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2016年6月30日 (木曜日)

569【金融商品/番外編】英国EU離脱と欧州不良債権問題

2016/6/30

以前、「欧州には不良債権問題がある」と書いた*1。当時、欧州版の自己査定が始まるので、不良債権額が意外に膨らむかもしれない。新たな危機が生じないだろうか、と危惧したわけだが、大きく市場を揺るがすようなことはなかった。でも、くすぶっている。ん〜、熟成してきたというべきか。実は、蔵出しのタイミングも決まっている。2018年だ。まだ先だが、東京オリンピックよりは近い。

 

今回は、久しぶりにこのブログの本題であるIFRSにも絡む話題だ。

 

IFRS9の金融商品の減損についての規定が、2018年(に開始する事業年度)に適用される。すると、貸倒引当金の積増しが懸念されるのだ。みなさんもご存知かもしれないが、貸付金や売掛金などの評価規定が厳しくなる(“発生損失”から“予想損失”による減損計上へ変わる)。

 

非常に大雑把に言うと、現行IFRSの規定では、日本基準で言うところの、不良債権を認定して個別引当するようなケースしか貸倒引当金が計上されない。いわゆる、“一般繰入れ”の部分がほぼない。損失発生の事実を確認してから貸引計上するので、どうしてもタイミングが遅くなる(too little too late.)。リーマン・ショックの際にこれが批判されて、予想される損失を予め計上する考え方へ変更することになった。これが上述の2018年のIFRS9の改定(の一部)だ。

 

欧州の銀行は2014年に自己査定を始めたので、不良債権額は十分な精度で把握できるようになった。しかし、日本や米国から見ると、まだ引当不足の状態にある。それが2018年に解消され、積増しされる(ことが予想される)。そうなると、もっとも状況の悪いイタリアなどでは、銀行が資本不足に陥ることが予想される。これが蔵出しだ。

 

とはいえ、みなさんは「これと英国のEU離脱とは関係がないのでは?」と思われたかもしれない。僕もそう思う。しかし、現実には、次のような記事があって、どうも、この件を材料にしたヘッジ・ファンドの攻撃を心配しているようなのだ。

 

取り付け騒ぎ回避であらゆる手段=ユンケル欧州委員長 6/29 REUTERS

UPDATE 1-イタリア、銀行セクター支援策を準備 英EU離脱受け=関係筋 6/28 REUTERS

 

Brexitが確定した6/24以降急落していた欧州銀行株は、幸いなことに、6/28には一転反発した*2。これらの報道も影響したかもしれない。

 

マネックス証券のチーフ・アナリスト 大槻奈那氏(金融分野に強い)は、Brexitに関する最近のレポート*3の中で次のように指摘している。

 

中でもイタリアは、不良債権の総額は約30兆円と欧州の中でダントツである(図表5)。貸出に対する不良債権の比率は16.8%と日本の金融危機時を上回る高い比率となっている。引当金は計上されているが、不良債権額の約半分程度であり、残りは今後の損失に繋がりやすい。

 

・・・英国からの資本流出など悪い条件が重なった場合に、欧州側の金融システムの脆弱な部分(これがイタリアなど)にも刺激が及ぶ可能性が、指摘されている。それにしても、イタリアの状況は相当悪そうだ。

 

確かに、ヘッジ・ファンドが攻撃のネタにしそうな感じだ。単なる杞憂ではすみそうにない。恐ろしい話だ。でも、EUは対応の準備ができているようだ。これが大事。

 

金融市場は、変動することで実体経済の弱点を知らせてくれる。会計もそれに寄与している。これは便利な機能だが、行き過ぎると実体経済を過度に刺激し、悪化させる。これが難点だ。「Brexitなど、精々、関税がかかるぐらいなもので大したことない」と達観できれば、本当に大過なく過ごせるのだが、さて、どうなるだろうか。

 

特に、英国内、或いは、英国とEUの間で感情的なもつれが生じると、影響が大きく広がりそうだ。人々が冷静でいられるように祈るしかない。

 

 

 

🍁ー・ー🍁ー・ー

*1 404.【番外編】欧州の不良債権問題 2014/10/5

 

*2 欧州株は反発、金融株持ち直す 6/29 REUTERS

 

*3 BREXIT後の日・欧金融セクター:株価暴落の背景と今後 6/28 マネックス証券HP

 

 

 

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