« 2016年4月 | トップページ | 2016年6月 »

2016年5月

2016年5月31日 (火曜日)

565【番外編】消費税増税の延期の仕方

2016/5/31

伊勢志摩サミット終了後の世論調査は、安倍内閣の支持率が上昇したという*1。オバマ米大統領の広島での格調高い演説が功を奏したか、或いは、G7各国首脳をリードした安倍首相の指導力が評価されたか。確かに、今までの首相とは違う存在感があったと思う。ん〜、確かに、明確な違いがあった。

 

しかし、すでに数多く指摘されている通り、現在の世界経済情勢を「リーマン危機」に関連づけようとしたことは、行き過ぎだった。安倍氏は、(消費税増税延期に関する国内的な言い訳にするため)G7リーダーたちに「リーマンショック直前に似ている」と分析して見せたらしい。その突拍子のなさに、Financial Timesなど海外メディアは「ホスト国の安倍首相に恥はかかせられないので云々」などと、苦笑交じりの報道をしていた*2 ようだ。

 

これについて、僕が愛読する豊島逸夫氏のコラム(日経電子版)には、『(参加首脳たちが、)日本流「おもてなし」に、日本経済への「思いやり」で答えた』と記載されていた*3が、言い得て妙だ。ゴールデン・ウィークの欧州歴訪や伊勢志摩での温かいおもてなしから感じられた安倍首相の努力に、それぞれの厳しい国内事情を抱える各国首脳たちが共感の想いを寄せてくれたのかもしれない。

 

 

さて、これで、ふっと思い出したことがある。みなさんが、もし、上場企業の監査人だったとして、企業経営者が減損損失を回避するために“屁理屈”をこねてきたらどうするか。ちょうど、安倍首相がリーマン・ショックを持ち出したように。

 

例えば、東芝の経営陣は未だに新規原発受注計画を維持している。減損はしたが、それは割引率を見直したためであり、その元となる将来キャッシュフローの見通しを引き下げたわけではない。確かに中国やインドなど、多数の原発新設計画を持つ国は多いが、本来は、“福島”後に徹底的な見直しが必要だったはずだ。(東芝の経営は、経営体制が変わっても中身が変わっていない。)

 

いや、これでは例が悪すぎる。もっと、共感できるようなケース。じゃなくて、話を戻そう。

 

 

消費税の増税については、何度か記載している通り、税率を上げても税収が減るようでは増税の意味がないと僕は思っている。消費税の税収が多少増えても、法人税や所得税など他の税収が減るようでは、経済を萎縮させるだけなので、長期的に見て国の財政再建にマイナスの効果しかない。

 

本来は、「税率を上げることで税収を増やせるのかどうか」という議論がもっと行われるべきだが、なぜか、「国際的な信用が云々」とか「財政規律が…」などという話になってしまう。国際的な信用も、財政規律も、税収増加を実現・達成できなければ意味のないことだ。増税の結果税収が減るようでは、納税者にしてみれば、取られっぱなしで何の見返りもないことになる。(増税分で社会福祉予算を増やすというのは、税収増が実現して初めて可能になることだ。)

 

そういう的外れの議論が大手を振っていて、本来の税収増減の議論が端に追いやられている現状に、僕は同情する。安倍氏にしてみれば、違和感を感じながらも専門家の意見に一生懸命耳を傾ける姿勢に徹っしているのだと思う。最後は自らが判断するとしているものの、その際に、本筋である税収の見通しを理由にできないもどかしさがあるに違いない。

 

「リーマン級の危機がない限り消費税を上げる」と過去に言ってきたことは、安倍氏の失敗だ。失敗だが、そんな言葉のせいで、増税を課せられる国民の立場になってほしい。消費が停滞している時に、消費税を上げようなんて普通に考えてありえない。

 

そういえば、数年前、「5%を8%に上げても消費はすぐ回復する」そう言っていた人が多かった。特に、財務省やそれに近いといわれるエコノミスト。実際には間違っていた。その反省はなされたのだろうか。麻生太郎財務大臣は「消費税増税を延期するなら解散すべき」と未だに財務省の肩を持っているようだが、麻生氏は部下にその反省をさせたのか。

 

そういう環境で、消費税増税を延期しつつ、政権を維持するための屁理屈が、“リーマン前夜”なのだろう。気持ちはわかる。でも、監査人は、屁理屈には「No」を返さなければならない。

 

 

と、ここまで書いて「日経プラス10(BSジャパン)」を見てたら、キャスターの山川龍雄氏が「安倍首相は国内問題の言い訳にサミットを利用(悪用)した、と海外メディアが報じた。ここは正直に、8%にした後の消費の具合が良くないから延期すると言えば良いのではないか」のような話をしていた(勝手な要約で正確ではないかもしれない)。

 

その通りだ。僕は山川氏のコメントにいつも注目している。さすがだ。簡潔に言えばそういうことになる。

 

さらに山川氏は「構造改革に集中するために、ここでダブル選挙をやって、しばらく選挙がない期間を設けた方が良い」旨のことも言われていた。なるほど、そういう考え方もあるなあ、とは思ったが、それより僕は次のように思う。

 

増税についてまっとうな議論のできない現在の環境を整える必要がある。

 

具体的には、増税時期を単に2年半延長するのではなく、“GDPが600兆円になったら”などといった経済状況に関する要件を加えるべきだと思う。別に“550兆円”でも、“2年間でGDPが40兆円増えたら”でも良い。

 

要は増税しても経済が悪くならない確証を持てるようにしてもらいたい。或いは、先に国民の取り分を増やしてから増税してほしい。もう、20年以上もGDPが増えてないのだから。

 

こうすることで、財務省など財政重視派の人たちの目が、もっと税収の土台となる経済へ向かうようにして欲しい。(ちなみに、財政規律面を言うなら、5兆とも10兆とも報道されている経済対策について、僕は心配している。少子化対策だけで十分だと思う。)

 

こうして共有しやすい目標を持った方が、最重要の構造改革に力を集中しやすくなるのではないだろうか。2年半後に、また、同じ議論が繰り返されないためにも。(屁理屈をこねるのに無駄なエネルギーを使わなくて良いように。)

 

 

 

🍁ー・ー🍁ー・ー

*1 サミット後の世論調査については、以下のものを見た。

 

内閣支持率56%に上昇、サミット外交評価 本社世論調査 5/29 日経電子版有料記事

内閣支持率55%に上昇 米大統領広島訪問98%評価 共同通信世論調査 5/29 産経ニュース

 

*2 記憶で恐縮だが、確か、5/28の「早起き日経プラスFT(BSジャパン)」で、FTの記者が言っていたと思う。

 

*3 豊島逸夫氏のコラムは日経電子版では有料記事になっているが、ほぼ、同じものが以下に掲載されている。

 

Page2081 「超ハト派」の安倍首相に、G7首脳の「思いやり」 

5/27 三菱マテリアル/GOLDPARK 豊島逸夫の手帖

 

 

 

2016年5月24日 (火曜日)

564【番外編】企業と株主の建設的な対話〜答申

 

2016/5/24

このところ多くの地域で真夏日が続いているが、みなさんは変わらずお過ごしだろうか。このブログは、最近、記事と記事の間が長く空き、ツツジの花も散るなど、季節も変わってたりする。大変申し訳ない。

 

さて、この間、僕の関心を惹いたのは、4/18の下記の答申だった。

 

 金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」

 

「ディスクロージャーワーキング・グループ報告-建設的な対話の促進に向けて-」(PDF:368KB)

(参考資料:「ディスクロージャーワーキング・グループ報告-建設的な対話の促進に向けて-」の概要(PDF:68KB)

 

例によって、ワープロの初心者がベタ打ちしたものにページ番号をつけただけのような、そっけない資料で、添付の“概要”なるものも、キーワードやキャッチ・フレーズを箱で囲って矢印で関連付けしたA4一枚の資料だ。見た目が全然楽しくない。しかし、どこの審議会も同じような答申を出す。“事務局”という官僚の創作物だ。

 

 

では、何に関心を惹かれたのか。「建設な対話の促進に向けて」というタイトルだ。ここでいう「対話」とは、投資家や株主と企業経営者の間のものと思うが、直接的には、繰返される粉飾決算と監査への批判が、企業情報開示制度が変わることで起きにくくなるかもしれないという期待があった。

 

さらには、企業統治の面から、次のような疑問が今後繰り返されにくくなることへの期待もあった。

 

  • 3年間の円安という莫大な補助金(=為替差益)をもらいながら日本企業はどれぐらい経営・事業を戦略的に改善できたのかという疑問

 

  • その補助金は消費者などが輸入物価上昇という社会的犠牲を払って、特定の企業が受け取ったものだが、それヘ報いようとしたかという企業経営者の倫理観に対する疑問。

 

前者は、以前から日本企業に対する批判としてよく聞く“戦略性の不足”の改善につながるのではないかという期待。後者は、労働分配率や仕入先対価の改善への期待。この後者の労働者や仕入先に関しては、企業に発生した為替差益の分配を巡って投資家と利害相反の関係にあるので、企業情報開示制度で改善しようというのは欲張りかもしれないが、「建設的な対話の促進」につながるのであれば、投資家が高い目線を持つことで、経営者に良い影響を与えられるかもしれない。全く、方向違いというわけでもないような気がする。

 

 

さて、この答申を読んでみて、期待は実現しそうか? 僕の感じでは、答えはNoだ。

 

証券取引所規則による企業開示制度(決算短信など)や、国の制度である会社法、金商法の開示制度・様式を共通化させようとか、四半期の短信には監査(正確にはレビュー)は不要であることを明確化させようとか、短信の速報性を生かすため開示内容の合理化を図るとか、株主総会における建設的対話の促進を図るための情報提供日と総会日の日程を改善するとか、非財務情報の開示の充実を図るとか、単体決算にもIFRSの適用を認めようとか。

 

要するに、開示にかかる手間・コストを省きたいという項目がたくさん並んでいる。それぞれはとても良い話だが、果たして「建設的な対話の促進」に対する効果はいかばかりか。

 

このほか、フェア・ディスクロージャー・ルール*1の導入や「中長期的な視点からの投資判断」という見出しもある。だが、「中長期的な視点からの投資判断」は、焦点のボケた短い段落で終わっている。というのは、別に“スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードの フォローアップ会議”なるもので議論するかららしい。ただ、これらの制度では個人投資は蚊帳の外、機関投資家と経営者が主役だ。いやいや、個人投資家については、申し訳程度に、教育してリテラシーを高めると書いてある。

 

 

ん〜、何かしっくりこない。もっと根本的な開示の改革が必要ではないか。対話の基礎になる企業情報、建設的な対話のネタになる企業情報とはなんだろう。

 

といっても、多くの方は「他にやりようがないじゃないか」と思われるかもしれない。でも、もし、このブログの最近の“使用価値”に関する長々とした退屈なシリーズを読まれた方がいらっしゃれば、僕の意図するものを感じられるかもしれない。僕は、“使用価値”こそ、キーになり得ると思う。

 

“使用価値”こそは事業の現況に関する経営者の見積りであり、意図であり、見通しであり、戦略も一部含むので、長期的な投資家が興味津々の情報のはずだ。しかし、それは減損会計の減損テストでのみ使用される企業の内部情報で、開示対象になっていない(減損損失を計上した時のみ、減損後の新しい簿価として表に出る)。

 

実際には、減損会計で使う目的以外に使用価値を計算している企業などないだろう。即ち、経営管理に使用価値を利用している企業はないと思うので、「開示のためだけに計算される使用価値に意味はあるのか」という疑問があると思う。それに使用価値は、本来、会計では扱ってはならない“自己創設のれん”を含んでいる可能性が高い。したがって、開示する場合でもその方法が難しい。

 

難しいが、ただ、ここで思考停止しない。(どうせ、自己満足の妄想に過ぎないが。)

 

なぜなら、投資家や株主が経営者と長期的・建設的なコミュニケーションをするには、経営者が事前に到達目標を示して投資家や株主と実績値について対話するという関係が必要だからだ。現在はその到達目標に関する情報が少なすぎる。抽象的でもビジネス・モデルの説明があればかなり良い方で、具体的な情報としては、精々、進行期に関する売上や利益の目標しかない(=業績予想。任意で中期経営計画などを開示する企業もある)。それより先の具体的な目標はない。それで「長期間建設的にお付き合い願います」と言われても…、ねぇ。

 

ということで、これに使用価値を利用できないだろうか。そうすることで、経営者の見積りの強気・弱気のバイアスを、投資家や株主が評価する材料も、新たに加えられる。監査の限界を補う材料にもなるだろう。

 

考えていると長くなりそうなので、使用価値をどのように使うかに関しては、次回にしたい。さつきの花が散る頃かもしれない。

 

 

 

🍁ー・ー🍁ー・ー

*1 “公平な情報開示”のルールだが、具体的には、企業が未公表かつ重要な情報を特定の市場関係者に明かした場合、一般投資家にも速やかに公表しなければならないこと。例えば、企業が一部のマスメディアやアナリストにのみ情報開示することは許されない。日本では証券取引所のルールはあったと思うが、法制化・制度化はされていないらしい。

 

 

2016年5月12日 (木曜日)

563【投資】ソフトバンク、また、単体の減損を連結へ反映せず?

2016/5/12

レスターのプレミア・リーグ優勝を心から祝福したい。岡崎慎司選手は、成し遂げた偉業を信じられないほど喜んでいるが、一方で、ジェイミー・ヴァーディ選手やリアド・マレズ選手のようなチーム・メイトが活躍し成長する脇で、自分が5得点に終わった(5/8、第37節終了時点)ことを悔しがっている。おそらく、喜びが大きい分、悔しさも深いのではないだろうか。だが、これが彼の来季の活躍につながる。みなさんも、そう思われると思う。良くても悪くても現状に満足せずに、さらに上を目指す並外れた向上心。これが岡崎選手の魅力なのだ。

 

なんて具合に、一人、悦に浸っていたところに冷水を浴びせたのは次の記事だ。

 

ソフトバンク、米子会社株で1531億円損失  5/10 日経電子版無料記事

 

抜粋は以下のとおり。

 

ソフトバンクグループは10日、2016年3月期の単体決算で、傘下の米携帯端末卸、ブライトスターなどの株式を減損処理し、1531億円の株式評価損を計上すると発表した。… 今回の評価損は、ソフトバンクグループの連結決算には反映されない。

 

「え〜っ、また、やったのか?」と思ったが、完全に僕の勘違いだった。今回の“連結決算には反映されない”理由は、前回とは異なり、「連結上、すでにそれに相当する損失は計上されている。改めて減損損失を反映させるとダブることになる」ためであることが分かった。“前回”とは、覚えておられる方もいらっしゃると思うが、米国子会社のスプリントの減損処理の件だ。

 

 

以下、この過程を記載する。まずは、疑問が湧いてきた様子から。

 

このブログでは、昨年の2月に、ソフトバンクが米子会社スプリントが2014/12期に計上した減損損失を連結に反映させなかった会計処理を検討した。ソフトバンクは、子会社が単体決算で減損と判断したものを覆し、スプリントが行った減損処理をソフトバンクの連結決算で取り消したのだ。もしかして、2年連続で、また、同じようなことをしたのか?

 

会社の公式説明としては、「会計基準の相違により、US-GAAPで減損されるものがIFRSでは減損にならないため」とされていた。しかし、疑問を感じたので、検証してみたのだ。

 

僕の結論としては、この処理が容認されるには、「親会社であるソフトバンクのレベルで、スプリント業績向上の秘策が、すでに、そして密かに進行している必要がある」みたいなものだった。減損テストにおいて、子会社のスプリントには見えていないが、連結レベルで親会社には認識できる追加の将来キャッシュフローの存在が必要と考えた。その追加の将来キャッシュフローのおかげで、親会社のレベルでのみ、減損が否定できたのだろうと想像した。

 

実際にそんな秘策があったかというと、なかったようだ。その後の経過を観察していたが、僕が期待したような、スプリントに不足する経営資源を補完し劇的な業績改善につながるM&Aのような案件は、その後、公表されることはなかった。今考えてみると、その半年ほど前に、マルセロ・クラウレ氏を外部からスカウトし、新しくスプリントのCEOに迎えたことが、その僕の言うところの秘策だったようだ。孫正義氏は、クラウレ氏とともに、スプリントの地道な経営改善、顧客獲得とコスト削減を積み上げている。(但し、それが許されるなら、US-GAAPでも減損不要だったのではないか、との疑問を感じるが…)

 

しかも、今回減損された“ブライトスター”は、そのマルセロ・クラウレ氏に関連して購入した株式だ。その減損損失を、連結に反映させないとは、一体どういうことだろう?

 

 

そして、この疑問が解消された過程が次の通り。

 

新聞報道のネタとなったソフトバンクの開示を確認してみよう。そこにもっと詳しい情報があるに違いない。

 

当社個別決算における関係会社株式評価損(特別損失)の計上に関するお知らせ
ソフトバンクグループ
HP 5/10

 

ポイントは次の箇所。

 

連結決算(IFRS)では、Brightstar Corp.の業績は子会社として連結損益計算書に反映されています。このため、上記の関係会社株式評価損が連結業績に与える影響はありません。

 

これ、連結会計の初歩だ。「そうか、連結手続の中でもう反映されてるんだ」と、ここでようやく気がついた。

 

親会社が計上した連結子会社株式に対する評価損は、連結開始仕訳で取り消し、その代わり、連結財務諸表に引き継ぐ子会社の利益剰余金を直接減らす。その結果、上記の会社の説明にあるように、期末連結剰余金はその子会社株式評価損を計上した場合と同じ金額に調整され、かつ、その損失は子会社株式評価損ではなく、(子会社に関係する事業の)業績の悪化として、損益計算書に表現される。

 

これにここまで気付かなかったとは、ちょっとショックだ。

 

 

実は、今回の記事を書き始めた時は「(冒頭の)新聞記事の表現が悪い」が結論になるかもしれないと思っていた。しかし、事実は「会計士として恥ずかしい初歩のミス、勘違い」だった。思えば、連結実務から遠ざかって、早くも5年の月日が経とうとしている。僕の会計脳がサビつき始めたことは否めない。

 

でも、「良くても悪くても現状に満足せずに、さらに上を目指す」岡崎選手なら、「錆びたら磨き直せば良い」と、事もなげに言うに違いない。「そんなこと、簡単だよ」と。そうか、簡単だ。なんかホッとする。

 

岡崎選手の楽観と飽くなき向上心。そういえば、孫正義氏もそんな人だ。将来に期待させる。改めて、ソフトバンク株は、まだ売り時ではないと思った。

 

 

🍁ー・ー🍁ー・ー

*1 もし、ご関心のある方は、以下の記事をご覧いただきたい。

 

437.ソフトバンクのスプリント減損の不計上~疑問 2015/2/7

 

さらに興味を持たれた方には、次の記事もある。

 

438.ソフトバンクのスプリント減損の不計上~検証~資金生成単位の見直し① 2015/2/9

439.ソフトバンクのスプリント減損の不計上~検証~資金生成単位の見直し② 2015/2/11

440.ソフトバンクのスプリント減損の不計上~検証~減損テストの支配権 2015/2/13

441.ソフトバンクのスプリント減損の不計上~あと書き 2015/2/17

442.ソフトバンクのスプリント減損の不計上~補筆~なぜ、固定資産の減損テストに子会社株式の公正価値を使うのか 2015/2/18

 

 

2016年5月 3日 (火曜日)

562【投資】日銀、シュート・チャンスを逃す!

 

2016/5/3

今日は憲法記念日。改憲の要否とか、改憲するならその内容などを議論するには丁度良い日だ。しかし、僕の頭の中には、4/28の日銀金融政策決定会合で、報じられていた追加緩和策が決定されなかったことでいっぱいだ。議論もしてないという。一体、なぜ?

 

もちろん、黒田東彦総裁の会見の記事は読んだし、テレビのニュースも見た。識者の解説も読み聞きした。それでも、納得がいかない。日銀は分かり難い。

 

 

ふっと思い出したのは、サッカーW杯(2006年ドイツ大会)、日本代表グループ・リーグ第2戦のクロアチア戦で、柳沢敦選手が外したシュートだ*1。柳沢選手は、守る人のいない目の前のゴールにシュートを決められなかった。その結果、この試合はスコアレス・ドローとなった。翌日、上場希望のクライアントの女性経営者と面談した際、僕はこのプレーをネタにした。

 

思うように売上が上がらず、深刻に思い悩む社長。資金繰りも心細い。「もう、上場は無理? 会社の存続も…」と、言外に訴えかけてくる。

 

その張り詰めた暗い雰囲気を脱したい僕は、クロアチア戦の、逆の意味のMVPである柳沢選手のプレーを一通り振り返って笑いを誘った後、ジーコ・ジャパンの窮状を説明した。もう、次のブラジル戦に2点差以上で勝利する以外に、決勝トーナメントに残る道はないと。ブラジルは、2002年の日韓大会の覇者だし、日本との実力差は歴然としている。したがって、ジーコ・ジャパンのグループ・リーグ敗退は決まったも同然だった。ほとんど、決勝トーナメントへ進める希望はない。

 

しかし、それでもみんなジーコ・ジャパンのブラジル戦を応援しますよ。そして、僕は御社を応援します。御社の方が、まだ希望がありますから。

 

こんな品のよい話し方ではなかったが、このような趣旨を話した。ちょっとキツイかな?と思ったが、社長は腹を抱えて笑ってくれた。さぞや、ひどい会計士と思われたことだろう。だが、状況は深刻だ。慰めなど何の解決にもならない。気持ちを切り替えてもらうぐらいしか、監査人にできることはない。

 

さて、その時の柳沢選手のプレーを説明しよう。

 

加地亮選手が相手ゴール右側からキーパーの脇を抜けてゴロのクロスを通した。綺麗なラスト・パスだ。相手キーパーは、加地選手に気を取られていたので、ゴール前左寄りに走りこんできた柳沢選手の前はガラ空きだった。柳沢選手は、そのパスを目の前のゴールへちょこんと流し込めば先制ゴールだった。しかし、ボールをキーパーへ向かって蹴ってしまい、ボールはキーパーの股の間を抜けて、逆側のゴール・ポストの外へ転がっていった。万事休す。

 

なにも、ここで股抜きしなくても…。みんなそう思ったと思う。それで、目の前のゴールを外すなんて。

 

試合後、柳沢選手は「急にボールが来たので…」と発言したそうだ。確かに、右から来たクロスは左足でシュートする方が自然と思うが、柳沢選手は右足で蹴っていた。余裕がなかったことが窺える。それでボールが、目の前のゴールではなく、右にいたキーパーの方へ転がってしまったのだ。キーパーも驚いて足を閉じようとしたが、見事に股を抜かれてしまった。が、ボールはゴールを外れた。

 

 

ん〜、日銀も、そうだったのだろうか?

 

急に市場が追加緩和で盛り上がって、それについていけなかったのだろうか。全くの準備不足で、“貸出支援基金”に対する新しいマイナス金利制度などできる状況ではなかったのか? 

 

そもそも、日銀は、デフレ・マインドから脱却するために、即ち、程よいインフレにするために、金融緩和を行っている。そのため、黒田バズーカーは、黒田総裁がたびたび口にするように、一般(市民・企業)のインフレ“期待”に働きかけている。

 

とはいえ、一般の我々には、日銀が国債を買ったりマイナス金利を付すことが、なぜ、インフレにつながるのか、何度聞いてもピンとこない。だから、より具体的に、円安(で輸入品の値段が上がる)とか、株高(になって景気が上向く)など、インフレを想起させるような現象を起こさないといけない。

 

ところが、最近は円高・株安の影響か、また原油安も絡んで、インフレ期待の低下が顕著になってきている*2。また、日銀決定会合当日の朝には、各種の消費者物価指数(CPI)も公表され、実際の物価上昇率もマイナスで、3月の実質消費支出に至っては前年同月に比べ5.3%も減少していることが明らかになっていた*3。ますます、デフレ傾向を強めている。

 

即ち、日銀がデフレ脱却をいうのなら、次の一手のタイミングが到来していたのではないか。おまけに、このブログの前回の記事(561-4/25)のように、観測気球は市場の、またとない良い反応を引き出していた。次の一手を打てば、円安・株高を演出できることは分かっている。

 

多分、ボールは、キーパーの脇を擦り抜けて、日銀の前に転がってきていたはずだ。柳沢選手は、それでも右足を振ってシュートを試みたが、日銀は、ただ、スルーした。「今はマイナス金利の影響を見極める時だ」として。即ち、「あとに、もっと良いゴール・チャンスがくる」ということだ。しかも、2%の物価上昇率目標達成時期を後ろへずらした。「君たちにゴールと言ってあったものは、もうゴールじゃない。ゴールは遠ざかってしまった」ということらしい。

 

中国経済成長の減速、原油市場の低迷、政府の構造改革や財政政策など、日銀にはどうにもならない様々な要因が、ゴールの位置までを変えてしまったということか。

 

 

まあ、いずれにしても、僕はまだ株などを持っている*4。日銀への信頼がなくなれば、処分してしまうが、そこまでには至っていない。黒田総裁は「半年・1年もかかるものではない。秋には見極められる」と言われているので、もうしばらくは日銀プレーを観戦し続けようと思う。ジーコ・ジャパンのブラジル戦よりは期待して。

 

 

🍁ー・ー🍁ー・ー

*1 もし、柳沢選手のゴールを外したシーンをご覧になりたい方は、次の記事からご覧になれる。第2位に挙げられている。

 

【動画あり】現役引退を発表した「柳沢敦選手」の記憶に残るプレーベスト5

Rocket News 24 2014/12/5

 

柳沢選手は、数々の素晴らしいゴールを残してくれた超イケメンの名プレーヤーだが、こういうお茶目な一面もあった。

 

*2 最近、インフレ期待の後退に関する報道は多い。

 

異次元緩和から3年 後退するインフレ期待 テレビ東京 モーニング・サテライト 4/4

UPDATE 2-縮小続く家計の物価上昇見通し、比率はQQE前に=日銀調査 REUTERS 4/11

 

*3 日銀金融政策決定会合当日の朝にも、デフレ状況のような指標が公表されている。

 

3月全国消費者物価0.3%下落 5カ月ぶりマイナス  日経電子版無料記事 4/28

3月実質消費支出5.3%減 予想より落ち込む 日経電子版無料記事 4/28

 

*4 以前(541-1/12)、撤退宣言をしたのだが、まだ売りそびれている。

 

 

« 2016年4月 | トップページ | 2016年6月 »

2017年7月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          
無料ブログはココログ