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2015年8月27日 (木曜日)

503【税効果07】会計方針と見積りの違い

 

2015/8/27

昨日(水曜)の日経平均株価は570円の大幅高(18,376円)となった。同行者から、スマホに届いた速報メールのポップアップを見せられると、僕は「なに、いつかは下げ止まるものさ」と余裕の表情で言った。しかし、内心は違った。鼻の奥というか、目の奥というか、その辺りから頭頂部に至る頭の中、即ち、脳みそが優しくマッサージされたような快感、軽い麻痺感覚に襲われた。心底、安堵したのだ。

 

その数時間後、今度は逆に愕然とした。いつものように自分のポートフォリオを時価評価してみたが、たいして戻っていない。日経平均が570円上がったといっても、まだ、月曜の終値(18,540円)にも達していない。先週月曜には20,620円もあったのだ。そこからの下落幅が大きすぎて、まだまだ、“焼け石に水”だった。それなのに頭の芯が一瞬でも麻痺してしまうとは。ひ弱な精神力。

 

 

さて、このシリーズの前回(5028/25)は、ASBJが繰延税金資産の回収可能性に関する公開草案で、基準改正の影響額を期首剰余金の修正とすると提案していること(=基準改正の影響は、見積りの変更ではなく会計方針の変更として扱うこと)の当否を探るために、IAS12号「法人所得税」を眺めた。その結果、IAS12には、公開草案の提案事項に当たる細かい規定がないことが分かった。

 

会計方針は、「会計基準によって認められた複数の代替処理がある場合に選択するもの」というイメージがある。すると、会計基準(=IAS12)に記載のない事項は会計方針ではないのではないか、即ち、今回の公開草案で改定される事項は、IFRSでは見積りとされるのではないか、との疑念を持った。同じものが、日本基準とIFRSで扱いが異なって良いのだろうか。もしかしたら、IFRSでは、期首剰余金の修正ではなく、P/Lへ計上することになるのではないだろうか。

 

ということで前回記載した通り、この疑問を解消するために、今回はIAS8号「会計方針、会計上の見積りの変更及び誤謬」を見ていきたい。

 

早速、定義をIAS8.5から下記へ引用する。

 

会計方針とは、企業が財務諸表を作成表示するにあたって採用する特定の原則、基礎、慣行、ルール及び実務をいう。

 

会計上の見積りの変更とは、資産又は負債の現状、及び資産又は負債に関連して予測される将来の便益及び義務の評価により生じる、資産若しくは負債の帳簿価額又は資産の定期的な費消額の調整をいう。会計上の見積りの変更は、新しい情報又は新しい展開から生じるものであり、したがって誤謬の訂正ではない。

 

ん〜、微妙だ。公開草案の提案内容は、このどちらにも該当しそうな気がする。

 

例えば、企業を5つに分類したり、その分類ごとに信頼できるタックス・プランニングの年数の目安を設けたりするのは、(仮に特定の基準に記述されてないとしても)会計方針の定義に記載されている“慣行”、“ルール”及び“実務”といえそうだ。

 

一方、繰延税金資産の回収可能額、即ち、財務諸表作成者がタックス・プランニングなどから算定する将来の税金節約額算定作業は、“資産の現状、及び資産に関連して予測される将来の便益の評価により生じる、資産の帳簿価額の調整”に他ならない。

 

すると、次のように、「繰延税金資産の回収可能性は、見積りと会計方針の両方の要素がある」といえるのではないか。

 

繰延税金資産の回収可能性は、会計上の見積り項目だが、その見積り作業・手続きには会計方針(=慣行・ルール及び実務)が含まれる。

 

しかし、上記の見積りの定義にはもう一つ重要なことが記載されている。次の部分だ。

 

会計上の見積りの変更は、新しい情報又は新しい展開から生じるもの

 

ちょっと古いが、日本流に表現すれば、“新しい会計事実の発生”のことと思う。要するに、過去にはなかった新しい状況がもたらされたために、(過去を振り返らず)将来に向かって行うのが見積りではないか(以前の追加情報に該当するようなケース)。

 

それに対して会計方針の変更は、会計事実は元々あったが、より妥当な原則や手続きへ変更する場合に該当する。会計事実が過去から存在するので、過去に遡って変更を適用することが可能。開示上、前年度などの比較情報の修正が行われる。

 

このように考えてみると、会計方針と見積りの違いは、過去に遡って変更することに意味があるかどうか、或いは、将来に向かって変更することが期間比較の上でも正しいといえるかどうか、という点に本質があるように思う。

 

 

さて、この議論の目的は、公開草案の提案内容が会計方針に当たるのか、それとも見積りかを考えることだ。そこで、ここまでの成果を踏まえて、4998/19の質問4のところで記載した“役員退職慰労引当金”を例にして、具体的に考えてみよう。もし、これが将来に向けて変更しても期間比較上問題ないとすれば見積りといえるし、過去に遡って変更することに意味があるとすれば、会計方針と考えて良さそうだ。見積りであれば、変更の影響額はP/Lに計上される。一方、会計方針の変更であれば期首剰余金の修正となる。

 

しかし、ここまで書いて結論が見えてきた。やはり、ASBJが正しそうだ。残念ながら、僕の直感は間違えていたようだ。加えて、このシリーズの前々回(5008/21)記載した「監査人はそれほど窮屈な判断をしてないのではないかと思うのだ」という部分についても、自信が持てなくなってきた。というのは、前回(5028/25)転記したIAS12の規定では、回収の確実性が50%超で計上可能になっていたからだ(特に、重要な繰越欠損金がない日本基準でいう分類2・3の会社)。僕はもっと高い確実性(=合理的に見込まれるレベル)を求めていた気がする。やはり、この公開草案による影響額は、このシリーズの前々回の記載とは異なり、かなりインパクトの強いものになるかもしれない。

 

ということで、次回は訂正と反省ばかりの、僕にはつらい記事になりそうだ。ううっ、また頭が麻痺しそうだ。今度は頭痛を伴って。

 

 

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