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2017年2月

2017年2月16日 (木曜日)

582【番外編】東芝ドタバタ劇場

2017/2/15

日米でドタバタが世間の注目を集めている。両者の共通点は、情報開示が規格外なことだが、相違点は動機だ。自国民のためにやっているトランプ大統領に対して、東芝は保身に手一杯で、周囲にまで思いが及んでいないようだ。

 

 

すでにみなさんもご存知の通り、東芝が決算発表を1ヶ月延期した。もし詳しい経緯が知りたい方は、例えば日経電子版の無料記事*1、シンプルに延期理由を知りたい方は、Reutersの記事*2がコンパクトだ。東芝のホームページにはプレスリリース*3が開示されている。

 

これらを読んでみると、どうやら、ウェスチングハウス経営者が会計上の見積もり(2015/12の原子力施設建設会社の買収資産に関連したもののようだ。特に未成工事支出金が疑われる)に不適切なプレッシャーを与えていた可能性があるらしい。要するに粉飾決算の可能性が示唆されている。内部通報は1/8と1/19にあり(タイミングからすると、連結パッケージに絡んでいるようだ)、通報者へのインタビューは1/28に行われたという。しかし、まだプレッシャーの存否やその影響の大きさに関する評価が終わらない。経営陣は、この状況を決算発表予定日の前日、すなわち、2/13の午後に把握したという。

 

なぜすぐ(2/13)に決算発表や四半期報告書提出の延期を申し出なかったのか。なぜ決算発表開始時間を過ぎてもなおバタバタしていたのか。

 

以下は、全く想像に過ぎないが、あえて書こうと思う。というのは、これは単なる企業情報開示の問題ではなく、企業がその存在を社会に許されている原点・理由を東芝上層部が忘れているように見えるからだ。すなわち、重症なのは財務状況だけではない。

 

13日に分かっていたことへの対応が、14日の昼過ぎまでバタバタしたのは、その現実を受け入れ、如何に対応するかについて、東芝の上層部がまとまらなかったからだと思う。予定通り決算発表を強行しようとする一派がいて、そんな状況ではないと対抗するもう一つの派とせめぎ合い、時間切れが後者に味方したと想像される。

 

しかし、報道やプレスリリースなどを見る限り、常識的に後者の対応が当然ではないだろうか。それ以外に選択肢があったように思えない。それにも関わらずここまで縺れたのは、前者の勢力が強大だったこと、すなわち、前者が東芝上層部の主流派・多数派だったから、と想像される。後者は、時間の助けを借りてギリギリ主張を貫いた、という感じがする。(だからといって、後者が今後の主導権を勝ち取ったとは限らない。)

 

今回の東芝の決算は減損金額の確定が予告されていたことや、内容によっては日本の原子力戦略に影響を与えかねないために、世間の注目を集めていた。それを分かった上でもなお繰り広げられた東芝ドタバタ劇場は、その主流派・多数派が如何に世間常識から外れ、自己中心的で閉鎖的な井の中の蛙集団であったかを示しているように思う。

 

 

TBS系列の日曜夜9時“日曜劇場”は、最近では「倍返しだ!」の『半沢直樹』が話題になるなど、永く世間の注目を集めてきた。遡るとかつては東芝が一社でスポンサーを務め、“東芝日曜劇場”と呼ばれていた。長い歴史があるのだ。

 

今回のドタバタ劇場も、繰り返されて長い歴史を刻んでいくのだろうか。主流派・多数派の頭の中を変えるのは容易ではない。しかし、東芝に残された余裕・時間はわずかしかない。

 

 

 

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*1 東芝迷走の1日 「不適切」の影再び 」(日経電子版 2/14

 

*2  東芝、決算発表を1カ月延期 提出期限延長を申請」(Reuters 2/14)

 

*3 第178期第3四半期報告書(自 2016年10月1日 至 2016年12月31日)の 提出期限延長に関する承認申請書提出に関するお知らせ (東芝ホームページ)

 

 

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