515【税効果15】US-GAAP)スケジューリングの要否①
2015/9/29
今年のJリーグ、みなさんの贔屓のチームは好調だろうか。ご存知の通り、僕の贔屓の清水エスパルスは絶不調であり、J2降格の危機に陥っている。年間順位は最下位で、J1残留圏の15位アルビレックス新潟との勝ち点の差は8、これを残り5試合でひっくり返えす必要がある。
一方、年間順位7位の横浜F・マリノスの年間の勝ち点は40で、降格圏トップ16位の松本山雅FCが全勝してようやく届く。マリノスは、1つでも勝ち点を積み上げればJ1残留確定だ。
これを税効果会計の会社分類で表せば、マリノスはJ2陥落の心配がほぼないに等しいが、まだ完全には残留確定してないので分類2の会社になるだろう。しかし、エスパルスは陥落確定ではないが、かなり困難な状況になっており、分類4ぐらいか。
この話は、年間順位の16位から18位の3チームがJ2へ陥落するというJリーグのルールを前提としている。しかし、もし、この前提が変われば、当然会社分類は変わってくる。例えば、年間順位最下位のチームのみがJ2へ陥落するというルールだった場合、エスパルスの残留はかなり明るい見通しとなる。あと5試合で、勝ち点2点差の松本や勝ち点差なしのモンテディオ山形を上回れば良いのだから。もしかしたら、MLTN(=more likely than not)ベースで評価性引当は不要になるかもしれない。
と、ここまで読まれて、みなさんは「何でありえない話をしてるんだ?」と思われたかもしれない。「前提を変えたらダメだろう」とか「意味がないよ」と。
だが、前回(514-9/25)、US-GAAPと日本基準は、税法の繰越欠損金の有効期限や繰戻しに関して全く異なる前提を置いており、それを反映して日本基準は、米国にはない“企業分類”を要求しているのではないか、と記載した。
要は、前提となる税法の違いは、絶望的(“絶望”ではない)な状況が全く希望に満ちた状況へ変わるほどのインパクトがあると、改めてここで強調したいと思ったのだ。
さて、前回は、US-GAAPの税効果の適用ガイドの最初の1段落目(740−10−55−1)を読んだ段階の推測で記載したが、その後、読み進めていくうちに、益々、確信を深めた。日本基準に慣れた僕の感覚では、US-GAAPの書き振りが楽観に満ちていると感じる。今回は、その一つの例を紹介しよう。テーマは「どういう場合にスケジューリングが必要か?」。日本基準では、会社分類2でも必要とされている(例えば、公開草案20)が、果たしてUSーGAAPはどうか。
と、ここまで記載したところで、今日は力尽きそうだ。「えっ、やっと今日の本題に入ったのに?」と思われるかもしれない。しかし、英語相手のスクラムはパワーを消費する。ただ、せめて、今の段階で僕が感じていることの要約だけは記載したいと思う。
・スケジューリングって、滅多にしないの?
これは誤解を生みそうだが、適用ガイドの書き振りが「〜の場合でもしなくて良い」という感じに終始している。不要の場合ばかりが書いてある。よく考えれば「それ以外はスケジューリングするんですよ」ということなのだが、受ける印象は楽観に満ちている。
・US-GAAPは細則主義と言われるが、経営者の判断が極めて重要
見積もり等に関して有名な言い回しがある。それは、「… depend on the facts and circumstances of each situation」(=それぞれの状況における事実と事情に依存する)だ。これを直接的に表現すれば「判断にバイアスを懸けてはならない。ひたすら客観的に」ということになる。これが、スケジューリング要・不要の判断についても記載されている(740-10-55-18)。
また、別の言葉で言い換えると「ルールで規定しきれないからしっかり判断してくれ」ということにもなると思う。すなわち、スケジューリングする・しないの判断は、簡単にルール化できない高度なものとして扱われているようだ。
日本基準は分類2の会社ならスケジューリングが必要だし、その会社分類は要件への当てはめで機械的に決められる(=分類1と2は、繰延税金資産と課税所得の大きさの関係で決まる)。ここに大きな差が浮かび上がってくる。その意味を問わずにいられない。やはり、税法の違いか。それとも…。
というこで、次回は上記の要約を具体的な規定に照らして検証していく作業になる。えっ、「面白くなさそうだ」って? いやいや、まだ本当にざっと見ただけで、しっかり読み込んだわけではない。もしかしたら、この要約が間違っていて、別の結論へ変わるかもしれない。次回を読まずに今回の記事は完結しない。
「そんな、いい加減な」って?
これもMLTN基準なので、あしからず。(MLTN基準はかなり使いやすい。)
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