592【投資】財政再建と株式投資
2018/2/6
今年はまた消費増税が議論される。すでにタバコ税や有価証券譲渡税を増税する話題も出ている。だが、安倍首相は消費税に関して「増税するか否か」ではなく、どう増税するか(=どのように経済環境を整えるか)を議論するつもりのようだ*1。
さて、財政再建のために増税は不可避と言われることが多いが、本当にそうだろうか。僕はテレビなどでしたり顔で解説する“専門家”にちょっと疑念を抱いている。以前から同じようなことを書いているが、今回は株式投資と絡めて、改めて書かせてもらいたい。
山はバリ島や草津白根山で噴火し、月は不気味にスーパー(でかい)・ブルー(2回/月)・ブラッド(月蝕)の3拍子が揃い、株はリーマンショック以来の下げ幅(米DJI)を記録する騒ぎとなっている。2018年は小室哲哉氏が引退したり、仮想通貨が盗まれたりするだけではない、騒がしい年になりそうだ。でもそんな時に投資のチャンスはやってくる。
投資開始のチャンスとは次の2条件、即ち、これ以上下がらず、この先上昇を見込めるという条件を満たした時だ。これ以上下がらないかどうかは僕にはよく分からない。もっと下がるかもしれない。でも、この先上昇することは見込める。
というか、もしこの先、株が上昇しないようであれば、僕もみなさんも、そして世界中の多くの人々が、この先まともに生活できないことになる。それこそ想像できない。いや、核戦争にでもなればそういうことになるが、みんなでそうならないよう頑張って、それでもそうなってしまったら、もうしょうがない。もう、投資どころの話ではない。それにそうなれば、国債保有者や債権者が誰かもわからなくなっているに違いないし、政府の財政などどうでも良い話になっているだろう。要するに、株価が継続的に上昇しないケースとは、それほど極論であり、それを想像してもしょうがないのだ。(その時はみんなでどうしたら自給自足できるか相談しましょう。)
実は、我々が思う以上に株価は底堅い。下がってもいつかは上がる。基本的に右肩上がりなのだ*2。そして重要なのは次の2点だ。
- 株が上がると国の財政にとても良い影響がある。増税よりはるかに。
- 株価上昇には我々一人ひとりが関われる。我々は無力ではない。
まず、Aから。
みなさんの中には、株は民間経済のものであり、国の財政には関係ないと思われる方もいらっしゃるかもしれない。しかし、少なくとも国民年金は一部株式運用されているし、日銀は金融緩和策の一環として上場投資信託(=ETF)を買い続けている。両者を合わせると(日本株だけで)数十兆。国民年金の運用資産が増加すると、現役世代・将来世代の国民年金保険料負担が楽になるし、日銀の運用資産が増加すると後で述べる国債棒引き、いわゆるヘリコプター・マネーの財源になりえる。
ということは、株価が上昇すると国民の年金負担や国の借金返済が楽になる。それに株価が上がるということは、企業業績が好調で経済活動が活発ということだから、法人税も所得税も、有価証券譲渡益課税額やその他様々な税収が増える。
ところが、増税すると、例えば消費税が3%上がると数年から20年ぐらい経済が拡大しないとか、デフレになるなどの副作用で、結局、税収が減少することが起こりえる。実際に消費税を5%にあげた後の副作用は、そのタイミングの悪さもあってきつかった。いわゆる“失われた20年”となった。
一部の経済学者は、日本国債を返済不要で無利子の永久債に転換するよう提言している(=ヘリコプター・マネー)。一部のといっても極右・極左のような人々ではなく、英国や米国の金融行政や中央銀行の最高幹部といった大物たちだ*3。
ただ、無利子の永久債へ転換すると、保有している日銀のB/Sの資産に多額の損失が発生する。約400兆円もだ。
一方、同じ永久債でも有利子だと金利負担はあるが、その代わり時価評価することで多額の損失を回避することができる。ただ、金利負担は永遠になくならない。例えば、1千兆円の借金の利払いは金利1%ごとに10兆円だから、いずれ市場金利が上昇すると国の一般会計は毎年大変な負担を強いられることになる。少しでも元本が少ない方が良い。
そこで日銀保有株の時価評価益を利用するのだ。株価が上がれば上がるほど、たくさん元本を減らすことができる。まあ、数十兆の株の評価益では、1千兆円の借金のほんの一部しか消せないが…。
とはいえ、(増税なしの)株価上昇だけで、年金や国債負担の軽減、税収増加が実現できれば、どれほど社会が明るくなるだろう。きっと素晴らしいに違いない。いや、実は大したことないかもしれない。というのは過去5年ほどを振り返ってみれば良い。この間、株価は約2倍に値上がりしたが、“実感なき景気拡大”と言われてきた。(但し、この間に消費税2%増税や社会保険料負担の増加があって、我々の幸福感を引き下げた。これらがなければもっと幸せを感じられたかもしれない。)
“継続は力なり”という。僕は会計における「継続性の原則」への盲信には懐疑的だが、株価上昇基調の継続は、確かに大きな力になると思う。“大きな力”とは我々が景気拡大を実感することだ。もっと長期間株価の上昇が続けば、続けさせることができれば、いずれは我々の生活感を大きく変えられると思う。もちろん、良い方向へ。
そこに上記のBの話がつながる。株価の上昇は、我々の手の届かないところで勝手に行われている話ではなく、我々は微力ながら、そこに関われる可能性がある。1つは企業業績向上へ関わる形で、もう一つは株式取引に参加し資産として株を保有するという形で。
ということで、ここから後半戦が始まるのだが、久しぶりに書いているせいかどうもペースが上がらない。今回の株価下落をチャンスにして株式投資による資産運用を多くのみなさんに薦めたいのだが、そこまで至ることができなかった。(ということで、これには続編がある。だが、まだ投資を始めてない方は今こそ真面目に考えた方が良いと思う。)
でもみなさん、僕は給料と年金だけで100歳まで経済的に不自由なく生活できる人は幸運な人だと思う。“幸運な人”とは普通の人ではない人のことだから、もしみなさんが、「自分は普通」と思うなら、給料と年金以外の糧が必要ではないだろうか。僕はそう思って投資を始めた。
別に普通であることを卑下することはない。普通の人とは、自力で自分の人生を全うする誇り高い人のことだ(自分で言うのも恥ずかしいが)。ただ、我々日本人は、特にバブル崩壊を知る世代は、株式投資に悪いイメージを持ち過ぎている。今、それを乗り越える必要があると思う。それがのちの世代のためになるし、何より、自分の人生を誇り高く生きることにつながるように思う。
ちなみに、証券口座を開くには恐らく数日かかると思う。今回の下落はそんなに簡単に反転しそうにない。現在株を持っている方々には悪いニュースだが、十分間に合いそうだ。(T T)
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*1 次の記事による。
首相「消費増税への状況つくる」 衆院予算委 日経電子版 2/5 無料
*2 確かに、日本の1990年前後のいわゆるバブル時代の株価は異常に高かった。それが頭にあるので、つい株価の基調が右肩上がりであることを疑ってしまう。しかし、世界の株式市場はつい最近までほとんど史上最高値を更新しているので、右肩上がりになっている。日本のあの時代は極めて例外的であったと考えるべきだと思う。
*3 具体的に無利子の永久債への転換を主張しているのはアデア・ターナー英金融サービス機構(FSA)元長官。ベン・バーナンキ元米FRB議長もヘリマネを主張。
特集:ヘリコプターマネーの正体 2016年8月2日号
週間エコノミスト 2016/8/2 無料
ちなみにアデア・ターナー氏は、日銀の現在の国債購入は、すでに実質的な無利子・永久債への転換だと指摘し、それを国民にはっきり明示するよう提案している。国民は、政府が国債発行で財政支出を増やしてもいずれ増税で吸い上げられると予測し、消費などの経済活動を高めない状況に陥っている。そこから脱するには、(一部の)国債の返済が不要であることをはっきり知らせることが重要と指摘している。この主張は2018年の現在も変わっていない。
視点:マネタリーファイナンスはなぜ日本に必要か=アデア・ターナー氏
REUTERS 2018/1/10 無料
もちろん、ヘリマネには副作用があると批判されている。財政規律が緩んでいずれ財政破綻に至るとされている。このため、国債全額を棒引きするようなヘリマネ政策を実行すれば日本政府の信用、即ち、円の価値が暴落する可能性が考えられる。したがって、上述したように日銀の資産の範囲でやるのが現実的ではないかと僕は思っている。素人の意見だが。
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