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2015年8月19日 (水曜日)

499【税効果04】公開草案の質問事項=改正の主な内容

 

2015/8/19

すでにみなさんもご存知の通り、レスター・シティの岡崎慎司選手がプレミア・リーグ第2、ウェストハム戦で移籍後の初ゴールを決め、レスター・シティ連勝の原動力となった。ゴール・シーンを視聴したが、足を精一杯伸ばしてのボレー・シュートをキーパーに上へ弾かれ、そこをさらに頭で突っ込み、ゴールネットを揺らした。まさに、ゴール大好きの岡崎選手らしいゴールだった。

 

先月、岡崎選手は一時帰国した際に、清水エスパルスの試合の応援に駆けつけた。地元テレビでは、エスパルスのエース大前元紀選手との対談も放送されたが、新天地への想いより、2010年まで在籍したエスパルスへの憂いを語るとともに、大前選手の奮起を促していた。プレー同様、シンプルで純朴な人柄だ。その後、大前選手はリーグ戦で大活躍している(但し、失点が多くチーム成績には結びつかず😱)。

 

ブンデス・リーガからプレミア・リーグというさらに難しい環境への挑戦を決断した岡崎選手のさらなる活躍に期待したい。ん〜、ん〜、とてもワクワクしているが、悩ましい。

 

 

実は、とても不思議に思っていることがある。“しんじ”つながりの香川真司選手は、プレミア・リーグのマンチェスター・ユナイテッドへ移籍してすっかり調子を落としてしまった。審判が反則の笛をなかなか吹かず、屈強なディフェンダーが力任せにのしかかってくるプレミアに順応することは、ブンデスで実績を残してきた選手にとっても難しい。ところが、岡崎選手は、まるでプレミアで育ったかのように、もう、すっかり溶け込んでいる。

 

逆に、激しい守備で相手ディフェンダーを混乱に陥れている。ボールを奪取すると、すかさず、見事なパスを前線に送る。味方選手との連携も素晴らしい。パスを受けると素早く反転し、同僚へ絶妙なパスも配給する。

 

これは、以前からの彼のプレー・スタイルであり、これ自体、別に驚くに値しない。しかし、リーグが違う、チームが違う、チーム・メイトが違う。移籍先の別の環境でも高レベルのプレーを続けられることが素晴らしい。とはいえ、これは簡単なことではあるまい。これが香川選手を悩ませたのだから。

 

ということで、岡崎選手は単に移籍しただけでなく、新しい謎を与えてくれた。なぜ、岡崎選手は香川選手を悩ませたこの問題をクリアできたのか。今後は、岡崎選手のプレーを、この謎解きの観点からも楽しむことにしよう。新しい楽しみをもらったことになる。これについても、岡崎選手に感謝したい。

 

 

さて、“移籍”といえば、繰延税金資産の回収可能性の基準も、現在“移籍”作業中だ。日本公認会計士協会の監査における判断基準である監査委員会報告(以下、“66号”と記載)から、財務会計基準機構(=ASBJ)の会計基準である適用指針(以下、“公開草案”と記載)への移籍だ。

 

この移籍は、失敗するわけにいかないので、ASBJで念入りに検討され、公開草案が公表された。そのポイントは、おそらく下記の3点だろう。

 

A. 監査人に対する基準から、作成者に対する基準へ移行する。

 

B. 監査委員会報告の欠点を改善する。

 

C. 基準改正の財務諸表への影響をどのように扱うか。

 

A は形式的な問題で、実際にはあまり重要ではないと思う。もともと、この監査委員会報告は、作成者が読んで実務に活かすことが想定されて開発されたものなので、書き振りをちょっと変えれば済みそうだ。問題は B C で、特に、作成者にとっては実務に直結する。すなわち、なにがどのように改正され、その結果生じた繰延税金資産の測定額の差を、期首剰余金の増減とするのか、それとも P/L へ計上し純利益を増減させるのかは、大問題となる。

 

このような観点から、公開草案に掲げられた質問を眺めてみよう。質問項目は以下の通り。

 

  1. 監査委員会報告第66 号における企業の分類に応じた取扱いの枠組みを基本的に踏襲する提案に同意しますか。同意しない場合には、その理由をご記載ください。

 

66号は会社を5つに分類し、それぞれの分類について回収可能額の判断方法を記載している。公開草案も、基本的にその書き方を踏襲している。それに対する賛否を質問したもの。

 

このシリーズの前回(4967/31)に、繰延税金資産の回収可能性は、「税効果会計の減損会計」と書いたが、減損なら将来キャッシュフローの現在割引価値の見積もりが資産の測定額となる。しかし、繰延税金資産の回収可能額では割引計算は行われず、将来キャッシュフローの見積もり方法について5つの場合分けで測定方法が示されている(66号も、公開草案も)。

 

  1. 各分類の要件をいずれも満たさない場合、各分類の要件からの乖離度合いが最も小さいと判断されるものに必ず分類するという提案に同意しますか。同意しない場合には、その理由をご記載ください。

 

66号では、会社の分類は5つが示され、それらのいずれにも該当しない場合は、「それぞれの例示区分の趣旨を斟酌し、会社の実態に応じて、それぞれの例示区分に準じた判断を行う」とされていた。それに対して公開草案は、「各分類の要件からの乖離度合いが最も小さいと判断されるものに分類する」となっている。

 

この結果、公開草案ではどのような場合であっても5つの分類ごとに示された測定方法が適用されることになる。この質問は、これに対する賛否を問うている。

 

このように書くと、公開草案の方が作成者の採用する測定方法に厳しい枠が嵌められるように感じられてしまうが、実際の公開草案の書き振りは、状況に応じて柔軟な対応が可能となるような感じになっていると思う。

 

  1. (分類2)及び(分類3)について、会計上の利益に基づく要件から課税所得に基づく要件に変更する提案に同意しますか。同意しない場合には、その理由をご記載ください。
        
         なお、・・・(省略)。
        
         また、分類の要件として、課税所得から「臨時的な原因により生じたもの」を除くことも提案し、結論の背景においてその考え方を示しています(本公開草案第
    70項を参照)。当該提案についてもご意見がありましたら、ご記載ください。

 

分類2の会社とは、業績(=会計上の利益)は安定しているものの、期末の将来減算一時差異全額を回収するに足るに十分な課税所得ではない会社で、スケジューリング可能な将来減算一時差異の全額を回収可能として扱える会社のこと(66号ベースの表現)。分類3は、業績が不安定で、概ね5年以内に回収可能な将来減算一時差異を繰延税金資産に計上する会社(同上)。

 

この質問では、会計上の利益に基づく要件(=業績)ではなく、“課税所得”による要件へ変更したことについて賛否を訊いている。

 

厳密には、繰延税金資産は業績(=会計上の利益)ではなく、将来の課税所得で回収されるものなので、恐らく否定の意見はないと思われる。よって、否定意見を前提に追加の問いかけをしている第2段落の「なお…」は、冗長となるため省略した。より厳密になったので、これは66号の欠点を改善した箇所だと思う。

 

第3段落の「また…」は、“臨時とはなにか”の説明を付加した部分の賛否を問うている。66号では“臨時”についての説明は特にない。それを公開草案の第70項では、具体的ではないものの、一応説明を加えた。その結果、『監査委員会報告第66 号における「経常的な利益」に基づく判断とおおむね整合的になることを想定している』としている。これは、公開草案が一般の財務諸表作成者のための基準であるため、会計の専門家である監査人のための66号より詳しい記載が必要と判断されたためではないかと思う。

 

  1. (分類2)に該当する企業においては、一定の要件を満たしたスケジューリング不能な将来減算一時差異に係る繰延税金資産は回収可能性があるものとする提案に同意しますか。同意しない場合には、その理由をご記載ください。

 

分類2の会社について、一律に「スケジューリング不能な将来減算一時差異に係る繰延税金資産は回収可能性がない」とすると、次のような問題があるとASBJは認識している。

 

・企業の実態を反映しない場合がある

IFRSUS-GAAP採用企業では、一部を回収可能と判断している

 

これで頭に浮かぶのは、役員退職慰労引当金に対する繰延税金資産だ。特に、創業経営者、数十年の長期にわたり経営トップに君臨してきた役員は慰労金が多額となるので、繰延税金資産を計上する、しないが業績に与える影響が大きい。

 

66号ベースの日本公認会計士協会の「税効果会計に関するQ&A」は、役員退職慰労引当金に係る繰延税金資産を回収可能と判断するためには、スケジューリングが必要としている*1

 

一方、公開草案は第37項で「なお、(分類2)に該当する企業においては、当該スケジューリング不能な将来減算一時差異に係る繰延税金資産について、第21項ただし書きに従って回収可能性を判断する。」とし、その第21項但し書きで次のように記載している。

 

ただし、スケジューリング不能な将来減算一時差異のうち、税務上の損金算入時期が個別に特定できないが将来のいずれかの時点で損金算入される可能性が高いと見込まれるものについて、当該将来のいずれかの時点で回収できることを合理的に説明できる場合、当該スケジューリング不能な将来減算一時差異に係る繰延税金資産は回収可能性があるものとする。

 

この表現だとわかりにくい。誤解を恐れずに書くと、恐らく、次のようなイメージではないかと思う。

 

この先、まだ何十年も社長を続けそうな若い経営者に対する役員退職慰労金は、退任するまで会社が続くかどうかもわからない。一方、年齢や慣例から10年とか(具体的年数は会社の状況で異なる)、そのくらいで引退しそうな経営者であれば、そのタイミングは特定できないが(=スケジューリング不能だが)、引退時点で会社が存続しており、一時差異が解消できるかどうかを見込むことが可能かもしれない。もし、見込めるなら、タイミングが特定できなくても回収可能性ありとして扱うことができる。

 

このように、実質的に役員退職慰労引当金の税効果に関する取扱いを変更する、或いは、回収可能と判断しやすくする変更を、この公開草案は提案している。ほかにも該当するものがあれば、もちろん、同様の取扱いが可能となる。この質問は、これへの賛否を問うている。66号の問題を改善する提案だ。

 

  1. (分類3)に該当する企業においては、5 年を超える見積可能期間においてスケジューリングされた一時差異等に係る繰延税金資産が回収可能であることを合理的に説明できる場合、当該繰延税金資産は回収可能性があるものとする提案に同意しますか。同意しない場合には、その理由をご記載ください。

 

分類3の会社については、66号では「概ね5年以内」でスケジューリングすることが可能とされている。この“概ね”が厳格に運用されすぎて、弊害があるとASBJは見ている。それを改善することについて、賛否を問うている。

 

  1. (分類4)に係る分類の要件を満たす企業であっても、合理的に説明できる場合は(分類2)又は(分類3)に該当するものとして取り扱うという提案に同意しますか。同意しない場合には、その理由をご記載ください。

 

分類4の会社は、重要な繰越欠損金があるなど相当ダメダメな状況にある。66号では原則として翌期のスケジューリングしか認められなかった。そして但し書きで、限定的な例外を認め、概ね5年以内のスケジューリングを容認した。この限定的な例外の例は「事業のリストラクチャリングや法令等の改正などによる非経常的な特別の原因により発生したもの」とされている。

 

一方、公開草案では、あまり限定せずに例外を認めている。というか、過去に何があったかをあまり気にしていない。どのような理由で繰越欠損金が生じたかより、将来、課税所得が見込めるかどうかが重要だ。分類4とその他の会社の垣根が低くなり、発想が共有された(=将来の課税所得に目が向いた)。

 

これは、質問5と同様に“概ね”が厳格に運用されすぎているということや、“非経常的な特別の原因”の受け取り方にバラツキがあることの改善とされている。

 

  1. 注記事項についての提案に関する質問

 

これは、割愛させていただく。

 

  1. 適用時期等に関する質問

 

これには、次の3つの質問がある。

 

8-1. 強制適用に関する質問

これは、強制適用時期(=H28/4/1以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用)に関する質問。

 

8-2. 早期適用に関する質問

早期適用すると期首時点(=H27/3E)の繰延税金資産の回収可能性の判断を期末(=H28/3E)にやり直すことになる(特に上記で“改善”としたポイントはやり直し)。当然、期首時点では分からなかった様々な情報が、期末には明らかになっている。しかし、期首時点の回収可能性の判断は、期末までに明らかになった情報を知らない前提で行わなければならない。そんなことは可能か?という質問。

 

8-3. 適用初年度の取扱いに関する質問

この公開草案を適用による期首時点の影響額を、期首利益剰余金の修正(=会計基準等の変更による会計方針の変更として扱う)とすることについて賛否を問うている。これを否定する意見として、この影響額を変更した期のP/Lに計上する(=会計方針の変更を会計上の見積りの変更と区別することが困難な場合として扱う)考え方が示されている。

 

最後に、質問9として「そのほかに何かある?」という質問もある。

 

なんとなく、公開草案の雰囲気がわかったところで、次回から気になったところを掘り下げていきたい。特に 8-3 が気になる。これって、会計方針の変更なの?

 

🍁ー・ー🍁ー・ー

*1 JICPAの「税効果会計に関するQ&A」には、次のように記載されている。

 

なお、役員退職慰労引当金に係る将来減算一時差異については、スケジューリングの結果に基づいて繰延税金資産の回収可能性を判断するものですので、退職給付引当金や建物の減価償却超過額のように将来解消見込年度が長期となる将来減算一時差異には該当しません。役員退職慰労引当金に係る繰延税金資産の回収可能性については、これまでの役員在任期間の実績や内規などに基づいて役員の退任時期を合理的に見込み、当該役員の退任時期に将来減算一時差異が解消され、税金負担額を軽減できる範囲内、繰延税金資産を計上することとなります。

 

 

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