳の分からないメールを思い出した。確か、差出人がGoogleだったような。最近パソコンを変えたら、添付ファイル付きのメールが、しばしば、時間をおかないと見られないことがある。そういうメールが来ていたのだ。もう見れるかもしれないと思い、それを見てみた。

 

凄い内容だった。

 

英語なのだが、なんと £950,000(1億数千万円)の小切手を送りたいから送り先を教えてくれという。Googleが勝手にやってる宝くじに当選したらしい。どうやら、世界でたった12人の幸せ者になった。あの有名なラリー・ペイジ氏(=Googleの共同創業者)のサインもある*1

 

実は、最初 £950,000にピンと来なくて、清水の超高級寿司が食えるぐらいのイメージだったが、改めて、日本円に換算してみて驚いた。これは、人生が変わる。寿司では使い切れない。新国立競技場の近くにマンションを買おう。そして、FC東京か、鹿島アントラーズのサポーターになろう。

 

しかし、詐欺だった。念のために文章の一部をググってみたところ、連絡先である上級副社長のVic Gundotra 氏は昨年Googleを辞めているし、このままやりとりを続けると、そのうち様々な名目で費用請求されるということだった。

 

 

ん〜、LIXILグループも、買ったばかりで粉飾が発覚するとは、詐欺にあったようなものだ。でも、それなら“表明保証責任”*2を問えば、売主からかなり取り返せるのではないか。

 

と思ったが、どうやら、そう単純ではなさそうだ。というのは、ジョウユウ及びその親会社のGROHEは、事実上、昨年の1月からLIXILグループの支配下にあったのではないかと思われるからだ。LIXILグループは、昨年1月に、金融機関と折半で設立した SPC(=特別目的会社)を経由して、GROHEの議決権の 87.5% Glacier Luxembourg One S.à r.l.より取得した*3。その一部を、この4/1にLIXILが買い取って、両社を連結子会社にした。

 

決算上は、GROHEもジョウユウも、これまで持分法適用会社扱いのようだが、金融機関には事業会社の経営はできない。GROHEの事業は、LIXILグループが見ていたに違いない。ということは、LIXILグループが売主の表明保証責任を問うには、粉飾が昨年1月以前からあったことを証明しなければならない。実は、買ったばかりではないのだ。もう、買収契約上、表明保証責任を問える期間は過ぎているかもしれない。

 

しかも、もしかしたら、粉飾は昨年1月以降に行われたものが主かもしれない。というのは、中国の不動産市況の悪化が囁かれはじめたのは最近だからだ。シャドー・バンキング問題は、だいたい2013年ごろから、住宅価格が下落に転じたとされたのは、昨年夏ごろからだ。

 

いやいや、中国の経済指標は当てにならないと悪名高いので、やはりもっと以前から業績が悪化していて、それを隠して粉飾していた可能性も捨てきれない。

 

あるネットの記事*4では、金融機関と折半でSPCを設立し、両社を持分法適用会社にした買収スキームについて、「自社のバランスシートや格付けを悪化させることなく大型買収を行える絶妙な手法」などと記載しているが、LIXILはこのアイディアにいくら払ったのだろうか。もし、同じ金額を使って、買収調査や中国市場の実態調査を充実させていれば、さらに良い買収効果が得られただろう。もっと安く買えただろうし、買収後の子会社経営に役立つ情報も入手できたに違いない。

 

ここまで考えて、ふっと思ったのは、「ググっといてよかった」だ。詐欺メールと企業買収を同じように扱っては、LIXILをはじめ、企業の方々に怒られてしまうが、相手を知ることは重要だ。B/Sの見てくれより、経営の実態把握にこそ、金も手間もかけるべきだと思った。

 

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*1 実に立派なお祝いメールだった。ご覧いただきたい。と同時に、みなさんもお気をつけいただきたい。

Google_2_2

*2 一般の売買取引で売主に課される瑕疵担保責任のようなもの。

 

*3 以下を参考に記載した。

 

株式会社LIXILがGROHE Group社の株式を取得

~水栓金具のリーディングカンパニーを買収し、

グローバル事業を強化~

LIXILグループのニュースリリース(2013/9/26)

 

膨張するLIXIL〜積極果敢な海外企業買収で高まる財務リスク、効果に疑問の声も

Business Journal 2013/11/25

 

*4 上記のBusiness Journal の1ページ目の下の方。

2015年5月20日 (水曜日)

470.【番外編】橋下徹氏の未来(願望を込めて)

 

2015/5/20

橋下徹氏が政治家を辞めると聞いて、残念に思われた方は多いようだ。でもきっと大丈夫。政治家でなくても、公に活躍できる場はある。僕は、早く大阪市長の任期を終えてくれ、とさえ思う。もしかしたら、その後の方が、我々にとって、ずっと面白いものになると思うからだ。

 

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大阪都構想への賛否を問う住民投票があった17日の夜、NHKは開票速報番組を全国に放送した。僕は、大阪市民ではないが、それを見た。「このままではジリ貧。なにか変化を」という声が勝るだろうと予想していた僕は、反対票が多数と報道されたとき、驚いた。

 

総選挙の選挙特番ならここでチャンネルを変えるが、今回はもう少し粘った。橋下氏が政治の世界から身を引くというのは本当だろうか。いや、本人が選挙で言っているのだから疑いなく身を引くと思ってはいたが、改めて、本人が語るのを聞きたかった。だから、記者会見の中継までそのまま見続けた。

 

その会見で、もっとも印象深かったのは、「民主主義の素晴らしさ」と、その民主主義を支える「報道の自由の重要性」を強調したことだった。NHKはこの話の途中で中継を終了し、画面をスタジオへ切り替えてしまったので、僕はそれを以下で補足した。

 

橋下市長「報道の自由は民主主義を支える根幹」「メディアにもっと頑張ってほしい」 弁護士ドットコム ニュース 5/18

 

これは、まさにこの「民主主義とマスメディア」に注目・集中してコンパクトにまとめた記事で、とても参考になった。

 

【橋下氏会見詳報(1)】 産経WEST 5/18

 

これは(1)〜(12)まで続く、会見の詳細を記した長い記事。遺漏を防ぐつもりで一応目を通した。日経電子版にも「一問一答」という見出しのついた記事*1があったが、「民主主義とメディア」に関しては、そんな発言はなかったかのごとく全く触れられていない。

 

以上から想像したことを記載する。橋下氏は、これからも我々の目の前で、活躍し続けると思う。もっと面白い形で。

 

 

橋下氏は、今後の進路について「僕は国民の奴隷じゃない。職業選択の自由がある」という趣旨の発言をしたが、恐らく、公に奉仕することの魅力に取り憑かれていると思う。また、根っからの喧嘩好きのようにも思える。このため社会的な問題を目の当たりにすると、つい、戦いたくなってしまう。しかも、その闘争本能は、問題が重要であればあるほど掻き立てられる。

 

したがって、橋下氏は、恐らく、自由な職業選択の結果として、「民主主義を支える重要なものに貢献する戦い」を開始するのではないだろうか。

 

原発問題も、年金・介護といった高齢化対策、少子化対策も、みんな重要だが、当面、橋下氏にとって、目を反らすことができない最重要問題として写っているのは、“マス・メディアの質”ではないだろうか。大阪の行末も気になるだろうが、これについては、今のように当事者として関わることはできない。関心は持ち続けるだろうが、一歩、引かざるを得ない。一方、“マス・メディア”については、もはや、政治家、即ち、権力者ではなくなるのだから、今以上に自由に批判できるはずだ。それも、マス・メディアの中へ飛び込んで、内部から変えられる可能性がある。

 

すでにいくつかのメディアから、大阪市長の任期満了後、橋下氏はテレビや雑誌に引っ張りだこになると予想されている*2。橋下氏を嫌いな人にとっては悪いニュースだが、ファンが多いのも事実だろう。話が上手だし(戦闘的だが)、判断の質も高いと思う(個々の判断内容というより、個々の判断に共通基盤があって、それが良いように感じる)。

 

恐らく、以前のようなコメンテーターとしてだけでなく、番組の作り方にも関わるようになるのではないか。今回の会見でも、ニュース報道や討論番組のあり方について、早速、注文をつけている(例えば、戦争反対とか、原発反対などというメディアの主張に注文をつけたのではなく、住民投票や国民投票に際して何を報道すべきか、とか、ディベートはどうあるべきか、などといった基本的なことについて述べている)。

 

メディア改革は、視聴者・読者の意識改革にも及ぶだろう。レベルの低いテレビ番組や雑誌は自然淘汰される、或いは、単純に娯楽や暇つぶしとして消費されれば良い。それは視聴者・読者の嗜好で決まる。視聴者・読者が重要な社会的問題を考えるにあたって、どのような番組や雑誌を求めれば良いか、橋下氏は、その良いイメージを提供することを考えると思う。ちょっと、田原総一朗氏のようでもある。

 

 

今回の会見で、「日本の民主主義をレベルアップした」と誇った橋下氏だが、まだ道半ば、いや端緒を開いただけと、一番本人が良く分かっているに違いない。そしてそれを実現するツボは、マス・メディアだということも。それにマス・メディアは、闘争本能を掻きた立てられる巨大な喧嘩相手だ。市長任期が終わる来年からは、より直接、日本全体のためとなる活躍を期待したい。

 

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*1 「僅差の否決、悔いなし」 橋下氏会見の一問一答 日経電子版 5/18

 

橋下氏が政界を引退することのみが記述されている。僕は、以前は日経を最も信頼していたが、Web紙面上の消費税に関するアンケートで「消費税に賛成しない」選択肢を選択したのに、その結果を公表した記事『消費増税、8割が「賛成」(2013/8/25)』ではその選択肢が「消費税賛成」に集計されていて驚いたことがある(アンケートの質問項目は、『「消費増税は予定通り実施すべきですか(クイックVote)」2013/8/3』を参照。質問回答時には、このように集計され、日経の主張に利用されるとは、全く想像つかなかった)。それ以来、日経を信用しなくなったし、Web上のアンケートへの回答もやめた。日経の都合で、いいように利用されるだけと思ったからだ。まあ、「その時、急にそうなった」というより、以前からおかしいと思っていたので、「その時、溜まっていた不満が溢れた」というべきか。

 

「人は自分の見たいものしか見ない」とは、ローマの英雄ユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)の戒めだ。僕としては、そうならないようにメディアを利用するのだが、そのメディアが、「我が社の報道方針に反するものは事実ではない」という態度だったら、どうだろうか。例えば、「我が社の主張と違う事実があっても、我が社の主張に沿うものとして報道してしまえ」などと。それはもう、事実としての価値はない。デマの類だ。

 

しかし、悔しいが、今も購読料を払い続けている。経済新聞としての有用性は欠かせないので、知らぬ間に誘導されないよう、事実と日経の憶測・意志を注意しながら区分して利用している。日経こそは“橋下氏のメディア批判”をしっかり受け止めて欲しいと思う。

 

*2 例えば、以下のようなものがある。

 

橋下氏、政界引退へ TV界が“熱視線”関西ではギャラ3億円説も zakzak by 夕刊フジ 5/18

 

 

 

2015年5月15日 (金曜日)

469.【収益認識'14-07】契約の識別

2015/5/14

このところ、番外編(投資)の記事が続いたが、今回はもとのIFRS15「顧客との契約から生じる収益」へ戻りたい。今回は、ソフトウェアの受託開発契約を例に、“契約”の扱いについて詳細を見ていこうと思う。ソフトウェア受託開発契約は、受注までの顧客とのやり取り、サービスと製商品の組合せなど契約内容が多岐にわたること、契約変更を伴う可能性が高いことなどから、他の業種の参考になりやすいと思われるからだ。

 

久しぶりなので、ざっと今までの流れを記載すると、最初に斜め読みして全体の手掛かりを得、その後、“5つのステップ”を営業などの業務活動面から眺め、基準の目的に“キャッシュ・フロー”と記載されていることの意味を考え、IFRS15が採用しなかった収益認識モデルへ寄り道し、IFRS15の適用範囲を規定する“顧客”と“契約”について考えてきた。今回は“契約の識別”について、実務をイメージしながら、もう少し掘り下げたい。

 

改めて、“5つのステップ”を思い出してみよう。今回は、このうち第1のステップが中心となる。

 

1. 顧客との契約の識別 

2. 履行義務の識別

3. 取引価格の算定

4. 取引価格の履行義務への配分

5. 履行義務の充足

 

 

さて、ここから、ソフトウェア受託開発の(想像上の)例と共に、IFRS15の内容を見ていこう。

 

販売管理システムの受託開発を得意とするA社があるとしよう。A社は、1から全てを開発するのではなく、他社が開発したパッケージ・ソフトを顧客の要求・状況に合わせて選択し、カスタマイズして納品する。顧客の要望により、ハード・ウェアの選定・納入や従業員へのシステム教育、稼働後の運用サポートも行う。

 

A社はセミナーを開催して、出席した潜在顧客と名刺交換を行い、後日連絡を取って訪問し、潜在顧客の状況について詳細な情報を入手する。この段階で、潜在顧客ごとのファイルを作成し、訪問するたびに情報を蓄えていく。

 

ある潜在顧客Bが、製品ごとの組織を顧客ごとの組織へ組織再編を行ったが、システムが追いついていないという悩みを持っていることを察知した。即ち、顧客との取引履歴、営業マンの訪問記録、売上・回収管理などが、従来の製品別組織のシステムのままで管理されており、顧客とどのような取引をしたか、営業マンがどのような情報収集や提案をしたか、売上実績や債権回収状況はどうか、といったことを顧客ごとに網羅的に知りたい場合に、一々、異なるシステム間で名寄せや突き合わせをしなければならない状況だった。しかし、この潜在顧客Bの現業部門は、無駄があると分かりつつも、現行システムが使い慣れているので、リプレースに抵抗していた。

 

そこでA社は、現行システムを統合された新しいシステムにリプレースした場合の経済効果等について調査することを潜在顧客Bへ勧め、その調査に関するコンサルティングを申し出た。が、断られた。潜在顧客Bは、そのような調査にコストをかける習慣がなかったのだ。

 

この段階でA社の潜在顧客管理ファイルには、数々の訪問記録と、コンサルティングの提案書が記録され、その提案書には失注のフラグが立てられた。訪問や提案書作成に要したコストも、勤怠管理システムや会計システムから集計されていたが、もちろん、資産計上されることはなかった。

 

ところが、後日、この潜在顧客Bの経営層から次のような申し出があった。

 

コンサルティングに費用は払えないが、わが社の実情に合ったシステム構築に係る概算費用と経済効果について、簡単に見積もってもらいたい。そのための調査にはいくらでも協力する。社内を説得する材料が欲しい。

 

A社は、次の方針を決めて、新しいプロジェクト・コードを潜在顧客ファイルへ登録した。そして、潜在顧客Bの経営者へ面談のアポを入れた。

 

顧客関連記録の名寄せや突き合わせのコスト削減より、組織を顧客ごとへ変更した目的を実現させること(=顧客満足度のアップ、収益獲得機会を逃さない)の方が、経営的な意味が大きいことを説明する。そのためのシステム開発と位置付けるべきであることを説明する。

 

簡単な調査では、大規模システム導入の総費用を正確に見積もることは到底できないので、参考情報として非常にざっくりした数字を提示する。

 

改めて、潜在顧客Bの実情に合ったシステムを導入するために、どのパッケージ・ソフトをどのようにカスタマイズするのが良いか、方針を決定する社内プロジェクトの立上げと、この企業からの常駐者数名、数ヶ月程度の無償のサポートを提案する。

 

この社内プロジェクトの結果、潜在顧客B自身が経営上のメリット・ディメリットについて量的にも質的にも評価できるようになると説明する。(新システムを開発するかどうかは、その結果、潜在顧客自身で決定する。)

 

A社は、この社内プロジェクトをサポートするなかで、大規模システム開発・導入に不慣れな潜在顧客Bに、最新のIT技術状況や他社事例などの情報を提供し、新システム導入後の業務イメージや経営に提供できる新しい情報のイメージを持ってもらうつもりだ。さらには、現場を巻き込んだシステム開発プロジェクトの進め方のイメージをこの社内プロジェクトのリーダーへ教育したり、多くのヒアリングを重ね、接触することで現場の人々が持っているシステム変更への抵抗感を薄める効果もあると考えている。

 

潜在顧客Bの経営者との面談の結果、今度の提案は歓迎された。社内プロジェクトの成果への期待と共に、これに関わる従業員への教育効果が高く評価された。A社は、このプロジェクトの成功を確信した。経営上のメリットがあることは明らかと思えるし、数ヶ月の間、経営者をはじめとする多くの潜在顧客Bの従業員と密接に関われることは、システム開発の意思決定やその後の開発プロジェクトの成功に大きな影響を与えるだろう。

 

さて、この段階でステップ1をクリアできるだろうか。即ち、契約を識別できるか。

 

無償のサポートについてであれば、可能かもしれない。しかし、無償なので、契約を識別しても収益認識という面からの意味はない。ただ、このプロジェクトに係るコスト集計はしておいた方が良いかもしれない。しかし、その後のシステム開発プロジェクトに関する契約は、もちろん、まだ識別できない。

 

数ヶ月後、この社内プロジェクトはA社の目論見通りに成功し、潜在顧客Bはシステム開発を決定した。一応、システム開発業者の選定手続きは行ったが、A社が選ばれた。この社内プロジェクトを通じて、プロジェクト・リーダーだった潜在顧客Bの従業員は、この社内プロジェクト・チームが発展して組成されるシステム開発チームを運営していく自信を深め、その後も、A社と一緒に仕事をすることを望んだ。社内プロジェクトのオーナーであった経営者も、A社を信頼した。

 

この段階であれば、システム開発に関する契約を識別し、ステップ1をクリアできるかもしれない。しかし、IFRS15は、契約を識別する要件を 9項に定めているので、確認してみよう。

 

(a) 契約の当事者が、契約を承認(書面で、口頭で又は他の取引慣行に従って)しており、それぞれの義務の履行を確約している。

 

(b) 企業が、移転すべき財又はサービスに関する各当事者の権利を識別できる。

 

(c) 企業が、移転すべき財又はサービスに関する支払条件を識別できる。

 

(d) 契約に経済的実質がある(すなわち、契約の結果として、企業の将来キャッシュ・フローのリスク、時期又は金額が変動すると見込まれる)。

 

(e) 企業が、顧客に移転する財又はサービスと交換に権利を得ることとなる対価を回収する可能性が高い。対価の金額の回収可能性が高いかどうかを評価する際に、企業は、顧客が期限到来時に当該対価の金額を支払う能力と意図だけを考慮しなければならない。企業が権利を得ることになる対価の金額は、企業が顧客に価格譲歩を提供する可能性があることにより対価に変動性がある場合には、契約に記載された価格よりも低くなることがある(第52項参照)。

 

システム開発契約は通常多額となるので、少なくとも書面での契約が必要だ。しかし、契約書はあるものの、正式な承認はまだだった。一応、契約書案では、A社と顧客企業Bの役割分担が明確に定められている。数ヶ月も一緒に仕事をしてきた両者であれば、その分担についても共通イメージを持ちやすかっただろう*1

 

契約の実態・中身については問題なさそうだ。但し、1点、心配なことがある。上記 (e) の問題だ。潜在顧客Bの、対価の支払い意思は良いとして、問題は対価の支払い能力だ。

 

無償のサポート・サービスを行っていたA社のメンバーが、潜在顧客Bの財務情報を入手した。それによると、近年、業績が思わしくない。運転資金には窮してはいないが、多額のシステム投資には不安を覚えた。潜在顧客Bの経営者も、事業規模の割に過大投資気味ではないかと口にしていた。

 

そこで、改めて、A社は潜在顧客Bの社内プロジェクト・メンバーと相談し、次のような方針で契約内容を見直すことにした。

 

(契約の分割)

契約は、一括契約ではなく、2期に分割する。第1期に顧客情報の共有など、経営意思決定に役立つシステムを優先して開発・稼働させ、事業戦略上のメリットをなるべく早く実現させることを狙う。但し、開発の複雑性は増し、トータルの契約期間は長期化する。第2期の契約は、第1期終了時の状況を踏まえて、改めて、費用見積もりや契約締結手続きを行う。

 

(契約額の減額)

開発チームについて、潜在顧客Bのメンバーを増員するとともに、A社からのメンバーを減らし、潜在顧客Bの関与の度合いを高める。なるべくパッケージ・ソフトをカスタマイズせず、そのまま利用する方針を強化する。開発作業は潜在顧客Bの社内ですべて行う。これらの結果、契約額を減額する。但し、潜在顧客Bは、プロジェクト・メンバーとなる従業員に対する IT 教育予算を増額する。

 

(支払条件)

システム稼働時の一括払いから、均等額の毎月払いへ変更する。

 

以上の結果、再作成された契約書は、A社と潜在顧客Bの両社内で正式な承認を受けることができた。この段階で、A社の顧客ファイルでは、このプロジェクトに受注フラグが立てられた。そして、上記の IFRS15.9の要件も満たし、会計上も契約として識別されることになった。

 

 

ということで、今後はしばらくこの例を色々いじりながら、IFRS15の規定を見ていきたい。

 

ところで、これを書きながら、前回(4685/12)の記事の東芝の進行基準の原価見積もりのことが気になった。建設土木工事にも不確定要素はあるが、システム開発に比べれば原価見積もりしやすいのではないか。問題の発端になったのはインフラ工事の一部とされているが、システム部分だろうか。

 

それにしても、3期累計の営業損益ベースの影響額が 500億円とは、かなり多額だ。ただ、期間損益にズレがあっただけかもしれないので、期末剰余金への影響は意外と僅かになるかもしれない。とはいえ、原価管理のかなり根本的な部分がおかしい可能性がある。恐らく、リスク管理やモニタリングだけでなく、統制環境にも欠陥があるとの指摘を避けられないように思う。問題は根深そうだ。

 

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*1 さて、ここでこの役割分担について、一つ、みなさんに考えていただきたい。ソフトウェア受託開発は、顧客にとってサービスを受けたのだろうか、それとも、製品の購入だろうか。答えは「どちらもあり得る」だ。即ち、契約次第だ。そして、この契約で定められた役割の違いが、会計処理にも大きな影響を与える。

 

例えば、製造業の外注加工契約でも同じようなことはある。原材料や工程完成品を外注先に支給して、加工賃を支払うパターンであれば、サービスの提供を受けたことになる。一方、外注先が全てを整えた製品を納入するのであれば、仕入取引ということになる。支給した原材料、及び、それに外注先が加工を加えた仕掛品(の原材料費部分)は、発注者が所有するので、外注先に保管されているものでも発注者のB/Sへ計上される。製造業の場合は、“モノ”に着目すれば、両者をシンプルに分類できる。

 

ところが、これをソフトウェアの受託開発へ当てはめて考えると、原材料となるべき“モノ”が見当たらない。では、何に着目するか。それが“役割分担”ということになる。

 

・開発の主体は誰か

 

最も重要な点だが、契約上、開発の主体が顧客企業とされていれば、ソフトウェア会社はサービス提供企業という位置付けになる可能性が高い。一方、ソフトウェア会社が開発主体とされていれば、完成品を顧客企業へ納入するイメージになる。ただ、これらの契約上の規定が、実質を伴っていることが重要で、以下のようなところで検討される。

 

・開発の成果物(設計書、仕様書、プログラム、運用マニュアルなど)は誰のものか

 

成果物が直ちに顧客企業のものとなり、顧客企業が管理するのであれば、顧客企業が開発主体となっている可能性が高い。一方、成果物が一定期間、ソフトウェア会社に留置されていたり、その一部の権利(例えば、転用権など)がソフトウェア会社に残る場合は、ソフトウェア会社側が開発主体と考えられる可能性が高まる。

 

・開発はどこで行われ、誰が管理するか

 

当然ながら、開発が顧客企業内で行われ、その開発プロジェクトを顧客企業の従業員が指揮・管理する(=プロジェクト・リーダーとなる)パターンが、最も、顧客企業が開発主体である可能性が高まる。開発プロジェクトは、顧客企業とソフトウェア会社の混成チームであっても構わない。ただ、プロジェクト・リーダーが誰か、というのは重要だ。

 

 ・・・

 

以上の結果、会計処理には次のような影響がある。

 

5. 履行義務の充足=収益認識のタイミング)

開発主体が顧客企業、それをソフトウェア会社がサポートするという役割分担になれば、ソフトウェア会社はサポート・サービスを提供するのであり、収益認識は、サービスの提供ごと、或いは、提供期間に基づいて行われる可能性が高い。ソフトウェア会社が開発し、それを顧客企業へ納入するのであれば、それを受領・検収した時に収益認識される可能性が高い。

 

2. 履行義務の識別、3. 取引価格の算定、4. 取引価格の履行義務への配分)

当然ながら、サービスか、製商品の納入かで、履行義務の項目・内容も異なってくる。それが異なれば、契約対価も、対価の履行義務への配分も全て変わってくる。

 

 

2015年5月12日 (火曜日)

468.【投資】東芝、工事進行基準、第三者委員会、ストップ安

 

2015/5/14 東芝は、5/13 の深夜に追加の情報を公開して、現時点で判明している過年度財務業績への影響を説明した。この情報は、脚註 *1 に記載したリンク先で見ることができる。

 

2015/5/12

東芝から、5/8 に3つの文書が公表された*1。要約すると次のようになる。

 

A. 不適切会計の調査について、特別調査委員会から第三者委員会への移行を決定した。

 

特別調査委員会は社内委員会(取締役等+外部専門家)だが、第三者委員会は、日本弁護士連合会の「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」に準拠した、弁護士等外部者のみで構成される独立性の高いもの*2

 

B. 決算発表は6月以降の見込みで、株主総会は延期(日程未定)、期末配当は無配とする。 

 

C. 公表していた2015/3 期の業績予想を取り下げ、"未定"とした。

 

東芝は 2013 年にも特別調査委員会を設置しており、その時は、子会社(旧東芝医療情報システムズ)で、過去6年間で98億円の不適切な会計処理が判明したが、過年度決算の訂正には至らなかったという*3

 

また、5/11 には、全上場子会社の決算発表も延期すると発表した。その理由は「グループ会社も第三者委員会の調査対象になる可能性がある」(広報・IR室)ため、という*4

 

 

東芝の 5/11 の株価は、ストップ安(=制限値幅の下限)まで売られた*5。これは、マザーズなど進行市場銘柄ではたまにあるが、東証一部ではあまりお目にかからない。(しかし、たまたま 5/11 は、1億円への大幅減資を公表したシャープも、一時的にストップ安になった*6。)

 

確かに、上記の通り、報道された事実を並べてみると、相当重大な何か(または、その端緒)が発見された印象を受ける。しかも、その内容や規模が明らかでないため、疑心暗鬼を生んでいるようだ。このままでは、さらに下げ続けるかもしれない。

 

この状況は、株主にとっては、相当痛いだろう。ご同情申し上げる。

 

ちなみに、2014/3 期の東芝単体の財務諸表によると、仕掛品残高は約2千億円。このうち、いくらが進行基準によるものかは分からない。進行基準による売上高・売掛金残高も、もちろん、原価率も開示されてない。(状況によっては取り消される可能性がある)繰延税金資産は13百億円。これでは、どれぐらいの規模の訂正になり得るのか、見当がつけられない。そのほか、株主資本合計は94百億円あるが、利益剰余金は12百億円しかない(株主資本のほとんどは、資本金と資本剰余金)。

 

全て悪い方へ考えると、下手に配当して会社法違反のタコ足配当にならないよう、無配とした可能性も考えられるが、そういうことなのだろうか?(即ち、1千億円規模の利益訂正?) いや、そこまで行ったら、経営陣が関与した粉飾決算の規模だ。それはないだろう。しかし、情報が乏しすぎる。もう少し、規模感につながるヒントを開示をしてもらった方が、株主には優しいと思う。

 

ちなみに僕は、東芝は持っていないが、シャープの株を持っている。(ToT)

 

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*1 この3つの文書は、東芝のホームページに掲載されている。一応、リンクを掲載する。

 

東芝トップページ > 企業情報 >投資家情報

 

*2 東芝は、これに先立つ 4/3 に、特別調査委員会の設置を公表していた。その時は、次のように説明していた。

 

現時点までの社内調査では、本件は当社(単独)の一部案件に係る工事進行基準における見積りの合理性という会計処理上の問題であること等に鑑みて、専門性及び客観性を担保しつつ可及的速やかに調査を行うために、当社の事業内容や組織体制等を熟知した社内委員が外部専門家と協力しながら調査を行うことが最適であると判断し、日本弁護士連合会「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」に基づく第三者委員会の形態は採用せず、上記の特別調査委員会の体制といたしました。

 

これに対して、5/8 の文書では、次の通り記載している。

 

本日現在までの特別調査委員会の調査の過程において、一部インフラ工事の工事進行基準案件において、工事原価総額が過少に見積もられ、工事損失(工事損失引当金を含みます。)が適時に計上されていない等の事象が判明しており、また、工事進行基準案件の工事原価総額の見積りの問題以外にも、更なる調査を必要とする事項が判明しており、これらの事実関係の詳細調査及び発生原因の究明にはなお時間を要する見込みとなっております。

当社は、かかる状況に鑑み、調査結果に対するステークホルダーの皆様からの信頼性をさらに高めるため、現状の特別調査委員会による調査の枠組みから、日本弁護士連合会の定めるガイドラインに準拠した、当社と利害関係を有しない中立・公正な外部の専門家から構成される第三者委員会による調査の枠組みに移行することを決定いたしました。

 

4/3 の時点では"疑い"であったものが、5/8 では"事実"となり、加えて、"更なる調査を必要とする事項"の存在も判明している。

 

ちなみに、日本弁護士連合会のガイドラインの冒頭では、外部専門家を加えた内部調査委員会と、外部専門家のみの外部調査委員会の2つのタイプのどちらを選択するかは、基本的には経営者の判断に委ねられており、「不祥事の規模や、社会的影響の度合い」などが考慮されるとされている。

 

決算を延期してでも徹底調査が必要な事項、不祥事の規模や、社会的影響の度合いが大きい事項とは何だろうか。それはまだ明らかにされていない。

 

*3 東芝、2013年度の会計処理に疑い 調査委員会を設置REUTERS 4/3

 

*4 東芝、全上場子会社の決算発表延期へ 不適切会計問題で」日経電子版 5/11 無料記事

 

グループ会社にも関係するという具体的な事実や疑いがある可能性もあるが、単に、新しく選任された第三者委員会メンバーの意向によるものかもしれない。これについては分からない。

 

*5 例えば、「東芝ストップ安、広がる不適切会計問題の影」日経電子版 5/11 有料記事

 

ちなみに、東芝の株価は前週末の終値が483.3円で、制限値幅は80円。5/11(月)の終値は、403.3円。

 

*6 シャープ 大幅減資検討 株価一時ストップ安NHK 5/11

 

 

2015年5月 8日 (金曜日)

467.【投資】連休明けも株価下落

2015/5/8

ん〜、驚いた。FRB(=米国の中央銀行、連邦準備銀行)議長イエレン氏の発言のことだ。既に株価は”quite high”であり、今後FRBが利上げを開始した時は、長期金利が急上昇する可能性があるという*1。これを受けて、米国株式市場は下落し、その勢いが増幅されて5/7の日本も下げた。我々が寝てる間に、昨日の相場は決していた。

 

「寝耳に水」という諺がある。ご存知の通り、「突然思いがけないことを聞いてびっくりする」という意味だが、昔、ある総務部の女性がこれを誤って「寝耳にミミズ」と言った。単に、”み”をひとつ余分に言っただけだが、僕には、かなり大きな違いに思えた。”水”より”ミミズ”の方が、耳に入る時の感触が具体的、かつ、実感を伴って伝わってきたのだ。それで思わず、「気持ち悪るっ。それは驚くを通り越して、怖いよ」と言って吹き出した。

 

イエレン氏の発言は、まさに、”ミミズ”だ。株式投資家にとって、金利の上昇は、景気が良い証拠と考えられるので喜ぶべきことだが、ひとつ、例外がある。それは中央銀行が金融政策を変更する時、すなわち、金融緩和を終わらせて、金利が反転上昇する時だ。今はちょうどそれを待ち構えているタイミング。米国市場では、過去に、そのタイミングで必ず株式相場が、月単位の大きな調整を起こしているらしい。(ということは、日本でもそのタイミングで株価が大きく下落した可能性が高い。)

 

米国のみならず世界の投資家は、少なくともこの2年間2FRBがいつ利上げに転じるかを注視してきた。一方、それを分かっているFRBは市場にショックを与えないよう、利上げに向かう姿勢を少しずつ、なるべくマイルドに、慎重に伝えてきた。まるで腫れ物にでも触るように。

 

それをFRB議長が「株は高すぎるし、金利は急上昇する」と、投資家が怖がる、身の毛もよだつ直接的な表現を使って語るとは。しかも、3月の雇用統計や13月のGDP成長率などから、期待されていた米国経済回復に疑いがかけられているこのタイミングで。

 

 

しかし、問題は、米国経済の実態だ。果たして回復過程を継続しているのか、それとも腰折れしたのか。一番怖いのは、経済の回復が十分でないのに、FRBが誤った状況判断で金利を上げることだ。もちろん、FRBはそうならないよう、最善を尽くしているだろう。だからこそ、FRBに、そして、そのFRBの政策判断を主導するイエレン議長に注目が集まる。僕も注目する。

 

もしかしてイエレン氏は、米国経済に対する状況判断の一端をメッセージに込めているのではないか。例えば、「金利上昇が近いから備えよ(=経済は順調に回復している)」と言っているのか、それとも「経済実態の割に株価は高過ぎる(=回復は遅れているし、利上げも遅れる)」と言っているのか。前者ならば、比較的早期に相場は回復しそうだ。しかし、後者なら、含み損を抱えて、つらくて長い忍耐の日々を過ごすことになりそうだ。しかし、イエレン氏の発言には、利上げに転じる時期は示されていない。

 

その意味で、今日、日本時間の夜9時半に公表される4月の米国雇用統計は重要だ。先月公表された3月のデータでは、雇用者増加数に急ブレーキがかかった。それまで快調にアクセルが踏み込まれていただけに、強烈な印象を残した。果たして、急ブレーキは冬の悪天候による一時的なものか、それとも、景気の腰折れを示したものか。その判断の参考になる4月のデータに注目が集まる。

 

ちなみに、悪天候とともに心配されているドル高(特に対ユーロ)については、3月と4月にそれぞれピークがあったものの、現在は、2月以来のレベルに戻っている。それでも輸出企業を中心に、製造業の雇用は厳しいだろう。しかし、ドル高は消費者にプラスなので、サービス業などがその分の雇用をカバーできるかもしれない。原油安の好影響も期待できる。賃金も着々と上昇している。よく見ると、良い変化もある。恐らく、来月公表される5月の雇用統計では、より明確な結果が見えてくるのではないだろうか。

 

このように考えてみると、イエレン氏の発言は、前者となる可能性も十分に考えられるように思う。つらい日々は続くものの、数ヶ月もかからず、比較的短期間で済むかもしれない。必ずしも、悲観一色ではない。しかし、もし長引いた場合は、中国経済の急減速という新たな危機が浮上するかもしれない3。こうなると厳しい。僕は、イエレン氏の話で”ミミズ”を想像したが、米国経済の回復については、ミミズの歩みのようにゆっくりでないことを祈りたい。

 

 

これは、清水エスパルスも同様だ。エスパルスは、連休前は16位だったが、いまだに勝ち点3を取れず、ついにブービーの17位まで後退した(18位のヴァンフォーレ甲府に、なぜか感謝したい!)。しかし、少なくとも連敗は止まった。体力も、球際も、もっと踏ん張ってほしいが、よく見ると、3バックシステムを採用するなど工夫が見られるし、エースの大前選手も昨シーズンより冴えている。あとは、チームに自信がついて結果が出ることを期待して辛抱したい。

 

しかし、あまりゆっくりはしてられない。そのうちに、”J2降格の恐怖”という精神的な敵が再来し、ますます苦しくなる。これは手強い。やはり、現状から、早く脱してほしい。でも、”シミズ”と”ミミズ”も、なんか似ていて、気になっている。

 

ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・

*1 次のような記事に記載されている。

 

米国株は続落、FRB議長が株式バリュエーションの高まりを警告REUTERS 5/7

株価バリュエーション「かなり高い」=イエレンFRB議長WSJ 5/7(多分、有料記事)

金融リスク、現時点では高くない=イエレンFRB議長WSJ 5/7(多分、有料記事)

日経平均200円安、「適温相場」過信にイエレン氏が警鐘」日経電子版 5/7(有料記事)

 

2 2年前には、日本で当時のFRB議長の名をとって”バーナンキ・ショック”と呼ぶ、数カ月に及ぶ大きな調整があった。きっかけは、バーナンキ氏が金融緩和のアクセルを戻す可能性を示唆した議会証言らしい。この時、「Sell in May」、すなわち、「5月に株を売れ」という米国株式市場の格言が有名になった。米国ではこの調整を”テーパリング癇癪(かんしゃく)”と呼ぶらしい。

 

3 みなさんは、「ギリシャを忘れてないか?」と思われているかもしれない。確かに、ギリシャがデフォルトするか、ユーロ圏に残れるかどうか、というのは大きな問題だ。5/11に一山あるといわれているし、僕も大きな関心を持っている。ただ、株価の面では、米国経済の実態とか、中国の不良債権ほどの直接的なインパクトの大きさを感じていない。

 

2015年5月 1日 (金曜日)

466.【投資】連休前の株価暴落

2015/5/1

今日はメーデー。30年前の今日、僕は『みちのくひとり旅』へ出かけた。大学を卒業してある食品会社へ就職し、最初のメーデーだった。確か、「新入社員はまだ仮採用で正式な組合員ではなく、メーデーの集会へ出る必要なし」みたいな話だったと思う。或いは、職場の先輩から「メーデーは、会社は休みだけど集会への参加は任意」と言われていたのかもしれない。とにかく、当時、福島県より北へ行ったことがなかった僕は、働き始めて最初のゴールデン・ウィークに、JRの在来線を乗り継ぐ旅に出た。(当時はまだ“国鉄”だった。)

 

昨日、4/30は、日経平均が 500円以上も下落する、久しぶりに凄い日だった。もし、これが30年前だったら、僕も株を売却して、旅に憂いを残さないようにしていたと思う。でも、僕はむしろ買い増した。次のような理由からだ。

 

・米国景気の減速は、FOMC(米国中央銀行 FRB 理事が金融政策を決める会議)が“一時的”と評価した。

・中国経済は崖に向かって走っているが、まだ距離はありそう(中国政府に打つ手がありそう)。

・この数か月、欧州経済は回復の兆し。(ちょっと3月の指標は気になるが…、それも考え方次第)

・日本企業はこれ以上円安が進まなくても、業績改善可能な気がする。(少なくとも、あと一年間は)

・投資家は、日経平均2万円回復を2度経験し、高値抵抗感が薄まっているのではないか。

・ギリシャの問題は、この数日で明るい方向へ向いている。(一時的の可能性も高いが)

 

以上から、世界的に景気が急に底割れする可能性は低いので、株価がこのまま下落し続けることはないだろうと思った。そして、連休明けにはきっとまた2万円を試しに行くだろうと考えた。そう思って日経平均連動のETF(=株と同じように市場で売買できる上場投資信託)を買ったら、さらに下落したので驚いた。日銀の金融緩和維持(=追加緩和なし)のニュースに対する反応らしい。しかし、この反応もおかしいと思った。そして、恐る恐る、さらに買い増した。その結果、かなり大きめの含み損を抱えることになった。

 

しかし、悲観はしていない。むしろ、期待の方が大きい。きっとこの相場は回復する。

 

夕方、日経電子版の豊島逸夫氏のブログに「この相場で胆力、リスク耐性を鍛えてみたら?」みたいな記事1が載ったので、励まされた気がした。プロがそう書くなら、「僕の知らないヤバいニュースが相場を下落させた」というわけではなさそうだ。これが一番怖いが、避けられた。望みは十分にある。

 

 

但し、ひとつ、気になることがある。それは“運”だ。

 

テレビ・ドラマ“水戸黄門”の主題歌は、「人生楽ありゃ苦もあるさ」と歌うが、経験からは「悪いことは重なる」のだ(特に僕の場合)。確かに長い目で見れば、悪いことと同じぐらい、いや、それ以上に良いことがあるのだが、ある一時期だけに限ると、悪いことが「これでもか」というぐらい連続する。“運”の悪い時とはそういうものだ。

 

実は、4/29に悪いことがあった。それが続くのか、というのが心配の種だ。

 

その悪いことというのは、「こんなことがあるのだろうか?」というほどの、とびきり、ヒドイことだった。まあ、長くは書くまい。ご存じの方が多いと思うし、詳しく書けば増々気分が落ち込こむ。ということで、簡潔に。

 

5連敗中で喉から手が出るほど欲しい勝ち点3。しかし、それを苦労して口へ運んで、芳しい香りをかいで、ペロリと食べようとした瞬間に地面へ落してしまった。サッカーの場合、3秒ルールで拾い直して食べるわけにもいかない。落してしまえば、もう勝ち点を拾い直すことはできない。そう、清水エスパルスのことだ。80分過ぎまで3対0で勝っていたのに、引分けで終わるとは。

 

もし、このまま連休明けも株価が戻らなければ、それだけ、僕とエスパルスの運勢が強く結ばれているということかもしれない。悪いことが連動している。運命共同体だ。それはそれで嬉しい。しかし、エスパルスも僕も、鞭で打たれて喜ぶタイプではない。この逆境を跳ね返さねば。

 

特に、エスパルスはゴールデン・ウィーク中にあと2試合ある。できれば、連勝で勝ち点6を奪取し、J2降格圏を脱してほしい。もしそうなれば、運命共同体の僕も、連休明けの相場の回復を心安らかに待てるに違いない。

 

でも、エスパルスに先んじて、僕に幸運が訪れ、今日、5/1に相場が回復してくれれば一番うれしい。が、それはなさそうだ。そして、今日も下がるなら、さらに買い続ける覚悟だ。そして、エスパルスの勝利を待ちたい。

 

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1 株急落、どこまで下がる」日経電子版≪豊島逸夫の金のつぶやき≫ 4/30 残念ながら有料記事。

 

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