548【CF4-19】“会計上の見積り”は行き止まりか、乗り越えるべき壁か
2016/2/4
このシリーズの前回(547-2/2)、前々回(545-1/27)と、概念フレームワーク ED における、資産等の定義や認識・測定規準の変更箇所を見てきたが、僕の勝手な感想では、IASBに次のような意思・目標があるように見えた。
IASBは、財務情報が会計上の見積りに依存することを、より一層、正当化させたいと思っている。
それは財務情報の価値(≒目的適合性)を高めるためであり、そのために作成者(経営者を含む)に一層の努力(≒忠実な表現)を求めている。
これに対して僕は、財務情報が不確実性を取り込むことで、返って、その価値を下げる可能性があると心配した。なぜなら、会計上の見積りには、客観的な証拠を入手しえない不確実なことに関する作成者の判断が、含まれることが多いからだ。会計上の見積りに依存することは、不確実性を財務情報へ取り込むことになる。結果的に、見積りが外れれば、財務情報の信頼性を揺るがしかねない。
会計上の見積り(の多用)は、作成に手間がかかるばかりでなく、不安定で信頼性に欠けるので財務情報の価値を下げる。
これは、最近は目立たなくなったIFRS反対派の、大好きな主張だった。特に、評価益を計上することもある公正価値の見積りは強く批判された。また時には、減損会計の使用価値の見積りに向けられることもある。「見積りの前提となった見込みが外れたらどうするんだ」まではないかもしれないが、「(楽観的な)バイアスがかかる」とか、「作成者の不正な意図が介入しやすい」というのはよく見られる。
僕は、これらの批判は一面から見れば正しいが、他の見方もあると思う。もっと俯瞰してみれば、これらの批判は行き止まりの袋小路を示すものではなく、乗り越えるべきもの、課題として克服を目指すべきものだと思う。それには、利用者の意識改革とか教育も必要かもしれない。
長くなりそうなので、続きは次回以降に。今回は短くコンパクトに終わりたい。
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