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2016年5月31日 (火曜日)

565【番外編】消費税増税の延期の仕方

2016/5/31

伊勢志摩サミット終了後の世論調査は、安倍内閣の支持率が上昇したという*1。オバマ米大統領の広島での格調高い演説が功を奏したか、或いは、G7各国首脳をリードした安倍首相の指導力が評価されたか。確かに、今までの首相とは違う存在感があったと思う。ん〜、確かに、明確な違いがあった。

 

しかし、すでに数多く指摘されている通り、現在の世界経済情勢を「リーマン危機」に関連づけようとしたことは、行き過ぎだった。安倍氏は、(消費税増税延期に関する国内的な言い訳にするため)G7リーダーたちに「リーマンショック直前に似ている」と分析して見せたらしい。その突拍子のなさに、Financial Timesなど海外メディアは「ホスト国の安倍首相に恥はかかせられないので云々」などと、苦笑交じりの報道をしていた*2 ようだ。

 

これについて、僕が愛読する豊島逸夫氏のコラム(日経電子版)には、『(参加首脳たちが、)日本流「おもてなし」に、日本経済への「思いやり」で答えた』と記載されていた*3が、言い得て妙だ。ゴールデン・ウィークの欧州歴訪や伊勢志摩での温かいおもてなしから感じられた安倍首相の努力に、それぞれの厳しい国内事情を抱える各国首脳たちが共感の想いを寄せてくれたのかもしれない。

 

 

さて、これで、ふっと思い出したことがある。みなさんが、もし、上場企業の監査人だったとして、企業経営者が減損損失を回避するために“屁理屈”をこねてきたらどうするか。ちょうど、安倍首相がリーマン・ショックを持ち出したように。

 

例えば、東芝の経営陣は未だに新規原発受注計画を維持している。減損はしたが、それは割引率を見直したためであり、その元となる将来キャッシュフローの見通しを引き下げたわけではない。確かに中国やインドなど、多数の原発新設計画を持つ国は多いが、本来は、“福島”後に徹底的な見直しが必要だったはずだ。(東芝の経営は、経営体制が変わっても中身が変わっていない。)

 

いや、これでは例が悪すぎる。もっと、共感できるようなケース。じゃなくて、話を戻そう。

 

 

消費税の増税については、何度か記載している通り、税率を上げても税収が減るようでは増税の意味がないと僕は思っている。消費税の税収が多少増えても、法人税や所得税など他の税収が減るようでは、経済を萎縮させるだけなので、長期的に見て国の財政再建にマイナスの効果しかない。

 

本来は、「税率を上げることで税収を増やせるのかどうか」という議論がもっと行われるべきだが、なぜか、「国際的な信用が云々」とか「財政規律が…」などという話になってしまう。国際的な信用も、財政規律も、税収増加を実現・達成できなければ意味のないことだ。増税の結果税収が減るようでは、納税者にしてみれば、取られっぱなしで何の見返りもないことになる。(増税分で社会福祉予算を増やすというのは、税収増が実現して初めて可能になることだ。)

 

そういう的外れの議論が大手を振っていて、本来の税収増減の議論が端に追いやられている現状に、僕は同情する。安倍氏にしてみれば、違和感を感じながらも専門家の意見に一生懸命耳を傾ける姿勢に徹っしているのだと思う。最後は自らが判断するとしているものの、その際に、本筋である税収の見通しを理由にできないもどかしさがあるに違いない。

 

「リーマン級の危機がない限り消費税を上げる」と過去に言ってきたことは、安倍氏の失敗だ。失敗だが、そんな言葉のせいで、増税を課せられる国民の立場になってほしい。消費が停滞している時に、消費税を上げようなんて普通に考えてありえない。

 

そういえば、数年前、「5%を8%に上げても消費はすぐ回復する」そう言っていた人が多かった。特に、財務省やそれに近いといわれるエコノミスト。実際には間違っていた。その反省はなされたのだろうか。麻生太郎財務大臣は「消費税増税を延期するなら解散すべき」と未だに財務省の肩を持っているようだが、麻生氏は部下にその反省をさせたのか。

 

そういう環境で、消費税増税を延期しつつ、政権を維持するための屁理屈が、“リーマン前夜”なのだろう。気持ちはわかる。でも、監査人は、屁理屈には「No」を返さなければならない。

 

 

と、ここまで書いて「日経プラス10(BSジャパン)」を見てたら、キャスターの山川龍雄氏が「安倍首相は国内問題の言い訳にサミットを利用(悪用)した、と海外メディアが報じた。ここは正直に、8%にした後の消費の具合が良くないから延期すると言えば良いのではないか」のような話をしていた(勝手な要約で正確ではないかもしれない)。

 

その通りだ。僕は山川氏のコメントにいつも注目している。さすがだ。簡潔に言えばそういうことになる。

 

さらに山川氏は「構造改革に集中するために、ここでダブル選挙をやって、しばらく選挙がない期間を設けた方が良い」旨のことも言われていた。なるほど、そういう考え方もあるなあ、とは思ったが、それより僕は次のように思う。

 

増税についてまっとうな議論のできない現在の環境を整える必要がある。

 

具体的には、増税時期を単に2年半延長するのではなく、“GDPが600兆円になったら”などといった経済状況に関する要件を加えるべきだと思う。別に“550兆円”でも、“2年間でGDPが40兆円増えたら”でも良い。

 

要は増税しても経済が悪くならない確証を持てるようにしてもらいたい。或いは、先に国民の取り分を増やしてから増税してほしい。もう、20年以上もGDPが増えてないのだから。

 

こうすることで、財務省など財政重視派の人たちの目が、もっと税収の土台となる経済へ向かうようにして欲しい。(ちなみに、財政規律面を言うなら、5兆とも10兆とも報道されている経済対策について、僕は心配している。少子化対策だけで十分だと思う。)

 

こうして共有しやすい目標を持った方が、最重要の構造改革に力を集中しやすくなるのではないだろうか。2年半後に、また、同じ議論が繰り返されないためにも。(屁理屈をこねるのに無駄なエネルギーを使わなくて良いように。)

 

 

 

🍁ー・ー🍁ー・ー

*1 サミット後の世論調査については、以下のものを見た。

 

内閣支持率56%に上昇、サミット外交評価 本社世論調査 5/29 日経電子版有料記事

内閣支持率55%に上昇 米大統領広島訪問98%評価 共同通信世論調査 5/29 産経ニュース

 

*2 記憶で恐縮だが、確か、5/28の「早起き日経プラスFT(BSジャパン)」で、FTの記者が言っていたと思う。

 

*3 豊島逸夫氏のコラムは日経電子版では有料記事になっているが、ほぼ、同じものが以下に掲載されている。

 

Page2081 「超ハト派」の安倍首相に、G7首脳の「思いやり」 

5/27 三菱マテリアル/GOLDPARK 豊島逸夫の手帖

 

 

 

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