2017/11/12
2ヶ月程前に急に涼しくなったが、それからは季節が足踏みしており、過ごしやすく心地よい日々が続いている。みなさんのところはいかがだろうか。
この間、総選挙やトランプ氏のアジア歴訪、そして日本シリーズなどに世間の関心、というかマスコミの関心が向いていた。僕の関心は「行政文書の管理に関するガイドラインの一部改正案」に向いている。例の“モリカケ”や南スーダン派遣部隊の日報で注目を浴びた官僚の文書管理の杜撰さをなんとかしようという問題だ。マスコミでは11/8に報じられた*1が、それによれば、この改正案について一般への意見募集が行われるという。
まだ意見募集は行われていないらしい。内閣府のホームページを探しても、意見募集の対象となるその案すら見当たらない。
というわけで、僕なりに現在の行政文書管理制度を検討してみようと思う。現在の行政文書管理制度については、内閣府のホームページの「行政文書の管理」に記載されている内容を対象としたい。
予め申し上げておくと、僕は(恐らく、みなさんと同様に)、この行政文書管理制度には非常に悪いイメージを持っている。政治家や官僚がこの制度を悪用したと感じているからだ。
本来保管が必要な見積もり資料や入退館記録を廃棄し、核心をつく会議メモを行政文書ではないと否定し、現政権と自分自身にのびる追及の手から逃れようとした。自衛隊の日報に至っては、現場情報としての重要性を無視して、「行政文書から外してしまえ」などという極端な意見を識者が堂々とテレビで述べている。
言ってみれば、会計基準を歪めて粉飾決算を行なったのに、その会社が罰せられることなく上場し続けているようなもので、その会計基準の見直しには心血をそそぐ必要があると思うのだ。
おっと、そういえば、東芝は粉飾決算のあとも上場を維持している。オリンパスも然り。ん〜、現実には「粉飾=上場廃止」ではない。しかし、少なくとも経営陣は一掃されるし、リストラされるし、株は売られるし社会的非難も浴びている。したがって、総選挙で自民党が大勝利したから、問題官僚が出世・栄転したことが正当化されるとか、問題閣僚が再選されたからその傷が消えるなどいう政治の世界ほど簡単なことではない。政治や官僚の世界もこんな簡単なことにならないようにする必要があるように思う。
ということで、まず、この制度の目的を押さえておこう。そもそもこの制度は何を目指しているのか。それによって我々の不満や不安をカバーしうるものか、それとも別の制度が必要なのかが分かる。「公文書等の管理に関する法律(平成21年7月1日法律66号)」第1条には次のように記載されている。
この法律は、国及び独立行政法人等の諸活動や歴史的事実の記録である公文書等が、健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、主権者である国民が主体的に利用し得るものであることにかんがみ、国民主権の理念にのっとり、公文書等の管理に関する基本的事項を定めること等により、行政文書等の適正な管理、歴史公文書等の適切な保存及び利用等を図り、もって行政が適正かつ効率的に運営されるようにするとともに、国及び独立行政法人等の有するその諸活動を現在及び将来の国民に説明する責務が全うされるようにすることを目的とする。*2
うん、難しい。誤解を恐れず平易・簡潔に表現すると次のようになるだろうか。
行政文書は民主主義の根幹を支えるものの1つである。適切な管理(行政の効率性を含む)は、国などの諸活動を現在及び将来の国民に説明する責務を果たすために必要なものである。
議会が決めた法律(政策)を行政が執行するが、それを気に入らなければ次の選挙で議会の顔ぶれを国民が変更する。アベノミクスやインド太平洋戦略といった大きなテーマについては、のちの世代の国民が成功・不成功を評価して次の戦略策定と執行に生かしていく。
このような民主主義の仕組みと合わせて考えると、なるほど、行政文書の管理・情報開示は民主主義の根幹をなす重要な制度だ。これら情報の記録・保管が適切に行われず、嘘があったり重要なことが不明瞭であったりすれば、国が進路を誤ったり政権選択という国民の権利が侵害され恐ろしいことになる。
これは、当初の想定より重要性が高いテーマのようだ。影響が極めて大きい。何しろ国の根幹に直接関わる問題だ。しかし、構図としては監査調書の保管と似ていそうな感じがして取組み易い気もする。
ちょっと進路変更をしたい。上には「内閣府のホームページの「行政文書の管理」に記載されている内容を対象」と書いたが、事柄の重要性に鑑み、“案”が開示されるのを待って、ちゃんと検討したい。
とりあえず現在気が付いたことを書いておきたい。
それは「罰則がない」だ。上記の「目的」の引用元である「公文書等の管理に関する法律」にもなさそうだし、内閣府のホームページにも記載がない。ということは、“公文書偽造”などの一般的な刑法が適用されるのだと思うが、事の重要性や“モリカケ”に見受けられる構図を考えると、行政文書管理専用の罰則が必要だ。
刑法の規定は、偽造の対象が証明書などの特定のものに限定されていて、ここで言う行政文書の大半が抜け落ちてそうだ。また、“偽造”が対象であり、廃棄・紛失・隠蔽といった行為及びそれを指図した者に対する罰則がないようなのだ。音声・動画などの電子ファイルの扱いについても、同様の心配がある。
企業が嘘の開示をすればそれ用の罰則がある。監査人が監査調書を適切に作成・保管しなければ監査人としての資格を失う。これらは刑法の一般規定ではなく、金融商品取引法や公認会計士法といったそれ専用の法律に基づくものだ。
そういうことであれば、政治家や官僚が行政文書を不適切に扱った場合は、当然にそれ専用の罰則規定が必要と思う。政治家や官僚に、国の根幹・民主主義を支えている自負があるなら、自ら進んで重い責任を負ってもらいたい。
実は、もう一つ、僕が関心を持っているものがある。11/10にフランスで行われたサッカー日本代表のブラジル戦だ。結果は1-3で敗れたが、3失点した前半の出来が、どうも納得できない。日本代表はもっとやれたはずだ。
説明責任はハリルホジッチ監督にあるのだろうが、言葉でなくても良い。次の11/15のベルギー戦で前半から素晴らしい戦いを見せてくれれば満足するだろう。安倍政権にも同様の期待を持っている。
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*1 NHKは次のように報じている。
行政文書取り扱い 政府が新たなガイドライン案 11/8 NHK NEWS WEB
*2 行政文書管理制度の目的について
この記事の対象としている“行政文書”を含む公文書管理制度の目的は、本文に記載した内閣府のページには書いてない。上記の法律第1条の記載は、次のリンク先の文書から転記した。
公文書等の管理に関する法律
- 内閣府
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