484【オリンパスの粉飾】“指南役に実刑判決”の怪
2015/7/2
IASBが、IFRS15「顧客との契約から生じる収益」の内容をさらに変更しようと検討していること、そして、IFRS15の発効日を1年延期しようとしていることをこのブログに記載*1してから、すっかりIFRS15から離れて、番外編ばかり書いている。今回も、番外編だ。なかなか関心が、IFRSへ向かわない。強烈な出来事が次々に起こっている。今回は、久しぶりのオリンパス事件だ。
みなさんもご存知の通り、昨日(7/1)、オリンパス事件(有価証券報告書の虚偽記載)でついに実刑判決が出た*2。指南役とされる横尾宣政氏と羽田拓氏だ。オリンパス元社長の菊川剛氏でさえ執行猶予付きだったことは、以前、このブログでも報告した*3。1,000億円もの巨額粉飾事件がこんなに軽く扱われて良いのかと、今まで内心に怒りを溜めていたが、実刑判決が出て、ようやくホッとした気がする。
いや、待て。粉飾決算を行った当人(=社長)が執行猶予で、アドバイザーが実刑ってどういうこと?
昨年12月にも、指南役の判決が出たが、こちらも執行猶予付き。するとこの事件は、上記の横尾氏と羽田氏が主犯ということか。ありえない。企業の外部者が主犯であるはずがない。この判決は、常識では考えられない。裁判官は本当にこんなことがありえると思っているのだろうか?
まあ、量刑は、主犯かそうでないか以外にも、様々な観点から検討されるのかもしれない。しかし、粉飾決算はやろうと思った人、実際にやらせた人、意思決定した人が一番悪い。もちろん、強制されたのであれば、強制した人も悪いが、菊川氏は会社の最高権力者だったのだから、その言い訳は通用しない、と僕は思う。ちなみに、この事件では誰も損してないから軽犯罪で良いという意見もあるようだ*4。
さて、みなさんはどう感じられただろうか。
株式市場は、国民の財産形成にもっと積極的に利用されるよう、もっと信頼性を高めないといけない。相場が上下するリスクは当然あるが、企業が開示する情報には信頼性がないといけない。それには、起こった事件の真実を解き明かし、しっかり罪に問う必要があると思う。こんな裁判で良いのだろうか。
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*1 「478【収益認識'14-10】基準発効日(=適用開始日)の延期」(6/16)の末尾。
*2 次のような報道がある。
「オリンパス粉飾、指南役らに実刑判決 東京地裁」 7/1 日経電子版 無料記事
「オリンパス粉飾事件、指南役に実刑判決 東京地裁」 7/1 朝日新聞DIGITAL
*3「264.【オリンパスの粉飾】地裁で執行猶予付き判決」(2013/7/6)
*4 例えば、下記の記事の一番下の段落に記載されている。
「オリンパス事件 驚くほどの軽犯罪で終わるのか?」 日刊SPA!(1/8)
ちなみに、このオリンパス事件には被害者が存在しない。現在のオリンパスの株価は事件前よりも高く、解任されたウッドフォード氏は労働審判でオリンパスと和解し、12億円もの和解金を手にしたからだ。大騒ぎしてみたものの、実は拍子抜けするほどの軽犯罪にすぎなかった……そんな可能性をはらんだ経済事件なのだ。
しかし、この事件は、あまりに巨額の粉飾だったので、企業開示制度に大きな傷をつけた。もちろん、実際に株価が下落する過程で売却損を被った株主も多いに違いない。ウッドフォード氏も、経営者として腕を振るいたかったのであって、このような結末を望んでいたわけではない。
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