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2011年12月 5日 (月曜日)

IFRSの資産~償却資産と減損2

今回は、固定資産の減損会計について日本基準とIFRSの相違点を概観し、IFRSの資産観を探り出すことがテーマだ。

IFRSはB/S中心主義で、そのB/Sは金融商品のように公正価値評価中心の資産と償却資産(固定資産)のように取得原価をベースに簿価を決定する資産があり、その両者を結びつけているのは、将来キャッシュフローをベースとする「減損」であることを見てきた。したがって「減損」にこそ、IFRSの資産観が色濃く出ているはずだ。

 

(日本基準とIFRSの主な相違点)

10/7の記事にも概略を記載したが、僕が注目しているのは次の点だ。

 日本基準は3ステップ、IFRSは2ステップ

 減損の兆候では、日本基準は実績の悪化、IFRSは予算に対する実績の悪化

 減損損失の戻入は、日本基準は禁止、IFRSは必要(但し、のれんはダメ)

 

 日本基準は3ステップ、IFRSは2ステップ

日本基準の減損処理は、兆候・認識・測定の3ステップがある。すべての資産に減損テストを行うのではなく、兆候がある資産に対してのみ減損テストをする。よって、まず減損の兆候があるかどうかのステップがあるわけだ。兆候があると判定されたものは認識のステップへ進む。認識のステップでは割引前の将来キャッシュフローと資産の帳簿価額を比較し、資産の帳簿価額を上回る割引前将来キャッシュフローが期待できればOKだが、期待できなければ次の測定のステップへ進む。測定のステップでは割引後将来キャッシュフロー(即ち、現在価値)を見積もり、減損損失金額を算定し、伝票を起票する。

 

一方IFRSには、日本基準でいう認識のステップがない。ないというか、兆候のステップに実質的に取込まれていると考えて良いと思う。というのは次の②に関連するが、兆候のステップでIFRSが減損の兆候として例示している「予算に対する実績の著しい悪化」における「予算」は、その資産(投資)を回収する投資回収計画とリンクしているからだ。投資回収計画は将来キャッシュフローの見積もりとそう大きな違いはなさそうだ。したがって、予算比で著しい悪化をしているかを見ることで、日本基準の認識のステップもやっていることになる。

 

一方IFRSは、設備投資の意思決定時に投資の効果を試算するだけでなく、投資後も投資回収の状況をフォローすることを想定している。手間はかかるが、資産は金を生むものという資産の定義と一直線に合致している。

 

 減損の兆候では、日本基準は実績の赤字、IFRSは予算に対する実績の悪化

上述した通り、IFRSは、予算に対する実績の著しい悪化を減損の兆候の例に挙げている。ところが、日本基準のそれに当たる部分は「継続して赤字」となっている。日本基準は実務の手間を考慮して、実績の推移だけで兆候の判定ができるように工夫をした。そのために赤字が1年目であれば兆候に当たらないと判断できることになった。

 

一方IFRSは予算に対する実績の著しい悪化を例示しているので、悪化したその年度に兆候に当たってしまうことになる。したがって日本基準より猶予はない。

(ただ、使用価値算定の規程では、未決定のリストラや追加の改善・拡張投資の効果を見込んではいけないとしているが、オペレーションの改善効果については触れていない。悪化の原因がオペレーションの改善で除去でき、その改善策の実行可能性が高ければ、その改善効果を見込んだ将来キャッシュフローで簿価を回収できる限り、「著しい」とは判断しないのであろう。だが、これには予実差異分析をタイムリーに行っている必要がある。決算時に慌てて考えても改善策の実現可能性を評価できない。)

 

 減損損失の戻入は、日本基準は禁止、IFRSは必要(但し、のれんはダメ)

日本基準では一旦資産を減損すると、さらなる減損を計上する場合以外はその資産は放置されるが。一方IFRSでは、減損損失の原因が改善されていないか、逆サイドの兆候の有無のチェックが毎期必要で、兆候がある場合は回収可能金額を算定し、取得原価主義の範囲で戻入を行わなければならない。リストラや機能改善投資も、実際に実行されれば逆サイドの兆候となり、その改善効果は回収可能価額の算定に含められる。

 

これも面倒といえば面倒だが、減損の兆候のチェック項目と、この逆サイドの兆候のチェック項目はちょうどパラレルとなるため、両者を一緒にチェックすれば手間は大差ないだろう。だが、その効果は大きい。改善すれば改善によってなされたコスト削減や収益増加に加え、減損の戻入益も計上されるのだから。これを業績が変動すると嫌う人もいるだろうが、積極的に改善へ取組む誘因になる。

 

資産の定義との関係を考えると、これもストレートに合致する。日本基準では改善されるとある種の含み資産が生じることになる。保守的でよいとする考え方も捨てがたいが、資産の定義との関係ではIFRSの方が素直だろう。

 

以上をまとめると、IFRSは減損損失をより早期に計上し含み損を許さないし、含み益さえも許容せず、将来キャッシュフローと資産がストレートにリンクしている。資産は金を生むかどうかの観点からチェックされ続け、放置されることはない。「金を生むものが資産」という資産観は、単に会計基準の中の話ではなく、会計実務に携わらない一般従業員の方すべてにとって分りやすいし、日常業務の中でも大切な感覚なのではないだろうか。

 

さて、日本基準とIFRSの相違点は他にもある。例えば減損の兆候を示す例示としてIFRSには日本基準にない「時価総額が純資産額を下回る場合」というものがある。これはマーケットが、その企業の資産に含み損が生じている可能性を示したものかもしれないが、面白い考え方だ。これらについては、また個別基準として減損基準を検討する際に触れたいと思う。

2011年11月30日 (水曜日)

IFRSの資産~償却資産と減損1

果たして売掛金と償却資産(固定資産)は減損でつながっているのだろうか。

最初から種明かしをすると、ご存じのとおり日本でも固定資産には減損会計が適用されているし、IFRSも同じだ。そして実はIFRSでは貸倒引当金、貸倒損失のことも「減損」と表現されている。さて、両者はたまたま名前が同じなのか、それとも関連があるのか。もちろん後者だ。(IFRSには金融商品に関連して「償却原価」という言葉もある。)

もう一つ、固定資産の減損会計は日本基準とIFRSで相違する部分があるが、その底流にある考え方の違いはなんだろうか。ここに資産に対するIFRSのスタンスが見えてくる(これは後日)。

 

(売掛金と減損)

ご存知の方も多いと思うが、現在IASBはリーマンショックの反省から金融商品の会計基準であるIAS39号を改定し、金融資産の分類及び測定、金融負債の分類及び測定、金融商品の認識の中止、減損、および、ヘッジ会計に分割して改定プロジェクトを進めている。このうち金融資産の分類及び測定に係る基準(IFRS9号)はすでに確定しているが、減損を含めあとのものは、よりシンプルな分かりやすいものにするためにまだ改定作業中だ。

 

このような事情もあって、償却原価および減損については特徴について大雑把な説明をする。

 償却原価で金額を測定する資産に減損を適用する。両者はセット。

 償却原価は、市場性があるなど売買によって換金でき公正価値評価される資産以外の金融資産に対し適用される。

 よって減損は、公正価値で評価されない金融資産に適用される。

上記、①~③も随分ラフな説明だと思うが、それでも面倒だと思う方は、取得した時点で誰からCashを回収するかを契約によって特定できるような金融資産は減損が適用される、というのでもよいかもしれない。例えば売掛金、貸付金、市場性のない社債、満期まで保有する社債などが減損の対象となる。これらは金融資産を取得した時点で、誰から、どのタイミングで、いくら回収するというスケジュールが決まっている。それに対して公正価値で評価される金融資産は、短期売買する有価証券や、株式のように売却によってCashが入ってくる可能性の高い資産、或いは、最終的には売却される資産といってよいと思う。

ということで、売掛金は減損の対象となる資産だ。基本的には公正価値評価はしない。

 

(償却原価と償却資産)

いずれにしても(公正価値評価するものも償却原価が付されるものも)、金融資産は金を生むことが前提となっている。それはIFRSの資産の定義、僕の簡単な定義でよいが、それにマッチしている。ただ、公正価値で評価されるものは最終的に誰かのCashと交換されるが、償却原価で評価されるものは相手が契約を履行することでCashとなる。その際前者は売買益を期待するが、後者に対しては金利による運用益を期待する。後者については取得時点で元本および利息などについて契約などによって将来キャッシュフローを見積もることができるので、当初投資額に対するリターンという形で運用成績を測ることができる。そこで、複利計算によるこの運用収益率を実効金利として、実効金利が毎期実現されるように将来キャッシュフローを実効金利で割り引いて決めた簿価が償却原価だ。

 

このように償却原価を決めるので、償却原価を付した金融資産は、その後償却原価に固定の実効金利を乗じた金額を毎期運用収益として計上し、最終的に元本が回収されて帳簿から消える。このような処理は、有形固定資産などの償却資産に毎期償却率を乗じて費用化し(費用化された減価償却費は対応する収益で回収され)、経済耐用年数経過後に処分されて処分時の収入と残存価額が相殺されて帳簿から消えていく減価償却と似ていなくもない。償却原価によって評価される金融資産と、償却資産(固定資産)は生み出す損益が逆方向(一方は収益を生むが、もう一方は費用)というだけで、ほぼパラレルな処理となる。

 

ちょっと説明が複雑になってしまったので、もっと直感的に表現すると、いずれも投資時に投下資本を回収するスキームが決まっており、将来キャッシュフローによって利益を生むと期待できるので、それに沿って計画的・規則的に収益計上したり、費用計上したりする。その計画的・規則的にという共通部分が、「償却」という言葉で表されている。かつ、いずれも取得時の支出額をベースに(多少の加工をして)簿価を決めるので、両者は取得原価主義の会計処理であると説明されている。償却原価と減損がセットと書いたが、実は取得原価主義と減損がセットになっている。

 

なお、売掛金については、通常売上割引以外は金利を生むと期待していないが、回収期間が短いため実効金利0とされた金融資産と考えればよい。(だが、もし長期になれば、金利を擬制して実効金利による割引計算で簿価を計算する可能性も当然想定され、その際は費用が計上される。)

 

(減損)

減損は、投資額を将来キャッシュフローで回収できない場合に、回収可能額まで簿価を減額し損失を計上する会計処理だ。固定資産の場合は、取得した資産を利用した事業が期待した将来キャッシュフローを実現できないと見込まれる場合に減損損失が計上されることとなる。金融資産もまったく同様に、その金融資産に期待した将来キャッシュフローが実現できない見込みとなった時に減損処理が行われる。

 

固定資産の「期待した将来キャッシュフローが実現できない場合」とは事業が不振なときということだが、金融資産の「期待した将来キャッシュフローが実現できない場合」とはどういう場合だろうか。それは相手が契約を履行しない場合、債務不履行の場合、即ち、貸倒が予想される場合となる。

 

IFRSは資産を金を生むものとしているので、以上のように、公正価値評価する金融資産であろうが、償却原価を付す金融資産であろうが、償却資産(固定資産)であろうが、金を生まないと判断された部分はどんどん損失計上する。資産は金を生むものというIFRSの定義は、含み損を決して許さないというスタンスを表わしたものと考えることができる。

 

次回は、この「どんどん」という部分を、日本の減損会計との違いから見ていくことにしよう。スタンスの強さが見えてくる。

2011年11月29日 (火曜日)

IFRSの資産~償却資産と減損(前回までの復習)

オリンパスのことは一時忘れてIFRSの資産に戻ろう。資産の意味が分かっていればオリンパスもあれが粉飾だと分かって踏みとどまったかもしれない。(それはないか・・・。)

 

今回は、ざっと復習をしてみよう。11/1の記事で僕は「資産とは金を生むもの」と書いて、売掛金はCashを受取れるので換金価値で資産計上することにしっくりくるが、償却資産も同じかと疑問を呈した。償却資産は生産設備のように長期間使用する資産であり、通常は売却することを予定してない。そこで償却資産は換金価値ではなく原価償却後の簿価でB/Sに計上されるからだ。

 

すると換金価値(≒公正価値)で評価される資産と償却後簿価(取得原価主義による原価)で計上される資産がB/S上に並存するが、11/2の記事に書いたようにIFRSでは、それらを足したり引いたりして利益計算することになる。それは正しい利益計算といえるだろうか。

 

11/3の記事では、まず売上計上基準について考察して、IFRSによる収益計上が日本基準よりキャッシュと密接に関連していることを記載した。今日はB/Sで利益計算すると言い切るIFRSにとっての償却資産とキャッシュの関係を検討したい。ポイントは、償却資産とキャッシュの関係が強いほど売掛金との同質性が増すので足し算引き算、即ち利益計算が有効になるが、関係が弱ければ売掛金と償却資産を足しても意味がないということだ。しかし、実は両者は「減損」でつながっている。減損の考え方がポイントになるが、これは次回に譲る。

2011年11月 3日 (木曜日)

IFRSの資産~売上と売掛金

(P/L中心主義の日本基準とB/S中心主義のIFRS)

僕は売上計上基準という言葉を使うとまずはP/Lの基準、日本基準をイメージする。日本の収益認識は実現主義で行われ、要件は財・役務の提供と対価の受取りだ。一方IFRSはB/S中心主義であるため、売上の認識もB/S項目の売上債権の成立によって認識される。即ち日本基準でいうところの対価の受取りだ。基準だけの比較をすると両者には大した差はないように見えるがそうなのだろうか。

 

もっと細かく実務を見ていくと両者の性格の相違が見えてくる。

 

(発送基準)

より具体的には例えば発送基準では、製品・商品を発送したときに売上を計上するが、これだと対価の受取りがまだ行われていない。しかし、多くの場合返品等はあまりなく、ほとんどは得意先に到着すればほどなく受領されるため、多くの会社で利用されている。と言いたいところだが、実際は税法で規定された基準であるため、多くの会社に利用されている。返品が多い、出荷してから何か月もたたないと検収されない、そんな製品・商品さえも出荷基準で売上計上されるのをよく見ることがあった。

果たして発送基準は実現主義の会計処理と言えるのか。このように感じた人は多分すごく多いと思う。でも税法に規定されていて、昔から採用しているし楽だから、ということで採用され続けてきた。

しかし、IFRSがそこに揺さぶりをかけてきた。相手が支払いの意思を見せてない段階、即ち検収を受けてないのに売上を上げられるのかと。売掛金が成立してないじゃないかと。

 

(出荷基準を止めた会社)

ある会社ではハイテク機器の生産設備を製品として販売していた。製品は受注して生産を始めてから、得意先の技術者が工場を訪れ、技術的なポイントをチェックしたり、改善要求を受けたりした後出荷され、得意先の生産ラインに組込まれ、実際にラインで稼働させてから検収を受ける。しかし、会社は得意先の技術者のチェックが終わっていることを条件に出荷時に売上計上していた。

国内の得意先に納めているうちは、それでも出荷してから数か月程度で検収を受けていたが、輸出をするようになって売掛金が年単位で長期に滞留するようになった。海外得意先は、設備が生産ラインに組込まれてその得意先の製品がラインをどんどん流れて生産されているにもかかわらず、検収を上げないのだ。さらに検収を上げても全額支払わず、一部保留する。商慣行が国内とは違うのだ。

 

こんな状況でIFRSが導入されるかもしれないという話題が会社の耳に入った。監査法人からはいつも売上計上基準がおかしい、改善した方が良いといわれている。そういう目でもう一度会社の実態を振返ってみると、売上債権の入金は滞っている、営業は製品の出荷を急がせるが得意先の意思かどうか疑わしい、出荷してから検収までの期間が長期化している、技術者の渡航費用が増加している等々・・・。そして、その会社は売上計上基準を出荷基準から検収基準へ変更した。

 

(金を生むか・・・B/S中心主義の視点)

既に起こっている話だから、IFRSを導入するために売上計上基準を変更したわけではない。しかし、IFRSが一つの視点を与えてくれて、自分の会社を新しい目で見てみると、今まで普通だと思っていたことが普通じゃない、改善すべきだと見えてくる。そういうことが大事だと思う。そしてそのIFRSが与えた視点というのは「お金を生むものが資産」ではないかと僕は思っている。出荷しただけで計上された売掛金は、お金を生む状態になっておらず、それが会社に良い影響を与えていなかったということに気が付いたのだと思う。

 

雑誌などで「出荷の翌日に売上を計上すればよい」みたいな話が書いてあったりするが、決してIFRSを形式的にとらえてはいけない。出荷だけで売上を計上することが、得意先に対する関心を薄めてしまったり、得意先からサービスが良くないと思われたり、得意先から管理がルーズで扱いやすいと思われたりする原因につながっていないかよく見直してみることが大事だ。検収書があればいいのか、そうではない、得意先が製品やサービスに満足することが重要だ。満足したからもらえる検収書でなければ会社にとって意味がない。そういう実態を備えた「金になる売掛金」が成立していなければ、IFRSで売上を計上することはできない。(日本基準でも本来はそうあるべきなのだが。)

 

ところで、この「お金になる売掛金」ではない売掛金がIFRSでも認められるケースがある。それは進行基準による売掛金だ。ただ、ご存じの方が多いと思うが、IASBは進行基準について売上計上を制限する方向で見直しを行っている最中だ。

2011年11月 2日 (水曜日)

IFRSの資産~B/S中心主義とP/L中心主義

2013/10/25 ※1については、2013年のディスカッション・ペーパー「財務報告に関する概念フレームワークの見直し」のセクション6で、IASBは「資産及び負債についての単一の測定基礎は、財務諸表利用者にとって最も目的適合性の高い情報を提供しない場合がある。」としたうえで、“複数の測定方法の選択”について論じており、「いずれすべて公正価値評価になるかもしれない」という危惧は、杞憂であることが確認された。
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2011/11/2

「資産とはお金になるもの」と定義すると、「資産は換金価値(公正価値)で評価する」と考えるのがしっくりくる。すべての資産がそうなっていればシンプルなのだが、実は固定資産の一部についてはそうなっていない。固定資産の一部とはどういうもので、なぜそうなっていないのだろうか。

 この部分を、「そうなっていないといっても形だけの話で実質は換金価値と言っているのと同じだ」と考えている人々、或いは「今はそうなってなくても将来はそうしようとしている」と予想している人々が、IFRSの導入に反対し、製造業に合わないと主張している。ここは重要なところだ。

 実は僕もIASBの意図は測りきれていない。なぜなら、資産・負債アプローチ(資産と負債の差額で純資産を計算し、その期首と期末の増減額を期間損益とする考え方)と、すべての資産・負債項目を公正価値で評価するという考え方は非常に相性が良いからだ。資産・負債アプローチをよしとする限り、いずれはすべてのB/S項目を公正価値、換金価値で評価させるのではないだろうか、と思ってしまう。(但し、IASBはその意図を否定しているらしい。)※1

 (減価償却)

この問題を考えるときに最も重要なキーは「減価償却」であり、「償却後簿価」で評価されている、いわゆる「償却資産」だ。償却資産は減価償却の対象となる資産のことだが、その簿価は減価償却控除後の取得価額を付される。公正価値ではない。もっと平易に書くと、とりあえず買った値段で帳簿に記帳し、その後資産を使用すると決算が来るたびに機械的に評価を下げていき、使用期間が終わった時には処分価値まで下げる。この機械的に評価を下げる方法を減価償却と呼ぶが、減価償却は資産を「評価」する方法ではなく、この決算期にいくら費用配分するかを決める方法であり、結果的に償却後簿価が計算されるに過ぎない。例えば資産を5年間使い、処分価値は0と仮定すると、買った値段を1/5ずつその決算期に費用配分していく。すると結果的に1年後は買った値段の80%で評価され、2年後は買った値段の60%で評価される。このプロセスに公正価値とか、換金価値は全く関係がない。このように買った値段をもとに資産計上額や費用計上額を計算する考え方を取得原価主義という。

 (資産・負債アプローチ)

このように取得原価主義をベースに計算される償却後簿価と、時価主義ベースの公正価値を、単純に足し算、引き算してよいのだろうか。資産・負債アプローチでは、このように評価基準が混在した資産・負債を足したり引いたりして純資産を計算し、損益計算を行う。しかし、僕には両者がドルと円ほどの差があるように思える。公正価値をドルとすれば償却後簿価は円。普通ならドルを円換算しないと足し算、引き算はできない。純資産は企業価値を表わす、とたまに言われることがあるが、単位の違うものを足し算・引き算しても、正確な企業価値は計算できないのではないだろうか。

 (日本基準:P/L中心主義)

この点は日本基準も同じであり、日本基準でも純資産が企業価値を表わしているかどうか疑問だ。しかし、ちょっと違うところは日本基準はB/Sで損益計算をしないところだ。日本基準では収益から費用を控除して損益計算をする。償却資産とそれ以外の資産の評価基準が異なっていても、収益と費用が同じベースの単位であれば足し算・引き算するのに問題はないから、利益も正確に計算できる。したがって、日本基準の場合は、収益と費用が同じベースの数値になっているか否かが重要で、それは(実現主義とか)発生主義という発想・ルールで同一ベースに揃えられていると考えられている。例えば減価償却は発生主義会計の費用配分の方法なので、実現主義(発生主義)で計上された売上から控除して利益を計算することは正しいと考えられている。

 (IFRS:B/S中心主義)

ところでIFRSも発生主義だ。なんだ、じゃあ日本基準と同じじゃないか、というとそうでもない。日本基準は売上や売上原価などP/L項目を中心に発生主義を適用しているが、IFRSは金融商品などB/S項目に発生主義を適用している。これがあるときは微妙に、あるときは大きく決算数値に影響する。

 

さて、色々書いたが、このシリーズは「資産」をテーマにしているのでちょっと話題を広げ過ぎた感がある。しかし、これらが日本基準とIFRSの相違やIFRSの「資産」を理解するうえでも大事な切り口となってくる。今後は、これらの切り口から特定の「資産」を具体的にみていこう。

2011年11月 1日 (火曜日)

IFRSの資産~会計上の「資産」とは

2011/11/1

しばらく、IFRS導入論議について記載してきたが、これをこのまま続ける前に、もう少しIFRSの基本を勉強したいと思う。それは資産についてだ。みなさんはすでに資産と負債の差額で純資産を計算し、その期首と期末の増減差額で期間損益計算するというIFRSの資産・負債アプローチをご存じのことと思う。すると資産と負債のことが分かれば損益計算も分かってしまうことになる。さらに負債は資産のちょうど反対のイメージだから、資産が分かれば損益計算まで分かってしまうことになる。だから資産について勉強してみよう。

 

IFRSに書いてある資産の定義は以下の通りで、ちょっと取っ付き難いと思う。

「資産とは,過去の事象の結果として企業が支配し,かつ,将来の経済的便益が当該企業に流入すると期待される資源をいう。」

前半と後半に分かれていて、前半はその企業が資産を所有・支配・使用することのその時点での正当性を表現し、後半はその資産が経済的便益、即ちお金によって裏付けられていることを表現していると僕は思っている。よって簡単に書くと、「金を生むもの」を資産と言っている。

 

また「期待」という言葉も会計用語と思った方が良い。「思い」や「気持ち」、ましてや「夢」だけでは資産にならない。もっと具体的に「金」に結びついていないと「期待される」とは言わない。「金」になる可能性が低いもの、定かでないものは資産ではない。この辺りが一般的な「資産」という言葉と「財務情報としての資産」の相違する部分で、難しいところだ。

 

例えば、よく、「人は財産」と言われる。しかし会計上はそれがスティーブ・ジョブズ氏であっても「人」を資産計上することはない。「人が行動することで価値が生まれる」ので根源たる「人」自体に価値認識してもよいと思われる方もいらっしゃるかもしれないが、人身売買をするのでもなければ会計上は「人」を資産計上することはない。

 

人は、うまく行動すればお金を稼ぐがいつもうまく行動するとは限らないし、うまく行動するといってもその行動の具体的な内容やタイミングで、稼げる金額や稼げる可能性は相当異なってくる。だが、人の行動内容やタイミングが特定され、それでお金が入ってくることが確実な場合は、資産価値を認識する。例えばどれぐらい特定されることが必要かというと、売掛金や貸付金は、相手が支払いという行動をすることが契約されているので約束された支払額をとりあえず資産計上する。或いは、「発注」という行動だけでは資産計上しないが、それが納品されて具体的な「もの」になった場合は、その「もの」を(その換金価値を上限として)棚卸資産として資産計上する、といった具合だ。

 

この辺りまでは日本基準も同じなので、会計をちょっとでも知っている人はあまり違和感を感じないだろう。でも「じゃあ、固定資産はどうなるのか。これも換金価値なのか。減価償却や(償却後)簿価とはなんなのか」と思われた方は鋭い。この辺りから難しくなってきて、日本基準とIFRSとのズレも出てくるところだが、次回以降に譲る。

 

とりあえず今回は「資産とはお金になるもの」と頭に入れていただき、お金にならないのに帳簿に載っている資産、或いは帳簿上の評価額ほどの価値がない資産は不良資産、ということを改めてご確認いただきたい。不良資産は減損される。

2011年7月10日 (日曜日)

日本の課題、IFRSの課題(石川教授)

石川教授は日本がIFRSを取り入れていく(コンバージェンス)、或いはアドプションするにあたって、適切な期間損益計算を重視する立場から、時事ネタを使いながら具体的に多くの課題をこの本「変わる会計、変わる日本経済」に指摘している。しかし、それを大胆に要約すると、その中心は下記のようになると思う。

(会計の目的-期間損益計算 vs リスク開示)
投資家の立場(金商j法)からは、注記事項を含めたリスクの開示が重要であり、その点を最近の会計基準(やIFRS)は重視している。しかし、日本の会計はもともと適切な期間損益計算を行うことが目的であり、それゆえ、会社法や税法が、株主、債権者、国等への利益配分に会計基準を利用してきた。

IFRSはB/Sの期首と期末の資本の増減額を(包括)利益とするため、本来利益配分の財源にならないキャッシュフローの裏付けのない項目まで、即ち、資産・負債の評価損益や未実現利益までをも利益に含めてしまう。このような包括利益を調整しても利益配分機能が果たせるのか。

これは実務の問題(手間のこと)を超える大きな問題だ。損益項目に注目し、その性質を分析・解明する理論があってこそ、関係者の利害調整ができる、そうあるべきだ。期間損益計算とリスク開示を別枠にしてしまうか、両者を内包できる理論をくみ上げるか、そういう会計理論の根本的な整理と進化が求められている。会計基準は交渉や政治力で決まってしまう面があるといっても、そこでは、より基礎にさかのぼった理論や歴史の視点が重要となる。

(日本における象徴的な問題-減価償却)
減価償却することで期末の有形固定資産の簿価が決まるが、減価償却はあくまで費用配分、費用額をいくらにするかを決める手続きであって、資産評価の手続きではない。しかしもし、期首と期末の有形固定資産の評価額の差額を損益にするような会計手法が導入されると、それはもはやそれは収益と費用を対応させるための期間損益計算とは言えなくなる。しかし、IFRSは有形固定資産までをも公正価値評価させようという方向だ。そこで上記の会計理論の整理と開発が必要だし、特に税法は確定決算主義をどうするのか根本から見直す必要がある。

(IFRSが抱える根本的な問題-公正価値)
リーマン・ショックで金融商品関係の市場機能が低下し時価が下落したため、時価主義会計が過大な評価損を生むと欧米で批判を浴びた。もちろんこの批判は筋違いだ。加えて、これとは別にあまり問題にされていない大きな問題がある。それはそもそもリーマン・ショック前の時価(公正価値)が、過大評価だったのではないかということだ。市場価格があればそれを公正価値とするが、実物経済の数倍にも膨張した金融経済、信用膨張、バブルの時代の市場価格は「公正」な価格でなかっただろう。それを期末時価に使用する会計基準はいかがなものか。

みなさん、いかがだろうか。以上のようなことがメガ・バンクや生保の決算や税法改正による減価償却方法や耐用年数表の改定、三越と伊勢丹の経営統合、2009年のIFRS適用のロードマップなど色々な時事問題を通して語られている。上記はほんのエッセンス(になっていれば幸いですが)に過ぎない。

(監査人の見方)
実は、僕はかなりショックを受けた。監査実務では、どうしてもB/S項目に目が行く。まず流動性の高い項目を押さえに行き、さらに不良資産がないか注意を払い、負債の計上漏れに気遣う、そうしていくうちに相手勘定の損益の異常も発見できる。もちろん、損益項目についても分析したり、サンプルを拾って検証手続きをするのだが、それでも手がかりはB/S項目にあることが多い。しかし、確かに受験時代は会計の目的が期間損益計算にあることを学んでいた。それがいつの間にか収益の実現は売掛金の実在性や期間帰属から見ることが多かったし、契約書を見ればいつ資産の所有権が移転するかとか、未払計上、引当計上すべき負債がないか探していた。資産・負債を固めれば、結果として損益も正しくなる、そういう見方が僕の中に定着している。

そういう監査人の経験を踏まえて、次回は記載してみたい。

2011年7月 7日 (木曜日)

IFRS学習の視点

一応、僕も一通りIFRSを勉強した。監査法人時代はクライアントへIFRS導入を勧めていたので、当然自分なりの勉強はしたつもりだ。監査法人から提供されるアップデート情報もなるべく目を通すようにしていた。そんななかで僕なりのIFRS像が一応できている。

(良い点)
 ・原則主義(僕の考えでは適正表示の枠組みとも密接に関連)
 ・概念フレームワークの重視・尊重(同上)
 ・将来キャッシュフローによる資産・負債を定義、その資産・負債から導く資本および損益の定義
 ・これらから導き出される全体としてのシンプルさ

(悪い点、というか課題)
 ・金融商品関係が複雑というかオタッキー(分類・評価・減損・ヘッジなど、そのほか保険、リースも)
 ・その他の包括利益の性格付けがされてない(のに純利益を軽んじている印象)
 ・原文が英語で翻訳に時間がかかる(但し、ASBJの翻訳は日本語として分かりやすい)

僕の現時点の暫定的な評価では、IFRSの読者は最低限概念フレームワークさえ勉強すれば、財務諸表本体を直感的に読むことができる(ただ、注記を読むにはその分野の相応の知識や経験が必要)。読者にはCFOを除く経営者も含めて考えているが、これは社会全体の効率性への寄与度は大きいのではないか。しかし、作成者サイドはそうはいかない。高度な専門知識が必要となる(が、この点は、日本人は勤勉なのでなんとかなっていくのだろうと思う)。

注意を要するのは、良い点、特に原則主義の利点を十分引き出すための実務的なノウハウが、今までの日本の実務には、かなり欠けていたと思う(特に個別の状況に合わせた判断)。さらに資産・負債の定義を中心とする財務諸表像というものは、今までの損益重視の考えとはかなり異なるものだ。よって、原則主義におけるルールの運用ノウハウを整理して関係者へ知らせたり、財務諸表のイメージに関して専門家の頭を転換させたり、一般へ教育したり、といったことに国全体で取り組む必要があると思っている。(企業会計審議会の中間報告とは若干視点が違っている。)

言い訳になるが、上記は、自分で設定したとはいえタイムスケジュールがあって、それにプライベート時間をつぎ込んでやってきたものであるため、やっつけの面があることは否めない。じっくり基準書に向き合っていないのである。そこで、それをこれからみなさんと一緒にやっていきたい。したがって、このブログでは「基準にこう書いてある」ということではなく、それを概念フレームワークに照らしてどう考えるか、ということや、そういうことからくる実務上の判断のポイントの整理ができれば大成功と思っている。

IFRSの解釈はできない。でも各上場会社は、それぞれが直面する状況に合わせて多くの判断していくことになる。そのポイントの例示ぐらいは、個人的な意見として出すのはかまわないであろうと思う。というか、もっとそういうことをやっていかないと、IFRSが日本で機能しない。

僕がそんな考えを持っている人間だということを理解してもらったうえで、次回からは「取っ掛かり」で記載した会計学者の本について書いてみたいと思っている。非常に面白かった。参考になった。特に石川教授の本。

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ふぅ~、我ながら随分遠回りをしてきたような気がします。(^_^;;
ついでに申しあげると、来週11日より再来週まで、所用でなかなかこのブログにアクセスできなくなります。もし、このブログを楽しみにしてくださる方がいたら、大変申し訳ありません。

2011年6月27日 (月曜日)

取っ掛かり

僕の勉強の仕方は昔から決まっている。
① 概要が理解できそうなコンパクトな本を数冊読む
② 原本(基準書や委員会報告)と向き合う

①は省略することが多く、実際には②のみのことが多い。同僚を見まわしてみると、例えば金融商品会計基準やキャッシュフロー計算書の基準など、大きなテーマの時は基準解説の本を買って持っている人をよく見かけたが、僕はその手の本を読まない。なぜかというと基準に書いてあることを繰り返してあるだけ、という印象があるからである。またこの手の本は、その基準の支配者やそれに近い人たちが執筆していることが多いが、僕は支配者に対して斜に構えてしまう習性がある。

ではどういうときに①を行うかというと、そのテーマについて自由な個人の意見を書いたものが出ているときに興味がわく。さて、IFRSについてはそういう本は出ているだろうか。大きなテーマだし、出ていればそこから始めてみたいと思う。
アマゾンで本を検索してみると次の2冊のタイトルが目を惹いた。

「国際会計基準はどこへいくのか」 田中弘著
「変わる会計、変わる日本経済」  石川純治著

前者はIFRSを批判的に扱った本であろうことは明らかである。サブタイトルに「足踏みする米国・不協和音の欧州・先走る日本」などと書いてある。後者は変化を扱っていることからIFRSを是としている気がする。両サイドの意見を読めるのは幸いである。著者はいずれも大学の先生だが、会計分野で学者の本を読むのは会計士試験の受験時代以来のことかもしれない。ちょっと反省しつつ、懐かしいものも感じて、この2冊を読んでみることにする。

監査法人を辞める

僕は公認会計士である。20年以上勤めた監査法人を今月末で退職する予定だが、特に何をやると決めていない。「いよいよ独立ですか」と聞かれるが、いわゆる税務業務やコンサルティングは考えていない。

監査法人で学んだことがある。それは世の中のルールには「支配者」がいるらしいということである。税務であれば国税局、コンサルティングではそのメソドロジー(方法論)を考えた人、或いはそのメソドロジーの権威と目されている人。せっかく監査法人をやめてフリーになったのだから、そういう支配者のいる世界には戻りたくない。

では、ルールがまったくないところで何かできるか。それはできない。会計士にとってルール、或いは理論でもよいが、それが専門性の重要な根源の一つなのである。

そうするとルールはあるが、その密度の薄いものはあるだろうか。ある。IFRS(国際財務報告基準)である。「原則主義」などといって、ルールが少ないことを売りにしている。しかし、IFRSといえば先日金融庁のトップである自見内閣府特命担当大臣が導入延期の考えを公表したばかりではないか。導入が大変だと。日本のために導入を決めたのではないのか。何が起こっているのだろうか。IFRSとその周囲についてちょっと勉強してみる気になった。暇はたくさんある。

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