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2016年4月25日 (月曜日)

561【投資】急激な円安、日銀の観測気球?

2016/4/25

先週金曜日(4/22)昼過ぎ、急激に円安が進んだ。その後も一段と進み、ニューヨークのドル円の終値は111.78円で、1日でなんと2円32銭(WSJのトップ・ページによる)も変化した。きっかけは、Bloombergの「金融機関に対する貸し出しに対してもマイナス金利の適用を検討する案が浮上している」という記事だったという*1。今週は、27-28日に日銀の金融政策決定会合が開催される。

 

えっ、マイナス金利で円安? ん〜、1月末の日銀のマイナス金利導入では、一時円安に振れたものの、数日後に逆に円高を招いた形になった。さて、今回はどうなるのだろう。

 

 

金融政策としての“マイナス金利”には、功罪両面があり、特に最近は“罪”の部分が強調されることが多い。それは「民間金融機関の業績を圧迫し、体力を奪われ、逆に一般企業に対する貸出を減らす可能性がある」というものだ。民間金融機関に融資拡大を促す金融緩和(マイナス金利)が、逆に金融引き締めになってしまい、経済活動を減速させることになる。日銀は1月末にマイナス金利を採用したが、ECB(=ヨーロッパ中央銀行)は2014/6から始めているので、マイナス金利は単なる理論ではなく、実践された経済圏を観察することができる。ヨーロッパの金融機関の業績は低迷しているようで、その銀行セクターの株価は下落しているとの情報に接することがある。

 

とはいえ、日銀が導入したマイナス金利は、金融機関からの一定額以上の預入についてマイナス金利を適用するものなので、ECBの制度より金融機関に優しい設計となっている。それでも、1月末以降の状況は、日本の金融株(銀行や保険会社など)の株価がヨーロッパと同様に下落し、かつ、皆さんもご存知の通り、当時進んでいた円高に、日銀の意図に反して一層の円高を呼び込む形となった。その結果、もはや、日銀は円相場に対する影響力を失ったとか、さらには、アベノミクス自体も失望に変わった、などと言われた。アベノミクス第1の矢で輝いていた日銀の威信に陰りが見えていた。

 

さて、その残念なマイナス金利が、なぜ、今回は急激な円安を招いたのか。

 

それは、日銀が「金融機関への貸出にマイナス金利を適用する」からだろう。これは、金融機関の業績を安定させ、従来のマイナス金利政策の“罪”とされていた金融機関の融資を減少させる欠点を補うことになりそうだ。金融緩和効果が格段に高まる可能性がある。

 

もし、これが実施されれば、一定の要件を満たした融資案件には、日銀からその融資を行う金融機関に、マイナス金利で資金が提供される。その結果、おそらく、その融資の借り手にも恩恵が及び、相当条件の良い(=低利の)借入金になることだろう。従来のマイナス金利は、金融機関にとっては鞭だったが、このマイナス金利は飴になる。しかも、その飴はとっても甘いので、その金融機関の融資先にも美味しい。金融機関にとっても、融資先にとっても、嬉しいプレゼントが日銀から送られることになる。となると、金融緩和効果は相当高そうだと、一応は考えられる。しかし、問題は市場がどう反応するかだ。

 

日銀は1月のマイナス金利導入で市場から冷たくあしらわれた。相当ショックを受けたことだろう。威信を回復するには、もうミスができない。

 

今までの黒田バズーカーは、市場をびっくりさせることで、劇的な効果を上げていた。そのために、事前に検討内容が漏れるようなことはなかったが、今回は漏れてきた。しかも、Bloombergという外国通信社に。これは何を意味しているのだろうか。

 

おそらく、今回は“びっくり”をやめて、事前に観測気球を上げて市場の反応を確かめようとしたのではないか。そのために、日銀は、海外投資家に伝わりやすい外国通信社に情報をリークしたのではないだろうか。だとすると、日銀は、今頃、ほくそ笑んでいるだろう。うっしっし、今度は大丈夫、と。

 

 

ところで、世の中、全く欠点のないものはない。民間金融機関に収益をもたらすこの政策は、日銀にはコストとなる。日銀は多額の国債を購入しているので、その利息収入もたくさん入ってくる。おそらくそれがこのコストの財源となるのだろう。しかし、その多額の国債にはすでに8兆円超の損失が発生しているそうだ*2。利息収入とのバランスが重要になる。ということは、我々有権者は、日銀の財政状態についても、より高い関心を持つ必要がありそうだ。

 

それに、この新しいマイナス金利は“一定の要件”の融資案件が対象になるから、“一定の要件”を満たすものに融資資金が集中する可能性がある。例えばこれが無駄な不動産開発につながれば、中国が苦しんでいるような不動産バブルを引き起こしかねない。日銀には、これまで以上にキメの細かい経済観察が必要になる。果たして、そういう能力があるだろうか。

 

究極的には、この政策も、融資案件を収益化させられる有能な経営者がいるかどうかにかかっている。そういう経営者が活躍しやすい環境整備が重要なので、成長戦略の革新や実行こそが本質だ。そういう意味で、4/19に産業競争力会議が取りまとめた成長戦略の骨子案*3が、どのように肉付けされていくかに期待がかかる。

 

もし、これが市場に評価されるものになれば、もう一度日経平均が2万円を超える場面もあるかもしれない。

 

 

🍁ー・ー🍁ー・ー

*1 日経電子版の下記無料記事より。

 

NY円、急反落 1ドル=111円75~85銭、日銀追加緩和への思惑で

 

この記事には、“Bloomberg”とは記載されていないが、Reutersなどではそう書かれている。おそらく、下記の記事がそれに当たると思われる。

 

日銀:金融機関への貸し出しにもマイナス金利を検討-関係者 Bloomberg 4/22 13:30

 

この記事には、“貸出支援基金”という言葉が出ている。この基金の貸出金利をマイナス(=金利を金融機関に提供する)にすることが検討されているという。

 

日銀は、物価をコントロールするために、民間金融機関が日銀に持つ当座預金を通じて、金利を上げ下げしたり、金融機関へ資金を供給したり逆に資金を引き揚げたりする。貸出支援基金はこれとは別の制度で、日銀のB/S上資産側の勘定になる。日本経済の成長基盤強化や(民間金融機関の)貸出増加を支援するという、より積極的な金融緩和効果を目指しているようだ。下記の日銀の開示資料によると、2010/6に最初の制度の導入が決定された。

 

当面の金融政策運営について(現状維持、成長基盤強化を支援するための資金供給の導入、12時56分公表)  [PDF 180KB]

 

*2 下記の元日銀副総裁へのインタビュー記事による。

 

日銀、国債購入損失8兆円で限界 マイナス金利を拡大へ=岩田一政氏 Reuters 4/21

 

恐らく、含み損が8兆円を超えているということだと思うが、この3年間の金融緩和の結果、長期金利までが低下しているので、むしろ、国債価格は上昇し、含み益があると思われる。この含み損8兆円が、その含み益とネットした結果なのか、それともグロス・ベースなのかはこの記事からは分からない。

 

或いは、次のようなものかもしれない。2月以降、10年ものまでマイナス利回りをつけているので、国債の市場価格が額面を上回って高騰し、最近は、満期まで持っても投資を回収できないものばかりに違いない。そう考えると、満期まで保有しても回収できない部分が8兆円ということかもしれない。

 

何れにしても、財務省HPによると、国債利払い費は平成27年度に10兆円もあり、その相当程度は日銀へ支払われている。日銀の国債利息収入も増加している。ちなみに、平成27年度末の国債発行残高(見込み)は1,167兆円で、このうち日銀が保有しているのは301兆円(取得価格ベースか、額面ベースか、時価ベースかは不明。日銀HPの資料から集計)。

 

*3 GDP600兆円に向け数値目標 成長戦略の骨子案 NHK NEWS WEB 4/19

 

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