481【投資】パッキャオ越え! 165億円の役員報酬って?
2015/6/24
日経電子版の下記の記事は、衝撃だった。
ソフトバンク、アローラ氏に報酬165億円 孫氏後継候補 6/20 無料記事
ソフトバンクは、なんと、6/19に代表取締役副社長に就任したニケシュ・アローラ氏に165億円もの報酬を支払ったという。最初は、桁数間違いの誤報ではないかと思った。しかし、有報に書いてあるというので、有報をEDINETからダウンロードして確認してみた。
すると、PDF版のP202、注記事項の「43.関連当事者」の「(2)主要な経営幹部に対する報酬」の注2に、以下のように書いてある。
2015年3月31日に終了した1年間には、ニケシュ・アローラへの報酬、16,556百万円(短期報酬14,561百万円、株式報酬1,995百万円)が含まれています。
ん〜、間違いない。これは財務諸表の注記なのだから、監査人もチェックしている。確かに165億円支払っている。しかし、取締役報酬には定款か、株主総会決議による上限があったはず。それがこんなにでかいはずはない。ちがう、アローラ氏はつい、6/19に取締役になったのだから、2015/3/31より前は役員ではない。この上限規制の対象外ということだ(会社法の規制はおかしい!)。
アローラ氏の経歴を見ると、昨年9月から、ソフトバンクの“バイスチェアマン”なる役職に就き、その他、SB Group USやSprintの役員にも就任している。これら一連の過程で、この多額の報酬を支払ったのだろうか。わからない。契約金のような一時的なものか。これがグローバル・スタンダードなのか? もっと詳しい説明が欲しい。しかし、有報にはこれ以上の情報はない。
株主総会では何か説明があったのだろうか。確かネット中継していたはずで、ホームページに動画が掲載されている*1。
ん〜、確かにアローラ氏がクローズアップされていて、既に、インドやASEAN諸国におけるM&Aで活躍したと紹介されている。さらに、株主からの質問に応じる形で、Yahoo Japanが検索機能をGoogleに乗り換えた時にアローラ氏がGoogle側の担当者として孫正義氏と交渉をしたこと、その過程で孫氏がアローラ氏に惚れ込んだことなどが紹介された。アローラ氏は、Googleで、数十億(百億に近い方)の報酬を得ていたそうだ。
報酬としての165億円とは、どういう意味があるのだろうか。確か、ボクシングのパッキャオ選手がこれくらいもらっていたように思うが*2、プロモーターにすれば、世紀の対決にはこれを支払うに足る十分なキャッシュ・インがあったから当然、ということだろう。では、ソフトバンクも、既にそれぐらい現金収入があったのか? いや、これからだろう。期待値だ。適切に、割り引いたのか?
報道では、“一時金”という表現もある*3が、今後はいくら支払われるのだろうか。毎年100億円クラスの報酬になるのか、それとも、今後はもっと日本の常識的なレベルに落ち着くのだろうか。
ソフトバンクのホームページで公表されている“コーポレート・ガバナンスに関する報告書”によれば、この6/19時点では、取締役報酬は、取締役全員の総額の上限が8億円とされている*4。しかし、これはソフトバンク単体についてのみの限度額であり、子会社から支払われるものは含まれない(会社法の規制はおかしい! この報告書の開示も同様!!)。結局分からない。
やはり、僕のような凡人は、孫正義氏の思考についていけない。それをもらうアローラ氏の感覚にもついていけない。リーマン・ショックの時に批判された欧米投資銀行の経営者のギラギラした顔が頭に浮かぶ。せめて、もっと明確な説明があればよかったのだが・・・。残念だが、ソフトバンク株を長期保有銘柄のリストから外そうか・・・
だが、総会の動画を最後まで視聴して、考えを改めた。アローラ氏は、孫氏に促されて新任取締役の挨拶を行ったが、その最後を次の言葉で締めた(1時間35分過ぎから)。僕はこういうのに弱い。
(孫氏についていくことは大変なことと述べた上で)・・・私が会社に提供させていただくことができることは、父から学んだ価値観であります。それは即ち、常に正しいことをすること。私自身会社のために、そして会社の株主のみなさまのために、正しいことを成し遂げたいと考えております。
シンプルで力強い価値観。是非、大事にしてください。その言葉を信じて、これからも、応援させていただきます。
🍁ー・ー🍁ー・ー🍁ー・ー🍁ー・ー🍁ー・ー🍁ー・ー🍁ー・ー🍁ー・ー🍁ー・ー🍁ー・ー🍁ー・ー🍁
*1 ソフトバンクのホームページの以下のページで、総会の動画を誰でも視聴できる。
*2 もう少し少ないようだ。しかし、対戦相手のメイウェザー選手は、もっともらったようだ。
守備の達人メイウェザー、強打パッキャオを封じる 日経電子版 5/3 無料記事
この記事では次のように報じられている。「AP通信によると両者の報酬はメイウェザーが216億円、パッキャオも144億円に届く可能性があるという。」
*3 例えば以下の記事。
孫正義氏「後継者」、報酬165億…一時金含め YOMIURI ONLINE 6/19
「後継候補」アローラ氏に報酬165億円 ソフトバンク 朝日新聞DIGITAL 6/19
再送-ソフトバンク、副社長就任のアローラ氏に報酬165億円 REUTERS 6/20
冒頭に紹介した日経電子版の記事でも“入社に伴う契約金”とあり、一時的な性格であることが表現されている。
*4 ソフトバンクのIR情報の下記ページに、2015/6/19時点の“コーポレート・ガバナンスに関する報告書”が、公表されている。
取締役及び監査役の報酬限度額については、次のように記載されている。
・・・報酬限度額は、株主総会決議(1990年6月28日決議)によって、取締役は年額800百万円以内(総額)、監査役は年額80百万円以内(総額)と定めています。
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