(C09)リース

 

2015/5/6

リース会計は、僕が会計士になった1989年当時にはすでに問題視されていました。当時は、借手はリース料を発生主義で費用処理するだけの単純な処理で資産計上もされていませんでした。貸手がリース資産を資産計上し、受取リース料を発生主義で収益計上していました。しかし、借手にとっては、購入したのと実態が変わらないのにオフバランスになっている点が、貸手にとっては、事業活動の実態に遅れて収益計上されるので、業績が分からない点が問題でした。

 

その後、日本のリース会計基準は国際的なレベルのものが1994年に企業会計審議会から公表されました。ファイナンス・リースについては借手が資産計上しそれを減価償却する方法へ、貸手は売却処理し、リース資産に代わってリース料の受取債権が資産計上されるようになりました。ファイナンス・リース以外のリースはオペレーティング・リースと呼ばれ、従来通りの処理が継続されました。

 

しかし、ほどなく、そのオペレーティング・リースについても、資産計上すべきものがあるのではないかと問題視されるようになりました。これは厄介です。というのは、資産とは何か、という幅広い基本的な問題、資産の定義に関わる問題だからです。

 

ファイナンス・リースを資産計上する改正は、ファイナンス・リースの実態は資産購入と変わらない、ただ、資金調達手段が借入に類似した「リース」なだけ、と考えたので、資産の定義を考慮する必要はありませんでした。しかし、オペレーティング・リースは単なる賃貸借取引です。それでも借手に資産計上させようとすると、借手にとっては、「借り物を自分の資産」と言うようなものです。明らかに健全な社会通念とは異なりますね。貸手も、貸しただけなのに資産が貸借対照表から切り離される(=自分の資産ではなくなる)のはおかしい、ということになります。

 

一方で、財務報告を受ける立場からは、損益計算書に示される業績が、どのような経営資源によって生み出されたのか把握したいが、貸借対照表を見ても分からないという声が上がります。重要な経営資源が漏れている(=オフ・バランスになっている)のではないか、というのです。これは財務報告・財務諸表の有用性を疑う、より根本的な批判です。資産を、法的な所有権で単純に考えていては、解決できない問題です。

 

資産の定義については、既に「概念フレームワーク」と呼ばれる文書の中で、上述の経営資源の考え方に沿って示されています。あとは、個々の会計規準にそれを反映させることになります。

 

リース会計規準については、IASBから、1年を超えるオペレーティング・リースについても借手が資産計上するような、新しいリース会計基準の2回目の公開草案が、2013年に公表されました。さて、この公開草案は、上記のような問題をどのように解決しているのでしょうか。

 

262.テーマ選び~IASBの基準開発状況 2013/7/2

263.【リースED'13】規準改正の“肝” 2013/7/4

265.【リースED】リース取引とは 2013/7/9

266.【リースED】オペレーティング・リースの問題 2013/7/12

268.【リースED】因数分解で括りだした「使用権」 2013/7/18

271.【リースED】リースの識別の取っ手 2013/7/25

272.【リースED】リース契約のイメージを変える 2013/7/27

273.【リースED】供給者の入替権 2013/7/31

274.【リースED】対象資産の物理的な区別 2013/8/1

275.【リース】リースの目的と消費税率(閑話) 2013/8/6

276.【リースED】資産の使用を支配する権利 2013/8/9

278.【リースED】契約の構成部分の区別 2013/8/14

279.【リースED】リース期間~a period of time 2013/8/19

280.【リースED】リース期間を決定する 2013/8/21

281.【リースED】野球タイプの合理性 2013/8/27

282.【リースED】リース期間とサッカーの試合時間 2013/8/29

284.【リースED】リース取引の識別のまとめ~庸車取引、外注加工取引 2013/9/4

285.【リースED】リースを分類する理由はP/Lにあり 2013/9/6 <変更若しくは取下げ>

287.【リースED】リースの分類方法⇒訂正あり! 2013/9/10 <変更若しくは取下げ>

288.【リースED】消費の原則と、“重大ではない”=“ささいな” 2013/9/13 <変更若しくは取下げ>

289.【リースED】“タイプB”への反対意見(代替的見解)⇒訂正あり! 2013/9/17 <変更若しくは取下げ>

290.【リースED】会計処理の概要 2013/9/19 <変更若しくは取下げ>

292.【リースED】貸主の会計処理-大家さんの経営戦略の適切な表現 2013/9/26 <変更若しくは取下げ>

293.【リースED】貸手の会計処理ータイプAに自由なし 2013/9/27

294.【リースED】ゴルフの反省とこのシリーズのまとめ 2013/10/1 <変更若しくは取下げ>

 

オペレーティング・リースの会計処理の改善を、実務に受け入れ可能な状況にどう落とし込むか。IASBは相当難儀しているようです。上記の2回目の公開草案に対するコメントを受けて、IASBとFASBはさらに検討を続けています。

 

361.【リースED】基準改定の途中経過~2014年3月の暫定決定 2014/5/6

上記の285以降の記事の内容は、この暫定決定ですでに、変更・取下げされることが確実、若しくは、その可能性が高まっています。

 

445.【リース'15/2】新基準、今年中にリリースの予定 2015/2/26

447.【リース'15/2】リースの定義 2015/3/3

448.【リース'15/2】日本基準との相違 2015/3/5

449.【リース'15/2】'13EDからの変化~定義、入替権 2015/3/10

451.【リース'15/2】'13EDからの変化~使用の支配(control the use) 2015/3/17

452.【リース'15/2】'13EDからの変化~契約におけるリース構成部分の区分(重要性) 2015/3/19

454.【リース'15/2】'13EDからの変化~設例)ショッピングセンターと空港施設 2015/3/24

455.【リース'15/2】'13EDからの変化~設例)冷蔵トラックとオイル・タンカー(“重要性”について再考) 2015/3/26

456.【リース'15/2】'13EDからの変化~設例)外注取引と通信契約(ファブレス企業はファブレス) 2015/3/31

 

 

 

Top Pageへ戻る http://puta2nd.cocolog-nifty.com/ifrs/top-page.html

 

2023年6月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30  
無料ブログはココログ