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2015年7月14日 (火曜日)

489【番外編】ドイツのパワハラ?

 

2015/7/14

 ギリシャ人曰く。

「5年間言われたとおりにしたが、経済は縮小するし、失業率も下がらない。負債は逆に増えるばかり。今度こそ、本当に助けてくれ。」

 

 ドイツ人答えて言うには、

「怠け者め、全然、努力が足りないよ。助けて欲しけりゃ、さらに節制せよ。」

 

 ギリシャ人曰く。

「もう限界だ。これ以上の搾取は止めよ。」

 

 ドイツ人答えて言うには、

「なに? 反抗は許さない。(法案を通してから)出直してこい。」

 

今回のギリシャ危機は、僕にはこんなやりとりが聴こえてくる。僕はギリシャに肩入れしているので、こんな感じだが、一般的には、全く違う会話に聴こえているだろう。例えば・・・

 

 ギリシャ人曰く。

「これ以上の労働も節制もイヤ。早く援助してくれ。」

 

 ドイツ人答えて言うには、

「天は自ら助くる者を助く。」

 

 ギリシャ人曰く。

「じゃ、やるよ。働くし節制もする。だから助けてくれ。」

 

 ドイツ人答えて言うには、

「信用できない。(法案を通して)証を見せよ。」

 

 

ドイツは「ギリシャの(言葉の)信用」に焦点を当てているが、僕は「ギリシャの返済能力」に焦点を当てるべきと思っている。IMFも、そう主張している。だが、ドイツのメルケル首相はそれを「問題外」としているそうだ。(「ギリシャ債務のヘアカットは問題外、メルケル独首相が再度表明REUTERS 7/9

 

12日のユーロ圏首脳会議は大幅に延長、夜通し17時間も行われたという。双方とも一生懸命だ。しかし、上記の会話と同様、結論*1の受け取り方も掛け違っている。首脳会議後の両首相の発言を並べてみよう。

 

 メルケル首相

メルケル首相は、痛みの伴う改革をギリシャが実行すると信じているかとの質問に対し、「長く困難な道のりになるだろう」と述べた。(「独首相、支援協議開始を議会に推奨へ ギリシャの法案通過条件にREUTERS 7/13

 

 チプラス首相

チプラス首相は夜通しの協議を終えた後、記者団に対し「今回の厳しい協議で、われわれは何とか債務再編を勝ち取った」と述べた。(「ギリシャ、成長パッケージと債務再構成でユーロ離脱回避=首相REUTERS 7/13

 

メルケル氏はギリシャに苦難を与えたと思っているし、チプラス氏は(ユーロ圏残留と)債務再編を勝ち取ったと思っている。まあ、双方ともそれぞれ国内向けの発言なので、焦点が食い違うのは当然かもしれない。しかし、少なくとも債務再構成は、議論のテーブルに乗せることは決まったものの、再構成されることが決まったわけではないし、債務削減(=元本削減)は議論の対象外とされている*1。チプラス氏は、意図的に楽観的な見通しを述べている。

 

しかも、ギリシャが15までにより厳しい緊縮策を議会通過させても、それは(第3次支援)交渉に入る切符を得るに過ぎないし、支援が決まるまでのつなぎ資金の出し手はまだ決まっていない。チプラス氏が言うように、第3次支援で債務削減を求めるなら、ギリシャ国民だけでなく、チプラス氏にとっても長く困難な道のりが待っていると思う。明らかに状況は、メルケル氏の発言の方に合致している。

 

だが、それはメルケル氏が正しいからではなく、ドイツに押し通す力があるからだ。僕には、これがパワーハラスメントのように見えるから、このまますんなり状況が改善に向かうようには思えない。ギリシャ国民は反発するだろうし、それを受けてドイツ国民はもっと態度を硬化しそうだ。恐らく、まだまだ、波乱は続くに違いない。

 

7/8の「487【番外編】ギリシャ問題からドイツ問題へ」で書いた“新しい主役”は、IMFか、フランス・イタリアか。いずれにしても、まだ、主役にふさわしい活躍はしていない。

 

 

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*1 ユーロ圏首脳会議の結論(=ギリシャが越えるべきハードル)が比較的詳細に記載されているのは、以下の記事。

 

情報BOX:ユーロ圏首脳が合意したギリシャ新支援への条件 REUTERS 7/13

ユーロ圏首脳が支援開始条件でギリシャと合意、議会可決が必要 REUTERS 7/13

ユーロ圏首脳がギリシャ支援合意、全会一致で=EU大統領 WSJ 7/13

 

繰返し報道されている付加価値税増税や年金改革のほか、以下が目を引く。

 

・主要法案を議会などに提示する前に、債権団(ユーログループ、IMFECB)の事前承認を得ること。

 

・ギリシャ国有資産をギリシャ政府から独立した信託基金へ移管し、資産売却を進めること(一部国営企業の民営化を含む。規模は500億ユーロ/7兆円弱。売却資金は債務返済や銀行への資本注入などに使われる)。

 

その他、行政機関を政治から独立させ近代化を図る諸制度改革、労働市場改革なども盛り込まれている。

 

これらと引き換えに、ギリシャが受ける支援は、860億ユーロ(約11兆円)のESMからの融資と、債務の再構築の可能性(“再構築”とは、返済スケジュールの後ろ倒しや金利減免のことらしい。“可能性”と書いたのは、交渉のテーブルに乗せるということであり、再構築が決定したわけではないため)。債務削減(=元本削減)はしないという。

 

ギリシャが債権者たちから受ける監視・干渉を、企業や個人の話に置き換えて考えてみよう。企業なら管財人に支配された企業のようだし、個人なら破産者扱いだ。当然債務免除(=元本削減)も受けているだろう。しかし、ギリシャには、まだそれが許されていない。

 

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