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2015年6月21日 (日曜日)

480【番外編】ギリシャの言い分

2015/6/22 冒頭の今月末のIMFへの返済額を訂正しました(2016)。

 

2015/6/21

昨年12月のギリシャ大統領選から半年も欧州を中心に世間を騒がせているギリシャ問題。今まで、決着の期待を次々と打ち砕いてきた。しかし、いよいよ、正念場が近づいたのかもしれない。いや、今度こそ「ギリシャが修羅場を選択する」と言った方が良いか。ギリシャは、先月は国内資金をかき集めるウルトラCでなんとかしたが、いよいよ、今月末のIMFへの返済(16億ユーロ)は、ダメらしい。

 

この問題について、恐らくみなさんは、次のようなイメージをお持ちではないか。僕もそうだ。こういう情報が多いので、多くの説明はいらないだろう。箇条書きにする。

 

・ギリシャがデフォルトすれば、債権者たちの要求(=緊縮財政)以上にギリシャ国民が苦しむ。

・ギリシャは資金繰りが行き詰まるので、いずれ債権者たちの要求を飲まざる得ない。

・ギリシャは怠け者の浪費家である一方、債権者たちの要求には正当な権利がある。

・ギリシャがユーロ圏から脱落しても、ユーロ圏に与える影響は軽微である。

・ギリシャがデフォルトすればユーロから離脱せざる得ない。すると自前の通貨を発行することになるが、デフォルトした国の通貨価値は急落するので、輸入品の価格が暴騰し、超インフレが発生し、国民生活が窮乏する。

 

要するに、立場が強く、正しいのは債権者たちであり、逆に立場が弱く、間違っているのはギリシャ。ギリシャのデフォルトは、ギリシャ国民にとっては悲劇だが、自業自得である。しかも、その他のユーロ諸国にはすでにその備え(=ECBによる国債買付制度などによるユーロ安定化策)ができている、というのだ。だが、こうして並べてみると、これらが債権者たちの見方であることがわかる。

 

では、ギリシャはどのように考えているのだろうか。これは報道が限られていて、なかなか分かりにくいが、どうやら次のようなものらしい*1。こちらはちょっと詳しく書く。

 

2010年のギリシャ危機の際、ギリシャは本来独仏等の大手金融機関が負うべき損失を、債務として肩代わりさせられた。その分は支払いたくない。棒引きして欲しい。

 

本来は2010年時点で、ギリシャはデフォルトすべきだった。そして、その当時、多額の資金をギリシャへ貸し込んでいた独仏の金融機関が、貸し手責任に相当する損失計上すべきだった。しかし、当時の債権者たち(=EUECBIMF)は金融不安を恐れた(或いは、公的資金で金融機関を助けることへの国民の嫌悪感を恐れた)。その結果、民間金融機関の債務を、実質的にユーロ諸国、ECBIMFで肩代わりした。それがギリシャの現在の負担の一部になっている(ちなみに、当時のフランスの銀行の債権は200億ユーロ、ドイツの銀行は170億ユーロ。現在のレートで5兆円ぐらい)。

 

特に、IMFはこの時、それまでの融資基準を曲げて「ギリシャは返済可能」と判断したという。即ち、IMFは、2010年時点で「ギリシャは(従来のルールでは)債務返済能力なし」と判断すべきところを融資したらしい。これが本当なら、IMFへ資金拠出している世界中の国々への背任行為だ。

 

結局、債権者たちは、2010年にギリシャを助けたと言っているが、自分たちの利益を優先して、ギリシャに債務を負わせたにすぎない。契約上は、債務者たるギリシャに債務返済の義務があることは明らかだが、債権者たちも、実はこのような責任を負っている。その手は綺麗ではない。

 

2014年までの期間に、債権者たちの要求をなるべく受け入れてきたが、債権者たちの計画通りに債務が減らない、というより増えている(GDPが著しく縮小、税収も上がらない)。要求や計画に無理がある。

 

・このままでは、永久に債務返済に追われ、窮乏し続けることになる。

 

以上に加え、ギリシャは、今からでも一旦デフォルトして債務削減した方が、長い目で見て良い結果を得られるという見方もある。(例えば、ユーロ圏の外、第三者的立場の英国で。*2

 

一般庶民レベルでは、政府に対する不信感も大きい(=庶民の被害者意識が強い)。2010年時点の債務は、富裕層の脱税に起因するものも多く、当時のフランス財務大臣ラガルド氏(現IMF専務理事)が、ある銀行のスイス支店から入手した脱税が疑われる者のリストをギリシャ政府へ提供していたのに、ギリシャ政府がまともな調査をしなかった。政府(前政権や官僚機構)と富裕層の癒着が疑われている。

 

また、当時IMFからギリシャの財務省へ配置されていた人物が、この調査を妨害したという話もあるらしい。IMFとギリシャ富裕層との癒着が疑われる話だ。このラガルド・リストに記された隠し預金の総額は20ユーロとのことだが、これは“ある銀行のスイス支店”のリストにすぎず、これがすべてではなさそうだ。

 

これで、債権者たちの見方と、ギリシャ側の見方の両面が見えたように思う(上記は、一部に過ぎない。実際にはもっと様々な状況がある)。しかし、だからといって、なんの解決にもならない。ますます、両者の妥協や合意が難しいことが分かっただけだ。ということは、このままでは、今月中か、遅くても、来月には、ギリシャは資金繰りが破綻し、デフォルトするだろう。これが引き金になって、ギリシャのユーロ圏離脱、EU脱退ということになるかもしれない。

 

 

さて、みなさんは、ここまで読まれてどのように感じられただろうか。

 

僕は、債権者たちが譲歩すべきと思うようになった。ギリシャは、さらなる年金減額と、さらなる最低賃金の引き下げ(両方とも、既に前政権時代に引き下げている)、増税を拒否し、(前政権で解雇した清掃員などの低賃金の)公務員を再雇用しているが、他の面では債権者たちの要求を受け入れているようだ。これで足りない分は、債務減免したらどうだろう。

 

このまま、国同士のエゴを戦わせても、ヨーロッパは幸せになれないような気がする。このままでは、ユーロどころか、EU自体も失敗へ向かいそうな気がする。もし、EUがなくなれば、ロシアやドイツと他の国々の関係が、ますます不安定になる。ヨーロッパは、また火薬庫へ戻ってしまう。もちろん、その影響は日本へも及ぶ。

 

IMFについては、日本も多額の資金を拠出している立場であり、ギリシャ支援の詳細を問いただした方が良いかもしれない。特に、支援先の国の富裕層との癒着があれば、看過できない。

 

🍁ー・ー🍁ー・ー🍁ー・ー🍁ー・ー🍁ー・ー🍁ー・ー🍁ー・ー🍁ー・ー🍁ー・ー🍁

*1 これらの内容は、主に、次の番組の情報によっている。

 

トロイカ”の功罪 ヨーロッパ緊縮財政は誰のため? NHK BS1 5/21 0:00放送

BS世界のドキュメンタリー)

 

上記には“ギリシャの意見”として記載したが、このドキュメンタリー作品はドイツで製作されたもの。上記以外にも、様々な観点から、債権者たちの矛盾(番組の中では、一部、犯罪行為とさえ呼んでいる)を紹介している。残念ながら、NHKオンデマンドの対象ではないらしいので、ご覧になりたい方は、次の再放送を期待するしかないようだ。

 

上記に挙げたものは、それぞれ個別に、断片的なニュースとして読んだ記憶があるが、まったく理解不足だった。この番組で、ようやく意味がわかった気がする。

 

*2 これは、次の記事に書いてある。

 

[FT]債権者を恐れる必要がないギリシャ  日経電子版 Financial Times 翻訳記事(無料) 6/15

 

但し、この記事の趣旨は、ギリシャにデフォルトを薦めているわけではなく、むしろ、ギリシャがデフォルトすれば困るのはドイツなどユーロ圏なので、メルケル首相が譲歩すべきと主張しているように思う。

 

 

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