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2016年3月16日 (水曜日)

556【番外編】3/15公表の東芝報告書と文藝春秋の記事をざっと読んでみた。

2016/3/16

表題の件、読んだのは、具体的に以下の2つだ。

 

「改善計画・状況報告書」の公表について東芝HPのIRニュース

 

東芝「不正謀議メール」を公開する*1  ジャーナリスト川端寛氏

(文藝春秋2016/4月号 P184〜)

 

上は、昨年の第三者委員会報告書*2を受けた東芝の対応状況と、東芝が改めて策定し直した再発防止策が記載されている。一方、下は、川端氏が入手した東芝関係者の社内メールの内容を、川端氏の解釈を交えて紹介している。そこには、東芝が、監査人である新日本監査法人やErnst & Young(=ウェスチングハウス社の監査人)を欺くために、重要な外部レポートを隠蔽したり、デロイト・トーマツ・コンサルティング(以下“DTC”と記載)を知恵袋にしていたとしている。第三者委員会報告で触れられていない原子力事業の減損回避に、主な焦点が当てられている。

 

上は問題を過去のものにし今後に目を向けるためのレポート、下は問題がまだ隠されたまま明らかにされていないというレポート。非常に対照的で、象徴的な読み物を同じ日(3/15)に読んだこともあり、それぞれに、かなり強烈な印象を受けた。そこで、僕の勝手な感想を書いてみたい。

 

 

順序は逆になるが、まずは“不正謀議メール”の方から。

 

著者の川端氏はメールの本文は入手したものの、添付ファイルは見られなかった。そこで添付ファイルの内容は川端氏の推測によっている。しかし、そこに問題の核心があるため、注意が必要だ。メール本文には“謀議”の雰囲気は出ているものの、具体的な内容は添付ファイルにあるので、その川端氏の推測が正確かどうかについては読者が判断する必要がある。

 

特に、DTCが監査人を欺くコンサルティングを行っていたとの推定については、僕がもし(DTCの)当事者であれば、いくら良い条件で依頼があっても危なっかしくて受けられる契約ではないように思う。それに、DTCは監査法人トーマツの支配下にある“ネットワーク・ファーム”だと思うので、恐らく、DTCの新規契約の受注承認手続は監査法人トーマツで行われるのと同等のチェックを受けるだろう。その時、減損回避をコンサルするなんて内容の契約が通るとは思えない。

 

しかし、契約書を別の名目にするなどしてもし通っていたら、或いは、コンサル・チームの現場が契約を逸脱してそのような助言をしてしまっていたらどうだろうか。背筋が寒くなるが、それは最悪の事態だ。即ち、川端氏の推測が正しいとすれば、監査法人トーマツにとって、或いは、会計士業界全体にとっても、信用失墜の大打撃になるだろう。もし、業界を代表する大監査法人でさえ、減損会計という会計基準を金儲けのネタとしか見ていないとなれば、誰が真面目に会計基準を守るだろうか。

 

それでも事実なら、明らかにされる必要がある。この先、その機会はあるのだろうか。

 

川端氏は、東芝が翌事業年度から監査人をPWCあらたへ変更するので、その決算に注目している。確かに、そこで東芝が原子力事業に多額の減損損失を計上するようなら、昨年の不正発覚時に計上しなかったことについて説明を求められ、明るみに出ることがあるかもしれない。

 

僕も、東芝の原子力事業については未だに怪しいと思っている。しかし、それにDTCが関わっているとは思いたくない。DTCは別の正当な契約に基づいた業務を行っていたが、東芝の社内メール本文だけ見ると、見方によっては関わっていたかのように見えてしまった、ということだと思う。コンサルティング業務は、依頼主に同じ立場にいるように見せて、そこから違うアイディアを提供するものだ。そのために、このような誤解を生じさせるやり取りをする可能性は考えられる。

 

 

次に、東芝の再発防止策について。

 

この報告書は57ページあるが、僕が注目したのは下記のP41P42の部分。

 

当期利益至上主義から脱却し、実力に即した実行可能で合理的な中期経営計画や予算を策定する観点から、中期的目線での予算策定方針を明確化するとともに、カンパニーにおける予算策定プロセスや業績評価制度についても見直しを行いました。

…中略…

上記の見直しにあわせて、短期的な損益に関する数値上の改善見込を議論していた社長月例を廃し、新たに、キャッシュフローを中心とした実績値を基に将来の業績改善に向けた討議を行う場として業績報告会を新設しました。

 

足元ばかり見てると行き先を間違う。東芝は、当期利益ばかり気にして、事業の将来へ目を向けていなかった。恐らく、東芝の経営を改善する上で、これが最も重要なポイントになると思う。

 

昨年の第三者委員会報告書や、上述の文藝春秋の記事を読んで思うが、当期利益を粉飾するために経営幹部クラスがこれほど多くの労力を割いていれば、競争相手に勝てるはずがない。無駄働きが多すぎる。これで業績が上がるわけがない。そうならないためには、経営幹部が視線を上げることに尽きる。キャッシュ・フロー経営は良い方法だと思う。

 

欲を言えば、期待将来キャッシュ・フローの現在価値である使用価値を経営に取り込み、常に、使用価値を最大化するよう思考できるようになると良いと思う。そのためには、期待将来キャッシュ・フローを、楽観せず、厳格に見積もれるようにならなければならない。そうすれば、自然と視線は将来へ向かう。

 

原子力事業には、本当に減損が発生してないのだろうか。僕は、「視線が将来へ向かった結果、原子力事業の減損が見えるようなる」というのが、東芝の経営改善の最も自然なシナリオだと思う。

 

このブログでこの数回強調しているように、減損テストに利用する使用価値の算定には、経営者の判断が重要な役割を果たす。経営者が認識を改め、厳しく現実を見ようとしない限り、本来の使用価値は見えてこない。だが、逆にそうなれば、東芝の経営改善の兆候と言えるかもしれない。

 

 

🍁ー・ー🍁ー・ー

*1 僕はこの記事の存在を、Twitter経由で行った郷原信郎氏のブログで知った。

 

最終局面を迎えた東芝会計不祥事を巡る「崖っぷち」 3/14

 

*2 このブログでは、報告書が公表された当時、以下で要約した。ご関心のある方は参照されたい。

 

492【番外編】東芝第三者委員会報告の要約版 2015/7/21

 

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コメント

初めまして。
突然のコメントすみません
BIG4系への就職を検討している就活生のものです。
業界では、この件の真偽についてその後どのような議論がされているか教えて頂けないでしょうか。
よろしくお願いいたします。

ぴーこさん、コメントをありがとうございます。

“この件の真偽”というのは、「DTCが問題のある契約をしていたかどうか」ですね?
大変申し訳ないのですが、僕は“はみだし”てますから、業界内のことはわかりません。
ただ、文藝春秋をよく読むと、メールは川端氏だけが入手できたものではないとされています。
(他の調査にも提出されていたもののようです。詳細は文春で直接ご確認ください。)
したがって、何か問題があれば、そのうち明らかになると思います。

今回の件がどうあれ、Big4はいずれも脛に傷を持つ身。その傷に向き合う姿勢の真剣さが
重要なように思います。それが見られるといいですね。

就活、頑張ってください。

お返事ありがとうございます。
質問の趣旨、おっしゃる通りです。
DTCさんも就職先の最有力候補で、なにぶん内定者の身から実情が分かりにくく、社員の方に聞くわけにもいかないので、質問させていただきました。
文芸春秋はもちろん読んでおります。
今回のDTCの「コンサル・チームの現場が契約を逸脱して」いたとしたら、DTCのコンサル・チームの責任となり、訴訟を通じてDTC本体の経営が傾くということになる可能性はどれくらいあるのでしょうか。
また、コンサルの現場と恐らく直接つながりのないトーマツの「信用失墜」やDTCFAの茶番とはならないと思うのですが、その点だけご教授願えないでしょうか。
ずうずうしくて申し訳ありませんが、お時間のある時に、よろしくお願いいたします。

ぴーこさんにしてみれば大変ですよね。

少しでもリスクの少ないところへ行きたいでしょうが、そのリスクは現在のもの。
仮に、今回のリスクを避けられたからといって、将来的なリスク回避まで保証されるわけではありません。

むしろ、そういうリスクにその会社がどう立ち向かうかを内部で見られるのは、とても貴重な経験になるだろう
と思います。問題が見つかれば、同様の問題がないかの調査や再発防止策は、必ず横展開されますから、
他の部署・グループ他社に就職するにしても、きっと体験できますよ。

「信用失墜」は、業界全体のこと。あってはならないことですが、もしあったとすればDTCに一番強く影響が
出るでしょう。でも、今回の新日本ほどではないような気がします。

避ける気持ちではなく、この難局にいかに対応するかを知りたいという前向きな姿勢で質問するなら、
パートナーに聞いても問題ないと思います。問題をタブーにしてしまうような姿勢があれば、かえって心配
になりますね。図々しいのは OKです。(^^)

ご返信ありがとうございます。

たしかに、リスクについては仰る通りで、会計士業界やコンサル業界に限らず、私含むこれから仕事につく世代の人達はより一層「元気に」生きていく必要があるみたいですね…

よく様子を窺いながら、難局への対応についてパートナーの方にも聞いてみようかと思います。
案外、今後について熱く語って下さるかもしれません。

不躾な質問に関わらず、丁寧に答えて下さって本当にありがとうございます。

はみだし会計士さんも、お仕事頑張って下さい!

ありがとうございます。ぴーこさんの健闘を祈っています。

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