(C08)有形固定資産
2014/9/11
産業革命(18世紀後半から19世紀前半)は会計にも革命を起こしたようです。具体的には減価償却という考え方・会計技術の誕生です。産業革命によって生産手段などとして固定資産の重要性が増し、減価償却なしには損益計算ができない状況になって行ったようです(以上、監査法人トーマツのホームページより)。
減価償却は古いテーマであり、問題が殆ど解決された、いわゆる“枯れた領域”と思われるかもしれませんが、日本に限ってはそうではありません。なぜなら、日本は法人税法の縛りが強く(=確定決算主義)、企業が自主的に耐用年数を決定しづらい状況がずっと続いてきたからです。その結果、日本企業の多くは、減価償却は税法の規定に照らして行うものだと考えているし、耐用年数は税法の耐用年数表で機械的に決まるものと考えています。
税法は、建物の構造や材質、設備や機械の種類ごとに一律の耐用年数を決めています。その結果、物理的な使用可能性や平均的な使用期間が耐用年数の設定に大きな影響を与えているように思われます。しかし、固定資産の耐用年数は本来、企業の事業戦略によって決まるものです。同じ種類の設備であっても、企業が採用する事業戦略によって使用期間は変わってくるはずです。したがって、企業ごとに異なる耐用年数を設定することはむしろ自然で、現在のように全国の企業が一律に同じ耐用年数を設定するのは異常です。
税法で耐用年数が15年と決められている。だから15年は使わなければ、とか、15年で回収できるよう事業計画を立てようと思いがちですが、果たしてこのような発想は正しいでしょうか。事業や製品のライフサイクルは、顧客や市場が決めるものですね。まさに本末転倒という気がします。そこに齟齬があると経営に良い影響はありません。かつてマイケル・ポーターは「日本企業に戦略がない」と指摘したそうですが、このようなことも遠因かもしれません。
ここでは、主としてそのような税法と会計の齟齬がテーマになった記事を集めています。IFRSはグローバル・スタンダードですから、日本特有のこのような問題が浮き彫りになります。なお、減損については別のページ(C01 減損会計)に記事を集めていますので、そちらもご覧ください。
226.【製造業】再評価モデルの存在意義~社会背景と会計処理
238.【製造業】減価償却単位を決める重要性(ゴールラインをえぐるドリブル)
245.【製造業】減損戻入~固定資産台帳の修正を最小に!(ラスト・パス)
247.【製造業】「減損はビジネス評価」と問題点の B、D、E
248.【製造業】減損損失累計額を動かさないことで生じるマイナスの減価償却費
252.【製造業】減損後の減価償却方法~IASB公開草案「減価償却及び償却の許容される方法の明確化」の観点から
256.【製造業】減損戻入シリーズのFinal Answer 2013/6/15
260.【製造業】最後のテーマ;投資家のためじゃない会計 2013/6/25
372.CF-DP55)純損益とOCI~一時的な再測定“再評価モデルの評価益” 2014/6/24
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