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2015年6月15日 (月曜日)

477.【投資】黒田発言で衝動買い

2015/6/15

先週木曜は、ハリルJapanがアジアの強豪イラクに40で快勝した。僕は、2年ぶりに代表の試合をスタジアムで観戦した。抜け目のない柴崎岳選手のパスに、昨シーズンのセリエAの開幕当時を思い起こさせる本田圭祐選手の猛ダッシュ、そして鮮やかなゴール。ここからあっという間に3点取った素晴らしい試合。十分楽しませてもらった。

 

と、書きたいが、実はそうではない。ただ、それをうまく言葉にできない。ちょっとフラストレーションを溜めて、家に帰った。誰か僕の思いを代弁してくれる人はいないかと思って、サッカー番組を色々見たが、どうも、褒めるばかりで、ますます、フラストレーションが溜まった。そこへ、ようやく、次の記事。これだ。これこそ、僕が感じたフラストレーションだ。

 

竜頭蛇尾のサッカー日本 終盤もペースアップ必要  日経電子版 6/13 無料記事(大住良之氏)

 

前半20分までは素晴らしい試合。でも、それで終わり(実際には後半39分に原口元気選手がもう1点決めた)。もし、この素晴らしい20分で1点しか取れなかったらどうなっていたか。みなさんもご記憶と思うが、W杯ブラジル大会初戦のコートジボワール戦では、前半16分に長友佑都選手のスローインを受けた本田選手が、見事なゴールを決めた。しかし、それだけだった。後半、ドログバ選手が入ってくると2点取られて逆転負けした。これがW杯グループリーグ敗退の流れを作ってしまった。この記事が主張する通り、代表チームには90分のマネジメントが必要だ。

 

念のために一つ、付け加えておきたい。僕は、後半「こっちのゴールも決めてくれ〜」と叫んでいた。そう、前半のハリルJapanの躍動は、すべて反対側の、遠くのゴールでの出来事で、正直に言うとよく見えなかった。僕は、ゴール裏ではないが、ゴールの真横あたりの席に座っていた。こちらのゴールでは、前半、イラクに攻められることさえほとんどなく、暇だった。向こうのゴール際の席が羨ましかった。しかし、これが、このフラストレーションの理由ではない。本当に、90分間のゲーム・マネジメントの必要性を感じていたのだ。この点は誤解なきよう、お願いしたい。

 

 

ところで、投資にはもっと長期間の広い視野が必要になる。興味を持った会社の株(や投資信託)を購入するには、会社のことだけでなく、その経営環境にも目をむけなくてはならない。その上で、購入のタイミングを短くても数ヶ月、長ければ数年待つ覚悟で臨む。

 

まあ、臨むけど、実際には過去の株価の動きを眺めて、「この値段より下がることはあるまい」というレベルを予想して、発注する。証券会社によって、発注の最長有効期間が異なるが、僕はそれぞれの最長期間で発注する。そして、待つ。それで購入できる場合もあるし、購入できないまま期限切れで発注が消えてしまう場合もある。要するに、“駄目元”で、オーダーを出す。

 

ところが、先週は違うことをした。10日水曜日の午後2時前ぐらいだろうか、たまたま目に入った日経平均のチャート*1が凄い勢いで下落していた。そして、外国為替相場も円高が物凄い勢いで進んでいた。当然ながら、その原因は僕には全くわからない。

 

やばい、と思ってアジアの主要市場のチャートを見たが、こちらは異常なし。中国が震源だと恐怖だったが、どうやら、国内事情のようだ。しかし、特にこんな急落を引き起こすような異常を想像できなかった。13月のGDPは上方に改定されたばかりだし。ただ、要人発言ならありえる。これなら相場が動く可能性はある。しかし、これだけ相場を動かせるのは、極めて少数しかいないし、相当インパクトのある内容でなければならない。日経電子版を見ると、どうやら黒田東彦日銀総裁が、何か言ったらしい*2

 

それでも、釈然としなかった。ニュース記事では、発言内容が良く分からなかったし、黒田総裁が相場に大きな影響を与えるような発言、失言をするようには思えない。

 

その瞬間、僕の頭に閃いたのは「この相場は間違いだ。きっと戻る」だった。そして衝動的に、N225に連動幅が2倍で連動するETFに買い注文を入れた。恐らく、今日は下げ続けるだろうから、市場が閉まる瞬間にオーダーが成立するやり方で。この注文は約定した。

 

市場が閉まると今度は後悔が襲ってきた。なぜ、こんな衝動買いしてしまったのか。明日も、明後日も下げ続けたらどうするのか、と。いつものやり方と違うじゃないか、と。

 

夜、たまらずに、黒田氏の答弁を正確に知ろうと、国会ネット中継*3のビデオを確認した。確かに、報道にあるような「ここからさらに実質実効為替レートが円安に振れることはありそうにない」という内容の発言をしている。但し、その前後で「実質実効為替レートは(IMFが作ったが)迂遠な指標(=直接役に立たないもの)」とか、「(実質実効為替レートが円安に振れないというのは)ドル円レートの予測をするものではない」などと言っており、相場がこんなに激しく動くような発言とは思えない。

 

ところで、実質実効為替レートってなんだ? これは初耳ではないか。

 

“実質”は、物価調整したという意味だ。実効レート(指数)というのは、2国通貨間のレートではなく、貿易量で加重平均した円の総合的な価値の水準を示す。すると、物価調整後の円の総合的な価値という意味か。

 

ネットで検索してみると、日銀のHPに説明が記載されていた*4。どうやら、上記の理解で良いらしい。だが、そもそも、為替レートは、2国間の物価変動が調整済みではないか(=物価上昇率の相対的に高い国通貨の為替レートは下落する)。これを加重平均するのだから、改めて物価調整する必要があるのか。イメージがわかない。具体的に、名目値と実質値のグラフで、過去の推移の差を見てみたい。

 

見た。日銀のHPで作成することができるのだ*5。確かに、前原氏が指摘するように、“実質”実効為替レート指数は1986年のプラザ合意前どころか、1970年代の1ドルが300円を超えてたころと同じ水準まで下がっている。

 

しかし、実質値がおかしいのは、日本のインフレ時代(1990年代途中まで)は、名目値によりそっていたのに、デフレ時代になると低下することだ。デフレで価値が下がる“実質値”って、なんなんだ? 普通は逆だろう。これは、黒田氏の言う通り“迂遠”だ。

 

やはり、この相場は間違いだ。これは戻る。改めて、そう自分に言い聞かせて寝た。しかし、目が覚めてしまう。もしかしたら、報道は間違っていて、もっと他の原因があるのではないか。それを見落としてないか。だとすれば、戻らない可能性も十分考えられる。

 

朝4時頃だろうか。Yahoo Financeに詳しいドル円のチャートがあることを思い出し、先ほどの国会ネット中継の発言の時間と、円相場が動き始めたタイミングが合っているか確認できると気付いた。もし、黒田発言より先に相場が動いていれば、他の理由があることになる。黒田発言より、遅れて動き出した場合もその可能性が残る。

 

国会ネット中継によると昼休みが終わり1時頃に午後の委員会が再開している。そして、その直後に前原氏が質問を始めた。そこから13〜4分で、例の黒田発言がある。これと円相場の動きは一致しているだろうか。

 

Yahoo Financeのチャートは、過去数時間については分単位で円相場の動きを見られるが、残念ながら、前日の午後1時過ぎのチャートは15分単位の動きしか見られなかった。それでも、おおよそ、この発言と同じタイミングで相場が動き出していることは分かった。やはり、きっかけはこの発言だ。気持ちを沈めて、もう一度ベットに戻った。

 

黒田発言の翌日、11日の日経平均は300円以上急騰した。僕はすっかり不安が消え、逆に欲が出た。この日は売らなかった。まだ、戻しが足りないと思ったのだ。そして、冒頭のハリルJapanのイラク戦を見に、日産スタジアムへ出かけた。

 

さらに翌日12日の金曜日も売らなかった。この日も日経平均は若干上げたが、もっと戻ると信じていた。ハリルJapanに感じてる言葉にできないモヤモヤをスカッと晴らしたかったのかもしれない。とにかく、強気だった。

 

しかし、その夜、米国市場は大きく下げて、この週の取引を終えた。ギリシャ問題が暗礁に乗り上げている。しかも、若干だが円高に振れている。やはり、売っておくべきだったか。月曜の日本の株式市場は下げて始まるに違いない。

 

さて、今週のマーケットはどうなるだろう。ギリシャ問題と米国FOMC(=連邦公開市場委員会)次第か。いずれにしても、僕の緊張状態は当分続きそうだ。きっと、月曜は、売るに売れないだろう。これも、衝動買いの付けだ。衝動買いなどすべきではないが、買ってしまったものはしょうがない。勝負を逃げるわけにはいかない。

 

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*1 WSJのトップページに主要マーケット指標のミニ・チャートが概ねリアルタイムで掲示されている。日経平均は20分ほど遅れているかもしれない。円相場はリアルタイム。上記には“たまたま”と書いたが、実際には1日に何度か見る。米国の株式市場は、夜10時半から始まり、早朝5時に終わる(サマー・タイム)ので、寝る前と朝にも、Dow30を確認する。この他、アジアや欧州の指標も見ることができる。

 

*2 黒田日銀総裁、実質為替レート「さらに円安に振れることはありそうにない」 日経電子版 6/10 無料記事

 

*3 正式には、“衆議院TVインターネット審議中継”。同様のものは参議院にもある。もし、ご興味のある方がいれば、下記のリンクをクリックすると、6/10の財務金融委員会のページが開く。前原氏の質問に対する黒田氏の実質実効為替レートについて「さらに円安に振れることはありそうにない」という回答は、3:30:20(3時間30分20秒)付近から始まる。

 

6/10の財務金融委員会

 

*4 「実効為替レート(名目・実質)」の解説 日銀HP

 

*5 日銀のHP時系列統計検索サイト)で、実効為替レートのグラフを作成してみた。このグラフは、円の価値が上がると上昇するらしい。名目も実質も、2010年を100としているが、スタートの1973年の位置を合わせたので、グラフは縦にずれている。左のメモリが名目値で、右のメモリが実質値。メモリの刻みは同じ10単位。

 

20150615_04732

 

・名目値のグラフは緑の実線。1970年代から右肩上がりで、20002007年はレンジ内で右肩下がり、リーマンショックで上昇後、2011年をピークに、2012年末から下落している(アベノミクス)。

・実質値のグラフは青の実線。上昇のピークは1994年で、現在は、1973年のレベルに下落している(なんと、1ドル300円時代!)。

・日本でデフレが始まった1998年(消費税率3%5%)のちょっと前から、実質値が名目値を下回っている。デフレは通貨価値を上げるので、デフレで価値が下がる“実質値”って、おかしい。

 

 

 

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