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2018年2月

2018年2月22日 (木曜日)

594【投資】東京株式市場と春節休暇

2018/2/22

米国の株式市場(ダウ30種平均)は2/8(木)を底に6連騰、16日(金)には下落幅をほぼ半分回復した。一方、東京市場(日経平均)は前場(午前)に上昇しても、後場(午後)急落するパターンで下げ続け、アジアの春節休暇直前の14日(水)にようやく底を迎えた。

 

時差のため、外国人投資家は日本の午後に活発に取引するらしいが、春節休暇入りした15日(木)以降、後場急落パターンは見られなくなり、相場も反転上昇を始めた。また、東証一部の売買代金も、同日以降5千億円〜1兆円も減少し2兆円台に下がっている。

 

要するに東京市場は今回の下落局面で、外国人に翻弄されていたようだ。春節休暇最終日の昨日は、早めに仕事に戻った投資家がいたのか、午前上昇午後急落パターンが復活し、取引高も若干膨らんだ。しかし、下落には至らず、一昨日の終値より若干の上昇で取引を終了した。

 

こんな東京市場を見てみなさんはどう感じられるだろうか。「外国人に牛耳られて情けない。だから、株式投資はやりたくない」と思われる方も多いかもしれない。

 

 

前々回(592 財政再建と株式投資)記載した通り、株式市場は国家財政にとっても個人の資産形成にとっても極めて重要だ。株式相場は長期的に見れば右肩上がりなのだから、その株式市場を使って、政府が年金資産を上手に運用して国民の年金保険負担を減らしたり、日銀が将来のヘリコプター・マネーの財源を作って増税なしの財政再建を目指しても良いわけだし、個人の我々が資産形成に利用することになんの問題もない。

 

むしろ、利用できるのにしないとすれば、「なぜ?」ということにならないか?

 

僕が思うに、株式市場は資本主義経済の果実であり、この果実を食べないなら資本主義国に生きる意味はない。資本主義経済で生活しているのだから、政府も個人もその果実を最大限享受しない手はない。

 

ただ、そのためには冒頭に記載したような東京株式市場の現状を良い方向へ向けていく努力が望まれる。すなわち、もっと美味しい果実が実るよう土台となる樹木の育成・健康管理を図る必要があるように思う。

 

それが企業開示制度や会計制度、監査制度などだが、それだけではない。プロ・サッカーチームができても、それを関心を持って支える一般のサポーターがいなければ意味がないのと同じように、株式市場も参加者(=サポーター)が増えなければ育たないし健康でいられない。日本では株式投資を身近な生活手段と考える人の割合が低いが、終身雇用・年功序列型賃金体系が流行らない昨今、老後資金を確保する最も身近な手段は株式投資だと思う。しかし、現状では意外に果実を腐らせている可能性がある。

 

冒頭に記載したように、通りがかりの人が果実を盗んでいっても、みんなが関心を持たないと事件にもならない。株式市場はみんなの共有財産だから、みんなで見守る必要があると思う。そうすれば、通りがかりの人も勝手な振る舞いはできなくなるだろう。

 

日本は資本取引が自由化されている国だから、外国人投資家が東京市場で株式取引することは事件でもなんでもない。ただ、日本人の投資家が存在感を高め相場形成を主導しないと、冒頭のように売り崩されて、せっかく実った果実を腐らせてしまう。そこで、東京市場で日本の投資家の売買高がもっと増えれば、外国人投資家が相場に影響を与えるのが難しくなり、それでも無茶する人には相応の報いが与えられるようになるのではないかと思う。即ち、無茶な取引に対する報酬が下がり、コストが上昇するので、今より大きなリスクを負うようになる。

 

 

それでは、そうなるまで株式投資はやらないでおくか。いや、現状でも悪くない、十分美味しい実がなる市場になっている。僕の経験を紹介しよう。

 

ところで、誤解しないでいただきたいことがある。僕は投資指南をする気は全くない。というか、したくてもできない。僕自身、「買えば下がるし、売れば上がる」苦杯を舐め続けている投資不適合者だからだ。唯一言えるのは「短期売買には暇と特別な才能が必要だが、長期投資には人生経験・社会経験があれば良い」ということぐらい。

 

言い換えると、短期売買ができる人はサッカーのスター・プレイヤーのようなもので、特別な努力と才能が要求されるが、一般市民の我々はそのプレーを見物して楽しんでいれば良い(ときには贔屓チームの成績不振に苦しむこともあるが、笑顔を絶やさず耐えることだ)。そうしていると、(株式市場は基本的・長期的に右肩上がりなので)自然に懐が温まっているというわけだ。

 

楽しむためには、どんなプレーが良いプレーで、何が反則かぐらいは知っておく必要がある。プレイブックを読む必要はないが、ゲーム観戦ぐらいはした方が良い。そのためのお勧めは、個別銘柄ではなく、インデックス・ファンド等*1 の購入。これで株式市場と喜怒哀楽を共にできる。自然と投資に関心が向くようになるだろう。関心が向けば知識も深まる。

 

あまり多額の資金を振り向けることはお勧めしないが、いまのように相場が下落したときにヒヤヒヤするぐらいの金額ではあってほしい。その方が刺激があって学びも大きいからだ。

 

もし、自分の冷静さに自信がある方は多めの投資額でも良いが、日経平均が1000円下がったら我慢できずに売ってしまいそうな人は、少なめにした方が良い。冷静な人は長期投資ができ報われる人だが、我慢できない人は何度も痛い目にあって勉強代を払うことになる人なので、学び終わるまで投資額は少なめに抑えておいた方が良い。ちなみに僕は後者のタイプだ。ただ、今回の下落局面では売る衝動を抑えることに成功している。今のところだが。

 

投資を面白いと感じた方は個別銘柄の購入へ進んでも良いが、別に進まなくても良い。個別銘柄へ進む前に、業種別や地域別、或いは、人工知能関連やロボット関連といったテーマごとのファンドへ進むのも良い。というのは、個別銘柄は選定が難しいし値動きが激しくて売り時が難しい。ハードルが高いと思うからだ。

 

ちなみに僕は個別銘柄を持っているが、その運用成績が日経平均を上回った年は僅かだ。分析すると、下落時にビビって売却額を膨らませたときが悪い。例えば、2016年は最悪だった。年初にChinaショック、6月にBrexitショック、11月にTrumpショックと3回も急落局面があり、そのうち2回で対応に失敗し散々だった。もし、インデックス・ファンドを購入し持ち続けられていたら、全然成績が良かったのだ。要するに、メンタルが強ければインデックス・ファンドでも十分な成果が残せたはずだ。メンタルは、おそらく人生経験や社会経験で磨かれる。僕は? (TT)

 

そんな僕でも、2016年を除いた各年の運用成績は定期預金より断然良い。まあ、2012年や2013年はアベノミクスで株価が高騰したラッキーな期間なので、その2年間を除いて悪夢のような2016年を含めても、やはり、限りなく利息ゼロの定期預金より遥かに良い。(日経平均は2013年末の16,291円から6千円近く上昇しているので当然のことだ。)

 

さて、ここで改めて考えてみたい。人生経験や社会経験とはなんだろうか? 僕は、苦しみを楽しみに変える能力ではないかと思う。

 

みなさんも投資を始めると多くの方は、買うと下落し、売るとそのあと値上がりする、即ち、含み損を抱えたり機会損失を被る経験をすると思う。そんな時にめげない力こそが重要なのだ。「上手いことやってやろう」などと思わない方が良い。

 

何か特殊な知識や能力があればそれに越したことはないのだろうが、少なくとも僕にはそれがなかった。会計士・監査人として身につけたものが役立った記憶はない。むしろ、それらは根拠のない自信となって損失に消えていった気がする。

 

要するに、インデックス・ファンドを購入してそれを持ち続ける、相場が大きく下落したときは売るのではなく買い増す(投資予算を一度に使い切らないこと)といった単純な戦略の方が、上手いことになるのだ。苦しいときに諦めずもう一踏ん張りすると良い結果につながる。それを信じられれば苦しみも楽しみになる。まさに人生だ。

 

もちろん、朝鮮半島で戦争が始まるとか、大陸ですごいことがありそうだ、といったときは売った方が良いだろうが、リーマン・ショックのときでさえ米国の株式市場は1〜2年で回復した。日本市場だって当時の最悪期の3倍近くに上昇している。人生のように長い期間を想定すれば、株式投資は単純で優しいものに思えてくる。(それでも修行の足りない僕は、相場が下落すると不安に駆られるが。)

 

 

さて、今日はいよいよ春節休暇が終わり、外国人投資家が戻ってくる。この間、日経平均は800円ほど上昇したので、空売りを仕掛けていた外国人投資家は含み損を抱えているだろう。慌てて買いに走るか、或いは、もう一度売りで仕掛けてくるか。相場が荒れるかもしれない。結構ドキドキする。しかし、悪いことではない。こうして生まれる日々の感情や苦楽は、長い目で見れば僕の人生の資産の蓄積として積み上がっていくのだから。

 

付け足し

もちろん、信用取引には手を出していない。

 

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*1 インデックス・ファンド等

日経平均やトピックスなどに連動する投資信託や、日経平均やトピックスに連動するETFをイメージしている。

投資信託は各取引日ごとの評価額である基準価格でしか取引できないので、1日1回の取引となる。一方、ETFとは上場投資信託のことで、株と同じように市場が開いている時間ならいつでも売買できるファンドのこと。

 

2018年2月 7日 (水曜日)

593【投資】ちょっと寄り道〜イエレン・ロス

2018/2/7

FRB(米国の中央銀行)議長のジャネット・イエレン氏が先週末(2/2、1月最終週)をもって退任した。新しい議長はジェローム・パウエル氏だ。そのタイミングで米国株式市場は大きく動揺した。良好な経済状態と経済見通しの中で驚きの株価下落だ。

 

僕は、これをイエレン・ロスだと思っている。世界の投資家は、世話好きでちょっとおしゃべりの近所のおばさんのように優しく親しみやすいイエレン氏をとても好きなのだと思う。そのイエレン氏が退任するので、投資家は寂しくて仕方がないのだ。この相場は経済理論が役立たないので多くの専門家が頭を抱えているが、僕はそういう“感情”が相場を動かしていると思う。経済法則や理論ではなく“感情”で整理すると、次のようになる。

 

状況1)先月からドル安(&円高)が際立っている。謎のドル安だ。

昨年夏前から欧州経済好転の見通しからユーロが対ドルも含めて上昇していたが、ドルと円の関係では大きな変動がなかった。しかし、年明けぐらいから金利・経済指標からは想定されない、円を含む多くの通貨に対してドル安が進んだ。

 

(僕の説)

恐らく、昨年12月にイエレン氏が任期最後となる利上げをみんなの期待通りに行った時、投資家は「イエレンおばさんは最後まで優しかったな」とほっこりした気持ちになったと思う。そして、その後に到来した寒波とともにジワジワと寂しさが込み上げてきたのだろう。年が明けると投資家たちは、イエレンおばさんにさよならするように、こっそりドルを手放し始めた。

 

(一般の説)

米国金利が上昇し、日米実質金利差が開くのにドル安が進むという従来の法則と正反対の状況を、ちゃんと説明している人はいただろうか。寡聞のせいもあって、“一般的には”と表現できるような多数説、まとまりある説明はなかったように感じている。そうしたなか、僕が比較的多く接したのは、トランプ大減税が国債増発に起因する悪いインフレと金利上昇、経済減速を招くとの懸念を呼び、それがドル安を引き起こしているとする説だ。(米国経済見通しが明るい中でのこの説明なので、僕にはいまいちしっくりこなかった。)

 

状況2)そして、いよいよ先月最終週に米国株式市場が揺れ始める。想定外の暴落だ。

 

(僕の説)

その週は、トランプ大統領がダボス会議(1/26)や一般教書演説(1/31)で、米国経済や株価の好調を自分の手柄と宣伝するなか訪れた。本当の功労者でトランプ氏の虚栄心のためだけに交代させられた感のあるイエレン氏の、議長任期最後の週だった。そしてその正に最終日 2/2(金)、株価の大崩れが始まった。その一週間前(1/26)には史上最高値を更新していたのだから、投資家は最後の一週間にトランプ氏の演説を聞きながら、寂さを一気に募らせたのだろう。そして、ついにちょっと口うるさいけど優しいイエレンおばさんへの懐かしさに泣き崩れ、(ドルだけでなく)株の投げ売りを始めた。

 

(一般的な説)

最近の米国経済指標(の強さ)がインフレ期待の高まりや新体制FRBの早過ぎる利上げペースアップを連想させ米国金利急騰を招き、それが株の暴落を誘ったと考えられているようだ。直接の引き金は、2/2 に公表された雇用統計の賃金上昇率とされている。賃金上昇率は将来のインフレを占うものとして長い間上昇を期待され注目されてきた。しかし、年率2%前半程度の平凡な上昇が続いていた。それが2.9%へ急上昇したのだ。これを受けて2/2は金利も輪をかけて急騰した。

 

それぞれ、どちらが真実に近いかは、みなさんの判断に委ねる。(まあ、明らかだが…)

 

僕はめげずに我が道を行く。

投資家がイエレンおばさんを恋しがっているとすれば、この相場を建て直すのは、新議長のパウエル氏など今後FRBを司る最高幹部しかない。特にパウエル氏がイエレン氏に負けない手腕の持ち主であることを、自ら証明して不安を払拭して欲しいと期待が膨らむ。

 

パウエル氏は就任初日(2/5(月))朝から議長就任宣誓を行い、同時にビデオメッセージを公開した*1。しかし、2/5の相場は、上述の通り2/2以上に暴落した。下落率はありふれているが、下落幅としては1千ドルを超え、過去最大だそうだ。恐らくそのビデオメッセージに、イエレン・ロスを癒すような優しい響き、或いは、イエレン・ロスを吹き飛ばすような力強さに欠けていたのだろう。

 

今週後半には、何人かFRB幹部の講演が予定されているようだが、この下落を止められるだろうか。FRB議長にできなかったことが、他の幹部にできるだろうか。誰かイエレン・ロスを止められる人はいるだろうか。こう考えると、不安は収まらない。

 

 

しかし、ロスは突然終わる。

 

人間、泣き続けることには限界があるし、下を向き続けてもいられない。涙は枯れるし、首や肩も疲れて凝ってくれば、まっすぐ前を向かざるえなくなる。毎日日が昇るし、相場も立つ。企業業績は良いし経済は好調なのだから、どうして下げ続けられよう。

 

経済法則も理論も関係ない。元々は感情に端を発した下落なのだから、突然、それを忘れたかのように前向きになることもある。その後は、時々ロスを思い出して相場が揺れることもあるだろうが、一旦立ち直れば前より強くなるに違いない。(ただ問題は、その立ち直りがいつのことか、分からない。)

 

相場のことなので不確実性がつきまとうが、いずれまた株価が史上最高値を更新するようになるのは、想像できる。そして、米国株が立ち直れば日本株も立ち直る。

 

僕は、まだ株式投資を始めてない方々に投資を薦めたくてこれを書いた。果たしてこんなものが、そのきっかけの足しになるのか、我ながら極めて疑問だ。しかし、これが僕の率直な意見だ。即ち、今回の相場の崩れは、一次的な感傷によるものと思う。だから崩れは回復するに違いない。

 

そもそも、「市場価格は客観的だ」と主張して公正価値評価を多用するIFRSのブログに、こんな相場観を書いてよいものかと思う。「市場価格は感傷で決まるのか」とお叱りを受けそうだ。それでも僕は、イエレン議長の交代が3月末でなかったことに感謝せずにいられない。

 

 

追記

どうやら、上がり始めたようですね。

 

🍁ー・ー🍁ー・ー🍁ー・ー🍁ー・ー🍁ー・ー🍁ー・ー🍁ー・ー🍁ー・ー

*1 次の記事による。

パウエル氏、FRB議長に宣誓就任-意思疎通の改善に努力と表明 Bloomberg 2/6 無料

米FRB議長にパウエル氏就任 利上げペースに注目集まる NHK NEWS WEB 2/6 無料

 

 

2018年2月 6日 (火曜日)

592【投資】財政再建と株式投資

 

2018/2/6

今年はまた消費増税が議論される。すでにタバコ税や有価証券譲渡税を増税する話題も出ている。だが、安倍首相は消費税に関して「増税するか否か」ではなく、どう増税するか(=どのように経済環境を整えるか)を議論するつもりのようだ*1

 

さて、財政再建のために増税は不可避と言われることが多いが、本当にそうだろうか。僕はテレビなどでしたり顔で解説する“専門家”にちょっと疑念を抱いている。以前から同じようなことを書いているが、今回は株式投資と絡めて、改めて書かせてもらいたい。

 

山はバリ島や草津白根山で噴火し、月は不気味にスーパー(でかい)・ブルー(2回/月)・ブラッド(月蝕)の3拍子が揃い、株はリーマンショック以来の下げ幅(米DJI)を記録する騒ぎとなっている。2018年は小室哲哉氏が引退したり、仮想通貨が盗まれたりするだけではない、騒がしい年になりそうだ。でもそんな時に投資のチャンスはやってくる。

 

投資開始のチャンスとは次の2条件、即ち、これ以上下がらず、この先上昇を見込めるという条件を満たした時だ。これ以上下がらないかどうかは僕にはよく分からない。もっと下がるかもしれない。でも、この先上昇することは見込める。

 

というか、もしこの先、株が上昇しないようであれば、僕もみなさんも、そして世界中の多くの人々が、この先まともに生活できないことになる。それこそ想像できない。いや、核戦争にでもなればそういうことになるが、みんなでそうならないよう頑張って、それでもそうなってしまったら、もうしょうがない。もう、投資どころの話ではない。それにそうなれば、国債保有者や債権者が誰かもわからなくなっているに違いないし、政府の財政などどうでも良い話になっているだろう。要するに、株価が継続的に上昇しないケースとは、それほど極論であり、それを想像してもしょうがないのだ。(その時はみんなでどうしたら自給自足できるか相談しましょう。)

 

実は、我々が思う以上に株価は底堅い。下がってもいつかは上がる。基本的に右肩上がりなのだ*2。そして重要なのは次の2点だ。

 

  1. 株が上がると国の財政にとても良い影響がある。増税よりはるかに。

 

  1. 株価上昇には我々一人ひとりが関われる。我々は無力ではない。

 

まず、Aから。

 

みなさんの中には、株は民間経済のものであり、国の財政には関係ないと思われる方もいらっしゃるかもしれない。しかし、少なくとも国民年金は一部株式運用されているし、日銀は金融緩和策の一環として上場投資信託(=ETF)を買い続けている。両者を合わせると(日本株だけで)数十兆。国民年金の運用資産が増加すると、現役世代・将来世代の国民年金保険料負担が楽になるし、日銀の運用資産が増加すると後で述べる国債棒引き、いわゆるヘリコプター・マネーの財源になりえる。

 

ということは、株価が上昇すると国民の年金負担や国の借金返済が楽になる。それに株価が上がるということは、企業業績が好調で経済活動が活発ということだから、法人税も所得税も、有価証券譲渡益課税額やその他様々な税収が増える。

 

ところが、増税すると、例えば消費税が3%上がると数年から20年ぐらい経済が拡大しないとか、デフレになるなどの副作用で、結局、税収が減少することが起こりえる。実際に消費税を5%にあげた後の副作用は、そのタイミングの悪さもあってきつかった。いわゆる“失われた20年”となった。

 

一部の経済学者は、日本国債を返済不要で無利子の永久債に転換するよう提言している(=ヘリコプター・マネー)。一部のといっても極右・極左のような人々ではなく、英国や米国の金融行政や中央銀行の最高幹部といった大物たちだ*3

 

ただ、無利子の永久債へ転換すると、保有している日銀のB/Sの資産に多額の損失が発生する。約400兆円もだ。

 

一方、同じ永久債でも有利子だと金利負担はあるが、その代わり時価評価することで多額の損失を回避することができる。ただ、金利負担は永遠になくならない。例えば、1千兆円の借金の利払いは金利1%ごとに10兆円だから、いずれ市場金利が上昇すると国の一般会計は毎年大変な負担を強いられることになる。少しでも元本が少ない方が良い。

 

そこで日銀保有株の時価評価益を利用するのだ。株価が上がれば上がるほど、たくさん元本を減らすことができる。まあ、数十兆の株の評価益では、1千兆円の借金のほんの一部しか消せないが…。

 

とはいえ、(増税なしの)株価上昇だけで、年金や国債負担の軽減、税収増加が実現できれば、どれほど社会が明るくなるだろう。きっと素晴らしいに違いない。いや、実は大したことないかもしれない。というのは過去5年ほどを振り返ってみれば良い。この間、株価は約2倍に値上がりしたが、“実感なき景気拡大”と言われてきた。(但し、この間に消費税2%増税や社会保険料負担の増加があって、我々の幸福感を引き下げた。これらがなければもっと幸せを感じられたかもしれない。)

 

 

“継続は力なり”という。僕は会計における「継続性の原則」への盲信には懐疑的だが、株価上昇基調の継続は、確かに大きな力になると思う。“大きな力”とは我々が景気拡大を実感することだ。もっと長期間株価の上昇が続けば、続けさせることができれば、いずれは我々の生活感を大きく変えられると思う。もちろん、良い方向へ。

 

そこに上記のBの話がつながる。株価の上昇は、我々の手の届かないところで勝手に行われている話ではなく、我々は微力ながら、そこに関われる可能性がある。1つは企業業績向上へ関わる形で、もう一つは株式取引に参加し資産として株を保有するという形で。

 

ということで、ここから後半戦が始まるのだが、久しぶりに書いているせいかどうもペースが上がらない。今回の株価下落をチャンスにして株式投資による資産運用を多くのみなさんに薦めたいのだが、そこまで至ることができなかった。(ということで、これには続編がある。だが、まだ投資を始めてない方は今こそ真面目に考えた方が良いと思う。)

 

でもみなさん、僕は給料と年金だけで100歳まで経済的に不自由なく生活できる人は幸運な人だと思う。“幸運な人”とは普通の人ではない人のことだから、もしみなさんが、「自分は普通」と思うなら、給料と年金以外の糧が必要ではないだろうか。僕はそう思って投資を始めた。

 

別に普通であることを卑下することはない。普通の人とは、自力で自分の人生を全うする誇り高い人のことだ(自分で言うのも恥ずかしいが)。ただ、我々日本人は、特にバブル崩壊を知る世代は、株式投資に悪いイメージを持ち過ぎている。今、それを乗り越える必要があると思う。それがのちの世代のためになるし、何より、自分の人生を誇り高く生きることにつながるように思う。

 

ちなみに、証券口座を開くには恐らく数日かかると思う。今回の下落はそんなに簡単に反転しそうにない。現在株を持っている方々には悪いニュースだが、十分間に合いそうだ。(T T)

 

🍁ー・ー🍁ー・ー🍁ー・ー🍁ー・ー🍁ー・ー🍁ー・ー🍁ー・ー🍁ー・ー

*1 次の記事による。

 

首相「消費増税への状況つくる」 衆院予算委 日経電子版 2/5 無料

 

*2 確かに、日本の1990年前後のいわゆるバブル時代の株価は異常に高かった。それが頭にあるので、つい株価の基調が右肩上がりであることを疑ってしまう。しかし、世界の株式市場はつい最近までほとんど史上最高値を更新しているので、右肩上がりになっている。日本のあの時代は極めて例外的であったと考えるべきだと思う。

 

*3 具体的に無利子の永久債への転換を主張しているのはアデア・ターナー英金融サービス機構(FSA)元長官。ベン・バーナンキ元米FRB議長もヘリマネを主張。

 

特集:ヘリコプターマネーの正体 2016年8月2日号
週間エコノミスト
2016/8/2 無料

 

ちなみにアデア・ターナー氏は、日銀の現在の国債購入は、すでに実質的な無利子・永久債への転換だと指摘し、それを国民にはっきり明示するよう提案している。国民は、政府が国債発行で財政支出を増やしてもいずれ増税で吸い上げられると予測し、消費などの経済活動を高めない状況に陥っている。そこから脱するには、(一部の)国債の返済が不要であることをはっきり知らせることが重要と指摘している。この主張は2018年の現在も変わっていない。

 

視点:マネタリーファイナンスはなぜ日本に必要か=アデア・ターナー氏
REUTERS
2018/1/10 無料

 

もちろん、ヘリマネには副作用があると批判されている。財政規律が緩んでいずれ財政破綻に至るとされている。このため、国債全額を棒引きするようなヘリマネ政策を実行すれば日本政府の信用、即ち、円の価値が暴落する可能性が考えられる。したがって、上述したように日銀の資産の範囲でやるのが現実的ではないかと僕は思っている。素人の意見だが。

 

 

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