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2015年8月24日 (月曜日)

502【税効果06】IAS12に会社分類やプランニング年数の記載なし

 

2015/8/25

最近、やけに爆発が多い。天津の倉庫もそうだが、その南200kmにある山東省の化学工場でも22日に爆発事故が発生した。そのさらに南200kmにある上海では株式市場(の相場)が爆発し、世界中の株式市場に火の粉が飛び散って炎上している。韓国と北朝鮮の境界線では地雷が爆発し、タイでも爆弾テロが起きた。爆弾テロといえば中東、ヨーロッパ方面からは毎日のようにその関連ニュースが飛び込んでくる。さすがに、“爆発”のニュースは、悪いもの、悲惨なものばかりだ。

 

日本はどうかというと、やはり、あまり平穏ではない。あちこちで、火山が爆発している。噴火だ。ところが悪いことばかりではない。

 

23日のNHKスペシャルは、「新島誕生 西之島 ~大地創成の謎に迫る~」だった。なんでも西之島は大陸と同じ軽い材質の岩石が噴き出してできているため、通常の重い材質の海上火山と異なり、自重でマントルに沈没せずにそのまま陸地として残りそうだという。せまい日本にとって、地面が広がるのは、朗報だ。

 

 

さて、そんなド派手な話題はさておき、このブログは地味に繰延税金資産の回収可能性について検討を続けていく。今回は、日本基準を改正するための公開草案が、基準変更による影響額を期首剰余金の直接修正と提案していることについて(=基準変更を会計方針の変更として扱うことについて)、IAS12号「法人所得税」を見ながら考えていきたい。

 

といっても、すでにお気付きの方も多いと思うが、IAS12には繰延税金資産の回収可能性について、今回の公開草案のような詳しい記述はないので、実は、この公開草案と比べようがない*1IAS12は、ちょうど日本の“税効果会計に係る会計基準”に相当する内容となっており、この会計基準に繰延税金資産の回収可能性に関する記載がないのと同じように、IAS12にも、その記載がない。具体的には、会社を5つに分類したり、タックス・プランニングの年数などに関する記載はない*2。そして、IAS12のほかに、今回の公開草案に相当する具体的な回収可能性の判断方法に関する基準は、IFRSになさそうだ。

 

これはなにを意味するのだろうか。僕なりに考えると次のようになる。

 

IFRSにおいては、繰延税金資産の回収可能性を判断するための具体的な手続きや方法は、財務諸表の作成者が自ら決めることだ。それは、回収可能額を“見積もる”ことになる。すなわち、IFRSでは、繰延税金資産の回収額は“見積り”なのではないか。

 

ASBJは、今回の基準変更の影響額を会計方針の変更として扱って、期首剰余金の修正をさせようとしている。ところが、見積りの変更として扱えば、変更の影響額はP/Lを通すことになる。

 

ということで、このシリーズの前々回(499-8/19)に記載した8-3の質問に関するASBJの見解には疑問が生じる。ASBJは、基準の改正によるものだから会計方針の変更に当たる、としているが、IFRSで回収可能額を判断する具体的な方法は基準に規定されておらず、かつ、回収可能額は見積り項目のようだ。日本では見積り方法に関する基準があったために*3、回収可能性の判断方法の変更が会計方針の変更として扱われるが、もし、IFRSであれば見積りの変更とされるのではないか。同じ変更の影響額について、日本基準とIFRSで扱いが変わってしまって良いのだろうか。

 

この疑問を解消するには、会計方針の変更とは何か、会計上の見積りとはなにか、を改めて考えてみる必要がありそうだ。西之島のマグマの材質が重いか軽いかで、西之島の運命(=沈没するのか、そのまま陸地として残るのか)が決まるのと同様に、今回の変更の性質が会計方針に関するものか、それとも見積りに関するものかで、会計処理が決まりそうだ。そこで次回は、IAS8号「会計方針、会計上の見積りの変更及び誤謬」を見て、どちらに該当するのか検討していきたい。

 

 

あっ、そういえば日本でも爆発事故があった。24日未明に相模原の米軍施設で爆発音がしたという。爆発事故の有無より、日本の当局が調査に入れないことの方が気になる。沖縄のヘリコプター事故もそうだが、米軍の情報開示不足や日本の調査権欠如については、考えさせられる。実態が分からないと予見可能性が高まらない。不安が高まるだけだ。

 

 

🍁ー・ー🍁ー・ー

*1 参考までに、IAS12の繰延税金資産の定義は次のようになっている。日本基準と(は定義の仕方は違うが)違和感はないと思う。

 

繰延税金資産とは、次の項目に関連して将来の期に回収されることとなる税額をいう。

(a) 将来減算一時差異

(b) 税務上の欠損金の繰越し

(c) 税額控除の繰越し

一時差異とは、ある資産又は負債の財政状態計算書上の帳簿価額と税務基準額との差額である。…IAS12.5

 

さらに、「将来の期に回収されることとなる税額」という部分、即ち、回収可能性の部分(=測定基準)についても違和感は感じられない。この点において、日本基準とIFRSは、繰延税金資産の測定基準に違いはないと考えて良いと思う。

 

*2 本文にはあっさり書いたが、実際にはIAS12に回収可能性の判定方法について言及した部分はある。ただ、大枠だけであり、今回の公開草案の改正内容と比較できる詳細さはない。その内容を最もコンパクトに記載しているのは、下記の箇所。

 

IAS12号(改訂版)では、繰延税金資産を実現させるだけの課税所得が稼得される可能性が高い場合には、繰延税金資産を認識することを要求している。ある企業に税務上の欠損金が生じたことがある場合には、その有する将来加算一時差異の範囲内でのみ、又は十分な課税所得が稼得されるという信ずべき証拠がある範囲でのみ、繰延税金資産を認識する。IN4の後半部分)

 

次に、“将来減算一時差異”のセクションに、以下のように記載されている。やはり、大枠のみの記載。公開草案のように、会社を5つに分類するとか、どういう会社に何年のタックス・プランニングを認めるなどといった具体的な記載はない。

 

27 将来減算一時差異が解消すると、将来の期間の課税所得計算上の損金算入が生じる。しかし、支払税金の減少という形での経済的便益が企業に流入するのは、損金算入額と相殺するのに十分な課税所得を企業が稼得する場合のみである。したがって企業は、将来減算一時差異を活用できる課税所得が得られる可能性が高い場合にのみ、繰延税金資産を認識する。

 

28 将来減算一時差異を活用できる課税所得が得られる可能性が高いといえるのは、同一の税務当局及び同一の納税企業に係る十分な将来加算一時差異があって、それが次のような時期に解消すると見込まれる場合である。

(a) 将来減算一時差異の解消が予測される期間と同じ期間

(b) 繰延税金資産により生じる税務上の欠損金の繰戻し又は繰越しが可能な期間

こうした状況では、繰延税金資産が、将来減算一時差異が発生する期間に認識される。

 

29 同一税務当局の区域内で、同一の納税企業体内に十分な将来加算一時差異がない場合には、繰延税金資産は次のいずれかの範囲内で認識される。

(a) 同一税務当局の区域内で、同一の納税企業体内に、将来減算一時差異が解消するのと同じ期間に(又は繰延税金資産から生じる税務上の欠損金の繰戻し若しくは繰越しが可能な期間に)当該企業が十分な課税所得を稼得する可能性が高い。企業が将来の期間に十分な課税所得を稼得するかどうかを判断する際には、将来の期間に発生すると予想される将来減算一時差異から生じる課税所得は無視する。こうした将来減算一時差異から生じる繰延税金資産自体が、それを活用するためには将来の課税所得が必要となるからである。

(b) 適切な期間に課税所得を生じさせるタックス・プランニングの機会を企業が利用可能である。

 

30 タックス・プランニングの機会とは、企業が、税務上の欠損金又は税額控除の繰越期限の到来前に、特定の期間において課税所得の創出又は増加のために行う行為である。例えば、法域によっては、課税所得の創出又は増加を以下の手段により行うことができる。

(a) 受取利息を現金主義と発生主義のどちらで課税されるかの選択

(b) 課税所得からのある種の控除申請の繰延べ

(c) 評価増をされたが税務基準額はそのような評価増を反映する修正がされていない資産の売却(おそらくはセール・アンド・リースバック)

(d) 課税所得を発生させる他の投資を購入するための、非課税収入を生む資産(ある法域では、国債など)の売却

タックス・プランニングの機会によって課税所得を後の期間から前の期間に移動させても、税務上の繰越欠損金又は繰越税額控除の使用はやはり、将来発生する一時差異以外の源泉からの課税所得に依存する。

 

31 企業が最近において欠損を計上している場合には、第35項及び第36項の指針を考慮する。

 

そして、“税務上の繰越欠損金及び繰越税額控除”のセクションには、若干、回収可能性の確実性を高めさせる要求をしている。具体的には、上記の“将来減算一時差異”のセクションの表現に加え、以下では“他の信頼すべき根拠がある”ことを要求している。しかし、上記と同様で、今回の公開草案のように、会社を分類したり、スケジューリング期間を類型・指定する細かい規定はない。

 

34 税務上の繰越欠損金及び繰越税額控除に対しては、将来その使用対象となる課税所得が稼得される可能性が高い範囲内で、繰延税金資産を認識しなければならない。

 

35 税務上の繰越欠損金及び繰越税額控除から生じる繰延税金資産を認識するための要件は、将来減算一時差異から生じる繰延税金資産を認識するための要件と同じである。しかし、繰越欠損金の存在は、将来課税所得が稼得されないという強い根拠となる。したがって、近年に損失が発生した経歴がある場合には、企業は税務上の繰越欠損金又は繰越税額控除から生じる繰延税金資産を、十分な将来加算一時差異を有する範囲でのみ、又は税務上の繰越欠損金若しくは繰越税額控除の使用対象となる十分な課税所得が稼得されるという他の信頼すべき根拠がある範囲でのみ認識する。そのような状況では、第82項が、繰延税金資産の金額及びその認識の根拠となった証拠の内容の開示を要求している。

 

36 税務上の繰越欠損金又は繰越税額控除を活用できる課税所得が稼得される可能性を評価するに際して、企業は次の要件を考慮する。

(a) 同一の税務当局の区域内で同一の納税企業体内に、税務上の繰越欠損金又は繰越税額控除の繰越期限内に活用できる課税所得をもたらすのに十分な将来加算一時差異を当該企業が有しているかどうか

(b) 税務上の繰越欠損金又は繰越税額控除の繰越期限内に、当該企業が課税所得を稼得する可能性が高いかどうか

(c) 税務上の繰越欠損金は再発しそうもない特定の原因によって発生したものかどうか

(d) 税務上の繰越欠損金又は繰越税額控除の繰越期限内に課税所得を発生させるべきタックス・プランニングの機会(第30項参照)が利用可能かどうか

税務上の繰越欠損金又は繰越税額控除を活用できる課税所得が得られる可能性が高くない範囲においては、繰延税金資産は認識されない。

 

このほか、“子会社、支店及び関連会社に対する投資並びに共同支配の取決めに対する持分” にも似たような記載がある(44項)。そして、“測定”のセクションには、上記を受けて以下の記載がある。決算ごとに回収可能性を見直す趣旨だ。

 

56 繰延税金資産の帳簿価額は、各報告期間の末日現在で再検討しなければならない。企業は、繰延税金資産の一部又は全部の便益を実現させるのに十分な課税所得を稼得する可能性がもはや高くはなくなった範囲で、繰延税金資産の帳簿価額を減額しなければならない。そのような減額は、十分な課税所得を稼得する可能性が高くなった範囲で戻し入れなければならない。

 

いずれにしても、公開草案の改正内容に関連するほどの細かいレベルの記載はない。この結果、IAS12は、今回の公開草案のような具体的な判断方法を、財務諸表の作成者に委ねていることになる。

 

*3 こんなふうに書くと、「繰延税金資産の回収可能性判断方法に関する基準などなければよかったのに」などと思われるかもしれないが、会計ビックバンで税効果会計が導入された当時、この基準がとても大きな役割を果たした。当時は、減損会計も導入されていなかったし、回収可能性を判断する実務は、日本にほぼなかった。これ(=監査委員会報告66号)がなければ、税効果会計は導入できなかったと思う。日本にとってはとても重要な基準だった。

 

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