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2015年9月19日 (土曜日)

512【投資】子供騙しの慰め

 

 

2015/9/19

いよいよ、シルバー・ウィークの始まりだ。8月決算会社の経理部や監査人などの一部の人々を除き、一般的には5連休に心踊らせている方々多いだろう。僕はというと、机の角に足の小指をぶつけたときのような気分で、踊るどころではない。ただ、この感情は怒りより、嘆きの方に近い。

 

今週も、日経平均株価は週間で下落した。神頼みしていた黒田バズーカーも、米FOMCの利上げも不発だった。おかげで、僕の所有銘柄の時価評価表が、あちこち大怪我による出血で赤く染まっている。それを見て僕の顔が青くなっている。「それって、“なしよりのなし”じゃね」とか言われそうな気分だ。(いや、もう一つ“なし”がついても良い。)

 

ただ、足の小指を打ったぐらいなら、命に別条はない。むしろ、時とともに痛みが引くのが普通だ。ということで、今はまだ、頭が激しい痛みに朦朧としているが、それに堪えながら、この痛みが引くものかどうか、素人なりに考えてみたい。

 

 

今週は何といっても、米FOMCの利上げ延期の判断(日本時間18日午前3時に公表)が、最大のイベントとなった。僕はこの丑三つ時のイベントを起きて迎えた。というのは、ペルーの巨大地震による津波について気象庁から津波注意報が発せられ、なんと午前3時に、枕元に置いてあったスマホから、突如、警告音が鳴り響いたからだ。いや、それだけじゃない。そのちょっと前から雷鳴が轟いており、僕はすでに目を覚ましていた。しかし、この雷鳴と警告音のセットには、さすがに嫌な予感がした。時計を見ると、ちょうど、FOMCの利上げ判断が公表される午前3時だった。

 

悪い知らせには、しっかり向き合わなければならない。逃げてはいけない。そう思って、ネットのニュース・サイトを見ると、やはり、FOMCは9月利上げを見送っていた。米国においては9年ぶりとなる利上げは、10月以降へ延期された。

 

しばらく、WSJで、ダウ工業株30種平均(以下“DOW30”と記載)とドル円の為替相場の推移を眺めていたが、DOW30は狭い範囲で上がったり下がったりで方向感が定まらず、円相場はモタモタしながらも円高へ振れていった。

 

投資家は戸惑っている。FOMCが利上げしないことで中国や新興国の経済へ配慮を見せたので、安堵した人もいただろう。一方で、この煮えきらない予見可能性の低い状態がまた続くのか、と失望した人も同じぐらいいたのだろう。どちらにしても、「FOMCよ、よくやった!」とリスク・オンへ向かうことは、なさそうだった。僕は、まだ止まない雷鳴のなかで、湧き上がってくる不安を押し殺して寝ることに集中した。「朝起きたら、米株は大きく上昇しているかもしれない」と、自分でも子供騙しと分かる慰めで。

 

その朝、米国市場の17日の顛末を確認すると、DOW30はやはり下落し、ドル円は円高に振れていた。日本株は、その日、即ち18日、大幅に下落した(N225が362円下落)。ただ、他のアジア株は方向感なく、比較的落ち着いた動きを見せた。欧州株は、下落スタートとなった。

 

 

では、FOMCが利上げを先送りした理由を見てみよう。FOMCを主導したイエレンFRB議長の記者会見の記事*1を読むと、やはり鍵になったのは中国経済だ(下記は僕の勝手な解釈でまとめている)。

 

・ドル高や原油安が米国のインフレ率の上昇を阻害している。そこへ中国ショック。

 

中国経済の減速が、原油など国際商品相場を下落させ、他の新興国経済を脅かし、ドル高を起こしやすくしている。そしてドル高が、輸入物価を下落させ米国のインフレ率の上昇を阻んでいる。このような構造の下で、中国経済がさらに減速の度合いを速めると、米国のインフレ率がさらに上がりにくくなる。その中国経済減速の程度を、今しばらく見極める必要がある。

 

・上記を考慮すると、労働市場のより一層の改善を確認する必要がある。

 

FOMCでは、「労働市場がインフレ率を押し上げるまで改善したか」を注視しているが、上記の中国ショックに端を発したインフレ率上昇阻害要因がある分、より大きな改善を確認したい。

 

・中国ショックによる金融市場の乱高下には、幾分かの引き締め効果があった。

 

株価の下落、ドル高、リスク・スプレッドの拡大などが、金融情勢を引き締めている(ので、9月の利上げ、即ち、金融引締め開始を急がなくても良い)。

 

イエレン議長は、インフレ率が目標である2%程度に上昇するまで、利上げを待つつもりはないという。利上げが実体経済へ影響するのに時間がかかるため、もっと早く利上げをしたい。だが、最近の中国ショックの原因や影響をまだつかみきれていないので、今回は見送ったということのようだ。やはり、世界中の株式市場が動揺している間は、利上げをしたくないということかもしれない。

 

 

日和ったな、イエレン議長。市場に白旗を揚げたのでは。上記は、「中国ショックを引き起こした中国経済の実態がよくわからないので、利上げ判断を留保した」と言ったに等しいのでは?

 

 

FRBなど中央銀行が金利を上げ下げできるというのは、金利市場(=債券市場)を操作する権限を与えられているということだ。それが、経済の過熱を防いだり、活性化させる手段となっている。これは中央銀行に与えられた特権であり、一般の市場参加者にはできない。

 

通常、“市場価格”は最も妥当な価格とされる(会計でも“公正価値”と呼ばれて珍重、いや、尊重される)。しかし、中央銀行はこの価格を操作して良い唯一の存在だ。なぜ? 恐らく、その価格の背景にある経済実態を適切に把握する能力があると期待されているからではないか。だから、市場の行き過ぎを発見し、それを訂正することができると期待されているのではないだろうか。

 

もちろん、これは非常に難しいことだ。その際に材料になる経済指標はそれぞれが欠点や癖を持っており解釈が難しいし、個々の経済指標を総合する際に利用する経済理論も、自然科学の理論のような安定性はない。僕にはわからないが、(学識やビジネス実務経験に基づく)勘と度胸が相当な幅を利かす世界なのではないか。ましてや中国は経済指標さえ当てにならないから、常識的に考えれば、「評価する時間がもう少しほしい*2」というイエレン議長の言うことも分かる。

 

だが、特権を与えられた中央銀行の責務としては、どうだろう? その時その時における判断の根拠を、「これが(現時点の)ベストの解釈だ」と、示さなければならないのではないか。ところが、FOMCは、そこから逃げたように僕には思える。

 

「そっか、FOMCでさえ逃げるほど、中国経済の判断は難しいんだ。」

 

こんなメッセージを市場に送ってしまったとすれば、当分、リスク・オンには戻りそうもない。欧州株は、この記事を書いている間も、一貫して下げ続けている。米国株もストーンと下げて始まった。

 

イエレン議長、これって、“なしよりのなしよりのなし”じゃね。

 

 

ただ、「米国の中央銀行が世界中に目配せしましたよ」というメッセージも受け取った。従来、「米国は自国の都合だけで金融政策を決め過ぎる」と批判されていたので、国際金融情勢を考慮、尊重した部分については、欧州や新興国を中心に、歓迎されたに違いない。(だから、アジア株が比較的落ち着いていたのかもしれない。)

 

とりあえず今は、イエレン議長のこの優しさが、シルバー・ウィークの間に欧米市場にじわりと浸透し、投資家が落着きを取戻し、相場が反転することを期待しよう。そして僕は、また「これは子供騙しの慰めじゃない」と、自分に言い聞かせてから寝ることにする。

 

 

🍁ー・ー🍁ー・ー

*1 イエレンFRB議長の記者会見については、次の記事がある。

 

FRB議長会見、一問一答  日経電子版無料記事 9/18

イエレン米FRB議長の会見要旨 REUTERS 9/18

 

*2 この文章は、上記のREUTERSの記事から引用した(<不確実性>の2段落目)。

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