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2015年12月15日 (火曜日)

534【投資】X'masは楽しいかも?

 

2014/12/15

僕には、原油が冷たい炎を上げて燃えているように思える。原油相場の下落で、株式相場がすっかり冷めてしまった。厄介なことになった。

 

みなさんもご存知の通り、株式相場は大荒れとなっている。昨日の日経平均終値は、あっさり19,000円を割って18,883円となった。前回の記事(530-12/1)では、毎月恒例の米国雇用統計も期待外れはなさそうだったし、ECBの追加緩和と米FOMCの利上げ決定を順調に消化していけることを想定していた。ただ、利上げで材料出尽くしとなり、それをきっかけにして相場が崩れる前に、短期保有分を売れば良いと思っていた。

 

しかし、そうは問屋が卸さなかった。

 

確かに、米雇用統計は期待以上だった。しかし、ECBの追加緩和にケチがつき、原油相場の下落がとどめを刺した感じだ。僕の場合、原油下落がまったく想定外だった。

 

この時期にOPEC総会が開催されていることは、多くの方がご存知だったと思う。僕も知らないわけではなかったし、OPECが減産を決められるとも思っていなかった。ただ、それがこれほど株価にインパクトを与えることになるとは、思っていなかった。まったく甘かった。

 

とはいえ、ものは考えようかもしれない。

 

米国経済は基本的には調子が良い。日本経済も懸念されていた設備投資が復調し、GDP成長率が上方修正される状況だ。欧州も、ECBが機敏に対応して投資家の期待をつないでいる(僕は、期待はずれとされるECBの追加緩和策を悪い対応とは思っていない)。この数ヶ月のうちに危機が訪れるとは思えない。

 

加えて、この間に、懸念されていたドル高がかなり是正されており、米株価の頭を押さえていた新興国のドル建て債務問題や米国多国籍企業の業績については、逆に、少しだが余裕ができた。

 

要するに、株価が急落したものの、不可逆的な何かが変わったわけでは、まだ、ない。単に(FOMCで利上げが決まる直前に)原油相場が下落しただけだ。前回(530-12/1)記載した投資家の猜疑心が、増幅され、少々早く動き出した。だが、投資家の猜疑心は、“良い知らせ”があれば晴れる。

 

僕は、この相場は逆転する可能性があると思う。問題は、その“良い知らせ”が何か、そしていつか、だ。素直に考えれば、それは原油相場の安定や持ち直しにつながる情報だが、もしかしたら、FOMCの利上決定だけで十分かもしれない。僕は、FOMCの利上げで、一時的かもしれないが、原油相場が安定若しくは持直しし、株価も(少なくとも一時的には)反転するのではないかと思っている。というか、願っている。

 

ただ、原油相場の中長期的な需給見通しには厳しい意見もあるようだ。例えば、「原油相場に対して長期の弱気派であるゴールドマン・サックスは、2016年に相場が反発するか安定するとの見方は全く的外れであり、米原油先物価格は現状から約5割安の20ドルまで値下がりする可能性があるとみている」という報道もある*1。それにもかかわらず、僕がこのように思ったのは、次の記事がきっかけだ。

 

ヘッジファンドの原油売りポジション、過去最高に-OPEC決定で 12/14 Bloomberg

 

原油相場は、実需取引より先物取による投機取引に左右されるらしい。「売りポジションが過去最高」とあるが、売りポジションは必ず買い戻されるので、逆に、相場が上昇するきっかけになりえる。僕が注目したのは「過去最高」という部分で、ここまで売りポジションに傾くということは、ヘッジファンドは「近々起こる原油相場を下落させる具体的事象」を何か想定していると思うのだ。超短期思考のヘッジファンドは、中長期的な見通しだけで、過去最高の売り建てをしないのではないか。であれば、何を想定しているのだろうか?

 

それを、“FOMCの利上げ”と考えるのはどうだろうか。

 

もちろん、僕の知らないもっと別のイベントがあるのかもしれない。しかし、「FOMCの利上げドル高原油安」も鉄板のように思える。そして、実際に利上げされ材料出尽くし感が生じれば、ヘッジファンドは、少なくとも一部を利益確定し、その際に原油相場が一時的に安定・持直し、株高へつながるのではないか。

 

要するに、猜疑心が利上げより先に動いたため、逆に、利上げが相場の不透明感を払拭する“良い知らせ”になるのではないか、そして、株式相場が反転するきっかけになるのではないかと思うのだ、いや、願う。

 

ん〜、なんとも危険なシナリオだが、僕としてはそこに望みを託すしかない。当たれば、楽しいクリスマスを迎えられる。外れれば、ちょっぴり(じゃないけど)損をする。ただ、それだけだ。それに、それはそれでテンションが上がるだろう。(やけになって。)

 

 

なお、昨日(14日)は、原油安以外に「ハイイールド債」などの信用度の低い企業が発行する高リスク債券を運用する米国の投資信託やヘッジファンドの破綻も報じられた*2。ただ、このマーケットからの資金流出は、かなり以前から報じられていたので、(特に短期的には)原油ほどの影響はないと思う。むしろ、欄外の豊島逸夫氏のコラムの末尾にあるように、公表されるFOMCメンバーの金利上昇ペースの予想が抑えられる可能性がある。

 

市場の関心は、利上げ決定それ自体より、その後の利上げペースの緩さに移っているといわれているので、むしろ、一時的に株式相場に良い影響を与えるかもしれない。(楽観しすぎ?)

 

 

🍁ー・ー🍁ー・ー

*1 焦点:2016年の最大のリスクは引き続き原油価格REUTERS 12/10)の3ページ目後半より。

 

*2 “ハイイールド債”関連の情報については、例えば以下のものがある。

 

Page1980 利上げ直前ファンド破たん相次ぐ、円119円台も視野に 12/14 豊島逸夫氏ブログ(日経電子版に同内容のコラムがある。)

株、一時600円安 よみがえる「危機」の記憶 12/14 日経電子版有料記事

訂正:日本株が急落、「パリバショック」が脳裏に REUTERS 12/14

 

日経とREUTERSは、14日の日本株の急落が、ハイイールド債を運用する米ファンドの破綻と関連するような書き方をしているが、大袈裟だと思う(単純に、先週末の米株下落と円高の流れを引き継いだに過ぎないと思う)。

 

これら新聞社の記事は、中長期のリスクを考える上で参考にはなるが(REUTERSの記事の方が詳しい)、ハイイールド債の商品内容や問題を抱えた債券の発行体は全体の一部にすぎないことを考えれば、サブ・プライム・ローンと同じであるかのように書き立てるのは無理がある。

 

サブ・プライム・ローン問題は、返済が見込めない債務者のローンを掻き集めてトリプルAの金融商品に合成したので、マーケットの流動性が失われた際には、金融商品の価値がほとんどなくなり巨額の損失が発生した。一方、ハイイールド債は、返済が滞るのは主にシェールオイル・ガス業界に属する一部の債務者で、それ以外の大方の債券は待っていれば回収が見込める。利上げできるほど米国経済が好調であることを考慮すれば、損失は多額にならないはずだ。

 

 

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