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2015年7月28日 (火曜日)

495【税効果02】税効果会計って?

2015/7/28

今では当たり前になっている税効果会計だが、2000年の会計ビックバン以前は、知らない人が多かった。当時、監査チームの現場を仕切る立場だった僕には、クライアントの社長や部門責任者などから、よく質問があった。「一応、経理部から教えてもらってはいるんだけど、どうも分からなくて…」という感じで。「税効果ってなに? 簡単に教えて」 ん〜、難しい。

 

税効果については、会計と税務会計の違い(=一時差異)、それが財務諸表へどのように反映されるか(繰延税金資産の回収可能性を含む)に関する上手な説明が必要になるが、いずれも理屈っぽい話になる。しかし、そのまま理屈っぽい説明をしてもダメだ。それが分からないから僕のところに来たのだから。

 

とはいえ、残念ながら、僕も上手に説明できた記憶はない。

 

当時は(今もあまり変わらないかもしれないが)、会計といえばP/Lのことであり、利益がどうなるかをみんな知りたがった。税効果会計は、歴史的にはP/Lから始まったものだが、日本へ税効果会計が導入された時には、すでにB/S中心の理論へ移行していた。これは、“繰延税金資産の回収可能性”に典型的に見られる。ますます、説明が難しくなった。

 

当時、僕がしていた典型的な税効果の説明は、次のようなものだった。

 

御社では税務上売上を発送基準で計上してますね。でも、会計上は検収基準に直すでしょ*1。すると、売上や利益の一部は、翌期分として取消しますから、その分減ってしまいます。ところが、税務上は減らさないで課税所得を計算するので、その分、法人税等をたくさん支払います。税前利益に比べて多額の税金が費用として計上され、税引後利益が小さくなってしまいます。

 

会計的に見れば、それは税金を翌期分までたくさん計上し過ぎているので、その分、減らしてやるのが税効果会計です。そうすると、利益と税金のバランスが整います。

 

ここで説明を終えられれば良いのだが、まだ続く。

 

但し、条件があります。ここからが重要です。本当に減らして良いのか、実際に減るのかを確認する必要があります。例えば、当期と翌期以降で税率が違うと問題があります。当然ですが、今年余分に納税した分は、今年の税率で計算されます。ところが、会計上は来年納税するかのように計算するので、減らす分は来年の税率で計算します。減税される場合は、余分に納税した全額を減らせるとは限りません。

 

ほぼ、これで質問者の限界を超えてしまう。ニヤニヤしながら、「やっぱり、難しいねぇ」と言われて終了となる。繰延税金資産の回収可能性の説明まで話が持たない。だが、稀に突破した場合は、次の説明へ続く。

 

加えて、将来も課税所得がプラスで、税金を払い続けられる会社じゃないと、減らせられないのです。税効果会計で減らされる税額というのは、その後、納税額を節約できるから減らせるのですが、例えば、翌期赤字が予想される場合は、その期は税金を払いませんよね。払わない場合は節約のしようがないので、減らすこともできません。

 

これで、100%沈没する。この先にある、繰延税金負債の話などしたことがない。

 

 

やはり、B/S面から理論構築された現在の税効果会計は、B/Sで説明する方が良い。多少、B/Sの重要性が浸透してきた今なら、次のように説明するのではないか。

 

税効果会計では“繰延税金資産”と“繰延税金負債”が計上されます。この資産が計上されると法人税等が減って利益が増えるし、負債が計上されると逆に費用が増えます。問題は、どういうときに資産や負債が計上されるかです。

 

例えば、御社の場合、税務上は売上を発送基準で計上してますが、会計的には一部売上を取消して検収基準へ直してますね。そうすると利益は減りますが、法人税等は税法に従って減らす前の課税所得で計算するので大きめに計算されます。税引前利益に比べて税金が大きくなるので、利益と税金のバランスが崩れます。そこで、資産に計上すべきものがないか探して、あれば、繰延税金資産へ計上します。するとその分利益が増えて、バランスが良くなります。

 

資産に計上すべきものとは、将来、お金を生むものです。それが税効果会計の場合は、「将来の税金支出を節約できるもの」ということになります。

 

今年取消した売上や利益に対応する税金は、税務上は今年納税されるので、来年は、会計上売上や利益は計上されますが、法人税等としては発生しません。すると利益に対する税額のバランスが逆に小さくなります。これを“来年の税金の節約”と考えて、来年節約できる分を今年資産計上します。但し、来年業績が赤字で、税務上も課税所得がマイナスが見込まれる状況だと、来年は税金の支払い自体がありませんから節約もできません。節約できないなら、今年、資産計上できません。

 

ここまでくると、やはり、「難しいねぇ」と言われそうだ。だが、ここまで説明していれば、次のように締め括れるだろう。

 

要するに、ある程度の金額の税金を毎期支払っているような業績の良い会社でないと、税金節約効果である繰延税金資産を計上しづらいですよ。税効果会計のメリットを享受するには、コンスタントに納税し続けられる好業績を続けることがポイントです。

 

やはり、負債の話には到達できないが、“繰延税金資産の回収可能性”のエッセンスまでは話が持ちそうだ。それに、ここまでの知識が入れば、東芝のニュースを読んで「1,500億円も利益を減らすと、繰延税金資産が危うい」ことが、なんとなく理解できるだろう。そうなれば、恐らく、「聞いてみてよかった」と、一応、現業部門の方に思っていただけるような気がする。

 

 

さて、IFRSの場合、税法と会計の違い、即ち、一時差異までは各国の制度次第なので、ほぼ、守備範囲外になる。すると残りは、どの時点の税率で一時差異を計算するかや繰延税金資産の回収可能性といった部分になる。前者は簡単なので(=一時差異解消時の税率)、今後は、後者をメインに進んで行くことになる。

 

 

🍁ー・ー🍁ー・ー

*1 この部分は、会社によって、或いは、質問者の担当事業領域によって、適当に例を変える。例えば、税務上は認められない引当金(或いは、税法とは異なる引当金の計算方法)とか、税法耐用年数より短い経済耐用年数を使って減価償却している、減損損失など。

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