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2017年10月

2017年10月20日 (金曜日)

588【番外編】内部留保金課税が日本経済を浮揚させる?

 

2017/10/20

次の日曜日が総選挙の投票日だ。ご存知の通り、安倍氏による抜き打ち解散が民進党(衆院)を解党させ、希望の党や立憲民主党を産んだ。メディア報道では、小池氏の“排除”発言が風向きを変え、希望の党への逆風、立憲民主党への追い風となっているようだ。世論調査の分析では、分裂した野党をよそに、自由民主党が300議席を越す勢いという。

 

世間では注目度を下げている希望の党だが、僕は非常に興味をそそられた。それは次の2点を感じたからだ。

 

  1. 自民党に対抗しうる選択肢が生まれた。
        

我々はかつて民主党に希望を託したが、“決められない政治”で失望させられた。この党は党内議論をまとめられず、政権与党として戦略的な政策を立案・実行する力なかった。選挙に負けて“解党的出直し”がなされ、その後民進党になっても、“批判はすれども提案なし”の状況のまま現在に至っている。

 

そこで、小池氏(と前原氏)は、主に安全保障に対する考え方で民進党衆院議員を篩に掛けた。いわゆる“排除の論理”だ。この結果、民進党(衆院)は希望の党へ参加した者と、立憲民主党へ参加した者(と、無所属)に分裂した。

 

この篩の目の注目点は、先ごろ与党などが強引に成立させた安保法制を白紙撤回させるか、それとも、この安保法制を(一旦は)認めるかだ。

 

僕の感覚では、北朝鮮情勢を鑑みれば、白紙撤回はありえない。「この北朝鮮が危ない時に解散・総選挙なんてありえない」と批判するなら、安保法制の白紙撤回はもっとありえない。なぜなら、選挙は数週間で終わるが、安保法制を一からやり直せば年単位の時間がかかるからだ。白紙撤回して一から議論するという主張は、僕には現実的な対応に思えない。

 

というわけで、希望の党へ入党した人たちは建設的な党内議論・国会議論ができやすい人々、と考えたわけだ。それなら自民党に対抗する選択肢になりえる。

 

  1. 選挙公約に内部留保金課税が含まれている。
        

メディアでは“二重課税”などという税務テクニカルな批判がなされ、他の公約と合わせて「希望の党にはろくなアドバイザーがいない、政策立案能力がない、とってつけたような公約だ」など報道されている。確かにその通りではあるが、僕は、この問題の本質、内部留保金課税を公約に掲げた目的は、経営者への批判や企業経営に対する不満の表明にあると思った。

 

かつて、超円高など“六重苦”と呼ばれた日本企業を取り巻く経済的悪条件*1は、アベノミクスによって改善されつつあり、コーポレート・ガバナンス・コードにより企業経営が成長へ前向きになるようプレッシャーをかけさせ、さらには資本主義の国としては異例なことに、首相である安倍氏自らが賃上げを経済界へ求めた。

 

それでも投資は低調で(足元では増加の兆しあり)、実質賃金は上がらず、仕入先への支払いも渋いまま、企業の手元資金だけが積み上がっているという。“金は天下の回りもの”というが、お金は使われないと経済を盛り上げない。

 

希望の党は、お金の流れが目詰まりを起こしており、その原因が経営者にあると見立てている。内部留保金課税を公約に含めたのはそういう意味だろうと思った。

 

もちろん、日本にも素晴らしい経営者がたくさんいると思う。でも周りを見渡してみよう。そうすれば、米中韓などの企業の躍進に比べて見劣りしているように見える(のは僕だけではないだろう)。

 

希望の党は“課税“には拘らないと言っている*2。そこが、いかにも“とってつけたような公約”っぽいが、それで良いのだ。まだ生まれたての政党なのだから。そして、「企業の手元資金が経済で有効活用されれば良い、税収の自然増につながる」と主張している。確かに、消費を冷やす消費税の増税よりよっぽど良い。

 

 

会計のブログとしては、“二重課税”について詳しく書いた方が良いような気がするが、すでに権威のある方々が書いておられるので、それらを紹介することにしよう。末尾をご覧いただきたい*3

 

早速、金融庁がこれらの議論に乗じて、企業開示制度に手を加えようとしている*4。とても良いアイディアだと思う。

 

何れにしても、この話題は選挙後も継続して盛り上がっていくと良いと思っている。財務や税務の枠に収まらず、経営者の闘争本能を呼び覚ますワイルドな議論に発展することを祈りたい。

 

 

🍁ー・ー🍁ー・ー🍁ー・ー🍁ー・ー🍁ー・ー🍁ー・ー🍁ー・ー🍁ー・ー

 

*1 六重苦 コトバンク

 

円高、高い法人税率、自由貿易協定への対応の遅れ、製造業の派遣禁止などの労働規制、環境規制の強化、電力不足のことらしい。“電力不足”が入っているということは、東日本大地震(2011/3)の後の超円高の頃の経済環境を指すと思われる。

 

*2 内部留保活用「課税にこだわらず」 希望・小池氏 日経電子版 10/13 有料記事

 

*3 内部留保金課税に関するコラムについて

 

いくつか読んだものの中から、次のものを推薦する。ただいずれも、批判で飯を食ってる人たちなんだなあ、という感じはする。(僕も監査人時代はこんな雰囲気だったかもしれない。今もかな?)

 

希望の党「内部留保課税」に安心の希望が見出せない理由 DIAMONDonline 10/17

森信茂樹:中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員 

 

著者は、希望の党に”かなり否定“で入っているようだが、日本の同族会社に対する内部留保金課税や、米国や韓国の制度にも触れており、具体的な知識がありそう。

 

『「大企業は、内部留保の過大な積み上げをやめて、賃金や設備投資、配当の増加にまわすべきだ」というのは、全くの正論である。』とした上で、希望の党の内部留保金課税について次の観点から批判している。

 

・懲罰的な税制であること

・消費税の代替財源(=恒久的財源)として扱うこと(二重課税)

 

裏付けとして、韓国の例を挙げている。賃上げや設備投資ではなく、配当の増加(個人株主は2割程度と少ない)へお金が使われたということらしい。現在、制度の見直しが検討されているとのこと。

 

小池新党の「内部留保課税」は設備投資や雇用に全く効果がない DIAMONDonline 10/13

塚崎公義:久留米大学商学部教授 

 

内部留保は会計上資本の部にあるが、一般の議論はあたかも会社の資産のようなイメージで語られており、その誤解を解くことから解説を始めている。そして、

 

・企業が設備投資をするかどうかは儲かるネタがあるかないかであり、内部留保金課税は設備投資の多寡に影響を与えないだろう、税額を減らしたければ配当を増やすだろうとしている。

・「企業は株主のもの」という考え方が浸透してきたので、課税を避けるために賃金を上げることはさらに考えにくいとしている。やはり、配当されてしまうとのこと。

・「配当が増えれば株式市場が盛り上がる」こともないという。配当が増えた分、企業の財務基盤が揺らいで(倒産確率が上がって)日本経済のためにならないという。

・この方は、内部留保金のB/S残高に課税されるとの前提から、二重課税というより多重課税に当たる、と批判している。

 

企業が儲かるネタをもっと見つけやすくなるにはどうしたら良いだろう。そして、賃金・給与を上げることが企業の成長・発展につながると考えられるにはどうしたら良いだろう。

 

*4 内部留保、成長投資へ活用促す 金融庁が指針議論 日経電子版 10/17 有料記事

 

企業統治改革の会議(「成長戦略の具体策を練る政府の未来投資会議」のことか)で議論を開始し、来年の株主総会に間に合わせるよう“指針”を作成するという。“指針”を通じて企業と投資家が建設的に意見交換し、企業内部だけでは難しい課題の解決につなげることを期待する、となっている。さすが、金融庁。機をみるのが敏だ。

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