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2015年10月 6日 (火曜日)

517【税効果16】US-GAAP)スケジューリング②&日本の税法の課題

 

2015/10/6

昨日、ちょうどパソコンの前にいるときに、ニュース速報が通知された。また日本人がノーベル賞を取ったという(生理学・医学賞)。凄い。快挙だ。大村智という方だが、僕は知らない方だったので、急いでWikipediaを見た。するとなんと、“主な受賞歴”のところに、「2015年 - ノーベル生理学・医学賞」と記載されている。早い。驚いた。

 

このブログの歩みは遅々としているが、世の中の動きは早い。反省してみても、どうしたら改善できるか分からない。みなさんには申し訳なく思いつつ、とりあえず続きを進めるしかない。

 

 

ということで、今回は、このシリーズの前回(515-9/29)に引き続き、「US-GAAPではどのような時にスケジューリングが必要か」について、個別の規定を見ていきたい。日本基準では、会社分類が②になると、早くもスケジューリングを求められる。僕はこのシリーズの前回、「日本基準に慣れた僕の感覚では、US-GAAPの書き振りが楽観に満ちていると感じる。」と記載したが、今回こそ、皆さんにそれを感じていただけると嬉しい。

 

なお、今回、主に記載の対象となるUS-GAAPの適用ガイドの段落番号は、740-10-55-15  740-10-55-17だが、以下、段落番号は「740-10」(income tax overall)を省いて記載する(例えば、今回の記載対象は“55-15 55-17”と記載する。

 

最初に要点を書き出すと以下の通り。

 

・スケジューリングが必要とされるのは、必要最小限のケース。

 

主に、企業が繰越欠損金の期限切れを回避するために税務戦略を持っているような場合に限定される。

 

・日本基準と相違する理由は、恐らく、税法の違いが大きい。

 

特に繰越欠損金の有効期限の長さの違いや繰越欠損金を前期以前の納税額から繰り戻せる制度の存在が原因と思われる*1。特に下記“多額の将来加算一時差異がある場合(55-17)”をご覧いただきたい。

 

(ただ、それだけではなく、企業が会計上の見積りを行う姿勢の違いもあるかもしれない。508-9/8の後半や510-9/15の末尾へ記載した東芝の税効果会計への疑問、見積りが甘いのではないかという疑問がそう思わせる。)

 

では、個別の規定をざっくりと見てみよう。ただ、下記は僕の理解を記載したのであって、正確なUS-GAAPの解釈ではないことをお断り申し上げる。原文は英語で、僕は英語が苦手だ。

(なお、僕は原文の“Reversal patterns”や、動詞の“schedule”を、“スケジューリング”を表すものとして記載している。)

 

 ・スケジューリングが必要となるケース(55-15

 

a. B/Sの流動・非流動の区分を決める際に必要となるケース

 

繰延税金資産(・負債)のB/S流動・固定区分は、いつ解消されるかではなく、元となる一時差異が流動項目関連か、それとも固定項目関連かで判定される。したがって、繰越欠損金にかかる繰延税金のように、特定の資産・負債と関連しない場合にのみ、スケジューリングが必要になる。

 

b. 繰延税金資産の回収可能性を決めるケース

 

多くの場合は、スケジューリングなしで「評価性引当金の必要なし」と決定できる。“税務上の有効期限や金額”等の注記が必要とされる営業損失(≒繰越欠損金)等であっても、スケジューリングは必要とは限らない。

 

c. 測定に利用する税率の変更が予定されるケース

 

多くの場合、スケジューリングは必要ない。段階的に税率が変わる場合には、時々必要になる。

 

・将来課税所得の見積りとスケジューリング(55-16

 

MLTNベース*2で税効果を実現するに足る十分な将来課税所得を容易に見積り説明できる場合は、一時差異のスケジューリングは不要。

 

・多額の将来加算一時差異がある場合(55-17

 

より判断が容易なのは、将来減算一時差異を遥かに超える多額の将来加算一時差異がある場合(特に、将来加算一時差異の解消期間  将来減算一時差異の解消期間の場合)。例えば15年間もの有効期限*1があれば、繰越欠損金の税効果が実現する可能性は、スケジューリングなしのMLTNベースの課税所得の見積りだけでも判断が容易に行える。

 

・税務戦略、タックス・プランニング(55-39

 

普通なら行わないような固定資産の売却を計画するなど、企業は、繰越欠損金の期限切れ回避などのために税務戦略・タックスプランニングを持つ場合がある。このような場合、事業から十分な課税所得を得られるなどの積極的な証拠がない限り、評価性引当額を不要と判断することはできない。( ⇨こういう場合は、評価性引当額を評価するために、必然的にスケジューリングが行われる。)

 

というわけで、最期の繰越欠損金の期限切れが見込まれるようなケース以外は、本格的なスケジューリングが必要になりそうにない。日本基準でいえば、会社分類④や⑤になるまでは、スケジューリングが不要といえそうだ。

 

 

今回の記事の冒頭は明るい、素晴らしいニュースで始まったが、ここまで書いて、寂しく、暗い気分になっている。なぜかというと、清水エスパルスの戦績や株式相場が奮わないことではない。税効果会計の企業経営に与える影響が思い浮かんだからだ。

 

税効果会計は業績に与える影響が大きいため、非常に重要な項目だ。それは日米ともに同じだが、日本の場合は加えて、振れ幅が激しい。日本企業の業績が悪化すると、繰延税金資産も取り崩されて、輪をかけて悪い数字が出てしまう。経営者としては気になって当然だろうし、実際に税務負担も重くなるが、米国企業(恐らくヨーロッパ企業も)は、そういう余計な心配がいらない。これは国際競争において不利にならないだろうか。繰越欠損金の繰戻しや繰越控除の制度を、国際基準に直す必要があるのではないか。

 

このような主張は、「企業ばかりを優遇する」と猛反発を喰らうかもしれないが、それなら個人もマイナンバー制度導入と共に、同様の制度を創設すれば良い。マイナンバーがあれば、税務当局も手間なく個人の所得税の繰戻しや繰越しが事務管理できるはずだ。

 

国の財政を考えると税収減につながるような改革はやりにくいかもしれないが、企業や個人の生涯税負担、リスク耐性強化の観点で考えると、繰戻しや繰越控除は、本来、必要な制度だ。企業の国際競争力の強化や国民の税負担の平等、損失時発生時の負担軽減を図ってこそ、経済の繁栄と税収増につながるのではないか。

 

税効果会計から、日本の税制の意外な課題が見えてきたように思う。

 

 

🍁ー・ー🍁ー・ー

*1 “(繰越欠損金の)15年間の有効期限”という記載にびっくりされた方もいらっしゃると思う。514-9/25にも記載したが、US-GAAPは、米国の連邦税の状況を念頭に「税務上の繰越欠損金は、その前の3年間(の繰戻し額)やその後15年間の課税所得と相殺できる税法」という前提を置いている(55-1)。一方、日本では、法人税法で厳しく制限されている(514-9/25*2)。

 

*2 MLTNベースとは、513-9/22にも記載したが、“more likely than not”の略で、(資産や負債を認識する際に)実現する可能性が50%を超えるかどうかで判断することをいう。上のケースでいえば、将来課税所得の見積りの実現可能性が50%を超えていれば、繰延税金資産の回収可能性の判断にそのまま使用できることになる。

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