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2016年3月15日 (火曜日)

555【CF4-24】会計情報の信頼性〜使用価値

 

2016/3/15

GoogleAI(=人工知能)“AlphaGo”は、4局目にして韓国の世界最強プロ棋士李セドル九段に敗れたそうだ。

 

プロ囲碁棋士、4局目にしてグーグルAIに初勝利! GIZMODE 3/14

 

李棋士は“一矢を報いた”というより、3連敗から学んで“AIとの戦い方を覚えた”のではないだろうか。AIは、きっと事前に李棋士の棋譜を勉強しまくったのだろう。これでようやく条件が揃った。今日が最終戦のようだが、この勝負は勝敗数より、最後にどちらが勝つかの方が重要なような気がする。もちろん、僕は李棋士を応援している。

 

 

さて、このブログではAIを離れて会計情報の信頼性や価値について考えていきたい。しかし、前回までAIを切り口にして公正価値と使用価値について考えてきたが、改めてそれを整理しよう。

 

まず、IFRSの概念フレームワークの公開草案(2015/5、以下“ED”と記載)によれば、測定基礎は次の2つに分類されるという(ED6.4)。

 

(a) 歴史的原価

 

(b) 現在価額

・公正価値

・使用価値(資産)、履行価値(負債)

 

“歴史的原価”は、従来の“取得原価”を、負債を含めて言い換えたものと言って良いと思う。例えば、有形固定資産や貸付金などに加え、前受金、借入金などの負債項目、見越・繰延項目などの測定基礎(=“評価基準”)として利用されている(金融資産・負債については“償却原価”とも呼ばれる)。

 

上述のED6.4の記載によれば、公正価値と使用価値はともに現在価額だから、「この両者を比較しても歴史的原価が検討漏れではないか」と思われるかもしれない。

 

しかし、何度も記載してきた通り、歴史的原価を付された資産は使用価値ベースの減損テスト対象となる。すなわち、歴史的原価が付された資産は、使用価値の方が大きい場合に限り、歴史的原価がそのままB/S価額となるが、使用価値が小さくなると使用価値まで減額される(=減損損失の計上)。要するに、その資産を利用することで流入が期待される将来キャッシュ・フローの現在価値が、歴史的原価の上限となる。というわけで、使用価値を検討することは歴史的原価(の最低ライン)を見ることになる。

 

数式的として記載すると次のようになる。

 

使用価値=歴史的原価+自己創設のれん

 

自己創設のれんがマイナス値をとると、減損が生じる可能性が出てくる。一方、自己創設のれんがプラスの値であっても歴史的原価に評価益は計上されない。自己創設のれんは事業活動の成果としてキャッシュ・フローの流入が確実になった時に、損益計算書で利益計上される。

 

このような使用価値の利用方法(=減損テスト)から、IFRSにおける使用価値は、歴史的原価に生じかねない含み損を防止するキャップの役割を期待されていると思う。

 

したがって、使用価値の信頼性とは、歴史的原価に含み損を生じさせないキャップの役割を果たしているかどうかにかかっている。ここで、552-2/16の記事後半に記載したことを再掲しよう。

 

経営者が「このままでは買収した効果が得られない。何か対策を打たなければ」と考えた時の「このままでは」を金額にしたものが、減損テストで利用される使用価値だと考えれば良いと思う。

 

「このままでは買収した効果が得られない」

=「このままでは将来損失が発生する」

=「このままでは投資を回収できない」

=「含み損が生じている」

 

ということだ。

 

経営者が甘い現状認識を持っていれば、問題が放置され、事業が廃れていく。これは誰もが同意できる真実だと思う。この“現状認識”こそがIFRSの“使用価値”なので、甘い“使用価値”を見積もる企業、甘い減損テストを行う企業の株は買えない。進歩が期待できないからだ。

 

 

李棋士は違う。恐らく、昨日の勝利は厳しい現状認識の上に新しい戦略・戦術を編み出した成果なのだ。今日も昨日に続き、きっと勝ってくれるに違いない。AIは再び、事前に勉強した棋譜とは異なる李棋士に振り回されると思う。

 

 

 

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