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2018年2月 7日 (水曜日)

593【投資】ちょっと寄り道〜イエレン・ロス

2018/2/7

FRB(米国の中央銀行)議長のジャネット・イエレン氏が先週末(2/2、1月最終週)をもって退任した。新しい議長はジェローム・パウエル氏だ。そのタイミングで米国株式市場は大きく動揺した。良好な経済状態と経済見通しの中で驚きの株価下落だ。

 

僕は、これをイエレン・ロスだと思っている。世界の投資家は、世話好きでちょっとおしゃべりの近所のおばさんのように優しく親しみやすいイエレン氏をとても好きなのだと思う。そのイエレン氏が退任するので、投資家は寂しくて仕方がないのだ。この相場は経済理論が役立たないので多くの専門家が頭を抱えているが、僕はそういう“感情”が相場を動かしていると思う。経済法則や理論ではなく“感情”で整理すると、次のようになる。

 

状況1)先月からドル安(&円高)が際立っている。謎のドル安だ。

昨年夏前から欧州経済好転の見通しからユーロが対ドルも含めて上昇していたが、ドルと円の関係では大きな変動がなかった。しかし、年明けぐらいから金利・経済指標からは想定されない、円を含む多くの通貨に対してドル安が進んだ。

 

(僕の説)

恐らく、昨年12月にイエレン氏が任期最後となる利上げをみんなの期待通りに行った時、投資家は「イエレンおばさんは最後まで優しかったな」とほっこりした気持ちになったと思う。そして、その後に到来した寒波とともにジワジワと寂しさが込み上げてきたのだろう。年が明けると投資家たちは、イエレンおばさんにさよならするように、こっそりドルを手放し始めた。

 

(一般の説)

米国金利が上昇し、日米実質金利差が開くのにドル安が進むという従来の法則と正反対の状況を、ちゃんと説明している人はいただろうか。寡聞のせいもあって、“一般的には”と表現できるような多数説、まとまりある説明はなかったように感じている。そうしたなか、僕が比較的多く接したのは、トランプ大減税が国債増発に起因する悪いインフレと金利上昇、経済減速を招くとの懸念を呼び、それがドル安を引き起こしているとする説だ。(米国経済見通しが明るい中でのこの説明なので、僕にはいまいちしっくりこなかった。)

 

状況2)そして、いよいよ先月最終週に米国株式市場が揺れ始める。想定外の暴落だ。

 

(僕の説)

その週は、トランプ大統領がダボス会議(1/26)や一般教書演説(1/31)で、米国経済や株価の好調を自分の手柄と宣伝するなか訪れた。本当の功労者でトランプ氏の虚栄心のためだけに交代させられた感のあるイエレン氏の、議長任期最後の週だった。そしてその正に最終日 2/2(金)、株価の大崩れが始まった。その一週間前(1/26)には史上最高値を更新していたのだから、投資家は最後の一週間にトランプ氏の演説を聞きながら、寂さを一気に募らせたのだろう。そして、ついにちょっと口うるさいけど優しいイエレンおばさんへの懐かしさに泣き崩れ、(ドルだけでなく)株の投げ売りを始めた。

 

(一般的な説)

最近の米国経済指標(の強さ)がインフレ期待の高まりや新体制FRBの早過ぎる利上げペースアップを連想させ米国金利急騰を招き、それが株の暴落を誘ったと考えられているようだ。直接の引き金は、2/2 に公表された雇用統計の賃金上昇率とされている。賃金上昇率は将来のインフレを占うものとして長い間上昇を期待され注目されてきた。しかし、年率2%前半程度の平凡な上昇が続いていた。それが2.9%へ急上昇したのだ。これを受けて2/2は金利も輪をかけて急騰した。

 

それぞれ、どちらが真実に近いかは、みなさんの判断に委ねる。(まあ、明らかだが…)

 

僕はめげずに我が道を行く。

投資家がイエレンおばさんを恋しがっているとすれば、この相場を建て直すのは、新議長のパウエル氏など今後FRBを司る最高幹部しかない。特にパウエル氏がイエレン氏に負けない手腕の持ち主であることを、自ら証明して不安を払拭して欲しいと期待が膨らむ。

 

パウエル氏は就任初日(2/5(月))朝から議長就任宣誓を行い、同時にビデオメッセージを公開した*1。しかし、2/5の相場は、上述の通り2/2以上に暴落した。下落率はありふれているが、下落幅としては1千ドルを超え、過去最大だそうだ。恐らくそのビデオメッセージに、イエレン・ロスを癒すような優しい響き、或いは、イエレン・ロスを吹き飛ばすような力強さに欠けていたのだろう。

 

今週後半には、何人かFRB幹部の講演が予定されているようだが、この下落を止められるだろうか。FRB議長にできなかったことが、他の幹部にできるだろうか。誰かイエレン・ロスを止められる人はいるだろうか。こう考えると、不安は収まらない。

 

 

しかし、ロスは突然終わる。

 

人間、泣き続けることには限界があるし、下を向き続けてもいられない。涙は枯れるし、首や肩も疲れて凝ってくれば、まっすぐ前を向かざるえなくなる。毎日日が昇るし、相場も立つ。企業業績は良いし経済は好調なのだから、どうして下げ続けられよう。

 

経済法則も理論も関係ない。元々は感情に端を発した下落なのだから、突然、それを忘れたかのように前向きになることもある。その後は、時々ロスを思い出して相場が揺れることもあるだろうが、一旦立ち直れば前より強くなるに違いない。(ただ問題は、その立ち直りがいつのことか、分からない。)

 

相場のことなので不確実性がつきまとうが、いずれまた株価が史上最高値を更新するようになるのは、想像できる。そして、米国株が立ち直れば日本株も立ち直る。

 

僕は、まだ株式投資を始めてない方々に投資を薦めたくてこれを書いた。果たしてこんなものが、そのきっかけの足しになるのか、我ながら極めて疑問だ。しかし、これが僕の率直な意見だ。即ち、今回の相場の崩れは、一次的な感傷によるものと思う。だから崩れは回復するに違いない。

 

そもそも、「市場価格は客観的だ」と主張して公正価値評価を多用するIFRSのブログに、こんな相場観を書いてよいものかと思う。「市場価格は感傷で決まるのか」とお叱りを受けそうだ。それでも僕は、イエレン議長の交代が3月末でなかったことに感謝せずにいられない。

 

 

追記

どうやら、上がり始めたようですね。

 

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*1 次の記事による。

パウエル氏、FRB議長に宣誓就任-意思疎通の改善に努力と表明 Bloomberg 2/6 無料

米FRB議長にパウエル氏就任 利上げペースに注目集まる NHK NEWS WEB 2/6 無料

 

 

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