540【CF4-13】改めて、リスクと不確実性〜不確実性があっても見積りを利用
2016/1/7
昨日午前、北朝鮮で地震があった。なんと、水爆実験が成功したらしい。ようやく、中韓と日本の政治的な緊張が一部解け始めているが、「一難が去らないうちに、また一難」だ。北朝鮮は、まるで、耐性菌の狂犬病にかかった犬のよう。やたら吠えるし、嚙み付かれれば取り返しがつかないことになる。果たして、被害者を出さずに治療できるだろうか。
ここで、みなさんに伺いたい。
北朝鮮が核を使用する可能性はどれぐらいあると思いますか。或いは、そんな可能性は全く想像ができず、見積り不能ですか?
もちろん、真面目に答える必要などない。今回のテーマは、再び「リスクと不確実性」。北朝鮮のようなコントロール不能な国のことなど「見積もれない」と考えるか、それとも、確かにコントロール不能だが予想はできるので、リスクを「見積もれる」と考えるか。それを考える材料にしたいのだ。そして、前回の「リスクと不確実性」の記事(=12/8の532【CF4-10】リスクと不確実性)を補足したい。というか、訂正だ。
さて、12/8の記事に記載した通り、ネット辞書Webiloには、不確実性が次のように表現されていた。
<流通用語辞典>
一般に、不確実性とは、意思決定者のコントロールし得ない事象の生起の仕方…。決定理論では、確実性のもとでの意思決定、リスクのもとでの意思決定、不確実性での意思決定の3つに区分される。
そこで僕は、次のようにリスクと不確実性を整理した。
- 確実なもの → 会計上、測定に問題なし。
- ある程度確率の分かっているもの →(リスクの状態)会計上の見積りによる測定が可能。
- やってみなければ分からないもの →(不確実性の状態)発生確率さえ不明。見積り不能。
しかし、これでは、12/10の記事(533【CF4-11】不確実性の引越し)の欄外に引用した概念フレームワークの記述が理解できない。概念フレームワークでは、不確実性が高い場合に限って、見積もりが有用でなくなる場合があるとしているから、高くない不確実性がある状態なら見積もりが要求される。「リスクなら見積もるが、不確実性なら見積もれない」という上記の僕の整理ではマッチしないのだ。
即ち、IASBは、明らかに、不確実性があっても見積もりを要求する。ただ、不確実性の程度が高いと、目的適合性の観点から見積もれないと判断することもある。(不確実性の程度が高い場合とは、結審前の訴訟による損害賠償額の見積り等、ほんの一部に限定されると考えてよさそうだ。)
冒頭の北朝鮮の問いに戻ると、「コントロール不能で不確実性の高い北朝鮮のことを、“予測不能”と思考停止することなかれ。あらゆる手を尽くして対応する必要がある。その“手”のうちには、不確実性をリスクに変換し、見積り可能とすることが含まれる」ということになるのではないだろうか。
企業経営においても、不確実性を放置せず、戦略・戦術を練ってリスクへ変換し、主体的に対応することが求められる。経営環境は常に変化し不確実性が発生しているので、それを分析し評価する必要がある。不確実性こそが、経営が対処すべきメインテーマなのだと思う。
そもそも、経営とは未来への働きかけであり、未来には不確実がつきまとう。それと表裏一体であるべき会計が、不確実性の存在を理由に、思考停止に陥ってはいけないのだろう。
IASBが資産の定義や認識規準から不確実性の閾値を外し、測定規準においては、歴史的原価の使用が妥当でない場合は、できる限り会計上の見積りを利用しようとするのは、そういう事情や意図があるのかもしれない。
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