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2015年9月

2015年9月29日 (火曜日)

515【税効果15】US-GAAP)スケジューリングの要否①

2015/9/29

今年のリーグ、みなさんの贔屓のチームは好調だろうか。ご存知の通り、僕の贔屓の清水エスパルスは絶不調であり、J2降格の危機に陥っている。年間順位は最下位で、J1残留圏の15位アルビレックス新潟との勝ち点の差は8、これを残り5試合でひっくり返えす必要がある。

 

一方、年間順位7位の横浜F・マリノスの年間の勝ち点は40で、降格圏トップ16位の松本山雅FCが全勝してようやく届く。マリノスは、1つでも勝ち点を積み上げればJ1残留確定だ。

 

これを税効果会計の会社分類で表せば、マリノスはJ2陥落の心配がほぼないに等しいが、まだ完全には残留確定してないので分類2の会社になるだろう。しかし、エスパルスは陥落確定ではないが、かなり困難な状況になっており、分類4ぐらいか。

 

この話は、年間順位の16位から18位の3チームがJ2へ陥落するというリーグのルールを前提としている。しかし、もし、この前提が変われば、当然会社分類は変わってくる。例えば、年間順位最下位のチームのみがJ2へ陥落するというルールだった場合、エスパルスの残留はかなり明るい見通しとなる。あと5試合で、勝ち点2点差の松本や勝ち点差なしのモンテディオ山形を上回れば良いのだから。もしかしたら、MLTN(=more likely than not)ベースで評価性引当は不要になるかもしれない。

 

と、ここまで読まれて、みなさんは「何でありえない話をしてるんだ?」と思われたかもしれない。「前提を変えたらダメだろう」とか「意味がないよ」と。

 

だが、前回(514-9/25)、US-GAAPと日本基準は、税法の繰越欠損金の有効期限や繰戻しに関して全く異なる前提を置いており、それを反映して日本基準は、米国にはない“企業分類”を要求しているのではないか、と記載した。

 

要は、前提となる税法の違いは、絶望的(“絶望”ではない)な状況が全く希望に満ちた状況へ変わるほどのインパクトがあると、改めてここで強調したいと思ったのだ。

 

 

さて、前回は、US-GAAPの税効果の適用ガイドの最初の1段落目(74010551)を読んだ段階の推測で記載したが、その後、読み進めていくうちに、益々、確信を深めた。日本基準に慣れた僕の感覚では、US-GAAPの書き振りが楽観に満ちていると感じる。今回は、その一つの例を紹介しよう。テーマは「どういう場合にスケジューリングが必要か?」。日本基準では、会社分類2でも必要とされている(例えば、公開草案20)が、果たしてUSーGAAPはどうか。

 

と、ここまで記載したところで、今日は力尽きそうだ。「えっ、やっと今日の本題に入ったのに?」と思われるかもしれない。しかし、英語相手のスクラムはパワーを消費する。ただ、せめて、今の段階で僕が感じていることの要約だけは記載したいと思う。

 

・スケジューリングって、滅多にしないの?

 

これは誤解を生みそうだが、適用ガイドの書き振りが「〜の場合でもしなくて良い」という感じに終始している。不要の場合ばかりが書いてある。よく考えれば「それ以外はスケジューリングするんですよ」ということなのだが、受ける印象は楽観に満ちている。

 

US-GAAPは細則主義と言われるが、経営者の判断が極めて重要

 

見積もり等に関して有名な言い回しがある。それは、「… depend on the facts and circumstances of each situation」(=それぞれの状況における事実と事情に依存する)だ。これを直接的に表現すれば「判断にバイアスを懸けてはならない。ひたすら客観的に」ということになる。これが、スケジューリング要・不要の判断についても記載されている(740-10-55-18)。

 

また、別の言葉で言い換えると「ルールで規定しきれないからしっかり判断してくれ」ということにもなると思う。すなわち、スケジューリングする・しないの判断は、簡単にルール化できない高度なものとして扱われているようだ。

 

日本基準は分類2の会社ならスケジューリングが必要だし、その会社分類は要件への当てはめで機械的に決められる(=分類1と2は、繰延税金資産と課税所得の大きさの関係で決まる)。ここに大きな差が浮かび上がってくる。その意味を問わずにいられない。やはり、税法の違いか。それとも…。

 

 

というこで、次回は上記の要約を具体的な規定に照らして検証していく作業になる。えっ、「面白くなさそうだ」って? いやいや、まだ本当にざっと見ただけで、しっかり読み込んだわけではない。もしかしたら、この要約が間違っていて、別の結論へ変わるかもしれない。次回を読まずに今回の記事は完結しない。

 

「そんな、いい加減な」って?

 

これもMLTN基準なので、あしからず。(MLTN基準はかなり使いやすい。)

 

2015年9月25日 (金曜日)

514【税効果14】US-GAAPの適用ガイドと設例の前提〜繰越欠損金等の期限

 

2015/9/25

ブレイブ・ブロッサムズのスコットランド戦は、勝利できずに残念だった。でも、サモア戦、アメリカ戦を2連勝すれば、目標とする史上初の決勝トーナメント進出の可能性が残っている(他力も必要)。

 

さて、僕のトライもなかなかの試練を迎えている。ブレイブ・ブロッサムズが直面しているような難関ではない。“想定通り”の試練だ。単純に、英語が難しい。僕としては、シルバー・ウィークで米国基準を解読し、今回、みなさんに結果報告できたらカッコイイと思っていたが、断念した。華麗なステップで相手ディフェンスを翻弄して一挙にゴール・ラインまで駆け抜けるみたいな、無謀な背伸びは妄想だけにして、FWがスクラムを押すように一歩ずつ前進することにした。

 

ということで、何度か中間報告を重ねながら、ゴールを目指すことになる。US-GAAPの税効果に関心をお持ちでない方もいらっしゃるかもしれないが、ご容赦願いたい。

 

 

今回は、前回の概略(513-9/22)を受けて、適用ガイドと設例(7401055)に入るが、その先頭の551の記載について考えてみたい。ここには、この適用ガイドや設例の前提になる繰越欠損金等の使用期限が記載されている。すなわち、この適用ガイドや設例は、「税務上の繰越欠損金は、その前の3年間(の繰戻し額)やその後15年間の課税所得と相殺できる税法」を前提とした書き振りになっているという*1

 

これには驚いた。なんて優しい、企業に寛容な税法なんだ。しかも、非常に重要なことを示唆している。

 

もちろん、この前提が、繰延欠損金に係る繰延税金資産の回収可能性に直接影響があることは自明だが、その前段階の、日本基準でいうところの“会社分類”に非常に大きな影響がありそうだ。しかも、重要な繰越欠損金のない会社分類1〜3にまで。

 

ちょっと具体的に記載しよう。

 

もし、US-GAAPのような企業にとって寛容な、繰延税金資産を回収しやすい前提があれば(=日本の税法がそのようであれば)、日本基準の分類1〜3は、かなり変わっていたと思う。どのように変わっていたかというと、例えば、分類1の会社となる条件は、次のようだったと考えられる。

           
 

分類1

 
 

現行及び公開草案の日本基準:

 
 

繰延税金資産の全額を回収するのに十分な課税所得が、毎期計上されている会社

 
 

 

 
 

寛容な前提がある場合:

 
 

繰延税金資産の全額を回収するのに十分な課税所得が、過去3年と当事業年度の課税所得を合算して計上されている会社。

 

 

分類1とは、繰延税金資産をすべて回収可能と判断できる会社だ。常に、繰延税金資産を回収する準備ができている会社、いつでも、それだけの課税所得を生み出せる会社が分類されるイメージだ。ところが、US-GAAPのような寛容な前提、特に、過去3年間の課税所得を組み戻しできるなどという前提をおけば、当期と合わせて4年分の課税所得を、常に繰延税金資産の回収に利用できることになる。

 

もし、それを反映して、4年分の課税所得で繰延税金資産を回収できる会社を分類1とすれば、分類2や3の会社も、かなり含まれてしまう。

 

さらに、4年分の課税所得で繰延税金資産をすべて回収できない場合でも、その後15年間という長期間の将来課税所得で回収すればよいので、繰延税金資産を回収できないリスクは相当低くなりそうだ。その結果、分類2や3の会社は、ほぼ消滅、ほとんど分類1と同じ扱いで良くなるのではないだろうか。

 

すなわち、US-GAAPが前提としているような税法なら、分類2や3の会社も分類1になるので、分類1の会社が非常に増える。しかし、日本の税法*2はそんなに優しくないので、それを反映して、分類1・2・3*3が必要、ということだ。分類1〜3は、日本の税法を前提として見積もるから必要となる日本独自のカテゴリーということになる。

 

では、分類4・5はどうだろう。これらには、重要な繰越欠損金を持つ会社が振り分けられる。重要な繰越欠損金を持つということは、事業の収益性に問題を抱えている可能性があり、かつ、繰越欠損金は期限切れによる失効(=回収不能)があるので、他の将来減算一時差異より回収不能リスクが大きい。したがって、日本基準は、分類4・5の会社に見積り年数の限定などにおいて高いハードルを設定している。

 

IAS12「法人所得税」では、分類4・5のような会社を分類する規定はない。その代わり、繰越欠損金等に直接焦点を当てて、追加でより確実な回収可能性を示す証拠を要求していた(506-9/3 の脚注*1)。会社を分類しなくても、事は足りるのだ。US-GAAPも、同様の書き振りである可能性が高い。分類4・5のためだけに、わざわざ、会社を分類させる必要はない。

 

ということは、US-GAAPの適用ガイドや設例に、日本基準の会社分類やそれらに対する見積り年数の指定に当たるもの、或いは、それに代わるような記載は、恐らくないだろうと見当がつく。

 

 

ふ〜む、今回は、冒頭に「FWがスクラムを押すように一歩ずつ前進することにした」と書いたが、意外なことに、最初の段落で相手FWが組むスクラムの特徴がつかめたような気がする。おかげで大分押しやすくなった。今回のような中間報告は、少なくて済むかもしれない。

 

 

🍁ー・ー🍁ー・ー

*1 原文は次のようになっている。ん〜、英語が難しい。僕の理解は間違っていないと思うが…

 

The guidance and illustrations that follow, unless stated otherwise, assume that the tax law requires offsetting net deductions in a particular year against net taxable amounts in the 3 preceding years and then in the 15 succeeding years.

 

*2 日本の税法における繰越欠損金等の規定は、以下のようになっている。

 

(過去の事業年度からの組戻し)

 

一応、前年の事業年度の課税所得を組戻す制度があるが、もう20年以上の長期間、適用停止となっている。よって、(税務上の)大法人はこの制度を使用できない。

 

No.5763 欠損金の繰戻しによる還付 国税庁HPH27/4/1現在)

 

欠損金額をその事業年度開始の日前1年以内に開始したいずれかの事業年度(還付所得事業年度)に繰り戻して法人税額の還付を請求できる。ただし、この制度は、①解散等の事実が生じた場合の欠損金額及び中小企業者等の各事業年度において生じた欠損金額を除き、平成4年4月1日から平成28年3月31日までの間に終了する各事業年度において生じた欠損金額については適用が停止されている。

 

(将来の事業年度への繰越し)

 

繰越欠損金は9年間繰越し可能(平成29年度以降は10年へ延長予定)。但し、大法人には控除限度額の制限がある。

 

No.5762 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除 国税庁HPH27/4/1現在)

 

ちなみに、税効果会計が導入されたころは、この期間は、わずか5年間だった(例えば、次の資料にその面影を見ることができる。「税効果会計に関するQ&A」(1999年のものと思う)のQ3Aの(5)に「当期末に税務上の繰越欠損金がある場合には、その発生年度の翌年から5年(繰越期間)以内に…」とある)。

 

期間が5年から、9年や10年に延長されても、新たに控除限度額が設けられたので、繰越欠損金控除はあまり使いやすくはなっていないかもしれない。そのためか、その当時から、繰延税金資産の回収可能性に関する会計基準を実質的に規定している監査委員会報告第66号は変えられていないし、今回の公開草案も、その枠組み(特に会社分類の基準)を概ねそのまま踏襲している。

 

*3 分類2や3の会社についてはすでに 508-9/8 へ記載しているが、再掲すると次のようになる。

 

分類2

過去3年及び当期、臨時項目控除後の課税所得を安定的に獲得し、経営環境に著しい変動のない会社(但し、課税所得は、繰延税金資産の全額を回収するに十分なほど大きくない)

 

分類3

過去3年及び当期、臨時項目控除後の課税所得が大きく増減している会社。但し、重要な繰越欠損金は生じていない。

 

 

2015年9月22日 (火曜日)

513【税効果13】US-GAAPの税金資産の回収可能性〜概略

2015/9/22

みなさんも、多くの方が感動されたと思う。ラグビー杯(イングランド大会)の日本代表の初戦、南アフリカ戦のことだ。久しぶりにラグビーの試合をじっくり見たが、ブレも迷いもない強気で冷静な試合運び、体格で負けても気合で止める伝統の魂のタックル、ほとんどミスのないボール回しや密集でのプレー、五郎丸歩選手の精度の高いキック、どれもが素晴らしかった。

 

前半は日本がリードし、南アフリカが抜き返すというシーソー・ゲームの展開だった。後半は、リードする南アフリカを日本が執拗に追いかける展開だった。南アフリカ代表は、何度突き放しても追いついてくる日本代表に精神的に追い詰められたのか、29対29、同点の試合最終盤(72分ぐらい)にトライを狙わずペナルティ・キックを選んで29対32としてリードした。

 

そこから左サイドを攻めまくる日本。80分を過ぎて相手ボールになるような形でプレイが止まったら即試合終了となる追加時間帯に、日本代表はペナルティ・キックではなくトライを狙い続けた。日本代表は、相手ゴール前の左サイドから逆サイドのライン際までボールを回して、相手ディフェンス突破を狙い続けるが、なかなか守備ラインを破れない。しかし、もう一度左サイドへ急展開すると、相手の隙をついて左隅へトライを決めた。時計は84分を回っていた。日本代表は34対32で逆転勝利した。

 

日本代表のW杯での勝利はなんと24年ぶり、2度目のことだという。しかも相手は、過去、ニュージーランドとオーストラリア以外にはほとんど負けたことのない強豪の南アフリカ。世界中に驚きを与えたという*1。ちなみにラグビー日本代表の愛称は、ブレイブ・ブロッサムズ(=Brave Blossoms、勇敢な桜)。正に「名は体を表す」戦いぶりだった。

 

こういうニュースには、本当に励まされる。特に、投資成績や清水エスパルスの戦績不振に喘いでいる僕にとっては、塩を洗い落としたナメクジのよう、いや、春の初めに桜のつぼみの綻びを見つけた時のような、明るく、はなやいだ気持ちにさせてくれる久しぶりのニュースになった。

 

 

さて、そんな浮かれた気分に浸りながらも、このブログは、地味に、税効果を引き続き検討したい。前回からの流れでいえば、今回は、繰延税金資産の回収可能性について、US-GAAPの規定を見ていくことになる。果たして、日本基準のように会社分類や見積り年数の指定をしているのだろうか。予想としては、US-GAAPは細則主義と言われるので、日本基準以上に細かい規定や設例があっても不思議ではない。

 

結論から述べると、ん〜、「えっ?」て感じだ。大変申し訳ないが、僕の能力と努力の不足により、断定はできないが、どうも、驚くほどシンプルな規定であり、難しい設例もなさそうだ。いや、どうも、そうではないらしい。実は、まだ調べ切れていない。

 

 

以下、僕が調べた内容を中間報告する。

 

まず、ネットを探したが、非常にコンパクトなものしかなかった。当然、僕のニーズにはマッチしない。そこで、県立中央図書館で探してみることにした。すると、長谷川茂男氏の「米国財務会計基準の実務」があった。非常に分厚い本だ。但し、2011年度版。他にUS-GAAP関係はない。まあ、最新版でなければダメということもないので、図書館の方に断った上でスマホで税効果会計のすべてのページの写真をバシバシ撮って持ち帰った(コピーしようかとも思ったが、写真の方がはるかに楽だし経済的)。しかし、たった28ページしかない。

 

一応、ざっと目を通したが、後日税務調査で企業の税務処理が覆されるリスクを考慮した“税務上のポジション”などのUS-GAAPらしい緻密な規定はあるが、肝心の回収可能性の見積りについては、会社分類や見積り年数について目立った記載はなかった。概略を記載する。

 

(認識・測定)

 

繰延税金資産は一旦全額認識するが、回収可能性が50%に満たない金額について評価性引当金を見積り控除する。(=回収可能性が50%を超えた金額が繰延税金資産となる。この「可能性が50%を超える」とは「more likely than not」の略で、“MLTN規準”などと呼ばれるらしい。)

 

(評価性引当金の見積り)

 

すべての消極的証拠と積極的証拠に関連する影響を検討して引当金の要否を判断する(740103017)。

 

消極的証拠は、日本の公開草案の会社分類4や5へ振分ける基準に該当するイメージ。近年の累積された損失(繰越欠損金)の存在やその期限切れの実績、近い将来に予想される損失などが例示されている。これらの消極的証拠がある場合は、引当金の計上を否定することが難しくなる(740103021

 

積極的証拠は、消極的証拠を打ち消すような前向きのもので、課税所得を安定的に獲得したり、その確実性を増したり、或いは、過去の損失が一時的なものであると示すもの(かなり簡略化して記載した)。日本基準でいえば、現行基準の④但し書きや、公開草案の28項、29項のような、見積り期間を長期化できる要件に当たるイメージ。

 

上記を読んで、消極的証拠と積極的証拠を比較して、どちらの影響が大きか検討するイメージが湧いてきた。即ち、消極的証拠の影響が大きい場合は、全額引当てるか、又は、一部金額の引当金を設定することになる。積極的証拠の影響が大きい場合は、引当金を設定しない感じ。

 

以上を読んで思ったのは、恐らく、この本には触れられていないもっと細かい規範があるのではないかということだ。この本は分厚いが、それでも数万ページに及ぶというUS-GAAPを網羅できる厚さではない。一般に“難しい”とされる税効果会計の規定が、こんなにあっさり完結するとは思えない。

 

それに、日本の会社分類4や5に当たる記述があって、程度の差こそあれ同様に、一部の繰延税金資産の回収可能性が否定される2や3に当たるものが何もないとか、スケジューリング可能な一時差異とか、同じく不能な一時差異といった概念に当たる記述が見当たらないのも気味が悪い。

 

ん〜、このまま降参するわけにもいくまい。そこで、最も避けたかったが、恐る恐る、FASBHP*2で条文(英語)を見てみると・・・

 

井戸の上から中を覗き込んだような、不安な気持ち。英語ばかりのページは、真っ暗でよく見えないのと同じだが、間違いなくそこには深遠な世界が広がっている。正直に言って、僕の心境は、塩を撒かれたナメクジのように縮こまっている。しかし、これではブレイブ・ブロッサムズ、ラグビー日本代表に恥ずかしい。ここは、もう一度勇気を振り絞ってトライが必要だ。

 

ということで、次回も、この続編となる。だが、成果が得られるか、MLTNだ。

 

 

🍁ー・ー🍁ー・ー

*1 海外メディアの報道ぶり、驚きっぷりは、以下のようなページで見ることができる。

 

「ラグビーW杯史上最大の衝撃」 英メディアも大きな扱い 日経電子版 9/20

 

ラグビー発祥の地であり、今大会の開催地の英国メディアやハリーポッター作者の反応が紹介されている。

 

ラグビーW杯 日本代表が歴史的勝利 海外メディアも大きく報道 FNN 9/20

 

記事の末尾に、英ガーディアンの他、ニュージーランドの新聞社や南アフリカのサポーターの声を紹介している。

 

ラグビーW杯 日本が南アフリカに歴史的勝利 NHK 9/20

 

記事の末尾で、REUTERSAFPといった通信社の扱いを紹介している。

 

 しかし、単なる事実報道だけでなく、海外メディアの記事の雰囲気まで知りたければ、下記のホーム・ページが良いかもしれない。

 

ラクビーW杯日本が南アに勝利!海外メディアの反応は? ZUU online

 

 どうやら、ラグビーの国際試合では、番狂わせはほとんど起きないらしい。世界ランキング3位の南アフリカと世界ランキング13位の日本では、その数字以上の差があるようだ。

 

 

*2 みなさんも登録すればご覧になれる(“Basic View”をOrderすれば無料)。

 

https://asc.fasb.org

 

2015年9月19日 (土曜日)

512【投資】子供騙しの慰め

 

 

2015/9/19

いよいよ、シルバー・ウィークの始まりだ。8月決算会社の経理部や監査人などの一部の人々を除き、一般的には5連休に心踊らせている方々多いだろう。僕はというと、机の角に足の小指をぶつけたときのような気分で、踊るどころではない。ただ、この感情は怒りより、嘆きの方に近い。

 

今週も、日経平均株価は週間で下落した。神頼みしていた黒田バズーカーも、米FOMCの利上げも不発だった。おかげで、僕の所有銘柄の時価評価表が、あちこち大怪我による出血で赤く染まっている。それを見て僕の顔が青くなっている。「それって、“なしよりのなし”じゃね」とか言われそうな気分だ。(いや、もう一つ“なし”がついても良い。)

 

ただ、足の小指を打ったぐらいなら、命に別条はない。むしろ、時とともに痛みが引くのが普通だ。ということで、今はまだ、頭が激しい痛みに朦朧としているが、それに堪えながら、この痛みが引くものかどうか、素人なりに考えてみたい。

 

 

今週は何といっても、米FOMCの利上げ延期の判断(日本時間18日午前3時に公表)が、最大のイベントとなった。僕はこの丑三つ時のイベントを起きて迎えた。というのは、ペルーの巨大地震による津波について気象庁から津波注意報が発せられ、なんと午前3時に、枕元に置いてあったスマホから、突如、警告音が鳴り響いたからだ。いや、それだけじゃない。そのちょっと前から雷鳴が轟いており、僕はすでに目を覚ましていた。しかし、この雷鳴と警告音のセットには、さすがに嫌な予感がした。時計を見ると、ちょうど、FOMCの利上げ判断が公表される午前3時だった。

 

悪い知らせには、しっかり向き合わなければならない。逃げてはいけない。そう思って、ネットのニュース・サイトを見ると、やはり、FOMCは9月利上げを見送っていた。米国においては9年ぶりとなる利上げは、10月以降へ延期された。

 

しばらく、WSJで、ダウ工業株30種平均(以下“DOW30”と記載)とドル円の為替相場の推移を眺めていたが、DOW30は狭い範囲で上がったり下がったりで方向感が定まらず、円相場はモタモタしながらも円高へ振れていった。

 

投資家は戸惑っている。FOMCが利上げしないことで中国や新興国の経済へ配慮を見せたので、安堵した人もいただろう。一方で、この煮えきらない予見可能性の低い状態がまた続くのか、と失望した人も同じぐらいいたのだろう。どちらにしても、「FOMCよ、よくやった!」とリスク・オンへ向かうことは、なさそうだった。僕は、まだ止まない雷鳴のなかで、湧き上がってくる不安を押し殺して寝ることに集中した。「朝起きたら、米株は大きく上昇しているかもしれない」と、自分でも子供騙しと分かる慰めで。

 

その朝、米国市場の17日の顛末を確認すると、DOW30はやはり下落し、ドル円は円高に振れていた。日本株は、その日、即ち18日、大幅に下落した(N225が362円下落)。ただ、他のアジア株は方向感なく、比較的落ち着いた動きを見せた。欧州株は、下落スタートとなった。

 

 

では、FOMCが利上げを先送りした理由を見てみよう。FOMCを主導したイエレンFRB議長の記者会見の記事*1を読むと、やはり鍵になったのは中国経済だ(下記は僕の勝手な解釈でまとめている)。

 

・ドル高や原油安が米国のインフレ率の上昇を阻害している。そこへ中国ショック。

 

中国経済の減速が、原油など国際商品相場を下落させ、他の新興国経済を脅かし、ドル高を起こしやすくしている。そしてドル高が、輸入物価を下落させ米国のインフレ率の上昇を阻んでいる。このような構造の下で、中国経済がさらに減速の度合いを速めると、米国のインフレ率がさらに上がりにくくなる。その中国経済減速の程度を、今しばらく見極める必要がある。

 

・上記を考慮すると、労働市場のより一層の改善を確認する必要がある。

 

FOMCでは、「労働市場がインフレ率を押し上げるまで改善したか」を注視しているが、上記の中国ショックに端を発したインフレ率上昇阻害要因がある分、より大きな改善を確認したい。

 

・中国ショックによる金融市場の乱高下には、幾分かの引き締め効果があった。

 

株価の下落、ドル高、リスク・スプレッドの拡大などが、金融情勢を引き締めている(ので、9月の利上げ、即ち、金融引締め開始を急がなくても良い)。

 

イエレン議長は、インフレ率が目標である2%程度に上昇するまで、利上げを待つつもりはないという。利上げが実体経済へ影響するのに時間がかかるため、もっと早く利上げをしたい。だが、最近の中国ショックの原因や影響をまだつかみきれていないので、今回は見送ったということのようだ。やはり、世界中の株式市場が動揺している間は、利上げをしたくないということかもしれない。

 

 

日和ったな、イエレン議長。市場に白旗を揚げたのでは。上記は、「中国ショックを引き起こした中国経済の実態がよくわからないので、利上げ判断を留保した」と言ったに等しいのでは?

 

 

FRBなど中央銀行が金利を上げ下げできるというのは、金利市場(=債券市場)を操作する権限を与えられているということだ。それが、経済の過熱を防いだり、活性化させる手段となっている。これは中央銀行に与えられた特権であり、一般の市場参加者にはできない。

 

通常、“市場価格”は最も妥当な価格とされる(会計でも“公正価値”と呼ばれて珍重、いや、尊重される)。しかし、中央銀行はこの価格を操作して良い唯一の存在だ。なぜ? 恐らく、その価格の背景にある経済実態を適切に把握する能力があると期待されているからではないか。だから、市場の行き過ぎを発見し、それを訂正することができると期待されているのではないだろうか。

 

もちろん、これは非常に難しいことだ。その際に材料になる経済指標はそれぞれが欠点や癖を持っており解釈が難しいし、個々の経済指標を総合する際に利用する経済理論も、自然科学の理論のような安定性はない。僕にはわからないが、(学識やビジネス実務経験に基づく)勘と度胸が相当な幅を利かす世界なのではないか。ましてや中国は経済指標さえ当てにならないから、常識的に考えれば、「評価する時間がもう少しほしい*2」というイエレン議長の言うことも分かる。

 

だが、特権を与えられた中央銀行の責務としては、どうだろう? その時その時における判断の根拠を、「これが(現時点の)ベストの解釈だ」と、示さなければならないのではないか。ところが、FOMCは、そこから逃げたように僕には思える。

 

「そっか、FOMCでさえ逃げるほど、中国経済の判断は難しいんだ。」

 

こんなメッセージを市場に送ってしまったとすれば、当分、リスク・オンには戻りそうもない。欧州株は、この記事を書いている間も、一貫して下げ続けている。米国株もストーンと下げて始まった。

 

イエレン議長、これって、“なしよりのなしよりのなし”じゃね。

 

 

ただ、「米国の中央銀行が世界中に目配せしましたよ」というメッセージも受け取った。従来、「米国は自国の都合だけで金融政策を決め過ぎる」と批判されていたので、国際金融情勢を考慮、尊重した部分については、欧州や新興国を中心に、歓迎されたに違いない。(だから、アジア株が比較的落ち着いていたのかもしれない。)

 

とりあえず今は、イエレン議長のこの優しさが、シルバー・ウィークの間に欧米市場にじわりと浸透し、投資家が落着きを取戻し、相場が反転することを期待しよう。そして僕は、また「これは子供騙しの慰めじゃない」と、自分に言い聞かせてから寝ることにする。

 

 

🍁ー・ー🍁ー・ー

*1 イエレンFRB議長の記者会見については、次の記事がある。

 

FRB議長会見、一問一答  日経電子版無料記事 9/18

イエレン米FRB議長の会見要旨 REUTERS 9/18

 

*2 この文章は、上記のREUTERSの記事から引用した(<不確実性>の2段落目)。

2015年9月17日 (木曜日)

511【税効果12】IAS12の改定?

2015/9/17

安保法案は参議院を通過するらしい。判断を政府任せにせず、より広範に国会が審査することを主張した3野党の考え方には興味を覚えるが、法案修正には至らなかったという*1。う〜ん、それで良いのだろうか。せめて、次の国会での法制化を与党に約束させるべきではなかったか。

 

それに、国会をそこまで信用して良いだろうか。

 

米国議会は米国政府が合意した国際条約などを、重要なものでも平気で拒否する。例えば、CO2の排出量取引などを定めた京都議定書がそうだし、IMF(=国際通貨基金)のガバナンス改革も、そのせいで滞っている(それが中国のAIIB設立へつながったとの説もある)。米国議会は、決して褒められたものではないが、ただ、自分たちが正しいと思ったことを貫ける点は羨ましいと思う。

 

国会は、政府が米国に呑まされた地球の裏側への派兵要請を拒否する気概があるか。或いは、賛成し、政府と一緒に国民を説得するつもりがあるか。東南アジアの国々からの救援要請を、日本の国益(=政府ではなく国民の利益)に照らして冷静に判断し、場合によっては受ける覚悟があるか。そのとき世論を説得できるか。選挙区に帰って政府に責任をなすりつけ、言い訳ばかりする国会議員では困る。みなさん、これからの選挙はますます重要ですね。

 

 

さて、安保法案とは異なり、IAS12「法人所得税」を置き換える公開草案は、かつて、廃案になったことがある。2009/11のことだ(但し、2010年と2014年に、部分的な改正へつながった)。当時は、IASBと米FASB(=財務会計審議会)が、会計基準のコンバージェンス・プロジェクトを精力的に進めていた。その一環として、IASBは、2009/3に公開草案(以下、“2009ED”と記載)を公表したが、寄せられたパブリック・コメントは散々だったようだ。

 

その2009EDをネットで検索したが、残念ながら見つけることはできなかった。しかし、当時の解説資料が幾つかあった*2のと、IASBの「2015年アジェンダ協議(意見募集)」があったので、これらを参照しながら、「繰延税金資産の回収可能性について、IAS12は近い将来改定されるか」を考えていきたい。

 

というのは、僕はこのシリーズで日本基準の公開草案に対して「もっと原則主義へ」と注文をつけてきたが、「そもそも、IAS12が細則主義へ改定される可能性もあるではないか」との反論を受けそうと思ったからだ。そうなれば、IAS12が日本基準のように会社分類し、見積り年数を指定するようになるかもしれない。

 

実際、2009EDでは、繰延税金資産の回収可能性について、米国基準の規定を丸呑みしようとしたらしい。すると、将来、米国基準の方向へ向かって改定が進むかもしれない。では、米国基準はどうなっているのか、と色々興味が沸く。

 

う〜ん、しかし、米国基準は英語でしか資料が得られないかもしれない。これは時間がかかりそうだし、僕の能力をはるかに超えているかもしれない。やはり、あまり深く突っ込まないほうが良いだろうか。

 

では、このテーマは廃案にするか? いや、諦めないで可能性に賭けてみよう。完全でなくても、多少は前進できるかもしれない。

 

ということで、このテーマを続けようと思うが、時間をいただくために続きは次回への繰越し、即ち、継続審議としたい。

 

 

🍁ー・ー🍁ー・ー

*1 安保法案 与党・野党3党 修正協議で大筋合意 NHK NEWS WEB 9/16

  安保法案、3野党賛成へ 16日にも特別委で採決 与党単独を回避 日経電子版有料記事 9/16

 

 

*2 2009EDに関連する資料としては、以下を参考にさせていただいた。

 

税効果会計のコンバージェ ンスの方向 関西学院大学 中島稔哲氏(2008?)

IASB「法人所得税」プロジェクトの新たな課題 関西学院大学 中島稔哲氏(2010

 

 

 

 

 

 

2015年9月15日 (火曜日)

510【税効果11】その他の相違点

2015/9/15

茨城、栃木、宮城の各県で、河川の氾濫による洪水。阿蘇山は噴火。ん〜、地球め、小さいぞぉ。もっと大らかにお願いしますよ。といっても、自然が厳しいのは遠い昔からの常識。人類は尊い犠牲を払いながら、逞しく生きてきた。人類が小さな存在だからといって、舐めてもらっては困る。

 

ということで、今回も小さなことを一生懸命検討していきたい。このシリーズの前々回(508-9/8)に3つ例示したIAS12「法人所得税」と今回の日本基準の公開草案の相違点の1つめは前回(509-9/11)済ませたので、2つめ、3つめへ進みたい。

 

・公開草案では、分類3の会社において、退職給付引当金や減価償却超過額に係る一時差異のような“解消見込年度が長期にわたる将来減算一時差異”は、スケジューリングを行うことを条件に全額回収可能と判断することが認められている(35*1)。

 

3〜5年先までの課税所得が見込めるからといって、すべての会社が数十年先の一時差異解消まで見込んで良いだろうか。IAS12を適用している会社は、そういう判断をするだろうか。特に減価償却超過額。会社によるのでは?

 

減価償却超過額が発生するのは、法定耐用年数より短い耐用年数を採用したり、定率法や定額法など税法で認められた減価償却方法より費用が早期に発生する減価償却方法を採用した場合が考えられる。これは、税法規定にとらわれず、製品や事業のライフサイクルを前提にした事業計画に基づいた減価償却を行っているケースが考えられる。

 

例えば、5年で改装を繰返す居酒屋チェーンでは、内装や什器、厨房設備についても法定耐用年数よりはるかに短い減価償却期間を設定しているかもしれない。減価償却超過額が比較的多額となる一方で、短期間に除却されていくので、事業計画に連動してスケジューリングされていれば、あとは事業計画によって十分な課税所得が獲得できるかどうかを判断すれば良い。毎期新たに多額の減価償却超過額が発生し加算され、かつ、多額の過去の加算分が解消されていく状況が、事業計画の年数を超えて継続可能かどうか、耐用年数は短いのでもう数年追加で評価すれば良いだろう。

 

しかし、修繕費を税務調査で否認されて減価償却超過額としている場合はどうだろう。小さな話だが、建物の場合はそこそこの金額になるケースもあるかもしれない。こういったものは、会計上の費用にならないので原価計算の対象にもならない。販売価格の算定に考慮されていない可能性もある。要するに損益管理の対象にすらなってない可能性がある。それを全額、全期間の税効果を繰延税金資産に計上して良いだろうか。

 

まあ、ほとんどのケースでは、小さな話なので重要性のないことではあるが、僕は、管理もされていないものに、会計基準が大した条件も付けずに特権的な取り扱いを認めることが、気になる。細かいが。(ただ、この細かい話以外に、もっと大きな“そもそも論”もあるので、欄外の*1に記載した。)

 

 

・公開草案では償却資産の減損損失について、従来通り、上記の減価償却超過額と異なる扱いになっている(36項(1))。

 

会社によるのでは? 分類3の会社では、内容・金額によっては減価償却超過額と同様、全額回収可能と判断するケースもあるのでは? 減損は資金生成単位という小さな単位で評価する。一方、課税所得は会社全体という大きな単位なので、回収可能となる率が高いケースも多いのではないか。

 

「ある事業にかかる減損損失が多額で、その事業を売却すると多額の将来減算一時差異が一挙に減算され、その期の課税所得でカバーできずに重要な繰越欠損金が発生する可能性がある」というような減損損失であれば、減価償却超過額と異なる扱いにすることに賛成だ。だが、そういう減損ばかりではないはず。状況次第だと思う。

 

僕は、上記の居酒屋チェーンの例は、減損も減価償却超過額も同じ扱いで良い例になると思う。

 

5年で改装するのは、それだけ消費者の好みの移り変わりが激しく、店のコンセプトが飽きられやすいからだ。店の中には5年もたずに3年、4年で次のコンセプトへ改装したり、場所に問題ありと判断すれば退店することもあるだろう。するとその直前の決算で、減損損失の計上を伴うかもしれない。

 

このような減損は、固定資産の除却損をちょっと早く計上したに過ぎない。もし、減損対象となったある資産について、法定耐用年数満了まで3年以上あるとしても、3年以内の改装や退店時期を見積り、スケジューリング可能な一時差異として、見積り期間内で解消を見込むことができる。即ち、このような減損は、日本基準でも税効果を認識できる。

 

しかし、もし、その後店舗の業績が回復し改装や退店を中止したら、見込んだ税効果を取消すだろうか?

 

IFRSでは、まず、減損した事業が復調すれば(一定の場合に)減損が取消されるから、一時差異はなくなり、通常の減価償却へ戻る。仮に、減損が取消せない状況であっても、店舗業績が回復しているならば、(その分、会社としての課税所得も増加するので)IAS12では、回収可能と判断できるかもしれない。

 

残念ながら、公開草案では、違う結果になるだろう。折角業績が回復したのに、一時差異解消のスケジューリングが3年より後ずれすることで、見込めていた税効果が否定され、その分、純利益が減少するという不思議なことが起こると思う。これって、経済実態に忠実な表現だろうか?

 

恐らく、「それは減損計上が早すぎるんだよ。もっと減損の発生が確実な段階で損失計上するべき」などと反論されそうだが、だから、日本基準は経営管理に使いづらい。減損が確実になってからでは遅い。打つ手が限られてしまう。減損のタイミングは企業のリスク管理の中で設定されるべきで、そうなれば、よりオープンでスピーディーな問題解決へのアプローチが促され、結果として減損の判断も早まるように思う。(もちろん、東芝のように実態を無視して「チャレンジせよ」と繰返すだけの経営者がいる会社では、このようなリスク管理は望めない。)

 

ということで、レアで小さな問題の指摘だが、意外と奥行きは深いかもしれない。思った以上に、重箱の隅に美味しいものが残っていたように思うが、いかがだろうか。

 

欄外の *1 に記載したことも含めて、我が国の税効果会計基準が、現状のルール・ベースで良いかどうか、もっと原則主義へ向かい会社の実情に合わせた処理が可能にならないか、いずれ検討できる時期が来ることを望みたい。企業会計基準委員会(=ASBJ)が、「会社が、自らの見通しを的確に持てるようになった=リスク管理能力が向上した)」と自信が持てるようになったときが、きっと、その時だと思う。恐らく同時に、減損会計も見直されるに違いない。

 

 

ところで、ご存知の方が多いと思うが、東芝は、昨日、第1四半期決算(連結)を公表した(東芝2015年度 第1四半期決算説明資料)。

 

僕は前回(508-9/8)の後半で、2015/3期の有報をざっと見ながら、東芝は税効果の見積り期間を見直していないようだと記載した。当期の業績がこの粉飾事件に大きな影響を受けていない可能性も、一応、考えられたが、四半期決算は赤字だった(当社株主に帰属する四半期純損失122億円)。そして、業績予想については「不適切会計処理問題の影響等を慎重に見極めている状況であることか ら、2015年度業績予想は開示しておりません」としている。かなり影響が大きくなる可能性を排除できないだろう(顧客が東芝の現場と製品をどれだけ信頼しているかによる)。

 

今後、業績予想や第2四半期決算を公表する過程で、税効果の見積り期間が見直され(=短縮され)、純利益に大きな影響を与える可能性がある。東芝株に興味をお持ちの方は、この先も、注意が必要だ。(この四半期末で、約四千億円の繰延税金資産がある。繰延税金負債もあると思うが“その他”に含まれているので金額は不明。ちなみに、前期末は注記によれば、資産が5,137億円と負債が2,538億円だった。)

 

 

🍁ー・ー🍁ー・ー

*1 公開草案の35項には次のように記載されている。

 

解消見込年度が長期にわたる将来減算一時差異の取扱い

 

35. 退職給付引当金や建物の減価償却超過額に係る将来減算一時差異のように、スケジューリングの結果、その解消見込年度が長期にわたる将来減算一時差異は、企業が継続する限り、長期にわたるが将来解消され、将来の税金負担額を軽減する効果を有する。

これらの将来減算一時差異に関しては、第15 項から第32 項に従って判断した分類に応じて、次のように取り扱う。

(1) (分類1)及び(分類2)に該当する企業(第28 項に従って(分類2)に該当するものとして取り扱われる企業を含む。)においては、当該将来減算一時差異に係る繰延税金資産は回収可能性があると判断できるものとする。

(2) (分類3)に該当する企業(第29 項に従って(分類3)に該当するものとして取り扱われる企業を含む。)においては、将来の合理的な見積可能期間(おおむね5 年)において当該将来減算一時差異のスケジューリングを行った上で、当該見積可能期間を超えた期間であっても、当期末における当該将来減算一時差異の最終解消見込年度までに解消されると見込まれる将来減算一時差異に係る繰延税金資産は回収可能性があると判断できるものとする。

(3) (分類4)に該当する企業(第28 項に従って(分類2)に該当するものとして取り扱われる企業及び第29 項に従って(分類3)に該当するものとして取り扱われる企業を除く。)においては、第27 項と同様に、翌期に解消される将来減算一時差異に係る繰延税金資産は回収可能性があると判断できるものとする。

(4) (分類5)に該当する企業においては、原則として、当該将来減算一時差異に係る繰延税金資産の回収可能性はないものとする。

 

これは従来(監査委員会報告第66号)の扱いが、そのまま引き継がれたものだ。「企業が継続する限り、長期にわたるが将来解消され、将来の税金負担額を軽減する効果を有する」ことを根拠に、分類123(分類4から分類23へ振替られたもの(=3年超の見積りが可能なもの)を含む)の会社については、退職給付引当金や減価償却超過額などについて、将来減算一時差異の全額に回収可能性があると判断することができる。

 

みなさんは、なぜこれが認められるか理解されているだろうか。実は、僕は理解していない。想像するに、これらは、「一時期に多額の将来減算一時差異の解消が集中することなく、かつ、必ずいつかは解消される性質である」ことが、キーになると思われるが、はっきりとした理由は知らないし、分からない。

 

簡単にいえば、これらの一時差異については「3年先まで課税所得を見込める会社ならば、見積り期間を超えて数十年先の税効果までも見込んで良い」とされているが、なぜだろう。

 

もしかしたら、「3年課税所得が見込める=数十年間企業が継続し、一時差異が解消できる確率が50%以上」という仮定があるのだろうか。

 

数十年という長期にわたる企業継続を仮定できるなら、多少大きな減損損失であっても解消可能ではないか。即ち、解消額が一時期に多額となることが予想される一時差異であるため、その時繰越欠損金が生じる可能性が考えられる場合であっても、数十年もの企業継続の仮定が容認されるなら、そのうち、この繰越欠損金も解消されると考えられる。

 

そうなら、その他のスケジューリング可能な一時差異も、すべて良いように思われる。どこに差があって、このような特権的な扱いが容認されるのか…。

 

 

2015年9月11日 (金曜日)

509【税効果10】会社分類による相違

 

2015/9/11

昨日は、久しぶりに夏の暑さが戻ってきた。予報では今日も暑そうだ。このところ涼しくて油断していたが、「いつでも暑くできるぞ」と意地悪く地球に脅されているようだ。地球温暖化と異常気象、うなぎや太平洋クロマグロの絶滅危惧種指定、さんまの漁獲高減少による高騰など、最近、「地球って小さいなあ」と思わされることが多いが、この暑さのぶり返しには、(地球は)性格も小さいんじゃないか?と思いたくなる。

 

今、欧州で大問題になっている大量の難民問題。発端は、アラブの春をきっかけにシリアで反政府運動が内戦化し、そこに残虐なイスラミック・ステートが雑草のごとく侵食し、事態が複雑化したことが大きいと、一般に考えられている。即ち、きっかけは、アサド政権の悪政に対し民主化を求める国民蜂起だとする。

 

ところが、内戦が起こる直前、シリアは数年間に及ぶ史上最悪の干ばつに苦しんでいたそうだ。国民は確かにアサド政権に怒って蜂起したのだが、それは民主化というより、干ばつによる生活困窮を救おうとしないアサド政権の無策にあるらしい*1

 

欧州の難民問題も、元をたどれば地球の仕業ということになる。

 

地震に噴火に台風や豪雨、竜巻だけじゃない。地球がちょっとヘソを曲げれば人間社会は大変なことになる。地球は小さいが、人類はさらに小さい。

 

 

ということで、今回は小さい問題を扱っていく。それは、繰延税金資産の回収可能性に関するIAS12「法人所得税」と今回の公開草案の具体的な相違点だ。

 

前回(508-9/8)は、大きくそれらの規定の枠組みの違いについて検討した。その結果は、“将来の見通しが可能かどうか”が見積りの最も重要な根拠となる点で、両者は共通していた。一方で、原則主義的なラフな規定のIAS12に対して、公開草案は、会社の分類方法や見積り年数が指定されており、監査委員会報告第66号の細則主義的な規定が受け継がれている。

 

今回は、前回僕がリストアップした例について、具体的に考えていく。これらは、原則主義のIFRSと細則主義の日本基準の差意になると思う。大きなところを合わせても、小さなところが違ってしまう。

 

前回のリストアップを青字で再掲する。

 

・公開草案では、繰延税金資産の全額を回収するに十分な課税所得を、毎期獲得している会社(=分類1)でないと、スケジューリング不能な一時差異の全額を繰延税金資産へ計上することはできない。

 

日本基準の分類2の会社がIAS12を適用した場合、2〜3年で繰延税金資産の全額を回収するに十分な課税所得を獲得できる見通しの確実性の高さ、及び、スケジューリング不能な一時差異の内容や金額に重要性がないことを根拠に、スケジューリング不能な一時差異の全額計上するケースがあるのではないか。

 

例えば、今後5年以上の間、安定的に毎期100の課税所得(その税効果を40とする)を獲得できると見込める会社が、125の将来減算一時差異(その税効果を50とする)を持っている場合、日本基準では、125 > 100 なので分類2となる。125の中にスケジューリング不能な一時差異である本社土地の減損が25ある(その税効果を10とする)とすると、これが21項但し書き*2に該当しない限り、繰延税金資産の計上対象にならない。すると、50 - 10 = 40 の繰延税金資産が計上される。

 

通常、本社土地を売却するのは業績が相当悪化した時が想定されるので、十分な課税所得がない可能性が高く、税効果は得られないと考えるだろう。それが、上述のような10を控除する計算の根拠になる。もし、10を回収可能性ありと判断したければ、21項但し書きを満たすように、“合理的な説明”となる土地の売買計画などの状況が必要だ。

 

しかし、土地の時価が回復していた場合はどうだろう。日本基準では一旦減損損失を計上すれば、それを取消して戻入れすることはできない。しかし、IFRSでは地価が下落した原因が解消されるなどして地価が回復すれば、減損処理を取消して元に戻すから、一時差異25がなくなることになる。この場合は、IAS12に至る前にこの土地の税効果の問題は解消される。

 

地価が回復したが減損戻入の要件を満たさず一時差異がそのまま残った場合はどうだろう。IAS12で考えると、会社分類の制約はないから、シンプルに、土地売却時に減損損失の税効果を取れるかどうかを見積もることになる。すると、土地の時価が復活している場合は、繰延税金資産10に回収可能性ありと判断する可能性がある。なぜなら、売却年度では通常の課税所得100に加え、25の売却益が発生するから、期末の将来減算一時差異125をカバーできる。

 

(日本基準でも同様の判断が可能かもしれないが、規定上はそうなってないので、素直に解釈すれば、10については回収可能性なしとされるのではないかと思う。)

 

この例は、日本基準の会社分類の境目で、IAS12と齟齬が生じる可能性を示すものになっていると思う。

 

 

同様の、会社分類の境目の齟齬の例としては、公開草案の21項但し書きの扱いも挙げられる。

 

分類4の会社の一部はこの規定を利用できるが、分類3に該当した会社には利用するチャンスがない。それは分類3の会社は業績が不安定なので、一時差異の解消時期が定まっておらず遠い将来になるかもしれないスケジューリング不能な一時差異に、税効果を見込むことはできないとの判断だと思う。

 

しかし、一方で、一部の分類3の会社に5年超の見積りを認めている。分類3の会社は、業績不安定といっても、将来必ず重要な繰越欠損金を持つようになり、そのうち、翌期の課税所得も見込めない状況へ落ちていくものではない。その不安定な状況を延々と続けて行く可能性もある。

 

このような会社と、重要な繰越欠損金を滅多にない要因で負ってしまったものの基本的には事業が安定していて5年超の期間を見積もれる分類4の会社と、どれほど違いがあるだろうか(このような会社は21項但し書きを利用できる)。事業が安定しているといっても、重要な繰越欠損金を計上した事実はあり、それを繰り返さない保証はないし、新たな要因でまた繰越欠損金を計上する可能性もあるのだし。

 

従来、分類45年超を見積もる規定に該当したのは、金融機関が多かったのではないかと想像している。恐らく、十数年前の貸し剥がしが騒がれた時代に多額の損失を計上し、重要な繰越欠損金を計上していたからだと思う。しかし、繰延欠損金が解消され、今後、業績不安定になると分類3へ分類される。そのとき、21項但し書きはもう利用できなくなる。

 

金融機関は、低金利下で貸出が伸び悩むと金利収入は、安定しているが、それだけでは課税所得が見込めなくなる。そういう環境で、国債売買など市場取引や投資信託販売といった市場環境に影響を受けやすい取引に収益を依存する体質になると、分類3へ進む可能性が高まる。といっても、以前のような不良債権を溜め込む可能性は低い管理体制になって、以前と同様の理由で多額の繰越欠損金が計上される確率は下がっている。分類2と分類3の間に位置するような金融機関が結構あるかもしれない。果たして、両者に21項但し書きの差をつける必要があるかどうか。

 

同様に、分類3の5年超を見込める会社と分類4の5年超を見込める会社の違いも微妙だ。21項但し書きに関する差をつけられるようなケースばかりではないのではないだろうか。

 

そして、こういうところで、会社分類の制約のないIAS12との相違が生まれてしまうように思う。

 

 

公開草案など日本基準の会社分類や、それに対応する見積り期間の考え方は、実務に非常に役立つアイディアであり、これがないと会社も監査人もスムーズに業務を行えないかもしれない。だが、会計基準の要求事項として強制力を持たせてしまうのは、そろそろ、見直した方が良いのかもしれない。もっとシンプルなものにするか、教育文書的な扱いにして、強制性をなくせたら良いと思う。

 

今回は、かなり重箱の隅をつつくような細かい話に終始したが、それでもそういうケースに当たった場合は困ってしまうだろう。公開草案の16項には、いずれの分類要件も満たさない会社について、総合的に判断するよう求めている*3。上記に数値例を挙げた会社のようなケースは分類2の要件を満たすが、状況次第で分類1の扱いが可能な気がするし、分類3の会社の中にも21項但し書きの利用が可能なケースがあるように思う。そういう場合にも16項を利用できるか、或いは、上手に使えるかが、解決のカギになるのかもしれない。

 

なお、前回はあと2つ例を挙げた。それらはさらに小さい話になるが、一応、次回に予定したい。

 

 

🍁ー・ー🍁ー・ー

*1 僕はこれを、BS世界のドキュメンタリー(シリーズ「危険な時代に生きる」)で知ったのだが、次の記事にも記載されている。

 

シリア内戦の原因は気候変動? 最新の研究結果 THE HUFFINGTON POST 3/4

 

*2 公開草案の21項は以下の通りで、そのうち但し書きに該当するものはスケジューリング不能な一時差異であっても繰延税金資産が計上される。

 

21. なお、(分類2)に該当する企業においては、原則として、スケジューリング不能な将来減算一時差異に係る繰延税金資産について、回収可能性がないものとする。ただし、スケジューリング不能な将来減算一時差異のうち、税務上の損金算入時期が個別に特定できないが将来のいずれかの時点で損金算入される可能性が高いと見込まれるものについて、当該将来のいずれかの時点で回収できることを合理的に説明できる場合、当該スケジューリング不能な将来減算一時差異に係る繰延税金資産は回収可能性があるものとする。

 

*3 16項は、次の通りとなっている。

 

16. なお、第17 項、第19 項、第22 項、第26 項及び第30 項に示された要件をいずれも満

たさない企業は、過去の課税所得又は税務上の欠損金の推移、当期の課税所得又は税務上

の欠損金の見込み、将来の一時差異等加減算前課税所得の見込み等を総合的に勘案し、各

分類の要件からの乖離度合いが最も小さいと判断されるものに分類する。

 

ちなみに、第17 項、第19 項、第22 項、第26 項及び第30 項の各項は、それぞれ、分類1、分類2、分類3、分類4、分類5の会社に該当するための要件が示されている。

2015年9月 8日 (火曜日)

508【税効果09】IAS12に会社分類と見積り年数の記載なし〜日本基準の公開草案との比較

 

2015/9/8

「会計方針か、見積りか」の議論を終えて、改めて、このブログらしいIFRS視点のテーマへ移ろう。それは、IAS12に会社分類や見積り年数の制限の記載がないことだ。果たして、この公開草案は、IAS12とどのような相違するのかについて検討していきたい。

 

まず、IAS12がどのように回収可能性を見積もるよう規定しているかについて、振り返ってみよう。これに関連するIAS12の規定は、すでに「502【税効果06】IAS12に会社分類やプランニング年数の記載なし」(8/25)の欄外に転載している。

 

その特徴を要約すると以下のようになる(以下は、僕の独断と偏見が混じっているので、正確を期したい方は502の欄外をご覧になるか、原文にあたっていただきたい)。ついでに今回の公開草案との相違も記載していきたい。

 

1. 繰延税金資産は十分に回収可能な金額を計上する(=回収可能額に制約される)。

 

この考え方は、日本基準と同じ。なお、IAS12は、下記のように税効果を有する項目を3つ挙げているが、以下、(2)(3)を合わせて“繰越欠損金等”と記載する。

 

(1) 将来減算一時差異

(2) 繰越欠損金

(3) 税額控除の繰越し

 

なお、“十分に”とあるのは、IFRS流の保守主義だと思う*1

 

2. 見積りに求める確実性は“可能性が高い”レベル。即ち、50%超。

 

日本基準(公開草案も)と異なり会社分類はしないが、“将来減算一時差異”と“繰越欠損金等”については、見積りに求める確実性を区別している。即ち、IAS12は“繰越欠損金等”について、下記の通り、より確実な証拠を求めている*2

 

“繰越欠損金等”が生じている場合は、企業の課税所得を稼ぐ力が陰っている可能性が考えられるため、それを打消す追加の証拠を求めている*2。その追加の証拠が加わることで、“繰越欠損金等”についても、“将来減算一時差異”と同様の見積りの確実性(=“可能性が高い”)が得られると考えられている(35項)。

 

一方、今回の公開草案は、会社分類や見積り年数の判断に“合理的な説明”を求めている。この“合理的”という言葉には、8〜9割の確実性を要求されているイメージがある。(ただ、このシリーズの前回(506-9/3)記載したように、見積りの前提となる事業計画の不確実性まで考慮した見積り全体の確実性は、“可能性が高い”レベルに留まるのかもしれない。)

 

3. 見積り年数の指定・例示はない。

 

4. 会社分類をしないので、会社の過去の業績への言及もない。

 

繰越欠損金等が残っていれば、上記の通り考慮される。しかし、その他については直接過去が問題になることはない。「将来課税所得が獲得できるかどうか」という未来へ関心が集中している。

 

結局IAS12では、繰延税金資産の回収可能額をどのように見積もるかは、会社がそれぞれの状況に応じて考えることになる。

 

今度は、公開草案の側から見て、もう少し具体的に考えてみよう。日本基準の分類1、分類5にあたる会社*3は、IFRSで考えても判断にそう違いはないだろうから、突っ込むべきは分類2〜4の会社ということになるだろう。そこで、今回の公開草案の分類2〜4について、少し詳しく記載したい。

                       
 

 

 
 

分類基準

 
 

見積り方法

 
 

分類2

 
 

過去3年及び当期、臨時項目控除後の課税所得を安定的に獲得し、経営環境に著しい変動のない会社

 

(但し、課税所得は、繰延税金資産の全額を回収するに十分なほど大きくない)

 
 

・スケジューリング可能な将来減算一時差異を全額繰延税金資産に計上。

 

・一定のスケジューリング不能な一時差異*4についても、繰延税金資産に計上(21項但し書き)。

 

 実質的に見積り不要

 
 

分類3

 
 

過去3年及び当期、臨時項目控除後の課税所得が大きく増減している会社。但し、重要な繰越欠損金は生じていない。

 
 

5年を限度に回収可能額を見積もる。

 

・合理的な説明がつけば、5年超の見積りも可能。

 

21項但し書きの適用なし

 
 

分類4

 
 

過去3年又は当期、重要な繰延欠損金、繰延欠損金の期限切れが生じた、又は、見込まれる会社

 
 

翌期の回収可能額を見積もる。

 

・5年超の見積りが可能であると合理的な説明がつけば、分類2へ格上げする(21項但し書きの適用あり)。

 

・3年超の見積りが可能であると合理的な説明がつけば、分類3へ格上げする。

 

これを見て、みなさんは次のことを感じられるだろうか。

 

分類基準の文言上、或いは、形式上は、過去の臨時項目控除後の課税所得の推移が最も重要だが、実質的・最終的には、「この先、何年を見通せるか」が判断基準になっている。

 

即ち、5年を超えて課税所得を獲得し続けられそうであれば分類2扱い、3年超であれば分類3扱い、それ未満なら分類4(但し、分類3から入ると、5年超でも21項但し書きは適用されない)。

 

この実質的な考え方には、親近感がある。なぜなら、結果的にIAS12と同じことになるからだ。重要なのは、あくまで“将来”だ。過去の課税所得は、分類の入り口として一応見るが、結局、サポート・データに過ぎないということだと思う。

 

ということは、大きくみれば、今回の公開草案はIAS12とそんなに違わないのかもしれない。

 

しかし、一方で、次のような場合はIAS12と一致するか、僕にはわからない。言い換えれば、次のような場合について、IAS12を適用している会社すべてが、下記のような判断をするか疑問がある(=異なる判断となっても、適切なケースがあるのではないかと思う)。

 

・公開草案では、繰延税金資産の全額を回収するに十分な課税所得を、毎期獲得している会社(=分類1)でないと、スケジューリング不能な一時差異の全額を繰延税金資産へ計上することはできない。

 

・公開草案では、分類3の会社において、退職給付引当金や減価償却超過額に係る一時差異のような“解消見込年度が長期にわたる将来減算一時差異”は、スケジューリングを行うことを条件に全額回収可能と判断することが認められている(35項)。

 

・公開草案では償却資産の減損損失について、従来通り、上記の減価償却超過額と異なる扱いになっている(36項(1))。

 

他にもあるかもしれない。

 

これらは細かいが、次回、もう少し突っ込んでみたい。

 

 

ところで、昨日、東芝が注目の決算発表を行ったが、何年先の税効果まで見込んだのだろうか。見積り年数は開示項目ではないが、何か手がかりはあるかもしれない。気になるので、ざっと見てみた(昨夜、東芝のHPに開示された有報)。

 

2014年度(=2015/3期)のP/L(単体。以下同じ)では法人税等調整額が697億円で、前期比425億円増加している。繰延税金資産の残高は1,948億円(短期・長期の合計)で、前期より743億円減少している。増加・減少分のうち、税制改正の法定税率低下による影響は、P/Lで121億円増加、B/Sで106億円減少というから大したことはない。

 

評価性引当額は257億円増加しているが、上記の繰延税金資産減少額743億円に比べると少ない。ということは、繰延税金資産が減少した最も大きな理由は、一時差異自体の減少だ。すると、2015/3期末時点で、繰延税金資産の回収可能性を見直した影響というのはあまりないようだ。そういえば、連結の注記(US-GAAP)には、次のような記載があったが、これと関係しているだろうか。

 

2014年度における繰延税金資産の回収可能性の見直しによる評価引当金期首残高 の見直し額に重要性はありません。P105

 

もしかすると、この粉飾決算の大騒ぎで事業の先行きが見通しずらくなった影響は、あまり見込んでないのだろうか。見積り年数も変えてないのか?

 

それとも、最近の騒動の影響を過年度に遡って訂正したのだろうか? いや、粉飾の訂正は遡るだろうが、この騒動が事業に与える影響は、将来に向かって見積もるべきだ。過年度に遡って訂正する話ではない。或いは、当期の第1四半期(2015/6期)に見込むのだろうか? ん〜、それもないなあ。やはり、2015/3期で見込むのではないか。

 

ところが、2015/3期の数字がそれほど変わってないということは、もしかしてこんな大きな騒動でも、東芝の事業環境・見通しに大きな影響はなかった? 当期の月次決算はほぼ予定通りか? それなら、当期の第1四半期を見てみようと思ったが、まだ開示されてないようだ。

 

ということで、折角勉強したので役立てようと思ったが、残念ながら、その見通しは外れた。

 

 

🍁ー・ー🍁ー・ー

*1 日本基準では、企業会計原則に保守主義の原則が規定されているが、IFRSでは、それに当たる「概念フレームワーク」に保守主義の記述がない。その代わり、各個別基準に具体的に保守主義的な規定が記載される。

 

*2 追加で要求された証拠は、下記の場合、注記で開示することになる(IAS12.82)。

 

企業は、次の場合には、繰延税金資産の金額とその認識の根拠となる証拠の内容を開示しなければならない。

 

(a) 当該繰延税金資産を活用できるかどうかが、現存の将来加算一時差異の解消により生じる所得を上回る将来の課税所得の有無に依存しており、かつ

 

(b) 企業が、当該繰延税金資産に関係する課税法域において、当期又は前期に損失を生じている。

 

35項で繰越欠損金等に対して追加で要求されている証拠を開示する趣旨。開示するのだから、当然、“合理的”なレベルの説明が必要となる。大雑把にいうと、日本基準の分類4及びその但し書きの会社について、繰延税金資産回収可能性の判断根拠の説明を求めているイメージ。

 

*3 分類1の会社は、毎期繰延税金資産の全額を回収できる十分な課税所得を稼げる会社。したがって、将来減算一時差異の全額を対象に繰延税金資産を計上できる。分類5の会社は、課税所得を見込めないため、繰延税金資産を計上できない会社。

 

*4 役員退職慰労引当金や有価証券などに関する将来減算一時差異。いずれは一時差異が解消されることが明らかだが、その具体的な解消時期を特定することが困難、又は、恣意性が大きいため、スケジューリング不能な一時差異に分類される(関連する状況や処分計画などにより、スケジューリング可能と判断できる場合もある)。

 

2015年9月 6日 (日曜日)

507【投資】今週の日経平均、リーマン・ショック以来の下げ幅

2015/9/6

なんて楽観的なんだ! 先週(5048/31)、「今週も、先週の後半ほどの勢いはないものの、日本株は上昇する可能性があると僕は妄想している。」と書いたが、結果はタイトルの通り、週間の下げ幅はリーマン・ショック以来、7年ぶりの大きさとなった*1

 

大はずれで恥ずかしいことこの上ないうえに、含み損もハンパない。ただ、自己ワーストではない(自慢ではないが、もっと悪い時もあった)。さて、僕は何か大きな間違いを犯している。それは何か? 今回は、大反省大会だっ!

 

 リスク・オフの程度

 

何が間違ったか。一番大きいのはこれだ。こんなに世界の投資家が悲観的になってるとは。

 

そもそも、中国経済が減速していたのはみんな分かっていたことだが、その意識が足りなかった。だから、僕は、意識をちょっと調整すれば済む、即ち、ちょっとびっくりすれば収まると思っていた。

 

しかし、今回は、みんな相当びっくりしたようだ。こうなると、弱気はどこまでも行き過ぎてしまう。弱気の高速道路に乗ってしまったか。乗ってしまうとインターチェンジまで降りられない。そして、降りるべきインターチェンジも通り越してしまう。しかも、通り過ぎることが新たな弱気の種となり、弱気が自己増殖してしまう。インターチェンジがあっても気がつかないほどに。

 

要するに、みんな、精神状態が異常なのだ。(と、自分の間違いを棚に上げて、他人のせいする。)

 

どこかでインターチェンジに気がついてもらわなければいけないが、なにがそのきっかけになるだろうか。

 

 米国投資家の利上げ恐怖症

 

並のリスク・オフであれば、アジアやヨーロッパで躓いても、米国の投資家の踏ん張りが態勢立直しのきっかけになることが多い。しかし、今の米国投資家は、FRBの利上げを恐れて、それができない。米国の投資家にとって、利上げがこれほど恐ろしい存在であるとは思わなかった。

 

確かに、20135月のバーナンキ・ショック、20141月(FRBテーパリング開始)、10月(テーパリング終了)の比較的大きな調整局面は、すべて量的金融緩和拡大ペースの縮小や利上げがらみだった*2。現在は、9月に利上げが決定されるかどうかが焦点となっている。まさに、米国投資家がナーバスで視野が狭くなっている時期だったのだ。ちょうど、弱気の高速道路で、ビクビク運転していたのだ。そこに中国ショックが起こった。僕は、その場合の不安の増幅効果を、もっと警戒すべきだった。

 

過去の状況では、この利上げ恐怖症は、実際に利上げが始まるまで収まらなかったそうだ。

 

 すべて悪い方へ解釈する

 

中国の株式市場や経済指標は信用できない(=経済実態を表さない)。中国ショックでみんな意識したはずだ。それでも、世界の株式市場等は、上海の株価変動や中国のPMI*3などの経済指標に激しく反応する。特に、悪い指標に対する感応度が高くなっている。

 

4日に米国の雇用統計が公表された。米FRB9月の利上げ判断に大きな影響を与えるとして注目を集めていたが、結果は、非農業部門就業者数の増加が市場予想217千人より相当低い173千人に留まった*4。通常時なら、利上げが遠のいたと株式投資家に好感される可能性もあったと思うが、逆に、DOW30種平均は272ドルも下落した。また一つ、インターチェンジを通過した。

 

なかなか、みんな弱気の高速道路を降りる気分になりそうもないが、いつかは降りる時が来る。そうしないと、かえってコストがかさむ。要するに、株価の下落が実体経済を蝕む本当の悪循環が始まってしまう。その前に降りなければ。米国も中国も、今ならまだ、消費は悪くないのだから(欧州も)。

 

今は、それが次の決算発表シーズン前であることを祈ろう。そのうち、黒田バズーカーが炸裂することを願おう。できれば、次の四半期決算日となる今月末は、1ドル125円で迎えたい。

 

ということで、反省して相場から縮小・撤退するのではなく、神頼み、願掛けして踏ん張ることにした。反省足りないだろうか?

 

 

🍁ー・ー🍁ー・ー

*1 日経平均、週間で1344円下落 リーマン・ショック以来約7年ぶりの下げ幅 日経電子版 9/4 有料記事

 

*2 テーパリングとは、FRBが金融緩和のために行っていた米国債等資産買入額を、徐々に減らす措置のこと。金融引締めではなく、金融緩和の拡大スピードを緩めるイメージになる。テーパリングが終了すると、金融緩和の拡大も終了する。その後、金利が引上げられると金融引締めへ転じることになる。

 

20135月に当時のFRB議長バーナンキ氏が議会証言でテーパリング開始をほのめかしたところ、株式市場等が大幅に下落し、日本ではバーナンキ・ショックと呼ばれる調整局面を迎えた。その後、201312月のFOMCでテーパリング開始を決定し翌年1月からスタート、201410月に終了した。20141月はアルゼンチンをきっかけとする新興国不安で株価が下落したが、背景にはテーパリング開始への不安感があったとされる。201410月は、テーパリングが終了(=量的緩和拡大が終了)したことで、「次は利上げ」「利上げはいつか」が意識され、株価が一時下落したとされている。

 

*3 PMIは、Purchasing Managers Index の略で、日本語では購買担当者指数。50であれば業況は変わらず、50未満ならば悪化、50より大きければ改善していると判断する。

 

購買担当者は先行きの見通しを持って発注するので、その業況判断をアンケート調査し指数化することで、リアルタイムな業況判断が得られると考えられている。

 

中国では、民間と政府による2つのPMIが公表されている。民間によるものの方が低い。その理由は、民間のPMIは、中小企業からの回答が多く、政府の方は国営企業を中心に大企業の回答が多いからとされている(国営企業の方が常に業況が良いと考えられている)。直近ではそれが両方悪かった。

 

*4 毎月第一金曜日に公表される。このほか、同時に公表される主な統計指標は以下のとおり(以下は、9/4 WSJREUTERSから)。

 

失業率     5.1%(先月の5.3%から低下。市場予想は5.2%だった)

平均時給上昇率 2.2%(前年同月比上昇。市場予想より上ぶれ)

労働参加率   62.6%(3カ月連続。1997年以来の低水準)

U6失業率   10.3%(前月は10.4%。フルタイム雇用を希望しながらやむなくパートタイム職に就いている人を失業者にカウントした失業率。REUTERSの記事では不完全雇用率と記されている)

 

これを受けて、10年もの米国債の市場金利は、一旦上昇したものの、結局、終値は先週末や前日より下落した。

 

なお、8月の非農業部門就業者数の統計には特殊な癖がある(夏季休暇などが、影響しているらしい)。その癖とは、9月の第一金曜日に公表される速報値が異常に低く、のちに大幅に上方修正されることだ。過去4年間の8月の平均(速報値)は、たった102人増でしかないが、その後の見直しで平均9万人増加するという【コラム】金曜日の米雇用統計を信用するな-ギルバートBloomberg 9/4) これを考慮すると、今回の173千人は、非常に好調な数字といえる。ムードの良い時なら、米国金利上昇、ドル高円安、日本株上昇の可能性も考えられるが、全くそうなっていない。外国為替相場も円高で終えてしまった。

 

 

2015年9月 3日 (木曜日)

506【税効果08】見積りに求められる“合理性”

2015/9/3

マインツの武藤嘉紀選手がハノーバー戦でブンデスリーガ初ゴールを含む2得点の大活躍を見せてくれた。このところ香川選手や岡崎選手も好調だし、日本代表の今夜のカンボジア戦、9/8のアフガニスタン戦が楽しみだ。

 

武藤選手は守備でも終盤まで素晴らしかった。マインツ監督のシュミット氏は前節のボルシアMG戦の武藤を評して「岡崎のようだ」と言ったとか。この献身性がチームに早く溶け込む一つの秘訣なのかもしれない。87分の交代でシュミット監督は武藤選手をお辞儀パフォーマンスで迎えたが、武藤選手はびっくりして恐縮気味だった。それが微笑ましかった。

 

 

さて、このシリーズの前回(5038/27)の最後に、僕がこのシリーズで犯したミスを2つ挙げた。今回は、役員退職慰労引当金の税効果を例にしながら、その2つを中心に書いていくことになる。

 

では、その2つを検討しよう。

 

(1つ目のミス)… 見積りに求められる確実性のレベルを間違えた?

 

これについては、その後の公開草案の読み込みによって、次のことが分かった。

 

・間違えたと思ったことは間違いだった(=間違えてなかった)。

 

・でもそうなると、この公開草案とIAS12『法人所得税』に不一致な点が残る。

 

これに気付いたのは、公開草案の次の部分を読んだ時だ(61項なお書き)。

 

なお、監査委員会報告第66号における「合理的に見積ったもの」や「合理的にスケジ

ューリングが行われている」との表現が用いられていた点について、見積りやスケジュー

リングが合理的であるべきという趣旨を変えることを意図するものではないが、「合理的」

という用語は、監査上の取扱いにおいて監査上の観点から用いられた用語であると考えら

れるため、本適用指針においてはその表現を引き継いでいない。

 

僕は、公開草案が“合理的”という言葉を所々省いたことによって見積りの蓋然性(=確からしさ)を現行基準より引き下げたと思ったのだが、そうではないらしい。引続き、見積りの高い確実性を要求しているようだ。

 

しかし、IAS12には“合理的”という言葉はなく(繰越欠損金等については除く*1)、その代わり“可能性が高い”という表現が使われている(例えば、IAS12.27)。この表現は確率にすれば50%を超えるレベルを要求する際に使用される表現なので、公開草案とIAS12には、要求する見積りの確からしさに不一致があることになる。

 

この結果、現行の日本基準と公開草案の間に、このシリーズの前回、僕が自己嫌悪に陥りながら記載したような大きな違いはなさそうだ。その代わり、IAS12との間には違いがあることになる。この見積りに求められる確実性のレベルの違いによってどの程度影響が出てくるか、ん〜、あまりないかもしれない。ちょっと具体的な想像は難しいが、とにかく、規定の文言上は違うことになる。

 

でも、とりあえず役員退職慰労引当金を例にして想像してみよう。

 

これは、スケジューリング不能な一時差異*2なので、会社分類2*3に該当する会社の場合は、公開草案で提案された21項但し書き*4によって、通常であれば、回収可能性ありと判断され、繰延税金資産が計上される。この判断プロセスを、具体的に考えてみよう。

 

役員は人である限りいつかは寿命を迎える。多くの場合その前に退任して退職慰労金をもらう。その時、税務上も損金経理がなされ、一時差異は解消される。この一時差異は、スケジューリング不能な一時差異だが、人に寿命があるので、通常であれば、いずれ解消されるものと考えて良い。しかし、次のような不幸な、通常でない場合も考えられる。

 

・不祥事や重大なミスの責任を問われて退職慰労金がカットされたり、支給されないケース

 

退職慰労引当金は減額されたり、支払われなかったりする部分についても、会計上、退職慰労引当金を取崩すが現金は支出しないので、税務上の損金経理にならない。したがって、一時差異は減少するものの、損金経理による税金節約効果はない。よって、この場合は繰延税金資産が回収されない。

 

・退任時に会社が退職慰労金を支払える財務状況にない

 

これも、退職慰労引当金が支出されないので、税務上の損金経理の要件を満たさないため、税金の節約効果はない。ということは、繰延税金資産は回収できないことになる。

 

このように、通常ではないケースに該当するのであれば、回収可能性はない。問題は、このような通常でないケースへ行き当たる可能性が、どの程度想定されるかだ。

 

その可能性が1〜2割程度の場合であれば、回収されない可能性は低く、回収可能という合理的なレベルの説明が可能だ。この場合は、日本基準とIFRSに差異は生じない。

 

その可能性が3〜4割もある場合は、合理的といえるレベルの確実性はないけれども、回収されない可能性より回収される可能性の方が高い。この場合、日本基準では繰延資産に計上されないが、IAS12では、繰延資産に計上される。ここに、日本基準とIFRSの差異が生じる。

 

(役員が不祥事や重大なミスの責任をとるケース)

 

役員が不祥事や重大なミスで責任を取らされるというのは、特殊な状況でしか起こらない。例えば、東芝の退任取締役に退職慰労金が支払われるかどうかは知らないが、もし、支払われないとすれば、社内規定に照らして誰かが判断するものなので、その判断の時点で支払われるか、支払われないかは、ほぼ、100%に近い確率で判明する。3〜4割の確率というのは、実際には想定しにくい。

 

したがって、起こるとしても、ほぼ100%の確からしさで見積もりができるので、日本基準とIAS12の差は生じないと思われる。

 

(会社の財政状態により、支払えなくなるケース)

 

ポイントは、21項但し書きが、分類2の会社を想定していることだ。分類2の会社は、業績が安定しているので、退任時に財務状況が悪くて退職慰労金が支払えないという可能性は、相当低いと考えて良いだろう。おそらく、財務状況に問題を抱えた場合は、役員退職慰労金が払えなくなるだいぶ前に、分類2から下の分類へ落ちていく。すると、その時点でこの21項但し書きが使えなくなる。その時回収可能性の判断を見直せば良い。

 

分類34へ落ちた場合は、(28*5に該当しない限り)将来キャッシュ・フローを見込む年数に制限がかかるとともにスケジューリングが必要になる。スケジューリングには、“合理的”なレベルが要求されるから、“可能性が高い”レベルのIAS12とは違いが出てくる場合がありそうだ(解消時期の合理性)。(ただ、財政状態の悪さに限った話なら、分類4の下の方か、分類5まで落ちてからでないと、退職慰労金が支払えないという話に現実味がない。)

 

退職慰労引当金にかかる一時差異の回収可能性を例として、日本基準とIAS12の差(=“合理的”と“可能性が高い”の求められる確実性の差)を考えてきたが、分類2までの会社であれば、21項但し書きの効果もあり、差はないと考えて良さそうだ。しかし、上記の検討の結果は、スケジューリング等に合理性を求められる分類3以下の会社の(繰越欠損金等を除く部分の)見積りについては、差が生じる可能性を示している。

 

しかし、考えてみると会社の事業計画の達成可能性自体が、五分五分であったとすると、タックス・プランニングが事業計画や他の社内資料と整合していても、その確実性は五分五分ということになる。分類3以下の会社の事業計画の達成状況を考えると、ここでASBJが求めている合理性は、IFRSが想定している“可能性が高い”と、実質的にそれほど差がないのかもしれない。

 

即ち、財務諸表作成者が“合理的”なレベルを目指して見積りを行っても、分類3以降の会社の事業上の不確実性を考慮すると、結果的に“可能性が高い”レベルの見積りになってしまうのではないか。そうすると、この点では、日本基準とIFRSに実質的な差はないのかもしれない。

 

ちなみに、ASBJは「IFRSUS-GAAP採用企業では、一部を回収可能と判断している」と記載して、現行の日本基準とIFRS等の間に差異があることを認めている(公開草案の結論の根拠の7374項に説明があり、そこでは“政策保有株式”(持合い株式)の例が記載されている)。これについては、(役員退職慰労引当金と同様に)21項但し書きによって、問題が緩和・解消されることになる。

 

(2つ目)… 見積りか、会計方針か。将来へ向かうか、過去も修正するか。

 

このシリーズの前回(5038/27)は、公開草案で提案された改正の内容が、会計方針の変更か、それとも見積りの変更かを検討した。僕は単純に、繰延税金資産の回収可能性が見積り項目なので、その改正は見積りの変更になると考えたのだが、検討の結果は、ASBJのいう通り会計方針の変更として扱った方が良さそうというものだった。

 

その時ポイントになったのは、変更の結果を将来に向かって修正するのが適当か、それとも過去の期間を修正することで期間比較可能性を高めるか、ということだった。見積りは、新たな会計事実が発生したので過去を修正する意味がなく、将来に向かって変更するのが適当だ。しかし、会計方針の変更は、同じ会計事実が過去にも存在しているので、過去の比較期間についても修正することで、期間比較可能性を向上させる。今回の改正は後者、即ち、会計方針の変更として扱うことが適切だ。

 

このテーマについても、退職慰労引当金を例に考えてみよう。と思ったが、長くなってきたので、次回へ繰り越すことにしたい。

 

 

🍁ー・ー🍁ー・ー

*1 “税務上の繰越欠損金及び繰越税額控除”(上記では、これを“繰越欠損金等”と記載した)のセクションでは、“他の信頼すべき根拠がある”という要求を追加することで、蓋然性のレベルを高めている。この高められたレベルは、合理的なレベルにかなり近いと思う。

 

*2 スケジュリング不能な一時差異は、公開草案で次のように定義されている。(3(5)

 

「スケジューリング不能な一時差異」とは、次のいずれかに該当する、税務上の益金又は損金算入時期が明確でない一時差異をいう。

 

 一時差異のうち、将来の一定の事実が発生することによって、税務上の益金又は損金算入の要件を充足することが見込まれるもので、期末に将来の一定の事実の発生を見込めないことにより、税務上の益金又は損金算入の要件を充足することが見込まれないもの

 

 一時差異のうち、企業による将来の一定の行為の実施についての意思決定又は実施計画等の存在により、税務上の益金又は損金算入の要件を充足することが見込まれるもので、期末に一定の行為の実施についての意思決定又は実施計画等が存在していないことにより、税務上の益金又は損金算入の要件を充足することが見込まれないもの

 

一時差異(=会計上と税務上の簿価の違い)がいつ解消されるかは、一時差異の性質と税務上の損金経理の規定によって異なる。例えば減価償却超過額であれば、償却が進んでいくうちに自動的に解消される。一方、会計上は評価損を計上したが、税務上は簿価で計上されたままの株式があるとすれば、その株式が売却される(か、税務上の評価損の要件に合致するほどその会社の財政状態が悪化する)まで解消されない。

 

前者であれば、解消時期が計算で求められるのでスケジューリング可能だ。しかし、後者の場合は売却計画があればスケジューリング可能となる可能性があるが、なければスケジューリング不能な一時差異ということになる。

 

*3 公開草案では、従来の66号の繰延税金資産の回収可能性を判断する枠組みを踏襲し、まず、主に収益性で会社を5つに分類する。分類2は、比較的事業が安定しており、将来にわたって利益を上げ続けられそうな会社がイメージされている。そのため、いずれ解消できる性質の一時差異(=スケジューリング可能な一時差異)であれば、回収可能と判断できる。すなわち、回収可能性の判断に当たって、一時差異の解消時期を特定する必要がないため、スケジューリング作業は不要だ。

 

*4 21項但し書きとは、以下の部分。

 

ただし、スケジューリング不能な将来減算一時差異のうち、税務上の損金算入時期が個別に特定できないが将来のいずれかの時点で損金算入される可能性が高いと見込まれるものについて、当該将来のいずれかの時点で回収できることを合理的に説明できる場合、当該スケジューリング不能な将来減算一時差異に係る繰延税金資産は回収可能性があるものとする。

 

*5 28項では、一定の要件に該当すれば、分類4の会社を分類2の会社として扱うことができるとされている。その規定は以下の通り。

 

28. 27 項にかかわらず、第26 項の要件を満たす企業においては、重要な税務上の欠損金が生じた原因、中長期計画、過去における中長期計画の達成状況、過去(3 年)及び当期の課税所得又は税務上の欠損金の推移等を勘案して、将来の一時差異等加減算前課税所得を見積る場合、将来において5 年超にわたり一時差異等加減算前課税所得が安定的に生じることが合理的に説明できるときは(分類2)に該当するものとして取り扱い、第20 項及び第21 項の定めに従って繰延税金資産を見積る場合、当該繰延税金資産は回収可能性があるものとする。

 

 

 

 

2015年9月 2日 (水曜日)

505【番外編】東芝:有報提出の再延期に憤り?

2015/9/2

税効果シリーズの続編を書いている時、東芝の有価証券報告書提出が、8/31から1週間延期されるというニュース速報が入ってきた。「ふ〜ん、関係者は苦労してるんだろうな」と思った。というのは、7/20の第三者委員会報告から有報提出日まで40日もの長期間が用意されており、それにも関わらず延期されたのだから、7/20以降もドッタンバッタンが続いたに違いない。第三者委員会の報告書の内容を思い浮かべながら、「あの内容だからなあ。内部統制がひどすぎて、逆に適正な財務報告の邪魔・障害・妨害になってたからなあ」と思った。

 

金融商品取引法上の内部統制報告書制度は、直接には、有価証券報告書の財務情報に関する適正性を担保する内部統制の適否を評価するものだ。具体的にいえば、決算日から3ヶ月以内に適正な有価証券報告書を提出する義務をこなせるか、社内体制を評価する。(もちろん、内部監査人・外部監査人は、それに加えて会社法の開示、証券取引所の開示についても注意する。)

 

ということは、3月決算の東芝が、6月末までに財務情報の信頼性に関わる問題で有報を提出できなかったのだから、その時点で明らかに内部統制に重要な不備があったことになる。100%バツだろう。過去の決算も大きく訂正されるだろうから、東芝が自ら行った内部統制の評価(=内部統制報告書)や監査人の監査報告書も、過去にさかのぼって訂正が必要になる。

 

多分、もう訂正されたに違いない。そう思って、EDINETで東芝の開示書類を検索してみたが、これらの訂正報告書はでてこない。「ふ〜ん、内部統制は訂正すべき事由が発生・認識されても、タイミングよく開示する必要がないんだ」と、かなり煮え切らないもの感じながら、翌日(9/1)、関連記事をいくつか読んだ。例えば、以下のもの。

 

東芝、土壇場で混乱増幅 内部通報が相次ぐ  日経電子版 9/1 無料記事

東芝、決算発表と有報提出を7日に再延期 新たに10件の会計問題 REUTERS 9/1

アングル:上場維持へ正念場の東芝、17日が有価証券報告書提出の最終期限 REUTERS 9/1

 

2つ目までは、なるほど、と思いながら読んだ。これらは、提出日再延期に至る東芝の混乱した状況が書かれている。あれっ、と思ったのは3つ目だ。それの、次の箇所。

 

東芝の再延期を受けて、有価証券報告書の虚偽記載の疑いで調べを進めていた証券取引等監視委員会の関係者は「まことに遺憾」と憤りを口にした。

 

なぜ、証券取引等監視委員会が憤るのだろうか?

 

この国家機関は、証券市場と投資家の利益保護のためにある。したがって、間違えた情報開示とか、出すべき情報を出さない会社に憤るのならわかる。しかし、すでに2ヶ月延長した提出期限をもう1週間再延期したぐらいで、憤るなどという強い感情が生まれるだろうか。しかも、東芝は、ボロボロの内部統制を抱えながら、適切な開示が行える確率が上がるよう、投資家の利益に沿って恥を忍んで延長申請したのだ。市場と投資家のことを考えるなら、強引に8/31に間に合わせて後から再訂正するような事態に陥るのとどちらが良いかという比較で、冷静に評価すべきだ。この“憤る”という国家機関(関係者)の感情はどこから来たのだろうか。

 

有報が提出されないと、東京証券取引所が東芝を特設注意市場銘柄へ指定できず、投資家へ注意喚起できないからか? しかし、それは東証の都合に過ぎない。本来、有報を待たずに東証の責任と判断で指定すれば良い。さもなくば、内部統制の訂正報告書の提出時期や東証の適時開示制度をもっとタイムリーなものに改善し、それで東証が判断できるタイミングを早めれば良い。要するに、金商法と東証の制度が悪い*1

 

或いは、この部分はREUTERSの勝手な脚色だろうか。だとすれば、その意図は一体なんだろう? 弱り目に祟り目の東芝を、この際、さらに痛めつけてやろうというのか。実は、憤っていたのはREUTERSの記者か。でも、なぜ? 

 

と思って、上記に挙げた記事以外の他の記事も思い出してみると、どうもREUTERSに限らず、新聞には、この件でも「東芝けしからん」という一方的な感情があるのではないかと思えてくる。特に、「さらなる延期は社長の進退に」みたいな見出しや記事の書き振りには、そういう雰囲気が出ているように思う。

 

粉飾した経営者はけしからん。粉飾を防げないどころか、それをサポートするような内部統制を構築した経営者はけしからん。しかし、間違いのない情報開示のためにメンツを捨てて有報提出期限を延長した経営者は、それほどでもない。僕は、粉飾と今回のケースでは、記事のトーンを区別した方が良かったと思う。

 

そして、今回のケースから、社長の進退よりもっと重要な教訓が読み取れるのではないか。

 

それは、「情報開示を延長している期間の情報開示について、もっと(開示制度を)工夫した方が良いのではないか」ということだ。特に、今回のように長期間延長するケースがあるなら真剣に考えるべきだ。冒頭の内部統制報告書や外部監査人の監査報告書の適時な訂正もその一例だ。しかし、より重要なのは、有報の提出期限を厳格に守らせることではなく、提出までの期間の作業の進捗状況や、新たに発生した問題・障害等の適時な報告を細かく求める制度に改善することだと思う。その方が、市場や投資家にとって有益ではないだろうか。

 

その意味では、8/18に東芝が新たな社外取締役候補など新体制の概要を発表し、加えて、非公表だった原子力発電事業の業績の一部を初めて開示し、燃料ビジネスが好調で減損は必要ないと説明した*1ことは、良かったと思う。ただ、この際、10件の案件が追加で検証されているとか、開示作業や監査の進捗状況など、適正な開示に向けて汗をかいている様子も併せて公表されていたら、もっと良かった。しかし、東芝の自主的な開示ではそこまで至らなかった。やはり、制度対応が必要ではないだろうか。

 

 

ところで、「東芝の原子力事業に減損の疑いあり」という記事が、様々なメディアで大きく報道されていた*2。東芝は、上記の8/18に、それに対する反論をしたのだろうと思う。しかし、それ以降、この件をフォローする新しい記事は見当たらなかった。これは金額もでかいし、公表されていた原子炉受注目標と実績の乖離も大きいし、日本のエネルギー戦略とも絡んで社会性も高い。とても重要な問題だ。

 

マスコミは、なぜ、この件を詳しくフォローしなかったのか。18日の東芝の説明を受入れたということか。それならそういう解説記事も欲しいし、或いは、原子力事業を今後独立セグメントとして開示せよとか、売上を開示できるのだから原子力事業に属する資産額と主な内訳も追加で開示せよ、といった主張・要求があっても良いと思った。本当は、M&A直後の買収価格評価資料と実績による分析資料が開示されると一番良いのだか。

 

個人的には、「原子力事業は本当に儲かってるのか(減損不要か)」という疑いをぬぐいきれない。だから、僕は、東芝株を買わない。

 

 

🍁ー・ー🍁ー・ー

*1 日経新聞はすでに6月時点で「過去の内部統制報告書が訂正される見込み」と報道している。

 

東芝、内部統制に不備 過去の報告書を訂正へ 6/12 日経電子版有料記事

 

これにもかかわらず、8月末の有報提出まで、東芝を特設注意市場銘柄へ指定しない東証がおかしいと思う。特設注意市場銘柄というのは、東証が、企業の内部管理体制を改善する必要性が高いと判断した場合に指定するもので、その後、改善状況をフォローする。投資家に注意喚起する趣旨がある。

 

*1 東芝株、一時9%高 米原発子会社の減損懸念後退で  8/19 日経電子版有料記事

 

この記事にある8/18に公表された資料は、東芝のHPで閲覧することができる。原子力事業に関しては、P22以降の数ページに記載されている。

 

新経営体制、ガバナンス体制改革策 及び業績予想について - 東芝

 

*2 例えば、現在でも次のような記事がネットで閲覧できる。

 

膨らんだ「のれん代」1兆円超 東芝がひた隠す「原発事業の不都合な真実」 週刊現代 7/21

東芝の原発事業に1000億円単位の減損リスクも ダイヤモンド 7/27

東芝不正の背景にあった原子力事業買収の重荷 経済プレミア(毎日新聞) 7/29

 

日経ビジネスにもあったような気がするが、探しても見当たらなかった。

 

 

 

 

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